最後の女

蒲公英

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 触れるか触れないかのやわらかさで身体の上を滑っていくスポンジに、茜の皮膚は粟だち、唇を噛んでそれを耐えた。
「洗ってくれよ」
 秀一が逞しい背を向け、茜は秀一の手からスポンジを受け取ろうとした。
「身体で洗うんだよ」
「え?」
「ほら、おっぱいに石鹸塗ってさ」
「やだっ! ヤラシイ!」
「だから、そういう場所だっての。ほれ」
 茜の胸にいきなり、ボディーソープがかけられた。
「綺麗にしてくれよ、隅々まで」

 ぎこちない仕草で、茜は秀一の背に身体を滑らす。石鹸の滑る感触と秀一の肌の温度に声が出そうになり、目を閉じて胸をこすりつける。
「前も洗ってくれよ」
 手を掴まれて、後ろから抱きついた格好になった。前もと言われて、手に残った泡で秀一の胸を撫でる。厚い胸板を指で辿ると、呼吸が苦しくなった。
「ここも、綺麗にしてくれ」
 指の導かれた先は、熱い。秀一の背に当たる胸の先端が、期待で痛い。ゆっくりと手を動かしながら、もう充分に敏感になっている胸を、茜は秀一の背に押し付けた。

 湯船で後ろから茜を抱えた形の秀一の手は、胸を押しつぶす。はっはっと浅くなった息を噛み殺そうとすると、脚の間に指が伸びた。
「ふぁっ……」
 こぼれた声は、浴室で反響する。核を探る指に、背筋がびくりと反応した。逃げる腰を支える秀一の身体の中央も、存在を主張している。
「んっ……やっ……」
 やだ。お風呂でこんなの、恥ずかしい。自分の声が反響して、自分を煽ってるみたい。
 胸と核を同時に弄ばれて、首を左右に振る。自分の中から、何かが溢れてきそうだ。湯の中で指が茜の中を探りはじめ、飲み込みきれない声に耳を塞ぎたくなった。それなのに、指じゃ足りないと叫ぶものが自分の内にあって、その切なさに身を揉むのだ。
 秀一が浴槽の縁に腰掛けたとき、茜は迷いなくその身体の中心にあるものを、口に含んだ。
 これが、今の私を一番開放してくれるものだ。これを頂戴。

 まだ湿り気を帯びている身体を寝具に投げ出され、天井を向いたら自分と秀一の身体が映った。明らかに茜より一回り大きな秀一の身体が、圧し掛かるように自分の上を動く。耳元から首筋、肩から胸へ。
「…あっ……はぁっ……」
 浴槽の縁に座った秀一と向かい合わせで座ったとき、一度高みは見せてもらった。だから、身体を清めた後にもう一度、なんてことになるとは思っていなかった。
 休みの日の今頃、普段なら暢気に買い物をしてるか、並んでテレビを見ながらウトウトしているか。それが、こんなところで身体を絡ませて。しかもそれは、自分が望んだことであるのだ。
 身体の隅々を舐められ、噛まれて、腰をくねらせて誘う自分は、なんて淫らなんだろう。茜はそう思う。
 脚を持ち上げられて、自分の下腹に顔を埋める秀一の姿が見え、思わず悲鳴を上げる。舌の先で押しつぶされた後に吸われる核が、吐息に反応するほど敏感になっている。
「跨げ」
 身体を仰向けた秀一の上におずおずと乗ると、腰を掴んで一度、強く突き上げられた。それだけで、身体が前に傾ぎそうになる。
「動けよ、見ててやるから」
「どう、やって……」
「腰動かして、自分がイイところ見つけんだよ、ほら」
「やああああぁんっ」
 秀一は茜の腰を掴んで、ゆっくりと揺すってみせた。

 教えられた通りに身体を揺らし、すりあわせてみる。茜が下敷きにしている身体から伸びた手が、胸を弄び脇腹をくすぐった。時折気まぐれに下から送られる振動が、却ってもどかしく、苦しい。
 届きそうで、届かない。辿り着きたい場所には、秀一しか導いてくれない。
 茜は身体を倒して、修一の胸に口づけた。
「しゅう、さぁん……」
 もどかしくて、泣きそうだ。
「できないぃぃ……」
「がんばれ、ほれ」
「できないよぉぉ……んんっ!……」
 言葉が詰まったのは、秀一が身体を動かしたからである。
「秀さんが、してぇっ……あっ…ん……」
 秀一の顔中にキスしながら、茜は秀一の身体を降りた。

「やあっ!……あああああんっ……」
 膝立ちの秀一に脚を抱えあげられると、茜の背はシーツから浮いた。
「丸見えだ、ほら。天井見てみろ、どんなカッコしてんのか」
 秀一の目の下で、白い身体とそこだけ紅に咲いた先端が揺れた。行き先のない茜の手はシーツを握り締め、普段無邪気な表情の顔は苦悶の色を浮かべている。
 音が立つほど強く腰を打ちつけ、秀一の息が荒い。
「見ちゃ、やあっ!……ひゃ……ああっ……」
 涙を流していることすら、茜は気がつかない。中が強く痙攣し、腕を差し伸べて抱擁をせがむだけだ。
「しゅうさ、ん……抱い、て……うあ……あああぁっ……」
 秀一の強い抱擁とともに茜が波に攫われ、その波に乗って秀一も果てた。

「ご希望通りだったか?」
「う……まぁ、なんて言うか」
 帰りの車の中で、茜は無口だった。疲れ果ててしまっていることもある。片や秀一は、機嫌が良い。なんせまあ、普段は安アパートで気配を殺しているわけだし、自分の体力が2ラウンド目まで(この言い方が、すでにおっさんである)持ちこたえたことに気を良くしていた。
「たまには、来るか?」
「えっと、でも、あの……無料ただじゃないし……」
「スポーツジムの体験レッスンみたいなもんだ」
「ス…スポーツ? 体験レッスン?」
 赤信号待ちで、秀一はニヤリと笑った。
「ヨガじゃなくて、ヨガリのレッスン」
 一瞬黙った茜は、次に顔から火を噴いた。

「エロ親父ぃぃぃぃぃ!」
「今更、何言ってやがる」
 秀一と茜の、とある日曜の話である。
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