最後の女

蒲公英

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23.

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 胡坐の中でテレビを眺めている茜の胸を掴む。
「えっち」
 塞ぎがちな日が終わりを告げ、まだ気分は高揚している。布団に入るまで我慢できないほど、ガキじゃない。ただ、その行為は布団の中のものだけでもないと、知っているだけだ。もこもこした素材の部屋着では、肌の感触はわからない。キャミソールの内側に侵入した不埒な手を、茜は上から押し戻そうとする。
「やんっ! これ、見てんのっ」
「見てりゃいいだろ。こっちは勝手に触るから」
「勝手にって、私の身体じゃ……んんっ」
 胸の膨らみまで辿り着いた指が、てっぺんを探して動き出した。

 服の中でもぞもぞ動いているものが気になって仕方のないゴンベが、茜の部屋着の上から秀一の手を捕まえようとする。
「邪魔すんな、毛玉のくせに」
「ってか、私の胸だから……ってば……うぁ……」
 部屋着の中の秀一の手を、ゴンベが目を丸くして狙っている。さすがに身の危険を感じるので、ぽいっと横に放り出す。数回繰り返すと、ゴンベは悔しそうに「みゃっ!」と捨て台詞を残して、寒い外に見回りに出掛けた。
「テレビ、見るのぉっ!」
「だから、見てていいって」
 耳に息を吹き込むように、秀一が言う。無茶言うな。

 ゆるゆると揉まれていた胸が、急に鷲掴みされて部屋着を脱がされると、テレビを見ていると言い張れなくなった。
「やっ……ね、お布団敷く?」
「テレビ見るんじゃないのか?」
 茜から見れば、何言ってやがるって台詞である。
「だって、秀さんがそんなことしてるぅ……あぅっ……」
 言葉の最後に息が詰まったのは、茜を押し倒してキャミソールとブラを押し上げた秀一が、胸の頂に吸い付いたからだ。
「や……やぁんっ……あ……」
 舌先で転がされ、空いた手が性急に部屋着の下のショーツを探る。普段の秀一は、ここまで余裕がなくはない。煌々と明るい居間の電灯の下、茜の頬が上気する。薄目を開けて見上げると、秀一は難しい顔をしている。
「しゅう、さん?……あ、あ、あっ……ん……」
 下着の上から強く刺激され、耳も首も噛まれ、茜の腰が浮く。半分までずらされた部屋着のボトムスは、秀一の足によって下まで下ろされた。妙に乱暴で焦ってはいても、強く欲されていることがわかる。
 秀さん、すぐにでも私としたいんだ。その考えは茜を煽り、受ける刺激に強く反応して、ショーツの下の潜った手を挟み込んだ。

「洪水じゃねえか。しばらくやってなかったからか」
 動かし難い手を動かしながら、秀一は茜の胸を噛む。否定しようと開いた茜の口から零れるのは、母音だけで構成される呻きのようなものだ。指で中を探ろうとすると、茜の身体はびくんと反った。見つけものでもしたみたいな声を抑えようと、慌てて秀一の肩を噛む。
 飲み込まれる。何か知らないものに、飲み込まれてしまいそうだ。慣れている筈の行為なのに、自分の中に溜まっていく「それ」のスピードが、いつもと違う。噴出した感覚が、全部声になってしまう――
 早く開放して。私のこれを静めて。言葉にすることはできずに、哀願するように茜は秀一の肩にしがみつく。上半身の着衣は乱れてキャミソールが押し上げられ、下半身だけが剥き出しの恥ずかしさは、今の茜を余計に煽るだけだ。
「秀さん……して……してぇっ……」
 やはり飲み込まれたような表情の秀一が、スウェットを膝まで下ろすのが見えた。

 いくらも動かないうちに、茜の中はうねり始めた。
「もう、いっちゃうのか」
「おね……がいっ!……いかせ、て……」
 弾む息が、きれぎれに言葉を紡ぐ。熱いその感覚に、秀一は眉根を寄せて快感に耐えている。長い足が秀一の腰に絡みつき、逃すまいとしている。一度押し上げてやろうと、秀一は激しく動き出した。
「くっ……」
 取り込まれて、締め上げられる。こすり合わせたその部分が発火しそうだ。俺も、保たない――
「いっていいか」
「きてっ……秀さんも、いっしょに……あ…あ、あ、あ、あああぁぁぁっ」
 嬌声を塞ぐ間もなく茜の身体が痙攣すると、秀一は茜の肩に腕を回して抱きしめた。短く呻いて自身を解放し、腰を押し付ける。息切れがする。

「連ドラなのに、見損なった」
「見てていいって言ったじゃねえか」
「ひどいっ! 秀さんから始めたくせにっ!」
 お互いの始末をして、秀一は煙草に火をつける。喉渇いたー、なんて茜は冷蔵庫からアイスクリームを出してきたりしている。一瞬で飲み込まれた欲求は、終わってしまえば日常だ。

 死なんで良かった。深刻な病気なんかで、茜に無闇な心労をかけることにならずに本当に良かった。せめて子供を作って、それが茜の助けになる程度に育つまで。
 秀一の年回りで若い奥さんを想うのならば、当然と言えば当然のスタートで、自身を守るための自戒でもある。 
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