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かわいいお兄さんは好きですか?②
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鼓さんの家庭教師は週二日。他にバイトもしているというから、それ以上に増やして欲しいとは言えない。でも会えない日は寂しくて寂しくて、鼓さんのことばかり考えてしまう。
小さい頃から鼓さんは優しくて、俺はいつも後をついてまわっていた。「つづにい」と呼ぶと振り返ってくれるのが嬉しくて、何度も呼んだっけ。……あれ?
「俺、小さい頃から鼓さん大好きじゃね?」
中学生の頃に好きになったと思っていたけれど、それよりずっと前から好きだったのかもしれない。
「……」
集中できない。アプリで英単語を表示させてもスマホ画面に鼓さんが浮かんで見える。こういうときは――。
『鼓さん、勉強に集中できない』
メッセージを本人に送る。忙しいかな、バイト中かな、とそわそわスマホを見ていたら通知音が鳴った。『ガンバレ!』と吹き出しのついたキャラクターのスタンプに、ううう、と呻く。かわいすぎる……スタンプがじゃなくて、このスタンプを送ってくれる気持ちが嬉しいし、しょうがないな、って顔をして送ってくれたんだろうと思うとそういう優しさとかがもう堪らなくかわいい。鼓さんはなにをしてもかわいい。
「頑張ろう」
そして無事合格して鼓さんに告白するんだ。それを考えれば嫌いな勉強も自分からすすんでやりたくなる。でも、振られるのはいいけれど鼓さんの態度がよそよそしくなってしまったらどうしようと思うとまた英単語が遠くなっていく。
「集中しろ」
そうなったらそうなったで、そのとき考えればいい。今はとにかく絶対合格。鼓さんと楽しい大学生活。そして告白。
と気合いを入れていたらスマホの通知音が鳴った。
『ここのところ勉強漬けみたいだから、今度息抜きに出かけない?』
「!」
鼓さんからのデートのお誘い……!
即「行く」と返信した。勉強めちゃくちゃ頑張れる。
「もうクリスマス一色だね」
「うん。鼓さんは――」
クリスマスの予定あるの?
聞きたくても聞けない。だって、ある、と答えられたときにどうしたらいいかわからないから。
「俺がなに?」
「いや、なんでもない」
「?」
今はとにかく楽しもう。せっかく息抜きに誘ってくれたんだから、楽しまなきゃ損だ。鼓さんといられる時間は大切にしないと。
「なにか見たいものある?」
「鼓さんが見たいものが見たい」
「それじゃ史崇の息抜きにならないよ」
なるんだけどなぁ……。でもそう言ったところで鼓さんには通じないだろう。とりあえず近くのショッピングモールに行くことにした。
「なにか欲しいものある?」
「え?」
「史崇に、鼓サンタからプレゼントをあげよう」
胸を張ってちょっと偉そうにして見せる鼓さんがめちゃくちゃかわいくて色々まずい。
「せっかく恰好いいんだから、おしゃれな小物とかどう? 史崇、身に着けるものあんまりこだわらないし」
「……いい。そんなのいらない」
俺が欲しいものなんて一つだけ、鼓さんだ。でもそれを鼓サンタにお願いしても叶えてもらえないだろう。
「じゃあなにが欲しい?」
「秘密」
「教えてよ。史崇と俺の仲でしょ?」
すごい破壊力の言葉を放たれた。「史崇と俺の仲」……かわいすぎるし、それほど俺達は特別な関係なのかと勘違いしてしまう。ただの幼馴染としか思っていないくせに、そんな発言をして年下の男を惑わせるとは。
「じゃあ俺の欲しいもの当ててみてよ」
「えーっ」
「そうしたら鼓さんだってわかるし、ゲームみたいだろ?」
「わかった、当てるからヒントちょうだい」
ヒント……。
「俺が好きなもの」
「えっ、分厚いステーキとか?」
「そんな色気のないものじゃないよ」
これだから幼馴染は色々知りすぎていて困る。確かに分厚いステーキは大好きだけど、それ以上に好きなもの……好きな人がいるんだ。
「史崇に色気なんてあったんだ?」
鼓さんがちらりと上目遣いに見上げて俺の胸をとん、と叩いてくるので、ついその手を握ってしまった。
「俺だって男だ。好きな人だっている」
「史崇……」
鼓さんの頬が微かに赤らんで、あれ、これって脈あり? と俺もどきどきしてくる。
「――そっか、史崇にも好きな人がいるんだね」
「え」
にも、ってどういうこと?
「そうだよね、小さい子にだって好きな子ができるんだから、高三なら……彼女がいたり、するのかな……」
「彼女なんていないよ」
「じゃあ片想いか。気持ちが届くといいね」
鼓さんがそれを言うの? 俺が好きな人はあなただよ。
胸が苦しくなって、思わず鼓さんを抱き寄せた。
小さい頃から鼓さんは優しくて、俺はいつも後をついてまわっていた。「つづにい」と呼ぶと振り返ってくれるのが嬉しくて、何度も呼んだっけ。……あれ?
「俺、小さい頃から鼓さん大好きじゃね?」
中学生の頃に好きになったと思っていたけれど、それよりずっと前から好きだったのかもしれない。
「……」
集中できない。アプリで英単語を表示させてもスマホ画面に鼓さんが浮かんで見える。こういうときは――。
『鼓さん、勉強に集中できない』
メッセージを本人に送る。忙しいかな、バイト中かな、とそわそわスマホを見ていたら通知音が鳴った。『ガンバレ!』と吹き出しのついたキャラクターのスタンプに、ううう、と呻く。かわいすぎる……スタンプがじゃなくて、このスタンプを送ってくれる気持ちが嬉しいし、しょうがないな、って顔をして送ってくれたんだろうと思うとそういう優しさとかがもう堪らなくかわいい。鼓さんはなにをしてもかわいい。
「頑張ろう」
そして無事合格して鼓さんに告白するんだ。それを考えれば嫌いな勉強も自分からすすんでやりたくなる。でも、振られるのはいいけれど鼓さんの態度がよそよそしくなってしまったらどうしようと思うとまた英単語が遠くなっていく。
「集中しろ」
そうなったらそうなったで、そのとき考えればいい。今はとにかく絶対合格。鼓さんと楽しい大学生活。そして告白。
と気合いを入れていたらスマホの通知音が鳴った。
『ここのところ勉強漬けみたいだから、今度息抜きに出かけない?』
「!」
鼓さんからのデートのお誘い……!
即「行く」と返信した。勉強めちゃくちゃ頑張れる。
「もうクリスマス一色だね」
「うん。鼓さんは――」
クリスマスの予定あるの?
聞きたくても聞けない。だって、ある、と答えられたときにどうしたらいいかわからないから。
「俺がなに?」
「いや、なんでもない」
「?」
今はとにかく楽しもう。せっかく息抜きに誘ってくれたんだから、楽しまなきゃ損だ。鼓さんといられる時間は大切にしないと。
「なにか見たいものある?」
「鼓さんが見たいものが見たい」
「それじゃ史崇の息抜きにならないよ」
なるんだけどなぁ……。でもそう言ったところで鼓さんには通じないだろう。とりあえず近くのショッピングモールに行くことにした。
「なにか欲しいものある?」
「え?」
「史崇に、鼓サンタからプレゼントをあげよう」
胸を張ってちょっと偉そうにして見せる鼓さんがめちゃくちゃかわいくて色々まずい。
「せっかく恰好いいんだから、おしゃれな小物とかどう? 史崇、身に着けるものあんまりこだわらないし」
「……いい。そんなのいらない」
俺が欲しいものなんて一つだけ、鼓さんだ。でもそれを鼓サンタにお願いしても叶えてもらえないだろう。
「じゃあなにが欲しい?」
「秘密」
「教えてよ。史崇と俺の仲でしょ?」
すごい破壊力の言葉を放たれた。「史崇と俺の仲」……かわいすぎるし、それほど俺達は特別な関係なのかと勘違いしてしまう。ただの幼馴染としか思っていないくせに、そんな発言をして年下の男を惑わせるとは。
「じゃあ俺の欲しいもの当ててみてよ」
「えーっ」
「そうしたら鼓さんだってわかるし、ゲームみたいだろ?」
「わかった、当てるからヒントちょうだい」
ヒント……。
「俺が好きなもの」
「えっ、分厚いステーキとか?」
「そんな色気のないものじゃないよ」
これだから幼馴染は色々知りすぎていて困る。確かに分厚いステーキは大好きだけど、それ以上に好きなもの……好きな人がいるんだ。
「史崇に色気なんてあったんだ?」
鼓さんがちらりと上目遣いに見上げて俺の胸をとん、と叩いてくるので、ついその手を握ってしまった。
「俺だって男だ。好きな人だっている」
「史崇……」
鼓さんの頬が微かに赤らんで、あれ、これって脈あり? と俺もどきどきしてくる。
「――そっか、史崇にも好きな人がいるんだね」
「え」
にも、ってどういうこと?
「そうだよね、小さい子にだって好きな子ができるんだから、高三なら……彼女がいたり、するのかな……」
「彼女なんていないよ」
「じゃあ片想いか。気持ちが届くといいね」
鼓さんがそれを言うの? 俺が好きな人はあなただよ。
胸が苦しくなって、思わず鼓さんを抱き寄せた。
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