6 / 10
かわいいお兄さんは好きですか?⑥
しおりを挟む
マーケットは色々な店があって見ていてとても楽しい。でも高校生で小遣い頼みな俺には高いものばかり。そんな俺に鼓さんは食べ物を買ってくれる。
「今日くらいは年上らしいことさせて?」
少し頬を赤く染めてこちらを上目遣いに見る鼓さん……だからそういうところが本当にかわいいんだって。
遠慮すると逆に鼓さんが気にするだろうから、ありがとう、と素直に言うと嬉しそうに微笑むのがめちゃくちゃかわいい。ステーキやドイツ風の串焼き、鮎の丸焼きも見つけて、俺が気になるものと鼓さんが気になるものを次々買ってくれて二人で食べる。
もう食べ物はいいかな、と話していたらおいしそうなイチゴのクレープを見つけ、二人で顔を見合わせる。
「……二人で一つなら、いける?」
「史崇は大丈夫?」
「うん。すごくおいしそう」
一つ買って二人で食べるけれど突然、これって間接キス? と思い、以前シャーペンでした間接キスを思い出してしまい、少し頬が熱くなる。
「つ、鼓さんは……キス、したことある?」
どきどきしながら聞いてみる。お願い、ないって言って!
「ないよ」
飛び上がりたくなるほど嬉しかった。
「ふうん」
なんでもない風を装うけれど、心臓がばくばく言っている。鼓さんの初キスが欲しい……と思い始めたら唇ばかり目に入る。
「史崇?」
「えっ」
「どこ見てるの?」
「えっ、えっ」
「……」
じとっと俺を見る鼓さんの、やっぱり唇に目がいってしまう。鼓さんのキス、初キス、とそればかりになっている俺の脳内を覗かれそうで目を逸らすけれど、つい視線が唇に戻ってしまう。
「……後でね」
「えっ」
それは……どういうこと!?
聞きたいけれど、鼓さんはさっさと先に行ってしまったので慌てて追いかける。
「今日の記念になるようなものを買ってあげよう」
少し頬を赤く染めた鼓さんがぽつりと言う。その鼓サンタ口調が本当にかわいくて口元が緩んでしまう。
「二人で来れた思い出があるから、物はいらないよ」
俺の答えに鼓さんがきょとんとした顔をする。めちゃくちゃかわいい。
「でも……俺がプレゼントしたものを見て、そのたびに史崇に俺を思い出してもらいたい」
「っ……」
「だめ?」
そんなのかわいすぎて、違う意味でだめだ。きらきらしているマーケットの飾りつけより鼓さんのほうが輝いて見える。
「ということで、これにしよう」
「えっ、もう決まってるの?」
「そう。いつも机に置いておくこと」
鼓さんがサンタクロースの入ったスノードームを手に取る。こんな特別な日にプレゼントしてもらったもの、一生飾り続けるに決まっている。それから別の店でチョコレートも買ってくれた。全部鼓さんが払ってくれていて、さすがに申し訳なくなってくる。
「鼓さん、なにかお返しがしたい」
「お返し?」
「お金出してもらってばっかで申し訳ないから」
「お返しねえ……」
思案するような顔をしてから、鼓さんが俺の手をきゅっと軽く握るので心臓がどくんと跳ねた。
「だったらずっとそばにいて」
「えっ」
「それで、史崇がバイトしたり就職したり、お金に余裕ができたら今度は史崇の奢りね」
「……」
「いいでしょ?」
「就職なんて、そんな先まで一緒にいてくれるの?」
えっ、と大きな声を出されてしまいびっくりする。
「違うの!? 俺は史崇がずっとそばにいてくれるものだとばっかり……」
「っ……」
そんなこと言われたら今すぐ抱きしめたくなってしまう。俺だって別れるつもりなんてまったくない。
「違わない。ずっとそばにいる」
「よかった」
心底ほっとしたような表情をされて、心がむずむずしてしまう。動悸のような、心臓が疼くような、不思議な感覚。
「絶対お返しするから!」
「じゃあまた来ようね」
「来る!」
こんなの将来の約束じゃん! 鼓さんは俺の心臓を壊す気か。
きらきらのクリスマスマーケットを見て回り、鼓さんがはしゃいでいる。ステージを観たり、店を見たり……気がついたら薄暗くなってきていた。冬は夜が早い。ライトアップされたツリーが綺麗で、でもそれ以上に鼓さんが綺麗で、一瞬も目を離せなかった。
「今日くらいは年上らしいことさせて?」
少し頬を赤く染めてこちらを上目遣いに見る鼓さん……だからそういうところが本当にかわいいんだって。
遠慮すると逆に鼓さんが気にするだろうから、ありがとう、と素直に言うと嬉しそうに微笑むのがめちゃくちゃかわいい。ステーキやドイツ風の串焼き、鮎の丸焼きも見つけて、俺が気になるものと鼓さんが気になるものを次々買ってくれて二人で食べる。
もう食べ物はいいかな、と話していたらおいしそうなイチゴのクレープを見つけ、二人で顔を見合わせる。
「……二人で一つなら、いける?」
「史崇は大丈夫?」
「うん。すごくおいしそう」
一つ買って二人で食べるけれど突然、これって間接キス? と思い、以前シャーペンでした間接キスを思い出してしまい、少し頬が熱くなる。
「つ、鼓さんは……キス、したことある?」
どきどきしながら聞いてみる。お願い、ないって言って!
「ないよ」
飛び上がりたくなるほど嬉しかった。
「ふうん」
なんでもない風を装うけれど、心臓がばくばく言っている。鼓さんの初キスが欲しい……と思い始めたら唇ばかり目に入る。
「史崇?」
「えっ」
「どこ見てるの?」
「えっ、えっ」
「……」
じとっと俺を見る鼓さんの、やっぱり唇に目がいってしまう。鼓さんのキス、初キス、とそればかりになっている俺の脳内を覗かれそうで目を逸らすけれど、つい視線が唇に戻ってしまう。
「……後でね」
「えっ」
それは……どういうこと!?
聞きたいけれど、鼓さんはさっさと先に行ってしまったので慌てて追いかける。
「今日の記念になるようなものを買ってあげよう」
少し頬を赤く染めた鼓さんがぽつりと言う。その鼓サンタ口調が本当にかわいくて口元が緩んでしまう。
「二人で来れた思い出があるから、物はいらないよ」
俺の答えに鼓さんがきょとんとした顔をする。めちゃくちゃかわいい。
「でも……俺がプレゼントしたものを見て、そのたびに史崇に俺を思い出してもらいたい」
「っ……」
「だめ?」
そんなのかわいすぎて、違う意味でだめだ。きらきらしているマーケットの飾りつけより鼓さんのほうが輝いて見える。
「ということで、これにしよう」
「えっ、もう決まってるの?」
「そう。いつも机に置いておくこと」
鼓さんがサンタクロースの入ったスノードームを手に取る。こんな特別な日にプレゼントしてもらったもの、一生飾り続けるに決まっている。それから別の店でチョコレートも買ってくれた。全部鼓さんが払ってくれていて、さすがに申し訳なくなってくる。
「鼓さん、なにかお返しがしたい」
「お返し?」
「お金出してもらってばっかで申し訳ないから」
「お返しねえ……」
思案するような顔をしてから、鼓さんが俺の手をきゅっと軽く握るので心臓がどくんと跳ねた。
「だったらずっとそばにいて」
「えっ」
「それで、史崇がバイトしたり就職したり、お金に余裕ができたら今度は史崇の奢りね」
「……」
「いいでしょ?」
「就職なんて、そんな先まで一緒にいてくれるの?」
えっ、と大きな声を出されてしまいびっくりする。
「違うの!? 俺は史崇がずっとそばにいてくれるものだとばっかり……」
「っ……」
そんなこと言われたら今すぐ抱きしめたくなってしまう。俺だって別れるつもりなんてまったくない。
「違わない。ずっとそばにいる」
「よかった」
心底ほっとしたような表情をされて、心がむずむずしてしまう。動悸のような、心臓が疼くような、不思議な感覚。
「絶対お返しするから!」
「じゃあまた来ようね」
「来る!」
こんなの将来の約束じゃん! 鼓さんは俺の心臓を壊す気か。
きらきらのクリスマスマーケットを見て回り、鼓さんがはしゃいでいる。ステージを観たり、店を見たり……気がついたら薄暗くなってきていた。冬は夜が早い。ライトアップされたツリーが綺麗で、でもそれ以上に鼓さんが綺麗で、一瞬も目を離せなかった。
11
あなたにおすすめの小説
上手くいかない恋の話
Riley
BL
友人の恋に嫉妬し軽はずみに悪口を言ってしまったーー。
幼なじみ兼、大好きなアイツ《ナオ》から向けられる軽蔑の目。顔を合わすことさえ怖くなり、ネガティブになっていく《カケル》。
2人はすれ違っていき……。
不器用男子×ネガティブ考えすぎ男子
アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました
あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」
穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン
攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?
攻め:深海霧矢
受け:清水奏
前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。
ハピエンです。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
自己判断で消しますので、悪しからず。
推し変なんて絶対しない!
toki
BL
ごくごく平凡な男子高校生、相沢時雨には“推し”がいる。
それは、超人気男性アイドルユニット『CiEL(シエル)』の「太陽くん」である。
太陽くん単推しガチ恋勢の時雨に、しつこく「俺を推せ!」と言ってつきまとい続けるのは、幼馴染で太陽くんの相方でもある美月(みづき)だった。
➤➤➤
読み切り短編、アイドルものです! 地味に高校生BLを初めて書きました。
推しへの愛情と恋愛感情の境界線がまだちょっとあやふやな発展途上の17歳。そんな感じのお話。
【2025/11/15追記】
一年半ぶりに続編書きました。第二話として掲載しておきます。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/97035517)
魚上氷
楽川楽
BL
俺の旦那は、俺ではない誰かに恋を患っている……。
政略結婚で一緒になった阿須間澄人と高辻昌樹。最初は冷え切っていても、いつかは互いに思い合える日が来ることを期待していた昌樹だったが、ある日旦那が苦しげに花を吐き出す姿を目撃してしまう。
それは古い時代からある、片想いにより発症するという奇病だった。
美形×平凡
テメェを離すのは死ぬ時だってわかってるよな?~美貌の恋人は捕まらない~
ちろる
BL
美貌の恋人、一華 由貴(いっか ゆき)を持つ風早 颯(かざはや はやて)は
何故か一途に愛されず、奔放に他に女や男を作るバイセクシャルの由貴に
それでも執着にまみれて耐え忍びながら捕まえておくことを選んでいた。
素直になれない自分に嫌気が差していた頃――。
表紙画はミカスケ様(https://www.instagram.com/mikasuke.free/)の
フリーイラストを拝借させて頂いています。
運命はいつもその手の中に
みこと
BL
子どもの頃運命だと思っていたオメガと離れ離れになったアルファの亮平。周りのアルファやオメガを見るうちに運命なんて迷信だと思うようになる。自分の前から居なくなったオメガを恨みながら過ごしてきたが、数年後にそのオメガと再会する。
本当に運命はあるのだろうか?あるならばそれを手に入れるには…。
オメガバースものです。オメガバースの説明はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる