かわいいお兄さんは好きですか？

かわいいお兄さんは好きですか？⑩

「鼓さん、あーん」
「なに？」
「さっき買ってくれたチョコ。食べよう」
「うん」

チョコを指でつまんで鼓さんの口元に運ぶと、鼓さんは俺の指ごと口に含んだ。

「指まで食べてるよ」
「わらとらもの」
「なに？」

俺の指を咥えてもごもごしている鼓さんがなにか言う。首を傾げると、俺の手を両手で握る。

「わざとだもの」

そう言ってもう一度俺の指を口に含み、ちゅ、ちゅ、と吸う。それがあまりにいやらしくてまた欲が燃えてしまいそうになるけれど、さすがに鼓さんの負担になるだろうからぐっと堪える。でも堪えるのもきつい。

「ずるいなあ、鼓さん」
「うん。わざとだよ」
「ほんと、ずるい。ずるくてかわいい」
「かわいくない」
「ううん、めちゃくちゃかわいい」

鼓さんもチョコを指でつまみ、俺の口元に差し出してくれる。

「史崇、あーん」

俺が口を開けると、チョコがそっと口の中に運ばれた。鼓さんの真似をして指ごと口に含もうと思ったら、すっと素早く手が離れた。代わりに唇にちゅっとかわいいキスが触れる。

「……かわいすぎ」
「かわいくないって」
「ううん。こんなにかわいいお兄さん、絶対離せない」

鼓さんが笑い出すので、なにかと思って顔を見る。

「俺がどうして一人暮らししないか知ってる？」
「知らない。なんで？」

耳元に顔を寄せられ、どきりとする。こそこそと内緒話のような囁き。

「史崇から離れたくないからだよ」
「っ！」

甘い言葉は誘惑のようで、また身体が熱くなってくる。

「クリスマス、史崇と一緒に過ごせてよかった」
「うん。俺も、鼓さんと過ごせたなんてまだ夢みたいだ」
「勉強頑張ろうね」
「よろしくお願いします。鼓先生」

ぎゅっと抱きしめ、キスをして。唇を離して微笑み合う。
甘いクリスマスイブの夜に二人で溶けていった。



おわり