蒼き英雄(旧)

雨宮結城

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第二章

Part11

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ユキ達は、第二十階層で働かされている人達を助ける為、動いていた。第二十階層に暮らしていた人達は、モルドの手下が来るまでは、当然静かに暮らしていた。

だが、モルド達がミレイユ姫のお城を占拠した後、モルドの手下達は、お城に最も近かった村を襲い、逆らえないよう、家を燃やし尽くした。そして次は街を襲う為、村の人達は、大人は武器生成、子供はその武器を運び渡すという仕事をさせられていた。

「おいお前ら、死にたくなかったら、しっかりと働くんだな。でないとどうなるか、分かるよな」

「分かっております。ご期待に応えられるよう努力する所存です」

「あー、分かればいい」

「は!」

村長は、皆の代表でモルドの手下達の機嫌を損ねないよう、仕方なく従っていた。

「(くっ、いいのか、このままヤツらに従っていて、だが、我々では、ヤツらに挑んでも敵わない。せめて、剣士達がいてくれれば)」

「おい、こんな事、いつまで続くんだぁ」

「剣士達は何してるんだよ」

「上層部には連絡がいってないのか?」

「おい!そこのお前ら、何話してる」

「…」

「ふっ!喋ってないで、モルド様の為に働くんだな」

「(くっ)」

「(ふっ、さぞ助けが来てほしいと願ってるだろうが、残念ながら、剣士は来ねーよ。上層部には、何事もなかった、そうあの方が言ってくださったからな)」

「…キャ!」

少女が武器を運んでいる最中に、足を滑らせ転んでしまい、武器等を落としてしまった。

「あ、すいません!」

「あ?おいおい、なに武器を落としてんだぁ!」

モルドの手下はそんな少女を足で踏んだ。

「キャ!ご、ごめん、なさい」

「お前みたいなヤツはなあ、本来奴隷になるべき人間なんだよ。それをしないでやってるんだぜ。その恩返しがこれか、ん!」

モルドの手下はさらに少女を踏み、少女を傷つけた。

「ご、ごめんなさい」

少女は涙を流した。

「ふんっ!お前みたいヤツの代わりなんていくらでもいるからな。うーんそうだな、決めたぜ。お前、死刑だ」

「!い、いや。いやー」

「そ、それはいくらなんでも」

「うるせー」

手下は剣を抜いた。

「またあの村みたいにはなりたくねーだろ。それとも、俺らと戦うか?お前らみたいな雑魚が!」

「…」

「ま、お前らがいくら俺らに挑んでこよーが、死体の山が増えるだけだがな」

「頼む!」

「あぁ?」

「その子を離してやってくれ、この通りだ」

村長は皆を守る為、モルドの手下に頭を下げ、土下座した。

「ふん!いい土下座だな、ふん!」

「くっ」

モルドの手下は、村長の土下座を見て、少女は解放したが、次は村長の方に行き、土下座している村長の頭を踏んだ。

「おらおら」

「…」

「ふ、決めたぜ。死刑変更、お前が死刑だ」

「!」

「おい、村長がヤバいぞ」

「誰か止めろよ」

「止めたければ、誰でも来ていいぜ、ただ、そうなった時は、向かって来たヤツら、全員死刑だがな」

「!」

「くっ」

村の人達は、村長を助けたかったが、死を恐れて、助けに行けなかった。

「(ふっ、とりあえずコイツには、見せしめに死んでもらうか)」

「や」

「?あぁ」

「や、やめて。お父さんを、殺さないでー」

「よせマナ、来るな!」

「ふんっ!」

「キャ!」

村長の娘が父親を助ける為、男に向かっていったが、男に殴られ、意識を失ってしまう。

「マナ!」

「ちっ、めんどくせーな、なら、お前が死ね」

「やめろー、マナー」

「ふんっ!」

モルドの手下が、村長の娘であるマナの首めがけて剣を下ろした瞬間、一人の少女の剣が、それを阻止した。

「っ!」

「殺させないよ」

モルドの手下は、一旦距離をとった。

「誰だ、お前は」

「ボクはユキ。一人の剣士だ」

「なっ、剣士だと」

「…」

「おい、剣士が来てくれたぞ」

「やった!」

「でも、あの剣士一人で来たのか?」

「(バカな、このタイミングで剣士だと?上層部に連絡がいってない以上、剣士が来るなんてありえねえ。まさかコイツ、勘がいいタイプか?)」

「村の人達を解放してもらう」

「なんだと」

「ボクは無駄な争いはしたくない。このまま、帰ってくれないかな」

「!バカにしやがって、だが、お前はバカだな。たった一人で来るなんてよう。こっちは一人じゃねえ。人質もいるしな。たった一人でどうする気だったんだあ?」

「ふっ」

「な、何がおかしい」

「君は勘違いしているみたいだね」

「なんだと、どういう事だ」

「何の計画もなく、ボクが来たと思う?」

「なに」

「うわっ!」

「何だこれ!」

「!」

「鎖で、動けねえ」

「なっ、どうなっている」

「お姉ちゃん、コイツら全員、鎖で止めておいたよ」

「ありがとう、ミユキ」

「き、貴様、剣士二人で来たか」

「いや」

「?」

「うわ!」

「!?」

「三人だよ。剣士は」

ミユキの鎖で敵を捕らえてる間に、サオリは刀を抜き、鎖で縛られているモルドの手下達であるモンスター達を斬っていった。

「くっ」

「あとは君だけだね」

「な、ナメるなー!」

最後の一人になった手下は、ユキに向かって剣を振るった。

「…」

そんな剣を、ユキは軽々交わし、剣を破壊した。

「なっなに!」

「諦めてくれないかな」

「!くっ」

「これ以上の戦いは無駄だよ」

「も、モルド様の、邪魔はさせん!」

「んっ」

ユキは迫ってくる手下より先に、高速で手下の目の前まで行き、手下を剣で気絶させた。

「はぁー!うっ、かはっ」

「…君には、後で裁かれてもらう。だから、殺しはしない」

ユキは剣を鞘に収めた。そしてユキ達は、ヒナ達とも合流し、村で強制的に働かせていた人達を解放した。

「大丈夫?マナちゃん」

「はい。あの」

「ん?」

「父と私を救ってくださり、ホントに、ありがとうございます」

「ボク達は剣士だからね。助けるのは当たり前だよ。それに、あの状況で、よく頑張ったね。君は凄いよ」

「いえ、私は、父を助けたくて。でも、何も、できませんでした」

マナは、ユキと自分を比べ、何も出来なかった自分が悔しく、涙を流した。

「私、この村を出たら、剣士になるのが夢でした、でもこんな無力な私は、剣士には、とてもなれません」

「…剣士になる条件とか、色々あると思うよ、でも、マナちゃん、君は凄いことをしたんだよ。まだ剣士でもないマナちゃんがお父さんを助ける為に動いた。それはとても凄いことだよ。誰にでもできることじゃない。守りたいっていう気持ち、それが一番大事だとボクは思う。剣士になる素質、君には十分あるよ。だから、頑張ってね。応援してる」

「!…ありがとうございます。私、頑張ります。貴方みたいな立派な剣士になる為に」

「うん!頑張って!」

マナはユキの言葉に動かされ、剣士になると強く心に決めた。そして時間が経ち、クエストに協力してくれた剣士達と、ユキ達は合流した。そしてサオリが、そんな剣士達に感謝の気持ちと思いを伝えた。

「皆さん、今ここに、私達に協力してくれた事、とても感謝しています。そして、今から向かうのは、ミレイユ姫様のお城を占拠しているモルドとそれに与する者達。その者達を打ち倒し、捕らわれているミレイユ姫様達を救い出す時です。皆さんでお互いを守りつつ、敵を、打ち倒しましょう!」

「おおー!」

サオリの言葉に、剣士達は喝が入った。

「これで良いかな?二人共」

「うん!バッチリだったよ」

「とても良かったです」

「良かった」

「じゃあ気をつけてな」

「ホントに、お気をつけて」

「うん!ヒナちゃんにカオリちゃん、村の人達とアスタを頼んだよ」

「あぁ、任せてくれ」

「皆さんも、どうかご無事で。姫様や皆を頼みます」

「うん!」

「はい!」

「もちろんです」

「じゃあ、行こうか!」
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