蒼き英雄(旧)

雨宮結城

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第五章 過去編

Part1

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涼しい風が吹いている野原で、彼らは遊んでいた。

「いくぞゲータ!」

「こい!カイン!」

その中の二人、ゲータとカインは、勝負という名の遊びをしていた。

「ふっ!」

カインは木刀を強く握り、構えからの全力ダッシュで、ゲータへと向かっていった。

「…」

ゲータも拳を強く握り、構え、カインからの攻撃に備えた。

「おらあ!」

「…っ!」

カインからの木刀攻撃を、ゲータはかわし、魔力を拳に込め、カインに反撃した。

「ふっ!」

「!おっと、あぶね」

「…かわされたか」

「へへ、まだまだいくぞ!」

「ああ!」

その光景を近くで見ていたミユとメギド。

「まったく、相変わらず戦いが好きね、あの二人」

「そうだね、それ程強くなりたいってことだろ。何せこの世界は、モンスターが現れるなんて当たり前だ。だからこそ、殺されないよう戦う」

「それはそうだけど、絶対あの二人は、そんな事より、戦う楽しさ優先でしょうね」

「まあ、それもそうだね」

ゲータ達がいるこの世界は、ソウルワールドのようにダンジョンがある訳ではないが、低級のモンスターは、森などに普通に存在している。

「まあ確かに、モンスターに殺られないように戦う、それは分かるわ。レベルも上がるしね。でも、もう私達のレベルならそこら辺のモンスターなら、余裕で勝てるわよ」

「でも、モンスターの怖い所は、この辺のモンスターで言えば低級だが数が多い、街の方は数こそ多くはないが、一体一体がかなり強い」

「そうね、ボスクラスのモンスターは、強い魔力に反応して近づいてくるから怖いわね。でも、街にはスレイヤー様が率いる魁平隊がいるから、街にいる人達は安心でしょうね。それに、こんな田舎にまで、たまに様子を見に来てくださるからね」

この世界のモンスターは、低級なら、弱い魔力に、ボスクラスなら強い魔力に引き寄せられるようになっていた。その為、ボスクラスが街の方の森に多いのは、街にいる戦士達が強いからだ。

「俺達も、いずれは街に行って最強の戦士になる。街の戦士になれば、死ぬまで富と名声が約束されているからな。逃さない手はない」

「…ホントに男って、強くなるの好きよね」

「ミユの方は、変わらず戦士には興味なしか」

「当たり前でしょ、私は別に富とか名声に興味がないし、ただ」

「ただ?」

「私はゲータや皆といる事の方が大事だわ」

「そうか、相変わらずゲータの事が好きだな」

「…そりゃあまあ、当然よ。恋人なんだから」

「…」

「俺がなんだって?」

勝負を終え、ミユとメギドの方へと来たゲータとカイン。

「お、戦いは終わったのか?」

「ああ、今回も俺の勝ち」

「相変わらず強いな、ゲータ」

「また負けた」

「でも、カインも、ゲータといい勝負してたじゃない」

「!?ホントか!?ミユ」

「ええ」

「よし、次は負けないぞ!ゲータ」

「ああ、望むところさ」

「さて、そろそろ行きましょ」

「ああ、モンスター狩りだ」

ゲータ達の日課は、特訓した後に、森へ向かい、モンスター達を狩りに行くというものだった。

この日も、ゲータとカインが戦いを終え、ゲータ、ミユ、カイン、メギドの四人で、モンスター狩りを始めた。

「グルルル」

「おりゃ!」

「グッ!」

「フーうっ!」

モンスター達を次々と倒していくゲータ。それに続き、カインは剣で、メギドは魔力球を創り、モンスターを倒していった。

「ハァ!」

「フッ!」

「グルア」

「ふっ!…ん?」

「グルルル」

たくさんいたモンスターの内の三体が、ミユの方へと向かっていった。

「ミユ、そっちに行ったぞ」

「ええ、分かってるわ」

ミユも魔力を集中させ、三体のモンスターに、魔力光線を放った。

「ハアー!」

「グルアー」

そして見事、三体のモンスターを撃破したミユ。

「ふぅ」

「さすがだな、ミユ」

戦いを終え、ミユの元へ駆け寄るゲータ。

「これくらいはね」

「今日もノルマ達成かな」

「そうね、一日三十体。皆でやるから、早く終わるわね」

「そうだな」

「ふぅ、終わったあ」

「そっちも終わったか?」

「ああ、俺とメギドの方も片付いた」

「よし、じゃあ帰ろうぜ」

「だな」

「そうね」

ゲータとミユはゲータの家に、カインとメギドは、カインの家へと、それぞれの家へと帰った。

メギドは、祖父と祖母の家を燃やされた為、行く宛てがない中、カインの家に引き取られた。ミユは、両親共に何者かに殺され、一人になってしまった中、ゲータと出会い。交際して、ゲータとゲータの両親と共に、過ごしていた。

「ただいま」

「あら、おかえりゲータ」

「ただいまです」

「ミユも、おかえり」

「おかえりミユちゃん」

「はい」

「ちょうど今ご飯ができたのよ、皆で食べましょ」

「わあ、美味しそう」

「あら、ありがとう」

ゲータ達は食卓を囲み、楽しく食事をとった。

「最近はどうだ?ゲータ、特訓の方は」

「順調だよ父さん」

「そうか、ミユちゃんも順調かい?」

「はい、順調です」

「それは良かった」

「私と父さんはもう強くないからね。農家をやっているけど、ゲータとミユ達は、街に行って魁平隊に入るんでしょ?」

「そうだね」

「頑張ってね二人共」

「おうよ!」

「はい!」

「でも母さん、ゲータが目上の人に敬語を使えるか、少し心配だわ」

「大丈夫だよ母さん」

「ミユ、ゲータの事、よろしくね」

「はい!もちろんです」

「ミユまで心配なのか?」

「そりゃあそうよ、ゲータだもん」

「あはは、心配されてるな。ゲータ」

「俺は大丈夫なんだけどな」

「ゲータ、お前は強い。だからこそ、その力で皆を守り、助けるんだぞ?」

「もちろんだよ、父さん」

「なら良し」

「にひひ」

ゲータは、家族といつものように、楽しい時間を過ごした。そして就寝の時、ゲータとミユは同じ部屋というのもあり、二人は話した。

「ねえゲータ」

「ん?どしたミユ」

「家族って、いいわね」

「どうしたんだよ急に」

「何かね、ふと思ったの。私、家族が殺されてから貴方に出会うまで、家族が何なのか、分からなくなって、考えるのも怖かった。でも、さっきみたいに、家族で楽しく話す。当たり前の事かもしれないけど、私にはその当たり前がない時があった。物事って、失って初めて気づくって言うけど、当たり前もさあ、結構貴重な宝物だと思うの」

「…そうだな、家族と話す。当たり前のように見えるけど、確かに宝物だ。それが思い出になり、力となって、明日へ進むための一歩に繋がる。俺もそんな感じがするよ」

「…私、ゲータと出会えて良かった」

「ミユ…」

「貴方に出会えてなかったら、きっとこの気持ち、感情は無かった。だから、私を見つけてくれて、ありがとう」

「ミユ、お前の事は、俺の全てをかけて守ってみせる。だから、これからも一緒にいよう」

「ええ」

「じゃあ、もう遅いし寝るか」

「そうね、明日もあるからね」

「ああ」

二人は話を終え、眠りについた。

そして朝になり、起きるゲータとミユ。

「…」

「あら、おはようゲータ、ミユ」

「おはよう母さん、あれその人は?」

一階に降りてきたゲータとミユ、とそこには、見知らぬ一人の少女がいた。

「ああ、この人はマキさんって言う人よ」

「へえー」

「なんでも、スレイヤー様の右腕の剣士様だとか」

「!?スレイヤー様の?」

「凄い、私と同い年ぐらいに見えるのに」

「…」

家に来ていたマキは、ゲータの事を見つめていた。

「…」

「…俺に何か?」

「いえ、なんでも」

「?」

何故見つめてきたのか、気になったゲータ。だが、深い意味はないだろうと、気にするのを止めた。

「それで、何の御用で来たんですか?」

ミユがマキに聞く。

「ああ、そうでした。最近我々が討伐していた人型モンスターがいるのですが、その内の一体が、どこかへと逃げてしまい、我々が今探しているのですが、もし見つけたら、我々にご連絡ください。そしてそれが終わったら、逃げてください。その人型モンスターはとても強いので」

「分かりました」

「それとこの事は、村の皆さんにもお伝えください。それでは」

そう言い、家を後にしたマキ。

「…人型モンスター、怖いわね」

「でも、幸いにもこの連絡キューブをもらったし、見つけても、これで魁平隊の人に連絡すれば良いんだ。大丈夫だろ」

「そうね」

「…ゲータ?」

「今のが、スレイヤー様の右腕の剣士様か」

「そうみたいね」

「威圧感凄かったな」

「そうだよね、私達と同い年ぐらいに見えたのに」

「魁平隊、ワクワクするな」

「…ゲータらしいわね」

「じゃあ、母さん、父さん、今日も行ってくる」

「ええ、気をつけてね」

「ああ」

両親に出かけると伝え、いつもの野原へと向かうゲータとミユ。

そして、街にある城へと帰っていたマキは、スレイヤーと連絡をとっていた。

「スレイヤー様…はい、戦士候補に相応しい人物を見つけました。…はい、しかも彼は、覚醒持ちです……はい、分かりました」

マキは、ゲータがいた村に、注意喚起と戦士候補を探す為に来ていた。

そして場所は変わり、ゲータ達は、いつものように、日課をこなしていた。

「ゲータ、今回は俺とカインでお前に挑むぞ」

「ああ、二対一、燃えるね」

「いくぞ!」

「おう!」

今回の戦いは、ゲータ対カイン&メギドの二対一。ミユは、変わらずその戦いを見ていた。

そしてしばらくし、ミユはある事に気づく。

「(ゲータに対して二人で戦ってるのに、ゲータは楽しそうに戦ってる、ホントに戦いが好きなのね)ん?何、この魔力の感じ」

ミユは魔力の反応がある方向を向いた。

「嘘でしょ」

何とその方向は、ゲータ達が住んでいる村の方角だった。
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