俺の異世界ライフ

雨宮結城

文字の大きさ
2 / 2

Part 2

しおりを挟む
「え……僕、死んだんですか? 生き返ったんじゃないんですか?」

「誠に残念ですが」

「そんな……」

光村哉太みつむらかなた様、貴方は生き返った訳ではありません。 

「え……それって、どう言う……」

 光村哉太みつむらかなたは、生き返った訳ではない、だが女神セラの、と言う言葉に、困惑していた。

「__じゃあ、ここって、どこなんですか? 天国とか地獄には見えないし、一体ここは」

「ここはガーデン、あの世とこの世の中心点に存在する場所です。 そしてガーデンとは、女神が死んだ人間の魂を導く場所でもあります」

「え……えっとぉ」

「とても困惑されていますね。 無理もありません。  ゆっくりと説明をさせて頂きます」

「は、はい……」

「地球の日本時間で、2027年4月7日 午前8時27分35秒……光村哉太みつむらかなた様は通り魔であり薬物中毒者である林哲夫はやしてつおによって、包丁でお腹を刺され、貴方の意識は、ここガーデンへと導かれました」

「やっぱりあの時、僕は刺されたんだ」

「はい」

「でも、どうしてここに僕の意識が」

「貴方が強くそれを望まれたからでございます」

「僕が?」

「はい、通り魔に刺され、意識が朦朧もうろうとしていた時、私は貴方に問いました。 生きたいかと、そして貴方は強く、生きたいと願った」

「!」

「私はその事を承諾し、貴方の魂をここへ導かせて頂きました」

「そうだ……僕はあの時……! あの!」

「はい……なんでございましょうか」

「佳奈は、佳奈は大丈夫なんですか! 生きてますよね!」

「はい、野村佳奈のむらかな様は、今も生きています。 今は病院で、手術を終え意識が戻らない貴方のすぐ側にいます」

「意識が戻らない?」

「はい」

「それはきっと、僕がここにいるからですよね。 生き返る事ができるなら、僕を現世に戻してもらえませんか! お願いします!」

 哉太は、これでもかと言うぐらい、頭を下げ、女神セラに頼んだ。

「そうする事自体は可能ですが、それはできません」

「え……なんでですか」

「今この状態で意識を戻せば、貴方はそのまま死んでしまうからです」

「え、でも今ここに」

「それは貴方の魂のみをガーデンに置いている為です。 貴方の本物の身体は、本来であれば死んでいる傷です。 手術したものの、身体がとても弱っています。 今このまま戻しても、貴方は生き返る事ができません」

「そんな……じゃあ僕は、二度と佳奈に」

「顔を上げてください……光村哉太様、方法がない訳では無いのです」

「え……」

「貴方が生き返る方法が、私が知る限り1つだけございます。 その1つと言うのは、別の次元の世界へと行き、そこで生命力を高めてもらうのです」

「別の世界?」

「分かりやすく言うのなら、異世界と呼ばれる場所でございます」

「い、異世界!?  それって、アニメとかでよく聞く、あの異世界ですか?」

「はい、その異世界です」

「でも、どうして異世界に?  それに生命力って」

「先程も申し上げた通り、今のあなたの身体は、生命力が0に等しいのです。 生命力を上げるには、どこか別の場所で、身体を動かし、生命力を上げていくのです」

「生命力って、身体を動かすだけで上がるんですか?」

「本来であれば、身体を動かすだけではなんの意味もありません。 ですがそこは、女神の力を使わせて頂きます」

「女神の力……」

「はい。 そして、生命力を上げる手助けとして、貴方に1つ、能力を授けました」

「能力って、一体どんな」

「『オーバー』という能力です。 ある条件を満たした時、貴方は限界を越えた力を得ることができます。 知識、パワー、思考速度、視野の拡大」

「なんか、凄いですね。 それでその、条件と言うのは」

「それは、特定の気持ちが深く高まった時です」

「特定の、気持ち」

「はい、詳しくは、実際使われた方が早いでしょう」

「わ、分かりました」

「それでは、異世界に向かうに辺り、絶対のルールをご説明させて頂きます」

「ルールですか?」

「はい。 異世界に行った際、基本的には、光村哉太様がなにをしても、我々は干渉しませんし、自由です。 ですが度を超えた行為、功績をした場合には、それなりの処罰が下ります。 度合いの大きさは、私女神セラが判断します」

「分かりました」

「世界を救い英雄になったり、困っている人々を助ける、そういった行ないは全然良いのですが、逆に世界を破壊、支配等の行為は処罰の対象になります」

「はい」

「それと、異世界の時間軸と日本の時間軸は全く違い、お互いに関与してません。 ですので異世界でどれだけの時間を過ごそうとも、戻る時には、あの瞬間の時間に戻すことが可能ですので、ご心配なさらなくて大丈夫でございます」

「そうなんですね! それは良かったです」

「他に何かご質問はありますでしょうか」

「異世界で死んでしまった場合って、どうなっちゃうんですか?」

「その時は、特定の回数内では生き返ることが可能です。 異世界では日本と違い魂の他に魔力という力が身体に流れています。 その魔力が尽きていなければ、可能です」

「そうなんですね」

「はい。 ちなみにその特定の回数は、私の力では、6回が限度です」

「6、分かりました。 頑張って生きます」

「はい。  それでは、光村哉太様、貴方を異世界へと転送します。 どうが貴方に、女神の奇跡があらんことを」

女神セラは右手を前に出し、光村哉太に転送魔法をかけ、身体が少しずつ透けていった。 消えた時には異世界に辿り着くと言うものだ。

「___」

光村哉太は、ゆっくりと目を開けた。

「ここが異世界、凄いな。 アニメやゲームで見たのと同じだ」

人生で初めて異世界に行き、ワクワクしていた。

「こういう時は、まずギルド、街の方だよな。 行くか」

光村哉太は、まず戦う職業、冒険者になる為に、ギルドがある街の方へと歩いていった。

~それと同じ頃、ある城にて~

「おい、いたか?」

「いやいない、早く見つけるぞ」

「あぁ、大罪人を処刑しないとなぁ」

「騎士アウラ、必ず見つけ出して、殺す」

「__はぁ……はぁはぁ(私はまだ死ぬ訳にはいかない)」

右腕を斬られ、頭からも血を流していた騎士長アウラという少女は、一般兵を殺した容疑者の汚名をきせられ、国から追われていた。

「(マイ、ごめん)」

ある約束の為、死ぬ訳にはいかない彼女はフードを被り、木を隠すなら森の中ということで、街の方へと逃げた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

スラム街の幼女、魔導書を拾う。

海夏世もみじ
ファンタジー
 スラム街でたくましく生きている六歳の幼女エシラはある日、貴族のゴミ捨て場で一冊の本を拾う。その本は一人たりとも契約できた者はいない伝説の魔導書だったが、彼女はなぜか契約できてしまう。  それからというもの、様々なトラブルに巻き込まれいくうちにみるみる強くなり、スラム街から世界へと羽ばたいて行く。  これは、その魔導書で人々の忘れ物を取り戻してゆき、決して忘れない、忘れられない〝忘れじの魔女〟として生きるための物語。

処理中です...