モブの私が理想語ったら主役級な彼が翌日その通りにイメチェンしてきた話……する?

待鳥園子

文字の大きさ
36 / 43

36 スピードの訳①

しおりを挟む
 急激に暖かくなってきた気候は、夕方の空気もぬるくする。

 私たちはショッピングセンターを出て、二人隣り合って帰っていた。

 不快感はまだそこまでないけど、雨が降り出すともっと重く感てしまうのかも。

 隣の鷹羽くんの周りだけ爽やかに感じちゃうのは人徳なのか、その毒気のない笑顔のせいなのか良くわからない。

 鷹羽くんは私の隣で、長い足をじれったいくらいゆっくり動かして歩く。

 私はもう少し早く歩けるし、合わせてくれているって訳でもなさそう。逆にこっちが彼に合わせて歩いていた。

 けど、今の中途半端な関係の私が、それをどうしてって聞くのは何だか違う気がした。

「あの、ここで良いよ、ごめんね。結果的に部活サボらせちゃった」

 お互いの家の丁度中間地点になるだろう、学校の近くの交差点で私は言った。

 鷹羽くんは、ううんと首を横に振った。

「家まで送るよ。……時間あるんだし、送らせて」

「誰かに見られたら、私と遊んでたのバレちゃうよ?」

 私は周囲を見回した。

 下校時間が過ぎて長いし、運動部の人たちが学校を出るのはまだ先の話だ。

 近くにうちの学校の制服を着ている子はいないけれど、何かの用事で残っていて偶然見かけられたら、週明けは噂になるだろう。

 それに運動部だってランニングしたりして、この様子を偶然見かけられてもおかしくないし。

「……有馬は困る?」

 鷹羽くんの眼鏡の奥の真摯な視線に、なんて答えようか困った。

 背の高い鷹羽くんは私より頭二つ分くらい大きくて、見上げてしまう。暗くなってきた夕焼けを背負って立っているのはとっても絵になる人で。私なんかに全然似合わない人で。

「それは……困らないけど……」

「けど?」

「……鷹羽くんは困らないの?」

 鷹羽くんはふっと笑って、俯いた。短い髪の下の形の良い額が近づく。

「困ると思う?」

 私は何も言えなくなって、同じように俯いた。だんだんと薄暗くなり、薄紫色の光が辺りを覆う。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

転生妃は後宮学園でのんびりしたい~冷徹皇帝の胃袋掴んだら、なぜか溺愛ルート始まりました!?~

☆ほしい
児童書・童話
平凡な女子高生だった私・茉莉(まり)は、交通事故に遭い、目覚めると中華風異世界・彩雲国の後宮に住む“嫌われ者の妃”・麗霞(れいか)に転生していた! 麗霞は毒婦だと噂され、冷徹非情で有名な若き皇帝・暁からは見向きもされない最悪の状況。面倒な権力争いを避け、前世の知識を活かして、後宮の学園で美味しいお菓子でも作りのんびり過ごしたい…そう思っていたのに、気まぐれに献上した「プリン」が、甘いものに興味がないはずの皇帝の胃袋を掴んでしまった! 「…面白い。明日もこれを作れ」 それをきっかけに、なぜか暁がわからの好感度が急上昇! 嫉妬する他の妃たちからの嫌がらせも、持ち前の雑草魂と現代知識で次々解決! 平穏なスローライフを目指す、転生妃の爽快成り上がり後宮ファンタジー!

隠れ御曹司は、最強女子を溺愛したい

藤永ゆいか
児童書・童話
過去のある出来事から、空手や合気道を習うようになった私。 そして、いつしか最強女子と言われるようになり、 男子が寄りつかなくなってしまった。 中学では恋がしたいと思い、自分を偽って 学校生活を送ることにしたのだけど。 ある日、ひったくり犯を撃退するところを クラスメイトの男子に見られてしまい……。 「お願い。このことは黙ってて」 「だったら、羽生さん。 俺のボディーガード兼カノジョになってよ」 「はい!?」 私に無茶な要求をしてきた、冴えないクラスメイトの 正体はなんと、大財閥のイケメン御曹司だった!? * * * 「ボディーガードなんて無理です!」 普通の学校生活を送りたい女子中学生 羽生 菜乃花 × 「君に拒否権なんてないと思うけど?」 訳あって自身を偽る隠れ御曹司 三池 彗 * * * 彗くんのボディーガード兼カノジョになった 私は、学校ではいつも彼と一緒。 彗くんは、私が彼のボディーガードだからそばにいるだけ。 そう思っていたのに。 「可愛いな」 「菜乃花は、俺だけを見てて」 彗くんは、時に甘くて。 「それ以上余計なこと言ったら、口塞ぐよ?」 私にだけ、少し意地悪で。 「俺の彼女を傷つける人は、 たとえ誰であろうと許さないから」 私を守ってくれようとする。 そんな彗くんと過ごすうちに私は、 彼とずっと一緒にいたいと思うようになっていた──。 「私、何があっても彗くんのことは絶対に守るから」 最強女子と隠れ御曹司の、秘密の初恋ストーリー。

レイルーク公爵令息は誰の手を取るのか

宮崎世絆
児童書・童話
うたた寝していただけなのに異世界転生してしまった。 公爵家の長男レイルーク・アームストロングとして。 あまりにも美しい容姿に高い魔力。テンプレな好条件に「僕って何かの主人公なのかな?」と困惑するレイルーク。 溺愛してくる両親や義姉に見守られ、心身ともに成長していくレイルーク。 アームストロング公爵の他に三つの公爵家があり、それぞれ才色兼備なご令嬢三人も素直で温厚篤実なレイルークに心奪われ、三人共々婚約を申し出る始末。 十五歳になり、高い魔力を持つ者のみが通える魔術学園に入学する事になったレイルーク。 しかし、その学園はかなり特殊な学園だった。 全員見た目を変えて通わなければならず、性格まで変わって入学する生徒もいるというのだ。 「みんな全然見た目が違うし、性格まで変えてるからもう誰が誰だか分からないな。……でも、学園生活にそんなの関係ないよね? せっかく転生してここまで頑張って来たんだし。正体がバレないように気をつけつつ、学園生活を思いっきり楽しむぞ!!」 果たしてレイルークは正体がバレる事なく無事卒業出来るのだろうか?  そしてレイルークは誰かと恋に落ちることが、果たしてあるのか? レイルークは誰の手(恋)をとるのか。 これはレイルークの半生を描いた成長物語。兼、恋愛物語である(多分) ⚠︎ この物語は『レティシア公爵令嬢は誰の手を取るのか』の主人公の性別を逆転した作品です。 物語進行は同じなのに、主人公が違うとどれ程内容が変わるのか? を検証したくて執筆しました。 『アラサーと高校生』の年齢差や性別による『性格のギャップ』を楽しんで頂けたらと思っております。 ただし、この作品は中高生向けに執筆しており、高学年向け児童書扱いです。なのでレティシアと違いまともな主人公です。 一部の登場人物も性別が逆転していますので、全く同じに物語が進行するか正直分かりません。 もしかしたら学園編からは全く違う内容になる……のか、ならない?(そもそも学園編まで書ける?!)のか……。 かなり見切り発車ですが、宜しくお願いします。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

処理中です...