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36 スピードの訳①
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急激に暖かくなってきた気候は、夕方の空気もぬるくする。
私たちはショッピングセンターを出て、二人隣り合って帰っていた。
不快感はまだそこまでないけど、雨が降り出すともっと重く感てしまうのかも。
隣の鷹羽くんの周りだけ爽やかに感じちゃうのは人徳なのか、その毒気のない笑顔のせいなのか良くわからない。
鷹羽くんは私の隣で、長い足をじれったいくらいゆっくり動かして歩く。
私はもう少し早く歩けるし、合わせてくれているって訳でもなさそう。逆にこっちが彼に合わせて歩いていた。
けど、今の中途半端な関係の私が、それをどうしてって聞くのは何だか違う気がした。
「あの、ここで良いよ、ごめんね。結果的に部活サボらせちゃった」
お互いの家の丁度中間地点になるだろう、学校の近くの交差点で私は言った。
鷹羽くんは、ううんと首を横に振った。
「家まで送るよ。……時間あるんだし、送らせて」
「誰かに見られたら、私と遊んでたのバレちゃうよ?」
私は周囲を見回した。
下校時間が過ぎて長いし、運動部の人たちが学校を出るのはまだ先の話だ。
近くにうちの学校の制服を着ている子はいないけれど、何かの用事で残っていて偶然見かけられたら、週明けは噂になるだろう。
それに運動部だってランニングしたりして、この様子を偶然見かけられてもおかしくないし。
「……有馬は困る?」
鷹羽くんの眼鏡の奥の真摯な視線に、なんて答えようか困った。
背の高い鷹羽くんは私より頭二つ分くらい大きくて、見上げてしまう。暗くなってきた夕焼けを背負って立っているのはとっても絵になる人で。私なんかに全然似合わない人で。
「それは……困らないけど……」
「けど?」
「……鷹羽くんは困らないの?」
鷹羽くんはふっと笑って、俯いた。短い髪の下の形の良い額が近づく。
「困ると思う?」
私は何も言えなくなって、同じように俯いた。だんだんと薄暗くなり、薄紫色の光が辺りを覆う。
私たちはショッピングセンターを出て、二人隣り合って帰っていた。
不快感はまだそこまでないけど、雨が降り出すともっと重く感てしまうのかも。
隣の鷹羽くんの周りだけ爽やかに感じちゃうのは人徳なのか、その毒気のない笑顔のせいなのか良くわからない。
鷹羽くんは私の隣で、長い足をじれったいくらいゆっくり動かして歩く。
私はもう少し早く歩けるし、合わせてくれているって訳でもなさそう。逆にこっちが彼に合わせて歩いていた。
けど、今の中途半端な関係の私が、それをどうしてって聞くのは何だか違う気がした。
「あの、ここで良いよ、ごめんね。結果的に部活サボらせちゃった」
お互いの家の丁度中間地点になるだろう、学校の近くの交差点で私は言った。
鷹羽くんは、ううんと首を横に振った。
「家まで送るよ。……時間あるんだし、送らせて」
「誰かに見られたら、私と遊んでたのバレちゃうよ?」
私は周囲を見回した。
下校時間が過ぎて長いし、運動部の人たちが学校を出るのはまだ先の話だ。
近くにうちの学校の制服を着ている子はいないけれど、何かの用事で残っていて偶然見かけられたら、週明けは噂になるだろう。
それに運動部だってランニングしたりして、この様子を偶然見かけられてもおかしくないし。
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「それは……困らないけど……」
「けど?」
「……鷹羽くんは困らないの?」
鷹羽くんはふっと笑って、俯いた。短い髪の下の形の良い額が近づく。
「困ると思う?」
私は何も言えなくなって、同じように俯いた。だんだんと薄暗くなり、薄紫色の光が辺りを覆う。
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