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第四章 インキュバスの貞操帯
26 インカ=インゴット
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◇◇◇◇◇
「インカ」
ふりむくとママが笑っている。家の前でさいたかわいいお花をあんで花かんむりをつくる。それをぼくの頭にのせてくれる。
「インカ、ママは凄く可愛いだろ。インカもママぐらい可愛いお嫁さんを貰って幸せになれよ」
パパが笑いながらママをだっこしてチュッチュッとする。ママがまた笑っている。
よかった。二人とも笑っている。
さいきん夜ねているとパパとママがないしょ話をいっぱいするんだ。
なに言っているかわからないけど、すこしだけきこえる。
「――――インカの目――――」
「――――だけど普段は茶色――――」
なんでおこっているのかやっぱりわからない。だけど、よくパパとママがぼくの目を見てこわいかおする日がふえちゃった。
朝おきてねこみたいにのびぃぃぃってする。いっぱいからだをのばす。きょうはたいよう元気いっぱい!
パパとママにごはんつくろうかな! びっくりしてくれるかな?
「あら、インカ! 早起きね。何? 朝食を作ってくれたの? 凄いじゃない!」
ママがうれしそうに笑う。ぼくは「ママ大すき」って言おうとおもってふりむいただけなんだ。
「きゃぁぁぁあああああ! あなた! あなた!」
ママがいっぱいいっぱいこわいかおをする。ぼくはびっくりしてごはんおとしちゃった。パパとママのためにつくったごはん。それがゆかにおちちゃった。
「どうした⁉︎」
パパが走ってくる。
「あなた‼︎ インカの目! やっぱりこの子、悪魔よ! あの汚らわしい人達と同じよ! 捨ててきて! こんなの、私達の子じゃない! 捨ててきてよ!」
パパとママがこわいかおでぼくを見る。
こわいよ。
こわい。
ママ。パパ。
ぎゅっとしてほしくって手をのばす。パパがぼくの手をたたく。
なんで?
なんで?
ぼく、なにかわるいことしたの?
ママがドアでさけぶ。こわい男たちが家に入ってくる。ぼくの作ったごはん、なんどもふまれちゃった。もうたべられないよ。
ごめんね。
ごめんね、パパ、ママ。
いい子にするから。ごめんなさい。
きらいにならないで。
ゆるして。
ごめんなさい。
きらいに、ならないで。
いうこときくから、きらいにならないで。
おねがい……きらいにならないで!
◇◇◇◇
「お前がインカだって? マジでまだガキだなぁ」
俺と同じ気持ち悪い赤い瞳の奴等が笑う。
もう何年も一人で旅してきているのに何も変わらない。もうそこまで幼くないのに相変わらず同じ反応をされる。どいつもこいつも俺と一発やりたいか俺を利用したいだけだ。気が休まらねぇ。俺の価値はその二つしかないのかよ。
「もうほっといてくれ!」
男達が笑う。また笑う。
俺に触れてくる。俺を押さえ付けてくる。
蹴られる。
また押さえ付けられる。舐められる。
気持ち悪ぃ。
どいつもこいつも、魔導師なんか嫌いだ。
見て見ぬ振りの街の人達も嫌いだ。
吐き気がするぐらい嫌なのに、他人の熱に反応するこの身体も嫌いだ。
皆嫌いだ。
俺はなんでこんなのに生まれたんだ?
俺が何したって言うんだ。
全員、消えろ。
「神が宣う紫雷の如しその吐息在らん事を」
地面を放電が走る。
「神が宣う業火の如しその怒り在らん事を」
体が浮く。
火球が飛び交う。
悲鳴がする。
精力尽きた体が、俺の命が、赤く放電し始める。赤い電気が身体を包み、バチバチと火花が激しく飛び散る。
「神が宣う業火の如しその怒り在らん事を」
死ね。皆、死ね。魔導師なんか嫌いだ。人間なんか嫌いだ。
「止めろ、インカ! お前、本当に死ぬぞ! インカ!」
ローガンの焦った声がする。また駆けつけてきたのか。こいつも子守が嫌だったのに押し付けられて迷惑だったよな。
羽交い締めにされる。
「神が宣う業火の如しその怒り在らん事を」
それでも術式を止めない。
後ろから殴られる。
目を閉じても開けても真っ暗だ。
全部憎い。
「インカ」
ふりむくとママが笑っている。家の前でさいたかわいいお花をあんで花かんむりをつくる。それをぼくの頭にのせてくれる。
「インカ、ママは凄く可愛いだろ。インカもママぐらい可愛いお嫁さんを貰って幸せになれよ」
パパが笑いながらママをだっこしてチュッチュッとする。ママがまた笑っている。
よかった。二人とも笑っている。
さいきん夜ねているとパパとママがないしょ話をいっぱいするんだ。
なに言っているかわからないけど、すこしだけきこえる。
「――――インカの目――――」
「――――だけど普段は茶色――――」
なんでおこっているのかやっぱりわからない。だけど、よくパパとママがぼくの目を見てこわいかおする日がふえちゃった。
朝おきてねこみたいにのびぃぃぃってする。いっぱいからだをのばす。きょうはたいよう元気いっぱい!
パパとママにごはんつくろうかな! びっくりしてくれるかな?
「あら、インカ! 早起きね。何? 朝食を作ってくれたの? 凄いじゃない!」
ママがうれしそうに笑う。ぼくは「ママ大すき」って言おうとおもってふりむいただけなんだ。
「きゃぁぁぁあああああ! あなた! あなた!」
ママがいっぱいいっぱいこわいかおをする。ぼくはびっくりしてごはんおとしちゃった。パパとママのためにつくったごはん。それがゆかにおちちゃった。
「どうした⁉︎」
パパが走ってくる。
「あなた‼︎ インカの目! やっぱりこの子、悪魔よ! あの汚らわしい人達と同じよ! 捨ててきて! こんなの、私達の子じゃない! 捨ててきてよ!」
パパとママがこわいかおでぼくを見る。
こわいよ。
こわい。
ママ。パパ。
ぎゅっとしてほしくって手をのばす。パパがぼくの手をたたく。
なんで?
なんで?
ぼく、なにかわるいことしたの?
ママがドアでさけぶ。こわい男たちが家に入ってくる。ぼくの作ったごはん、なんどもふまれちゃった。もうたべられないよ。
ごめんね。
ごめんね、パパ、ママ。
いい子にするから。ごめんなさい。
きらいにならないで。
ゆるして。
ごめんなさい。
きらいに、ならないで。
いうこときくから、きらいにならないで。
おねがい……きらいにならないで!
◇◇◇◇
「お前がインカだって? マジでまだガキだなぁ」
俺と同じ気持ち悪い赤い瞳の奴等が笑う。
もう何年も一人で旅してきているのに何も変わらない。もうそこまで幼くないのに相変わらず同じ反応をされる。どいつもこいつも俺と一発やりたいか俺を利用したいだけだ。気が休まらねぇ。俺の価値はその二つしかないのかよ。
「もうほっといてくれ!」
男達が笑う。また笑う。
俺に触れてくる。俺を押さえ付けてくる。
蹴られる。
また押さえ付けられる。舐められる。
気持ち悪ぃ。
どいつもこいつも、魔導師なんか嫌いだ。
見て見ぬ振りの街の人達も嫌いだ。
吐き気がするぐらい嫌なのに、他人の熱に反応するこの身体も嫌いだ。
皆嫌いだ。
俺はなんでこんなのに生まれたんだ?
俺が何したって言うんだ。
全員、消えろ。
「神が宣う紫雷の如しその吐息在らん事を」
地面を放電が走る。
「神が宣う業火の如しその怒り在らん事を」
体が浮く。
火球が飛び交う。
悲鳴がする。
精力尽きた体が、俺の命が、赤く放電し始める。赤い電気が身体を包み、バチバチと火花が激しく飛び散る。
「神が宣う業火の如しその怒り在らん事を」
死ね。皆、死ね。魔導師なんか嫌いだ。人間なんか嫌いだ。
「止めろ、インカ! お前、本当に死ぬぞ! インカ!」
ローガンの焦った声がする。また駆けつけてきたのか。こいつも子守が嫌だったのに押し付けられて迷惑だったよな。
羽交い締めにされる。
「神が宣う業火の如しその怒り在らん事を」
それでも術式を止めない。
後ろから殴られる。
目を閉じても開けても真っ暗だ。
全部憎い。
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