離婚と追放された悪役令嬢ですが、前世の農業知識で辺境の村を大改革！気づいた元夫が後悔の涙を流しても、隣国の王子様と幸せになります

番外編3「王家の小さな太陽たち」

　ベルガリア王宮には、二つの小さな太陽がいる。リセラとアレクサンダーの間に生まれた、アルフレッド王子と、リリアーナ王女だ。
　兄のアルフレッドは、父アレクサンダー譲りの金髪と、母リセラ譲りの探究心を持っていた。幼い頃から、母に連れられて畑に行くのが大好きで、植物の生態や土壌の仕組みに強い興味を示した。将来の夢は「世界一のトマトを作ること」。その夢を、リセラとアレクサンダーは微笑ましく見守っている。

　妹のリリアーナは、母譲りの黒髪と、父譲りの穏やかで人を惹きつける魅力を持っていた。彼女は植物よりも、人と話すのが大好き。王宮に出入りする様々な国の使者たちに物怖じせずに話しかけ、その愛くるしさで、皆を笑顔にしてしまう天才だった。彼女がいるだけで、どんなに堅苦しい外交の場も、和やかな雰囲気に包まれた。

　ある日、二人はこっそり王宮を抜け出して、城下町へ探検に出かけた。お忍びのつもりだったが、すぐに民衆に見つかってしまう。しかし、民衆は二人を咎めるどころか、温かく迎え入れた。

「これは王子様と王女様のために作った、とっておきのパンですよ」
「どうぞ、うちの畑で採れた一番甘いリンゴです」

　行く先々で、人々は二人にたくさんの贈り物をしてくれた。それは、彼らの両親であるリセラとアレクサンダーが、いかに民から愛されているかの証だった。
　アルフレッドとリリアーナは、国民の優しさに触れ、自分たちがこの国を、そして民を愛しているのだと、改めて実感する。
　探検から帰った二人は、父と母に報告した。

「父上、母上！　僕、決めました！　もっともっと美味しい野菜を作って、皆を笑顔にします！」
「リリも、皆とお話して、ベルガリアを、もっともっと素敵な国にするお手伝いをしますわ！」

　二人の子供たちの力強い言葉に、リセラとアレクサンダーは顔を見合わせ、幸せそうに微笑んだ。
　王家の未来は、この小さな太陽たちが、明るく照らしてくれるだろう。二人の子育て奮闘記は、この国の未来そのものを育む、愛に満ちた物語なのだった。