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番外編3「王女様のキッチン大作戦」
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農業公爵となったアースの功績と、彼が生み出す作物の素晴らしさは、今や王国中に知れ渡っていた。しかし、アースの婚約者となった王女セレスティアは、まだ満足していなかった。
(アースさんの野菜や果物の魅力は、こんなものじゃありません! もっと多くの人に、特に、まだその価値を認めようとしない保守的な大貴族たちに、この素晴らしさを知らしめなければ!)
そう考えた彼女は、王宮の厨房を使い、各国の来賓や国内の有力貴族を招いた、大規模な新作料理の発表会を開くことを計画した。アース農園の作物をふんだんに使った、フルコースディナー。それを、自分自身の手で作り、振る舞うというのだ。
しかし、彼女には一つ、大きな問題があった。
セレスティアは、王女として生まれ育ったため、料理の経験がほとんど無かったのである。
「ええと、まずジャガイモの皮をむいて……きゃっ!」
ピーラーを握ったセレスティアは、いきなり自分の指を切りそうになり、悲鳴を上げた。隣では、教育係として呼ばれたリリアが、心配そうに眉を寄せている。
「セレスティア様、お怪我はありませんか? やはり、料理は私たちが……」
「いいえ、自分でやることに意味があるのです! これは、未来の農業公爵夫人としての、最初の務めなのですから!」
セレスティアはやる気だけは十分だったが、現実は厳しい。小麦粉をこねれば、顔まで真っ白になり、卵を割れば、殻がボウルの中に入ってしまう。広大な王宮のキッチンは、あっという間に彼女の奮闘の痕跡で、めちゃくちゃになっていった。
そんな彼女を見かねて、アースや、様子を見に来たフェンとリゼも、助っ人として参加することになった。
「王女様、マヨネーズ作りは、油を少しずつ、根気よく混ぜていくのがコツですよ」
アースの丁寧な指導のもと、セレスティアは初めてのマヨネーズ作りに挑戦する。最初は分離してしまったが、二度、三度と挑戦するうちに、だんだんと白くクリーミーな、美しいマヨネーズが出来上がっていった。
「できました! アースさん、私、マヨネーズが作れましたわ!」
小さな成功に、セレスティアは子供のようにはしゃいだ。
一方、フェンとリゼは、肉料理の下ごしらえを担当していた。
「こっちの肉は、筋切りはこれでいいか?」
「……姉さん、もう少し細かく。アースなら、そうする」
姉妹は、アースの料理を毎日食べているだけあって、その手順やコツを驚くほど正確に覚えていた。二人の手にかかれば、硬い肉も驚くほど柔らかく、美味しくなる。
慣れない作業に失敗を繰り返し、時にはキッチンを粉まみれやクリームまみれにしながらも、セレスティアはとても楽しそうだった。王宮での公務では決して見せることのない、無邪気な笑顔がそこにはあった。アースや仲間たちと一緒に、一つの目標に向かって何かを作り上げるという経験が、彼女にとって新鮮で、かけがえのない時間となっていたのだ。
そして、発表会当日。
豪華絢爛な王宮の晩餐会場には、国王陛下をはじめ、各国の来賓、そして疑わしげな顔をした大貴族たちがずらりと並んでいた。
「王女様が、直々に料理を? 一体、どんなお考えなのだ」
「どうせ、料理長に作らせたものを、自分が出すだけだろう」
そんな、やっかみ半分の声が聞こえる中、セレスティアは、少し緊張した面持ちで、しかし胸を張って、最初の料理を運び入れた。
「皆様、本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます。今宵の料理は、全て我が婚約者、アースが育てた作物を使っております。まずは前菜、『アース農園の宝石サラダ』でございます」
皿の上に盛られていたのは、色とりどりの野菜。瑞々しいトマト、シャキシャキのレタス、甘いパプリカ。そして、それらをまとめるのは、セレスティアが作った特製のマヨネーズと、野菜ベースのドレッシングだった。
一口食べた貴族たちは、その表情を驚きに変えた。
「な、なんだこの野菜の味の濃さは……!」
「この白いソース……卵と油だけで、これほどまでに奥深い味わいが出せるとは……!」
前菜だけで、会場の雰囲気は一変した。
続くスープは、トウモロコシの冷製ポタージュ。メインディッシュは、フェンとリゼが下ごしらえをしたクリムゾンボアのステーキに、ケチャップとソースを合わせた特製デミグラスソースが添えられている。パンは、アース農園の小麦で作った焼きたての白パン。
どれもが、これまで宮廷で出されてきた、凝ってはいるが素材の味を殺してしまっているような料理とは、一線を画すものだった。素材そのものが持つ、圧倒的な生命力と美味さ。それを最大限に引き出す、シンプルながらも計算され尽くした調理法。
貴族たちは、食べることに夢中になり、当初の疑念などすっかり忘れていた。
そして、デザート。
運ばれてきたのは、真っ白なクリームと、真っ赤なイチゴで飾られた、美しいショートケーキだった。
「皆様、これが最後の料理です。私が、心を込めて作りました」
セレスティアの言葉に、会場がざわめく。これほどまでの完成度のケーキを、本当に王女が?
だが、一口食べた瞬間、その疑念は完全に吹き飛んだ。
フワフワのスポンジ、上品な甘さの生クリーム、そして甘酸っぱいイチゴが、口の中で完璧なハーモニーを奏でる。それは、誰もが今まで食べたことのない、至福の味わいだった。
晩餐会は、大絶賛のうちに幕を閉じた。
国王は、娘の成長と、アースの作物の素晴らしさに、満面の笑みを浮かべた。最後まで懐疑的だった保守的な大貴族たちも、その胃袋を完全に掴まれ、アースの農業政策を認めざるを得なくなった。
「アース農園スペシャルフルコース」は、伝説の晩餐会として、後世まで語り継がれることになる。
国の食糧事情を改善しただけでなく、新たな食文化という、人々の生活を豊かにする宝物まで生み出したアースとセレスティア。二人の功績は、王国の歴史に、燦然と輝く一ページとして刻まれたのだった。
キッチンの片隅で、セレスティアはアースにそっと寄り添った。
「アースさん、ありがとうございました。あなたと、みんなのおかげです」
「いや、頑張ったのは王女様ですよ。最高のディナーでした」
アースが優しく微笑むと、セレスティアは満足そうに目を細めた。彼女のキッチン大作戦は、大成功に終わったのだ。
(アースさんの野菜や果物の魅力は、こんなものじゃありません! もっと多くの人に、特に、まだその価値を認めようとしない保守的な大貴族たちに、この素晴らしさを知らしめなければ!)
そう考えた彼女は、王宮の厨房を使い、各国の来賓や国内の有力貴族を招いた、大規模な新作料理の発表会を開くことを計画した。アース農園の作物をふんだんに使った、フルコースディナー。それを、自分自身の手で作り、振る舞うというのだ。
しかし、彼女には一つ、大きな問題があった。
セレスティアは、王女として生まれ育ったため、料理の経験がほとんど無かったのである。
「ええと、まずジャガイモの皮をむいて……きゃっ!」
ピーラーを握ったセレスティアは、いきなり自分の指を切りそうになり、悲鳴を上げた。隣では、教育係として呼ばれたリリアが、心配そうに眉を寄せている。
「セレスティア様、お怪我はありませんか? やはり、料理は私たちが……」
「いいえ、自分でやることに意味があるのです! これは、未来の農業公爵夫人としての、最初の務めなのですから!」
セレスティアはやる気だけは十分だったが、現実は厳しい。小麦粉をこねれば、顔まで真っ白になり、卵を割れば、殻がボウルの中に入ってしまう。広大な王宮のキッチンは、あっという間に彼女の奮闘の痕跡で、めちゃくちゃになっていった。
そんな彼女を見かねて、アースや、様子を見に来たフェンとリゼも、助っ人として参加することになった。
「王女様、マヨネーズ作りは、油を少しずつ、根気よく混ぜていくのがコツですよ」
アースの丁寧な指導のもと、セレスティアは初めてのマヨネーズ作りに挑戦する。最初は分離してしまったが、二度、三度と挑戦するうちに、だんだんと白くクリーミーな、美しいマヨネーズが出来上がっていった。
「できました! アースさん、私、マヨネーズが作れましたわ!」
小さな成功に、セレスティアは子供のようにはしゃいだ。
一方、フェンとリゼは、肉料理の下ごしらえを担当していた。
「こっちの肉は、筋切りはこれでいいか?」
「……姉さん、もう少し細かく。アースなら、そうする」
姉妹は、アースの料理を毎日食べているだけあって、その手順やコツを驚くほど正確に覚えていた。二人の手にかかれば、硬い肉も驚くほど柔らかく、美味しくなる。
慣れない作業に失敗を繰り返し、時にはキッチンを粉まみれやクリームまみれにしながらも、セレスティアはとても楽しそうだった。王宮での公務では決して見せることのない、無邪気な笑顔がそこにはあった。アースや仲間たちと一緒に、一つの目標に向かって何かを作り上げるという経験が、彼女にとって新鮮で、かけがえのない時間となっていたのだ。
そして、発表会当日。
豪華絢爛な王宮の晩餐会場には、国王陛下をはじめ、各国の来賓、そして疑わしげな顔をした大貴族たちがずらりと並んでいた。
「王女様が、直々に料理を? 一体、どんなお考えなのだ」
「どうせ、料理長に作らせたものを、自分が出すだけだろう」
そんな、やっかみ半分の声が聞こえる中、セレスティアは、少し緊張した面持ちで、しかし胸を張って、最初の料理を運び入れた。
「皆様、本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます。今宵の料理は、全て我が婚約者、アースが育てた作物を使っております。まずは前菜、『アース農園の宝石サラダ』でございます」
皿の上に盛られていたのは、色とりどりの野菜。瑞々しいトマト、シャキシャキのレタス、甘いパプリカ。そして、それらをまとめるのは、セレスティアが作った特製のマヨネーズと、野菜ベースのドレッシングだった。
一口食べた貴族たちは、その表情を驚きに変えた。
「な、なんだこの野菜の味の濃さは……!」
「この白いソース……卵と油だけで、これほどまでに奥深い味わいが出せるとは……!」
前菜だけで、会場の雰囲気は一変した。
続くスープは、トウモロコシの冷製ポタージュ。メインディッシュは、フェンとリゼが下ごしらえをしたクリムゾンボアのステーキに、ケチャップとソースを合わせた特製デミグラスソースが添えられている。パンは、アース農園の小麦で作った焼きたての白パン。
どれもが、これまで宮廷で出されてきた、凝ってはいるが素材の味を殺してしまっているような料理とは、一線を画すものだった。素材そのものが持つ、圧倒的な生命力と美味さ。それを最大限に引き出す、シンプルながらも計算され尽くした調理法。
貴族たちは、食べることに夢中になり、当初の疑念などすっかり忘れていた。
そして、デザート。
運ばれてきたのは、真っ白なクリームと、真っ赤なイチゴで飾られた、美しいショートケーキだった。
「皆様、これが最後の料理です。私が、心を込めて作りました」
セレスティアの言葉に、会場がざわめく。これほどまでの完成度のケーキを、本当に王女が?
だが、一口食べた瞬間、その疑念は完全に吹き飛んだ。
フワフワのスポンジ、上品な甘さの生クリーム、そして甘酸っぱいイチゴが、口の中で完璧なハーモニーを奏でる。それは、誰もが今まで食べたことのない、至福の味わいだった。
晩餐会は、大絶賛のうちに幕を閉じた。
国王は、娘の成長と、アースの作物の素晴らしさに、満面の笑みを浮かべた。最後まで懐疑的だった保守的な大貴族たちも、その胃袋を完全に掴まれ、アースの農業政策を認めざるを得なくなった。
「アース農園スペシャルフルコース」は、伝説の晩餐会として、後世まで語り継がれることになる。
国の食糧事情を改善しただけでなく、新たな食文化という、人々の生活を豊かにする宝物まで生み出したアースとセレスティア。二人の功績は、王国の歴史に、燦然と輝く一ページとして刻まれたのだった。
キッチンの片隅で、セレスティアはアースにそっと寄り添った。
「アースさん、ありがとうございました。あなたと、みんなのおかげです」
「いや、頑張ったのは王女様ですよ。最高のディナーでした」
アースが優しく微笑むと、セレスティアは満足そうに目を細めた。彼女のキッチン大作戦は、大成功に終わったのだ。
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