17 / 17
17
しおりを挟む
僕が会話の中で「専門書は図書室で借りたほうがいい」というのをきちんと覚えていてくれたのかと思えば、驚くほど先輩に対する好感が上がる。
頭の回転が早いのか、筑波先輩とのやりとりはあまりに会話のテンポが早いため、内容も考えずにノリで適当に会話しているのかと思っていたが、違うらしい。
にやにやしているのもおかしいので、いつも通りな顔を心がけるが、どうにもわずかに口角が上がってしまっている気がする。
にちゃにちゃ笑って気味悪いと思われてないだろうかと筑波先輩の顔を窺い見ると、慈しむような優しい顔をしてこちらを見ている。
陽キャのまばゆさに驚いてぎゃぁ!と奇声をあげそうになるのを唾液を飲みこんで堪える。くちびるをきゅ、と引き結ぶ。
先ほどまでのにやけはとっくに引いている。
筑波先輩はこちらの心臓が飛び上がっていることなどしるよしもなく、
「どれがいいかわからなかったからさぁ~、とりあえず初心者向けって書いてる本にしといた」
などと言い、1番上に積んであった本のタイトルを指差し、「初心者のための」という吹き出しがついている。
「てかこの本そんな分厚くないのにめちゃくちゃ重いんだよね。ここに置いて行ってもいいー?」
美術の本はカラーであることが多く、紙が上質で、小説などの書籍と比べて重いことが多々ある。
「借りた本をここに置きっぱなしにされるのは困ります。……せっかく借りたんですから読んでみたらいいじゃないですか」
先輩のあの大きなリュックならば多少の大型本も入るだろう。
学校の指定カバンはあるにはあるが特に強制ではないため、多くの生徒は各々好きな鞄を持って来ている。
僕はせっかく買ってもらったのだからと指定のボストンバックを使っている。
筑波先輩はバスケ部で色々持ってくるものでもあるのか、昨日大きめのリュックを背負っていたのを覚えていた。
「本、わかりやすいのがあるといいですね」
かきかたうんぬんの前に何を描くのか、何を描きたいのかをイメージするのがいいのではないかとも思ったが、余計なお世話だろうと口をつぐむ。
昨日の先輩の口ぶりからすればもうすでに描きたいものがある程度決まっているようだったし、大丈夫だろう。
「んー、ま、一応読んでみるわ。そんでもわかんなかったら、教えてね」
頭の回転が早いのか、筑波先輩とのやりとりはあまりに会話のテンポが早いため、内容も考えずにノリで適当に会話しているのかと思っていたが、違うらしい。
にやにやしているのもおかしいので、いつも通りな顔を心がけるが、どうにもわずかに口角が上がってしまっている気がする。
にちゃにちゃ笑って気味悪いと思われてないだろうかと筑波先輩の顔を窺い見ると、慈しむような優しい顔をしてこちらを見ている。
陽キャのまばゆさに驚いてぎゃぁ!と奇声をあげそうになるのを唾液を飲みこんで堪える。くちびるをきゅ、と引き結ぶ。
先ほどまでのにやけはとっくに引いている。
筑波先輩はこちらの心臓が飛び上がっていることなどしるよしもなく、
「どれがいいかわからなかったからさぁ~、とりあえず初心者向けって書いてる本にしといた」
などと言い、1番上に積んであった本のタイトルを指差し、「初心者のための」という吹き出しがついている。
「てかこの本そんな分厚くないのにめちゃくちゃ重いんだよね。ここに置いて行ってもいいー?」
美術の本はカラーであることが多く、紙が上質で、小説などの書籍と比べて重いことが多々ある。
「借りた本をここに置きっぱなしにされるのは困ります。……せっかく借りたんですから読んでみたらいいじゃないですか」
先輩のあの大きなリュックならば多少の大型本も入るだろう。
学校の指定カバンはあるにはあるが特に強制ではないため、多くの生徒は各々好きな鞄を持って来ている。
僕はせっかく買ってもらったのだからと指定のボストンバックを使っている。
筑波先輩はバスケ部で色々持ってくるものでもあるのか、昨日大きめのリュックを背負っていたのを覚えていた。
「本、わかりやすいのがあるといいですね」
かきかたうんぬんの前に何を描くのか、何を描きたいのかをイメージするのがいいのではないかとも思ったが、余計なお世話だろうと口をつぐむ。
昨日の先輩の口ぶりからすればもうすでに描きたいものがある程度決まっているようだったし、大丈夫だろう。
「んー、ま、一応読んでみるわ。そんでもわかんなかったら、教えてね」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
その首筋に確かな証を。
みふぃあ
BL
初投稿で、どうにも明るくはないお話になりました!
ざっくり言うとモブに襲われかける会計くん(蘇芳 誠)と、それに色々と思いを巡らせる書記くん(紫乃舞 海潮)…のような話です。唐突に始まって唐突に終わります。とてつもなく短い。雰囲気を味わっていただければ…(?)
【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
記憶の代償
槇村焔
BL
「あんたの乱れた姿がみたい」
ーダウト。
彼はとても、俺に似ている。だから、真実の言葉なんて口にできない。
そうわかっていたのに、俺は彼に抱かれてしまった。
だから、記憶がなくなったのは、その代償かもしれない。
昔書いていた記憶の代償の完結・リメイクバージョンです。
いつか完結させねばと思い、今回執筆しました。
こちらの作品は2020年BLOVEコンテストに応募した作品です
好きです、今も。
めある
BL
高校の卒業式に、部活の後輩・安達快(あだち かい)に告白した桐越新(きりごえ あらた)。しかし、新は快に振られてしまう。それから新は大学へ進学し、月日が流れても新は快への気持ちを忘れることが出来ないでいた。そんな最中、二人は大学で再会を果たすこととなる。
ちょっと切なめな甘々ラブストーリーです。ハッピーエンドです。
あなたのいちばんすきなひと
名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。
ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。
有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。
俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。
実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。
そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。
また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。
自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は――
隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる