【完結】俺の闇ごと愛して欲しい

pino

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2章 如月泉

17.初めての事だらけ

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 日曜日の昼過ぎに、静まり返る晃くんの部屋の廊下で抱き合う俺と晃くん。外の音が微かに聞こえるだけで、ここには俺と晃くんの二人だけなんだと思い知らされて緊張が増す。心臓の鼓動が速くて大きいのが分かる。こんなに緊張したのなんて何年振りだろう。高校入試の時以来かな……
 ふと嫌な記憶が過って目を閉じて晃くんの事だけを考える。結局俺は晃くんに家に帰りたくない本当の理由は言えなかった。思い出すだけでも震えが止まらなくなって、上手く喋れなくなるからだ。
 でももう恐れる必要はない。俺には晃くんがいる。
 初めて抱いたずっと側にいたいと思える愛おしい人が今目の前にいるんだから。

 俺は晃くんの顔が見えるように少し離れて、自慢の笑顔を向ける。緊張して上手く出来てるかは分からないけど、この笑顔を好きになってもらいたいから俺は頑張った。
 向き合って晃くんと目が合って緊張が増す。
 綺麗な猫目が少し潤んでいて吸い込まれそうになる。晃くんの全てが欲しい。心からそう思った。
 そして、俺は人生初めて使う言葉を晃くんに伝える。


「晃くん、俺と付き合ってください」

「きさら、ぎ……」


 俺の告白に困ったような顔をする晃くん。
 晃くんは自分でも言ってるけどノンケだ。男相手に告白なんかされた事なんてないんだろうな。そこが難しいところだったけど、今の晃くんなら行けると思うんだ。
 お願いだ晃くん。無理とかダメだとか言わないで!


「ごめん……俺、良く分からない」

「晃くんっ」


 ヤバい。失敗する。
 俺は焦って更に口説こうと考えると、晃くんが俺の両頬を両手で包んで言った。


「良く分からないけど、お前の事は好き。お前のいろんな顔が見てみたいと思うんだ。だから、友達からとかじゃダメか?」

「え……え!」


 こ、これはOKって事!?
 晃くんも俺を好きなのは間違いなかった。友達からって事は次もあるって事だよね?まだ正式には付き合えないけど、期待してもいいって事だよね?


「俺、男を好きになった事がないからまだ如月の事そういう目で見れるのか不安なんだよ。もし中途半端なまま付き合って傷付けなくないなって思うし」

「晃くん♡友達からお願いします♡」

「あ、いいの?良かった……はは、何かすげぇ緊張したな」


 もうすっかり普通に笑顔を見せてくれるようになった晃くんに俺は堪えきれずにキスをする。本当は今すぐにでも押し倒したい気持ちだったけど、嫌われたくないから何度もキスをして誤魔化した。
 晃くんは驚きながらも嫌がらないでいてくれてるけど、どう思ってるのかな?友達からって事はキスも良くないのかな?


「んっ……ちょ如月」

「まだ友達だけど、キスはしてもいい?ぎゅーは?」

「……いいよ。でも二人の時だけな」

「やったぁ♡晃くん大好きー♡」

「……はずっ」


 嬉し過ぎて思い切り抱き締めてやった。
 晃くんは恥ずかしそうに俺の肩に顔を押し付けてるけど、そんな姿も愛おしく感じる。

 誰かと両想いになる事がこんなにも嬉しい事だなんて。今まで俺は人に嫌われたくない一心で笑顔を絶やさずにいたけど、今はそんなのはどうでもいい。晃くんに好かれる為なら周りに何と思われようが平気な気がした。
 これからは晃くんの好みに近付けるように頑張ろう。なるべく晃くんの言う事を聞いて、早く付き合えるようにするんだ。
 晃くんて普通に友達多いし、この見た目だしモテるだろうから誰かに取られる前に何としても手に入れなくちゃ!何より晃くんはノンケだから女子もライバルだ。流石にやっぱり女が良いとか言われたら勝ち目ないもんな~。晃くんがそんな事を言い出したら性転換手術も視野に入れよう!

 初めて出来た心から手放したくないと思える人に出会えて俺は嬉しくてワクワクが止まらなかった。

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