19 / 65
2章 如月泉
18.嬉しい事がいっぱい
しおりを挟む俺と晃くんは予定通り映画を観に再び街へ繰り出していた。ちょうど一番上映時間が近い物を選んだら恋愛物になった。他に客は少なく、あまり人気がないのかなと思った。
内容はそれなりで、結構ありがちなストーリーだなと感じた。途中で晃くんをチラッと見ると、意外と集中していてその横顔にドキッとしてしまった。あー、イチャイチャしたーい♡
映画の後半になると、キスシーンがチラホラ出てるんだけど、俺はそれを見て心底羨ましく思っていた。本当なら晃くんと家に引き篭もって抱き合いながらキスしてたかったよ。でもそんな事したら絶対押し倒しちゃうからワザと外出て来たんだよ。ここでこんな挑発をされるとは……
俺はさり気なく肘置きに置かれた晃くんの手に自分の手を添えてギュッと握ってみる。それに気付いた晃くんがこちらを見たから俺はニッコリ笑った。すると晃くんは恥ずかしそうにした後、俺の手を握り返した。
嬉し過ぎる!!
てか可愛い過ぎるよぉ♡
あんなに俺に対して冷たかった晃くんが少しずつだけど嫌がらずに受け入れてくれてるなんて~♡
胸の辺りがくすぐったくて、楽しい気持ち。
幸せってこう言う事を言うのかな。
映画が終わった後、夕飯を食べて帰る事になった。てか今日は晃くんちには泊まれないんだよな……いつもはダメって言われても待ち伏せしたりいきなり押し掛けたりして来たけど、今はそんな嫌われるような事はしたくないからちゃんと守らないと。少し寂しい気持ちだったけど、晃くんと付き合う為に我慢だ。
「晃くん、何食べたい?」
「そうだな……今如月が食べたいのって何?」
「晃くんの食べたいのでいいよ♪」
「いつも俺の好きなのばっかじゃん。如月の好みも教えろよ」
少し拗ねたように言う晃くん。
もしかして俺の好みを知ろうとしてくれてるのかな?
いつもはコンビニばかりで、一回外で食べた事があるけど、晃くんは居酒屋さんとかいろいろな物が食べられるお店が好きみたい。だからこうして二人でちゃんと外で食べるのは初めてだったりもするんだ。
それなら晃くんの要望通り俺の好みを知ってもらおうかな。
「俺はね、イタリアンが好き。パスタとか好きかな」
「よし♪じゃあパスタ食べよう♪あ、今日は俺に出させろよ?一応デートだからな。俺にもかっこつけさせてくれ」
「えー!晃くんがご馳走してくれるの?いいの?」
「いいよ。今日は特別な♪」
うわぁ、晃くんがデートって言ってくれたぁ♪恋人には奢りたいタイプなのかな?
今日の晃くんは嬉しい事をいっぱい言ってくれるから、俺はそれだけでお腹いっぱいな気分になれた。
お店で夕飯を食べて、そろそろ帰るかと言う頃、俺は今日の宿の事を考えていた。晃くんに提案されたのは友達の悠真と竜樹のアパートに泊まる事だけど、実はまだ連絡してない。
悠真は大丈夫だったとしても竜樹がなぁ。明日学校だし、急過ぎて怒られる可能性大だ。
だから仕方ないから今日は大人しく家に帰ろうと思っていた。本当は帰りたくないけど……
晃くんは宣言通りにちゃんとご馳走してくれた。初めて晃くんに奢ってもらっちゃった♪今日はいろいろな記念日になりそうだ♪
「なぁ、お前今日どうすんの?」
「んー、家に帰ろうと思ってるよ。もういろんな人の家をフラフラするのは辞めるよ」
「そうか」
俺がそう言うと、晃くんはホッとしたような笑顔になった。やっぱり家に帰って欲しかったのかな。そうだよね。晃くんは前から言ってるもんね。
「でも家には帰りたくない理由があるんだろ?それは大丈夫なのか?」
「分からない。運が良ければ大丈夫だと思う」
「親にはちゃんと話すから、如月が平気ならお前と住めるように説得してみるよ」
な、な、何ですと!?
晃くん今なんと!?
凄く大事な事言ったよね今!!
「晃くんっ!それって!」
「俺達もルームシェアってやつしてみるか」
思わず立ち止まって晃くんを覗き込んで確認しようとすると、ニッと笑ってとても嬉しい事を言ってくれた。
まさか晃くんと一緒に暮らせる事になるなんて!
「いいの!?俺と一緒に住んでくれるの!?」
「うん。あ、家賃光熱費とかは悠真んとこみたいに折半だぞ。その方が俺も助かる」
「全然払うよ♡俺も親に家出る事話してみるね♪」
「うん。ちゃんと話がまとまるまでは家に帰れるか?」
「晃くんと同棲出来るなら全然我慢出来る~♡」
「ど、同棲って言うなっ!まだな!」
恥ずかしそうに言う晃くん。一緒に暮らせるかもしれない事もだけど、晃くんがここまで俺の事を考えてくれてた事が嬉しかった。
俺が家を出る事に両親は反対はしないと思うんだ。問題は兄さんだ。俺が家を出る話をしたら兄さんがどう出るかそこが不安だった。
俺と兄さんの関係はまだ晃くんには言えてない。
いつかは話さなくちゃいけないのかも知れないけど、もしその事を話して晃くんに嫌われたらと思うとそのままにしておきたくもなった。
話さなくてもいいかな?
無事家を出る事が出来たら話す必要もないかもな。
7
あなたにおすすめの小説
優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―
無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」
卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。
一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。
選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。
本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。
愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。
※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。
※本作は織理受けのハーレム形式です。
※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
僕の恋人は、超イケメン!!
刃
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました
あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」
穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン
攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?
攻め:深海霧矢
受け:清水奏
前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。
ハピエンです。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
自己判断で消しますので、悪しからず。
王様のナミダ
白雨あめ
BL
全寮制男子高校、箱夢学園。 そこで風紀副委員長を努める桜庭篠は、ある夜久しぶりの夢をみた。
端正に整った顔を歪め、大粒の涙を流す綺麗な男。俺様生徒会長が泣いていたのだ。
驚くまもなく、学園に転入してくる王道転校生。彼のはた迷惑な行動から、俺様会長と風紀副委員長の距離は近づいていく。
※会長受けです。
駄文でも大丈夫と言ってくれる方、楽しんでいただけたら嬉しいです。
王弟の恋
結衣可
BL
「狼の護衛騎士は、今日も心配が尽きない」のスピンオフ・ストーリー。
戦時中、アルデンティア王国の王弟レイヴィスは、王直属の黒衣の騎士リアンと共にただ戦の夜に寄り添うことで孤独を癒やしていたが、一度だけ一線を越えてしまう。
しかし、戦が終わり、レイヴィスは国境の共生都市ルーヴェンの領主に任じられる。リアンとはそれきり疎遠になり、外交と再建に明け暮れる日々の中で、彼を思い出すことも減っていった。
そして、3年後――王の密命を帯びて、リアンがルーヴェンを訪れる。
再会の夜、レイヴィスは封じていた想いを揺さぶられ、リアンもまた「任務と心」の狭間で揺れていた。
――立場に縛られた二人の恋の行方は・・・
染まらない花
煙々茸
BL
――六年前、突然兄弟が増えた。
その中で、四歳年上のあなたに恋をした。
戸籍上では兄だったとしても、
俺の中では赤の他人で、
好きになった人。
かわいくて、綺麗で、優しくて、
その辺にいる女より魅力的に映る。
どんなにライバルがいても、
あなたが他の色に染まることはない。
【完結】アイドルは親友への片思いを卒業し、イケメン俳優に溺愛され本当の笑顔になる <TOMARIGIシリーズ>
はなたろう
BL
TOMARIGIシリーズ②
人気アイドル、片倉理久は、同じグループの伊勢に片思いしている。高校生の頃に事務所に入所してからずっと、2人で切磋琢磨し念願のデビュー。苦楽を共にしたが、いつしか友情以上になっていった。
そんな伊勢は、マネージャーの湊とラブラブで、幸せを喜んであげたいが複雑で苦しい毎日。
そんなとき、俳優の桐生が現れる。飄々とした桐生の存在に戸惑いながらも、片倉は次第に彼の魅力に引き寄せられていく。
友情と恋心の狭間で揺れる心――片倉は新しい関係に踏み出せるのか。
人気アイドル<TOMARIGI>シリーズ新章、開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる