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3章 河井晃
32.調子が狂う
しおりを挟む「泉は相変わらず人気者だな~って晃さん?酷い顔してますよ?」
「ちょっと行って来る」
呑気な事を言ってる悠真に指摘されたけど、俺は構わずにそのまま友人達と戯れ合う如月の元へ急ぎ足で向かう。
そんな俺に気付いた如月はパァッと笑顔をより輝かせて見て来た。
「晃くんだ~♡」
「晃くんだ~じゃねぇよ。何してんのお前」
「え?」
俺の態度にキョトンとする如月。そして周りにいた奴らも同じような反応をした。
如月に抱き付いていた男を軽く睨むと、サササッと離れて行った。
「てかそこ邪魔だから。食堂の入り口で騒いでんじゃねぇよ」
「何?河井ってば何で怒ってんの?」
「えー、機嫌悪くね?」
コソコソ話してる奴らを睨んで黙らせてから俺は一人で食堂へ入る。そして後悔。
あちゃー、絶対今の俺普通じゃなかっただろー!
如月が他の男といちゃついてるの見てあんな態度取るなんて、みんな変に思うじゃん!
もう如月の顔も見れないと思って食券売り場に並ぶと、後を追って来た如月に腕を引かれた。
「晃くん!どうしたの!?俺、何かしちゃった?」
「……いや、さっきのは気にすんなよ」
「気にするよ!晃くんが嫌だと思う事したなら謝るから教えて?」
「如月……」
何て良い奴なんだ!それなのに俺は如月が他の男とイチャイチャしてたからってあんな風に冷たくするなんて!
一応謝っておくか?
「謝るのは俺の方だろ。友達と楽しくしてたのに壊すような事言ってごめんな」
「ううん。迷惑だったのは俺らだし、ね、仲直りしよ?俺、晃くんと仲良くしたい」
「うん。如月が許してくれるなら」
「晃くん♡」
俺と如月が仲良く食券を買う為に並んでると、後から来た悠真が間に入って来た。
その顔はニヤニヤ笑っていた。
「ちょっと二人共~、何よその甘~い雰囲気♪」
「あ、悠真だ」
「いつもの晃なら泉に対してもっと冷たいんじゃにゃい?こりゃやっぱり何かあったかにゃ?」
「変な詮索すんな」
「悠真、晃くんはツンデレなんだよ♪」
「そのフォロー嫌だからやめろって」
「晃が照れてる~♪変なの~♪」
如月に対しての態度がいつもと違うからか、悠真は察したように楽しそうに笑っていた。
あー調子狂うな。如月とは仲良くしたいけど、周りには変に思われるし、かと言ってまだ付き合ってないしどうしたらいいんだ。
楽しそうな二人に対して俺だけモヤモヤしたまま食べたい物を買って三人で空いてるテーブルに座って食べ始める。
その間も俺は如月と関係をどう発展させようか考えていた。
この場合だと、お互い両想いなんだから後は俺が交際を申し込んで正式に恋人同士になるべきだ。
さて、どのタイミングでどのようにして伝えるべきか……
考えただけでも緊張するな。
「晃くん、俺ねバイトを始めようと思ってるんだ」
「お、そうなの?どこで?」
「少し離れてるんだけど、スーパーの裏方♪電話したら今日面接してくれる事になったの♪」
「お前がスーパー!?もっとなかったのかよ?お前ならお洒落なカフェとかいけるだろ」
しかも裏方だと?レジ打ちが苦手なのか?その性格で接客が苦手って事はないだろうし、意外過ぎて驚いてしまった。
如月はニコニコ笑顔のまま「やってみたかったのー」と言った。
ボケーッと聞いていた悠真が如月に質問をしていた。
「でも何でいきなりバイトしようと思ったの?泉はしないと思ってたのに……」
まるで味方が減ったとでも言うように元気なく聞いていた。
バイトを始めようとする理由は俺には何となく分かるけど、俺達の事を知らない人からしたら不思議だろう。如月は金に困ってる気配がないからだ。
「それは~♡今は秘密だよね~♡晃くん~♡」
「っ!!」
「晃が関係あるのー?」
如月は嬉しそうに俺を見ながら答えた。そんな言い方したら変に思うだろうが。
仕方ないから俺は悠真に如月とルームシェアをする事を話す事にした。
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