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第13話 第三者視点 精霊王の祠 その3
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1000年前の『星の乙女』はもしかして...
「そのミコトさんは私に似てるんですか?」
「いや、姿形ではなく、纏う雰囲気というか、魂が似ているのかも知れんな」
何となくだがミナには確信めいたものがあった。
「ミコトさんのフルネームはなんでした?」
「あぁ、確か「ミコト・ヤマシタ」じゃったかな」
やっぱり! バリバリ日本人じゃん! ミナは確信した。しかも自分と違って転生者じゃなく転移者だったようだ。ということはもしかして...
「黒髪に黒目でした?」
「その通りじゃ。良く分かったの」
「変な言葉が口癖だったりしました?」
「驚いたな。なぜ知っておるのじゃ? 確かに良く『フラグが』『好感度が』『攻略対象が』とか、訳の分からんことを言っておったな。お主、何か心当たりでもあるのか?」
「え、えぇ、何となく...それとミコトさんに協力者は居ました?」
「あぁ、当時のこの国の王子を含めて何人かおったな。守護騎士と呼ばれておった」
あぁ、やっぱりね...1000年前の戦いは恐らくゲームの続編なんだろうなとミナは思った。さしづめ『セイレン2』と言った所か。あのゲーム、続編が出る程人気だったかどうか前世のミナは覚えてない。少なくとも生前に続編が出るという話も聞かなかった。
だが没後に人気が出た可能性はあるし、何よりゲーム本編の前日譚が続編として作られるという展開は世にありふれている。設定やキャラの顔触れ含めてまず間違いなさそうだ。
時系列的に1000年ものタイムラグがあるのもゲーム補正という所なんだろう。そもそもこっちの世界とあっちの世界の時間軸とに差があるんだろうし。
ミコトが転移者でヒロインということは、もうそろそろ編入して来るだろう『アリシア・スピアーズ』も転移者? いや、名前からして違う。では自分と同じ転生者ということだろうか?
ミナが思考の海に沈んでいると、
「どうやらお主のお迎えが来たようじゃな」
「えっ? お迎え?」
「あぁ、四人の人間がこちらに向かっておる」
殿下達だろうか? でもどうやってここに? ここは確か...
「あの、ここは煉獄っていう場所じゃないんですか?」
「いや? ここは儂の祠がある場所の地下じゃよ?」
どうやらプルートーに騙されたらしい...
「ただし、ここに辿り着くまでには試練を乗り越えなくてはならんがな」
「えっ? 試練?」
「うむ、地下10階までのダンジョンになっておるんじゃよ。そしてここが最下層じゃ」
殿下達、大丈夫かな...ミナは不安になってきた。
「あの...私の方から合流しに行った方がいいでしょうか?」
ダンジョンは怖いが、精霊王の加護を貰えた自分なら何とかなるんじゃないかとミナは思った。
「まぁ待て。お主の守護騎士たる者、これくらいの試練を突破出来んでどうする」
「えっ? 今なんて?」
ミナは聞き間違えだと思った。
「お主を助けようとして、ここまで来ようとしておるんじゃろ? だったらミコトの時と同じようにお主の守護騎士と言えるじゃろう?」
「待って下さいっ! 私は『星の乙女』じゃありませんよ?」
そう、自分はヒロインではないはずだ。
「そのようじゃの。だがそれがどうかしたのか?」
「どうかしたのかって...精霊王様が完全に復活するには『星の乙女』の力が必要なんじゃ?」
「いや? 儂の復活に『星の乙女』は関係無いぞ?」
「へ? で、でも闇の精霊を倒すには『星の乙女』の『星力』が必要なんですよね?」
「いや?『星力』とは儂の居る場所へ導く為の謂わば道標のようなもので、戦う力では無いぞ?」
ミナの頭は混乱してきた。
「そ、それじゃどうやって『星の乙女』は精霊王様と共に戦えたんですか?」
「確かミコトは『チート』とか言っておったな。ミコト本人もその守護騎士達も皆強かったぞ?」
あぁ、そう言えば王子ルートは脳筋ヒロインだったっけ...ミナはゲームの設定を思い出していた。
「とにかく今は『星の乙女』云々より、闇の眷族に狙われておるお主を守る方が先決じゃ。儂の加護を与えたと言っても味方は多いに越したことはないじゃろう?」
「それはそうなんですが...」
ヒロインの立場って一体...ミナは言葉に詰まった。
「ちょうど今、最後の試練を戦ってる最中じゃ。お主はどんと構えておれば良い」
ダンジョンで最後の試練と言えばボス部屋だろう。ミナは四人の無事を祈る他なかった。
◇◇◇
ボス部屋は巨大な地下空洞だった。天井や四方の壁が淡い光を発していて、奥まで見渡せる。奥行き50mはあるだろうか。幅も同じくらいある。高さは30mといったところだろうか。その中心に鎮座しているのは...
アルベルトの檄が飛ぶ。
「来るぞっ! 散らばるなっ! 一ヶ所に固まれっ!」
ボスモンスターは巨大な樹木型の魔獣『トレント』だった。優に10mを越える樹高、地面を触手のように這い回る無数の太い根、ムチのように撓る太い枝、舞い散る木の葉、太い幹の中心は鋭い牙の生えた口が大きく開いて獲物を待ち構えている。
根に絡まれれば、そのまま口に運ばれ補食されてしまう。枝の一撃を食らったら一発で命を落とす。葉に触れたら毒に侵される。非常に厄介な相手である。弱点は火に弱い所なので、
『ファイアウォール!』
シルベスターが火の壁を作り、防御に徹する。枝や根の攻撃はもとより、特に毒状態になる葉の攻撃を防ぐ為である。
『アイスジャベリン!』
『ウインドスピア!』
エリオットとシャロンがそれぞれ壁を潜り抜けて来た枝と根の攻撃を防ぐ。
アルベルトが本体への攻撃担当だが、ダンジョンをここまで攻略して来た全員の疲労は濃い。長期戦は厳しいだろう。だから一発で決める! その為に魔力を貯める。
シルベスターの顔に汗が浮かぶ。そろそろ限界が近い。エリオットとシャロンも同じような状況だ。攻撃を躱し切れず体に傷が増える。致命傷になるのも時間の問題だ。
まだか...まだアルベルトの魔力は貯まらないのか...
三人の集中が切れそうになる刹那、アルベルトの声が高らかに響く!
『ファイアーボンバーッ!!!』
巨大な火球が『トレント』の大きく開いた口に吸い込まれ...
次の瞬間、大爆発した! 『トレント』が四散しながら炎に包まれる!
あれだけ蠢いていた枝や根の動きが止まり、葉も全て地面に落ちた。
「ハァハァッ、やったな...」
「アルッ! 凄いわっ!」
「殿下、お見事ですっ!」
「やりましたね! 殿下っ!」
皆が口々ににアルベルトを讃える。
「お前達が攻撃を防いでくれたお陰だ。ありがとう」
するとボス部屋の中央に転移魔法陣が現れた。
「よし、行こう!」
アルベルトが爽やかに言った。
◇◇◇
「どうやら決着が着いたようじゃの」
「えっ?」
「お主の守護騎士が勝った」
いや、私のじゃないけど。ミナは抗議しようとして止めた。部屋の中央に魔法陣が浮かび上がって来たからだ。
次の瞬間、光に包まれた四人の姿が現れた。ミナの姿を確認した途端、
「「「「 ミナッ(さん)!!!! 」」」」
四人同時に抱き付かれたミナは呼吸が出来なくなった。タップして何とか離れて貰ったが、余程心配してくれたのだろう、シャロンとシルベスターの涙でグシャグシャになった顔を見た途端、ミナも堪えきれずに涙を流してまた抱き合った。
ひとしきりお互いの無事を確認し喜び合った後、お互いの現状を報告をしようとした矢先、頭上から声が響いた。
「落ち着いたかの?」
それを聞いて頭上を見上げた四人はその場で固まった。
ミナはどう説明すべきか頭を抱えるのだった。
「そのミコトさんは私に似てるんですか?」
「いや、姿形ではなく、纏う雰囲気というか、魂が似ているのかも知れんな」
何となくだがミナには確信めいたものがあった。
「ミコトさんのフルネームはなんでした?」
「あぁ、確か「ミコト・ヤマシタ」じゃったかな」
やっぱり! バリバリ日本人じゃん! ミナは確信した。しかも自分と違って転生者じゃなく転移者だったようだ。ということはもしかして...
「黒髪に黒目でした?」
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あぁ、やっぱりね...1000年前の戦いは恐らくゲームの続編なんだろうなとミナは思った。さしづめ『セイレン2』と言った所か。あのゲーム、続編が出る程人気だったかどうか前世のミナは覚えてない。少なくとも生前に続編が出るという話も聞かなかった。
だが没後に人気が出た可能性はあるし、何よりゲーム本編の前日譚が続編として作られるという展開は世にありふれている。設定やキャラの顔触れ含めてまず間違いなさそうだ。
時系列的に1000年ものタイムラグがあるのもゲーム補正という所なんだろう。そもそもこっちの世界とあっちの世界の時間軸とに差があるんだろうし。
ミコトが転移者でヒロインということは、もうそろそろ編入して来るだろう『アリシア・スピアーズ』も転移者? いや、名前からして違う。では自分と同じ転生者ということだろうか?
ミナが思考の海に沈んでいると、
「どうやらお主のお迎えが来たようじゃな」
「えっ? お迎え?」
「あぁ、四人の人間がこちらに向かっておる」
殿下達だろうか? でもどうやってここに? ここは確か...
「あの、ここは煉獄っていう場所じゃないんですか?」
「いや? ここは儂の祠がある場所の地下じゃよ?」
どうやらプルートーに騙されたらしい...
「ただし、ここに辿り着くまでには試練を乗り越えなくてはならんがな」
「えっ? 試練?」
「うむ、地下10階までのダンジョンになっておるんじゃよ。そしてここが最下層じゃ」
殿下達、大丈夫かな...ミナは不安になってきた。
「あの...私の方から合流しに行った方がいいでしょうか?」
ダンジョンは怖いが、精霊王の加護を貰えた自分なら何とかなるんじゃないかとミナは思った。
「まぁ待て。お主の守護騎士たる者、これくらいの試練を突破出来んでどうする」
「えっ? 今なんて?」
ミナは聞き間違えだと思った。
「お主を助けようとして、ここまで来ようとしておるんじゃろ? だったらミコトの時と同じようにお主の守護騎士と言えるじゃろう?」
「待って下さいっ! 私は『星の乙女』じゃありませんよ?」
そう、自分はヒロインではないはずだ。
「そのようじゃの。だがそれがどうかしたのか?」
「どうかしたのかって...精霊王様が完全に復活するには『星の乙女』の力が必要なんじゃ?」
「いや? 儂の復活に『星の乙女』は関係無いぞ?」
「へ? で、でも闇の精霊を倒すには『星の乙女』の『星力』が必要なんですよね?」
「いや?『星力』とは儂の居る場所へ導く為の謂わば道標のようなもので、戦う力では無いぞ?」
ミナの頭は混乱してきた。
「そ、それじゃどうやって『星の乙女』は精霊王様と共に戦えたんですか?」
「確かミコトは『チート』とか言っておったな。ミコト本人もその守護騎士達も皆強かったぞ?」
あぁ、そう言えば王子ルートは脳筋ヒロインだったっけ...ミナはゲームの設定を思い出していた。
「とにかく今は『星の乙女』云々より、闇の眷族に狙われておるお主を守る方が先決じゃ。儂の加護を与えたと言っても味方は多いに越したことはないじゃろう?」
「それはそうなんですが...」
ヒロインの立場って一体...ミナは言葉に詰まった。
「ちょうど今、最後の試練を戦ってる最中じゃ。お主はどんと構えておれば良い」
ダンジョンで最後の試練と言えばボス部屋だろう。ミナは四人の無事を祈る他なかった。
◇◇◇
ボス部屋は巨大な地下空洞だった。天井や四方の壁が淡い光を発していて、奥まで見渡せる。奥行き50mはあるだろうか。幅も同じくらいある。高さは30mといったところだろうか。その中心に鎮座しているのは...
アルベルトの檄が飛ぶ。
「来るぞっ! 散らばるなっ! 一ヶ所に固まれっ!」
ボスモンスターは巨大な樹木型の魔獣『トレント』だった。優に10mを越える樹高、地面を触手のように這い回る無数の太い根、ムチのように撓る太い枝、舞い散る木の葉、太い幹の中心は鋭い牙の生えた口が大きく開いて獲物を待ち構えている。
根に絡まれれば、そのまま口に運ばれ補食されてしまう。枝の一撃を食らったら一発で命を落とす。葉に触れたら毒に侵される。非常に厄介な相手である。弱点は火に弱い所なので、
『ファイアウォール!』
シルベスターが火の壁を作り、防御に徹する。枝や根の攻撃はもとより、特に毒状態になる葉の攻撃を防ぐ為である。
『アイスジャベリン!』
『ウインドスピア!』
エリオットとシャロンがそれぞれ壁を潜り抜けて来た枝と根の攻撃を防ぐ。
アルベルトが本体への攻撃担当だが、ダンジョンをここまで攻略して来た全員の疲労は濃い。長期戦は厳しいだろう。だから一発で決める! その為に魔力を貯める。
シルベスターの顔に汗が浮かぶ。そろそろ限界が近い。エリオットとシャロンも同じような状況だ。攻撃を躱し切れず体に傷が増える。致命傷になるのも時間の問題だ。
まだか...まだアルベルトの魔力は貯まらないのか...
三人の集中が切れそうになる刹那、アルベルトの声が高らかに響く!
『ファイアーボンバーッ!!!』
巨大な火球が『トレント』の大きく開いた口に吸い込まれ...
次の瞬間、大爆発した! 『トレント』が四散しながら炎に包まれる!
あれだけ蠢いていた枝や根の動きが止まり、葉も全て地面に落ちた。
「ハァハァッ、やったな...」
「アルッ! 凄いわっ!」
「殿下、お見事ですっ!」
「やりましたね! 殿下っ!」
皆が口々ににアルベルトを讃える。
「お前達が攻撃を防いでくれたお陰だ。ありがとう」
するとボス部屋の中央に転移魔法陣が現れた。
「よし、行こう!」
アルベルトが爽やかに言った。
◇◇◇
「どうやら決着が着いたようじゃの」
「えっ?」
「お主の守護騎士が勝った」
いや、私のじゃないけど。ミナは抗議しようとして止めた。部屋の中央に魔法陣が浮かび上がって来たからだ。
次の瞬間、光に包まれた四人の姿が現れた。ミナの姿を確認した途端、
「「「「 ミナッ(さん)!!!! 」」」」
四人同時に抱き付かれたミナは呼吸が出来なくなった。タップして何とか離れて貰ったが、余程心配してくれたのだろう、シャロンとシルベスターの涙でグシャグシャになった顔を見た途端、ミナも堪えきれずに涙を流してまた抱き合った。
ひとしきりお互いの無事を確認し喜び合った後、お互いの現状を報告をしようとした矢先、頭上から声が響いた。
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