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肉を得るための狩り

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(お、いたいた)

 《気配察知》を使用して探し始めれば、すぐにバッファローは見つかった。しかも『ウォー』などの言葉がくっついていないただのバッファローだ。弓が獣人連合に入った時とは違って弱体しているから、バッファロー系では最弱だと思われる相手を見つけられたのは幸運だろう。

 距離をある程度詰めてから《隠蔽・改》を発動して気配を絶ち、さらに距離を詰めて弓の射程範囲内まで近づく。のんびりと草を食べているバッファローの様子からして、こちらに気がついている様子はない。位置取り的には、バッファローの右側面をとった形だ。

(このバッファローの近くに他のバッファローの反応は無いな、では狩るか)

 ゆっくりと伏虎の弓を構え、矢を番えて弦を引く。伏虎の弓はその姿を戦闘時の姿に変えていった。双咆の時とは違って、目いっぱい弦を引いた後にバッファローの体を狙って矢を放つ。矢が放たれた直後に半透明の虎が現れ、咆哮を上げながら狙いを定めていたバッファローに襲い掛かっていく。

 その突如聞こえた咆哮にバッファローは驚いたようで体を硬直させる。その隙だらけな姿を逃すことなく、半透明の虎はバッファローの体に噛みつく。それら一連の行動が終わると、虎は姿を消した。

(これがこの弓の特殊能力ってことか。とりあえず細かい検証は後回しだ!)

 せっかく先制攻撃が成功したのに、思考を巡らせすぎてバッファローに立て直す時間を与えるのはもったいない。畳みかけるべく手数が多い《ガトリングアロー》を発動し、ドカドカドカッ! とバッファローの横側に10本ほど連続で矢を浴びせかける。ブモウッ! と悲鳴を上げるバッファローだが、倒すには至らなかった。

 それに、さすがにこの攻撃で居場所を特定されたようで、こちらに向かって猛突進をしてきた。鋭い角でこちらを串刺しにするつもりだろう。

「意外と早いっ!」

 その突進を、自分は横っ飛びで回避。矢の射程を短時間で潰すだけの速い速度で突進してきたバッファロー。上手く距離を取り続けて矢で一方的に倒すという事はちょっと難しい相手だな。

 もっともそれだけの高速突進をしてくるという事は、方向転換が難しいという事だから……回避に成功すれば後ろががら空きである。自分に突進攻撃を避けられたことで必死に急停止しているバッファローのお尻に、今度は貫くことを重視して《ツイスターアロー》をプレゼントしてみた。

「ブモー!」

 悲鳴と怒りが入り混じった声を、お尻に矢が突き刺さったバッファローが上げる。それなりに効いているようだな……では今度は《ツインファングアロー》をプレゼントだ。

「ブブモオォー!!」

 おっと、今度は明らかに怒りよりも痛みによる悲鳴だな。ここでようやく突進を回避されたことによる急停止に成功したバッファローがこちら側を振り向く。その表情は、人間で表現するならば怒りで真っ赤に染まった顔と言った所だろうか。それなりのダメージを受けているはずだが、まだまだ倒れるような気配はないな……これは長引くと厄介な事になりそうだ。

「ブモッ!」

 再び突進してくるバッファローだが、今度は突進速度が先程よりも控えめだ。その代わり直線的な動きではなく、こちらがよけようとする方向に向かって突っ込んでくる。自分もバッファローの顔面に向かって矢を数回放ったが、今度は半透明の虎が出て来る事も無く、放った矢はバッファローの角にはじき返される。こいつ、自分の角で矢をいなすなんて真似をするのか!

「ブモー!!」

 人間でいうならば「食らえ!」と言った所だろうか? そんな感情が籠ったバッファローの突進攻撃だったが、今回もバッファローの突進は空を切ることになった。なぜなら、自分が《大跳躍》を発動して宙に飛び上ったからだ。盾で受け止めるのは、質量的に自信がなかったからやらなかった。

 かつてのグリーン・ドラゴンと戦った時のように、防御自体はできたが体をふっ飛ばされるなんてことになりそうだったからだ。あの時はまだ遊ばれている状態だったからまだよかったが、今回は倒れた所に追い打ちとして踏みつぶされるようなことになりかねない。そうなってしまったら軽傷で済むはずがないからな。

(惑、頼むぞ!)

 左の腰に下げている闇の魔スネーク・ソードである惑を抜き放ち、下で自分と言う目標を見失ったバッファローの背中目がけてスネーク・ソードのアーツである《ブラッド・カット》を発動し、刀身を伸ばすことで空中にいる自分が地上にいるバッファローを刺し貫く。

「ギュウウウウウ!?」

 変な悲鳴を上げつつ、突如背中を襲った痛みに耐えきれずついに四肢を折るバッファロー。その様子を見た自分は、惑の特殊能力の一つである《惑わしの鎖》を発動。惑に引っ張ってもらう事で瞬時にバッファローの背中の上に到着し、惑をソードモードに戻した後、全力を込めてバッファローの体の中に惑の刀身部分を一気に深々と押し込んだ。

「ブ……モ……」

 これが止めになったようでバッファローは動かなくなり、消滅。ドロップアイテムとしてバッファローの角やバッファローの肉を入手した。

(二匹同時に相手どるのは無理だな。予想以上にタフな上に、今回は回避することに成功したがあの突進は脅威だ。これは確かに肉体的に人間よりも優れているはずの獣人の皆さんでも、戦いの経験が少ないと思われる街の人では狩れない相手だ。だが、どうやらこいつの弱点は背中らしいな。横っ腹にあれだけ矢を突き立てても大して堪えてなかった様子だったが、背中に惑が突き刺さった途端、力なく四肢を折ったからな)

 ハーピー達のごはんとなる肉はバッファロー一頭を倒しただけでもそれなりの量を入手できたが、これだけでは量的に不安が残る。余裕を持たせるためにあと2頭ぐらいは何とかして狩らなければいけないだろう。だが、先程のような戦い方では厳しいものがある。

(ある程度、足止めか何かの異常を与える方法があれば……いいかもな。ツイスターアローで『裂傷』の効果を狙うか、試作爆裂矢で『火傷』にしてみるか、もしくは……そうだ、クィーンから教えてもらった魔法、《プリズム・ノヴァ》もあるじゃないか。

 そうなると、最初の一手はツイスターアローか試作爆裂矢を打ち込み、その後の突進を回避したら《プリズム・ノヴァ》を使う。もしくは《妖精招来》って手段もありだな。この周りにはプレイヤーがまだいないから、使っても問題は一切ない。無理に弓だけにこだわることは無いからな……)

 そんなことを考えながら歩き回っていると、再びバッファローを発見。今回も一頭しかいない。早速いろいろ試すことにしようか。まずは《妖精招来》を搦めよう。距離があるので、《隠蔽》からツイスターアローを用いて攻撃を仕掛ける。今回も半透明の虎が出現し、バッファローを威嚇した後に噛みつく。もしかして、最初の一撃では必ず半透明の虎を呼ぶ能力があるのだろうか?

「ブモッ!」

 攻撃されて頭に来たと思われるバッファローは、一匹目と同様高速で自分目がけて突進して来る気配を見せる。ここで自分は『妖精の記憶』を開き、土妖精を全体MPのうち30%を捧げて召喚する。

「自分の目の前に、重く頑丈な岩を!」

 呼び出された土妖精はその願いに応え、一瞬のうちに自分の体よりもやや大きい岩を目の前に作り出す。その直後、ドゴオン! と轟音と共に何かが岩にぶつかった後が響く。まあさっき自分が攻撃して怒らせたバッファローなんだろうが。その衝撃は、作ってもらった重そうな岩が自分の向かってある程度動いたほどだった。

(さて、どうなったかな?)

 期待しながら岩の反対側に出てみると、そこには立派な角が岩に突き刺さった上にぶつかった時の衝撃で脳震盪起こしたらしく、へたり込んでいるバッファローがいた。当然こんなチャンスを逃す理由は無い。惑を抜きながらバッファローの背中に上り、刀身を突きさす。目一杯深く突き入れ、残虐ではあるが突き刺した刀身をえぐる様に攻撃を続けていると二頭目のバッファローは消滅し、ドロップアイテムを入手できた。

 ただ……ドロップアイテムの一つであるバッファローの角にはひびが入った~と言う言葉が追加されていて、説明にも使い物にならない角とあった。角が目的の場合は、この手段は使えないという事だな。今回は肉が目的だから問題ないが。

 このあと、もう一匹バッファローを見つけたので、MPの回復を行ってから使うのは久々となる《プリズム・ノヴァ》を唱えてみた。すると、効果の一つである麻痺が発動したらしく……バッファローは一切動けない棒立ち状態になってしまったので、そこから倒すのはただの作業になってしまった。

 蹴りでバッファローを転がし、背中に回り込んで惑を突きさして消滅するまでえぐり続ける……やったことはそれだけである。《プリズム・ノヴァ》を使ったのは久々だが、凶悪さは変わってないなと……感じてしまった。

 とりあえずこれで三頭バッファローを狩ったため、手に入れた肉の量もかなり多くなった。とりあえずこれでどれぐらいハーピーの食事として持つのかを聞くために街に戻る事にしようか。
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スキル

風迅狩弓Lv33 ↑1UP 剛蹴(エルフ流・一人前)Lv38 百里眼Lv29 ↑1UP 技量の指Lv35 ↑1UP 小盾Lv28 隠蔽・改Lv3 ↑2UP  武術身体能力強化Lv68 ↑1UP スネークソードLv50 ↑1UP 義賊頭Lv26 妖精招来Lv13 ↑1UP (強制習得・昇格)(控えスキルへの移動不可能)

追加能力スキル

黄龍変身Lv1.77 ↑UP

控えスキル

木工の経験者Lv1 上級薬剤Lv26  釣り LOST!  料理の経験者Lv16 鍛冶の経験者LV28 人魚泳法Lv9 

ExP 22

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル  悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人
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