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さらに合流者が

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 翌日。ログインして宿屋のベッドで目覚める。装備を整え、部屋を後にして宿屋の主人と軽い雑談をしてから外に出る。

 宿屋の外ではちびピカーシャことちびアクアがのんびりと毛づくろいをしていた。自分の姿を確認すると「ぴゅい」と一鳴きしてからぱたぱたと羽ばたいて空を飛び、頭の上に乗っかる。これで出発の準備は整った、今日もハーピーの寝床にいってお肉の残量を確認してから狩りに出る事にしようか。

 それでも前日のアクア大あばれの影響でバッファロー達の警戒心がまだ解除されていないと厄介だから、前日とは違う方角で狩りをすることにしようと今日の行動方針の考えを大体まとめたときに……

「やっぱりこっちにいたのか!」

 と言う聞き覚えのある男性の声が。声の聞こえた方に顔を向けると、そこにはツヴァイ、ノーラ、カザミネ、カナさんの4人がいた。ギルド・ブルーカラーのメンツがなぜここにいるのだろう? とりあえず自分も頭の防具を解除してからフードを取り、顔を見せる。

「あれ!? ツヴァイ達がなんでここにいるんだ? 変身関連の強化クエストがあるって掲示板で見たから、もうしばらくは時間がかかるだろうと思って邪魔にならないように連絡をしなかったんだが」

 と、驚きつつもツヴァイ達に連絡を送らなかった理由を添えて、軽い挨拶とした。そんな自分の驚いた声を聴いたとたん、少々しかめっ面をしていたツヴァイの表情が緩む。

「ああ、また今回も連絡を寄こさねえ! と思ってたんだが、アースはアースで考えていたって事か。それならしょーが無いか……そっちの方はこの4人は終わってな。獣人連合が実装された当日からずーっと音沙汰ないお前に対して、あえて連絡を取らずに探してみようって話になった。んで、ちょっと街に居る人達に聞いたら、フードを深くかぶった人族っぽいやつが南街に行ったって話が聞けたんで、おそらく間違いねえと思ってやってきたんだよ。どうだ、びっくりしたか?」

 こっちを驚かすためにわざわざそんな手間をかけたのか。そう言えばツヴァイにはそういう面があったな。まあほかの3人も無理に付き合わされた感じはしないからいいけど。

「お久しぶりです、私と会うのはあのダークエルフのワームと共闘した時以来でしょうか」

 カナさんが頭を下げながら話しかけてきた。そういえばあの時以来かな。以前のブルーカラーのメンバーから訓練を受けていた時にもカナさんは居なかったし。

「アースさん、あの時教えてもらった《紅散華》もほぼ完成に近づいてきました。今日はそれもお見せしますよ」

 こちらはカザミネ。そうか、あの技をほぼものにしたのか……かなりの訓練を積んできたのだろう。

「やっほー、おひさ。まあ今日はよっぽどの用事がない限りはアース君と久々にPTプレイをしたいのよ。どうかな?」

 そして最後にノーラが声をかけてくる。そうだなぁ、PTプレイならばバッファローも問題は無いだろう。ツヴァイ達の妖精も戦闘に加わるから、戦闘能力はぐんと上がるし。

「それは構わないんだけどな、ちょっと今自分はクエストを受けている状態だから……それでもかまわないというのならと言う条件が付くけれど、いいのかな?」

 これは念押しをしておかないといけない。ハーピーの子供達の食糧問題だけは必ず解決しないといけないし。

「まーた何か妙な事に巻き込まれてるのか? アースは本当にトラブルに愛されてるよな。案内頼むぜ!」

 ツヴァイの声に頷く3人。まあいいか、狩りをするという部分は変わらないわけだし。


「今日はお友達がいっぱいなんですね~、これなら安心です」

 そして牛の獣人お姉さんが面倒の指揮を執るハーピーの寝床に到着。ツヴァイ達にはここに来る前に状況を大まかに説明してある。もちろん〈義賊頭〉として関わったあの事件以外の話だが。説明の途中で「ハーピーが敵じゃないのか!?」とブルーカラーのメンバーは驚いていた。

 もちろん他の場所ではどうなっているか知らないが、この南街に限っては共存共栄の関係であることをしっかりと教えておいた。戦いにでもなってしまったら大変だからな。──もっとも、ブルーカラーのメンツがハーピーと敵対する可能性はもう無いだろうけどな。

「かわいい~」
「実にかわいらしいですね……癒されます」
「こんな子達と戦うなんてありえないです」

 とまあ、ハーピーの子供達の可愛らしさにめろんめろんにされているんだからなぁ。特にノーラとカナさんの何かに触れたようで、なでなでする手が止まらないようである。まあハーピーの子供達も喜んでいるようなので、止める必要性は無いか……今のうちに話をしておこう。

「ところで、お肉の残量はどうなっていますか? 不足気味と言うことは無いですか?」

 牛の獣人お姉さんに、必ず毎日確認しないといけない事を早速聞く。

「それについてちょっと相談があります~。実はハーピーの子達が成長期に入ったようで、もうちょっと多くお肉を取ってきて欲しいと頼みたかったんです。とは言え、貴方は一人で戦い、一人でお肉を取ってきていましたのでこれ以上の負担を強いるわけにもいきませんので、私達も武器を持って一緒に狩りに同行しようかと考えていたのですが~」

 そこで話をいったん区切って、ハーピーの子供を抱き上げてなでなでしているノーラとカナさんを見て、次に「でかいな……」なんてぼそっと声を漏らしているツヴァイ、「セクハラですよ」と諌めているカザミネを見る牛の獣人お姉さん。

「ですが、今日はお仲間もいらっしゃるようですし、それに頭の上に鎮座しているあなたの妖精さんもいらっしゃいますしね。報酬はもちろん皆様一人一人にお支払いいたします。今日は今までよりももっと多めにお肉を取ってきていただけないでしょうか? お願いいたします!」

 そう告げて、深々と頭を下げる牛の獣人お姉さん。自分が何かを言う前に、反応したのはノーラとカナさんだった。

「任せておきなさい! お肉ならたっぷりとってきてあげるわ!」
「もちろんです、お任せを。こんな可愛らしい子を飢えさせるなんてありえません。カザミネさんもそう思いますよね!?」

 と、オーラを纏うかのような勢いでこちら側に訴えかけてきた。自分もツヴァイもカザミネも、その女性陣の勢いに一歩引いてしまう。

「ま、まあ自分は最初から行くつもりではあったのだが……ツヴァイとカザミネはどうだ?」

 一歩先に立ち直って動いた自分の声を聴いて、ツヴァイとカザミネも気圧された状況から復帰したようだ。

「あ、ああ。そうだな……アースには助けられてきてるし、ここで断る理由も特にないな」
「そ、そうですね。カナさんがここまで入れ込むのは予想できませんでしたが、鍛えた力をアースさんに披露する場としては都合が良いかもしれません」

 という事で、お肉を得るために狩りに行くことが決定した。武装している獣人さん達もいたのだが、今日は自分以外に仲間であるブルーカラーのメンバーがいる事で同行することは取りやめたようだ。まあこの街に居る獣人さん達は戦いを苦手として居る人達だってことだし、無理をして欲しくは無かったのでそれでいい。

「それでは行ってきます」

 ノーラとカナさんが名残惜しそうにハーピーの子供達を下ろした事を確認して、挨拶をしてからいざ出発。今日は昨日までよりももっと頑張らないといけない。それでもソロではないのだから狩り自体はぐっと楽になっているかもしれないが。

「頑張ってくださいね!」
「ぴい!」

 獣人のお姉さんと、アクアにあまり絡め無かったために少々不機嫌ぎみ? なハーピーの一番上の子に見送られてその場を立ち去り、街の外に出る。さすがに街の外に出ればハーピーの子供にめろんめろんだったノーラとカナさんも頭を切り替えて臨戦態勢に入った。

「よし、じゃあアース、早速モンスターの発見を頼むぜ!」

 ツヴァイの言葉にうなずき、《危険察知》を起動する。さて、手ごろな奴はどの辺にいるかな~?

「ぴゅい!」

 アクアも気合十分だな。今日も張り切っていこうか!
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ツヴァイ達も合流。戦闘は次回。
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