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獣人連合・東街の長い一日 その二

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 それからしばらくの間、西門防衛の戦いは混戦状態が続いた。バッファロー達もここは無理に突進しては返り討ちになると判断したようで、狙いはいつのまにか西門そのものではなく西門に駆け付けた遊撃チームの方に移ってきていた。

「遊撃チーム、折を見て一度撤収しろ! 回復を行え!」

 とそんな状況になった為に新しい指示が飛ばされるが、それが上手く行かない。バッファロー達が数を利用して遊撃チームを追い込み漁をするような動きを見せ始めたからである。逃げ場を徐々に潰され、やむなく残された逃げ道に従って西門から引きはがされていく遊撃チーム。遊撃チームは全員が速度を重視する故に軽装であり、バッファローの突進をもろに受けた場合は一撃で戦闘不能に追い込まれる可能性がある。無理はできないのだ。

 それでも速度がバッファロー達より優っている遊撃チームは何とか追いつめてくるバッファロー達を振りきって、主戦場から逃亡することに成功する。だが、これもバッファロー達の計算に入っていたことを西門の防衛を行っていた人々は次の緊急報告によって知ることになった。

「ほ、報告! ウォーバッファローとドリルホーンバッファローが編隊を組んで突進してきます!!」

 遊撃チームはバッファローの集団に追い払われた形となり、このウォーバッファロー&ドリルホーンバッファローの突進部隊に横やりを入れられない。西門の壁の上にいた大勢の弓兵は必死に矢を放っているようだが、突進してくるバッファローチームの勢いが衰えない。爆弾使いギルドは弾の補充中なのか爆発物を投げていない。その結果、ほぼ突進の勢いが衰えないままバッファローの突進部隊はその巨体を拒牛槍にぶつける事になった。

「グモオオオオオオ!「ウモオオオオオオ!」

 だが、拒牛槍に突進したのだから当然バッファロー達はその身を拒牛槍に貫かれて悲鳴を上げる。しかし、しかしだ。そんな悲鳴を上げつつ息絶える仲間の姿を怒りに変えるかのようにして、次々とバッファローの突進部隊は拒牛槍をいくつも設置してある西門に突っ込んでくる。拒牛槍を破壊されては困るとばかりに、爆弾製作ギルドによる攻撃も再開されたようだが……それでも突進をやめないウォーバッファローとドリルホーンバッファローの突進部隊。

 自分は《百里眼》の効果で西門で行われている戦闘の状態を確認できるのだが、こちらもまだ追いかけてくるバッファローの始末が終わっていない。ある程度街から離れれば追撃をやめて引き返すと思われたバッファロー達だが、こちらを殺すか自分が死ぬかまで追撃を諦めない奴がいる事が判明し、やむなくそいつらを相手に戦闘をしているのである。

「西門が気になるのは分かるがよそ見をするな! 死にたいのか!」

 戦いつつも、ちらちらと《百里眼》にて西門を見ていたことが近くのケンタウロスにばれたのだろう。そんな叱責が飛んでくる。

「すまない!」

 詫びの言葉を自分は飛ばして、しつこく追いかけてきたバッファロー達を始末するために立ち回る。よそ見ができたのは自分で考えて最善の動きをしてくれるアクアのおかげである。そして10分ぐらいだろうか? 追いかけてきた多数のバッファローを遊撃チーム南門部隊の皆で協力して全滅させることに成功した。

 だが、こちらにも被害は遊撃チーム全体から見て1割ほど発生しており、被害を受けたメンツはこの戦いにおいてはリタイアとなってしまった。腹部を角で貫かれて重傷を負ったケンタウロスもいたのだが、幸いポーションで即座に治療を受けれたことが幸いして、死ぬことだけは免れていた。そういった深い傷を負ってしまった負傷者を東街の中に連れ帰ったために帰還速度はかなり落ちてしまった。

「戻ったか! けが人はこっちだ! 手が空いている奴は手伝ってやれ!」

 南門の中に、何とか怪我人を跳ね橋を渡って収容する。散々走り回った為に、ケンタウロスの皆さんやプレイヤーの乗っていた馬は荒い息を吐いて休憩している。グリフォンやハーピー達も徐々に街の中に戻ってきていたが、こちらもかなりお疲れ気味であった。即座に再出撃は難しいだろう。

「西門の様子はどうなっている!?」

 ぜはぜはと荒い息が聞こえる中、そんな声がどこからか聞こえてきた。そうだな、かなり旗色が悪かったからあれからどうなったのかはかなり気になる。

「西門前の拒牛槍だが……隠してもしょうがないからはっきりと言う、あと5分も持たずに折られるだろうとの報告が入っている」

 この言葉に、荒い息を吐いているケンタウロスの皆さんも、プレイヤーも一斉に何だと!? という表情を一斉にしていた。おそらく自分もそんな顔を同じように浮かべているはずだ。

「だが、西門の先にはさらに備えがしてある。最悪西門は破られてもいいようにと想定し、そのための準備を西門の中に整えていた。そこでバッファロー達の機動力を殺し、手練れの獣人と人族の冒険者たちで確実に狩る。そしてバッファロー達に勢いがなくなってきたところで反撃に転じる。その反撃に転じるときに出撃できるよう今は休息をとってほしい!」

 そういう事なら……と言った感じでひとまずの落ち着きを見せる南門遊撃チーム。だが、休憩に入ってから数分が過ぎた後に……西門の方からドオン! とひときわ大きい音が上がった。

「これは……西門の拒牛槍を突破されてしまったのか!?」

 誰かがそう叫ぶ。そしてその後に飛んできた報告によって、その予想は正しい予測であったと判明する。先程のドオン! という音は、西門そのものにバッファローが突進した音だったのだ。

「いくら備えがしてあるとはいえ、門がこのままあっさりと破られたらまずいんじゃないか!?」

 誰かの叫び声に、そうだそうだ! と声が上がる。そんな現場の声に応えるかのような指示が飛ぶ。

「呼吸がある程度整った人族に頼みがある! 弓や投擲、魔法が使える者はグリフォンやハーピーの背に一時的に乗せてもらって西門に移動し、西門が破られる前に少しでもバッファローの数を削ってほしい! いける奴は手を上げてくれ!」

 この呼びかけに、ほとんどの遠距離攻撃手段を持つプレイヤーが手を上げた。手を上げなかったのは、MPがまだ十分に回復していない魔法使いプレイヤーぐらいである。手を上げたプレイヤーは馬から降り、グリフォンやハーピーの背に次々と乗ってゆく。

「お前も早く!」

 自分も手を上げたので、乗っているアクアから降りて空を飛べるグリフォンかハーピーに乗れと指示されるが、自分はその指示を拒否する。

「その必要はありません、アクア!」「ぴゅい!」

 自分のやってほしい事を理解したアクアが羽ばたいて宙に浮かび始める。現実では到底飛べる羽根の大きさではないので、これは魔力による浮遊だろう。まあ細かい理由なんてどうでもいいか、用は空を飛んで素早く移動できればいいのである。魔力の消費が激しそうなイメージなので、普段はやらないんだけど。

「なるほど、そいつは空も飛べるのか。では各自空を飛んで西門周辺へ! 空を飛べる事を利用した空中からの射撃でバッファローの数を削ってこい!」

 その指揮に応じ、次々と西門に向かう遊撃空中部隊。空中からの攻撃は安全地帯から一方的に攻撃できる反面、空を飛ぶグリフォンやハーピーの消耗が激しいと思われる。何せ武装した人間が乗っかるわけだからな……相当の重量になるから負担もかなり重いだろう。だが、西門の防衛が予想以上に早く悪化してしまったので、止む無くと言った所か。

「その鳥いいなー、騎乗して空を飛べる契約妖精ってかなりレアだからなあ」

 西門に到着する前に、そんな言葉を他のプレイヤーから投げかけられた。まあ一見そう見えるかもしれないな……実際は契約妖精ではないのだが。そうしてやってきた西門だが、立派な木で作られている門はいくつものひびが入っており、頼りなさげな姿に変わっていた。

 そんな西門に、各種バッファロー達がその身を破城槌に変えて突進しているのである。誰がどう見てもこのままでは西門の崩壊はもうすぐだと分かる。場所的に門の上に居る射手達は、破城槌と化して体当たりをしているバッファローに直接攻撃ができていない。近寄られ過ぎたために射線が取れないのだ。だからこそ自分達ががんばらないといけない。

「よし、がら空きの背中にたっぷりとごちそうしてやれ! 俺達を乗せてくれているグリフォンやハーピーが限界を迎える前に、少しでも倒して西門の防衛を頑張っている奴らを支援してやるんだ!」

 そんな誰かの声に、自分を含めたプレイヤー全員が「「「「応!」」」」と答える。

「よっし、んじゃいくぜ!」

 その声を切っ掛けにグリフォンやハーピー達と一緒にアクアもバッファロー達の上を取って攻撃できるように周辺を旋回する。

「調子に乗ってるんじゃないわよ!」「そうそうはやらせないってね!」「門に体当たりしている奴を最優先で狙え! 門を護ると同時に動きが単純にならざるを得ないからカモにもできる!」

 などとお互いに声を出し合いながら、空中攻撃を開始する。自分も弓を用いてバッファロー達の背中に矢を突き立ててゆく。西門が壊れるまでに少しでも数を減らさないと……!
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スキル

風迅狩弓Lv37 ↑1UP 剛蹴(エルフ流・一人前)Lv38 百里眼Lv30 ↑1UP 技量の指Lv38 ↑1UP 小盾Lv28 隠蔽・改Lv3  武術身体能力強化Lv71 ↑1UP ダーク・チェインLv3 義賊頭Lv27 妖精招来Lv13 (強制習得・昇格)(控えスキルへの移動不可能)

追加能力スキル

黄龍変身Lv1.79 ↑UP

控えスキル

木工の経験者Lv1 上級薬剤Lv26  釣り LOST!  料理の経験者Lv17 鍛冶の経験者LV28 人魚泳法Lv9 

ExP 21

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル  悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人
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