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獣人連合・東街の長い一日 その四

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 グラッドが人で作る一本の槍の一番先端をになって突撃し、バッファローの集団とぶつかり合ってから数分が経過したが……状況は一進一退だ。確かにグラッド達の活躍は目覚ましく、バッファロー達を押し込むのだが……他がバッファロー達の体格から繰り出される攻撃に怯んだりはじき返されたりと均衡が破れない。空にいて上から戦場を眺めているとそれがよくわかる。こういう戦いを見て、指示を与えるゲームの事をマスコンバットというんだっけか? まあ今回は自分が指揮している訳ではないのだが……。

「左! 前列と後列を後退して前列を休ませろ! 右、防御主体に切り替えて耐えろ! 中央は前に出過ぎるな!」

 東街の防衛責任者と思われる男の声が何度も耳に届く。その男が出す声に従ってバッファローとの戦いは展開していた。最初は興奮のためか指示を聞かない者も結構いたのだが、そういった人達はもう生きてはいない。シルバーさんのおかげで士気が上がったとはいえ、実際の戦況はくどいようだが五分と五分である。ここで均衡を破って相手を確実に押し始めた側がこの戦いの勝者となるだろう。

「ぴゅい!」「なるほど、あそこか!」

 そんな戦闘が地上で繰り広げられている最中、自分とアクアは唯一の空中戦闘を生かしてバッファロー達の妨害を行っていた。バッファロー達の中にも声を上げて鼓舞する存在や、攻撃のタイミングを出している軍隊でいう隊長、伍長の役割をしている奴らがいる。そんな奴らをアクアが見つけ、自分が矢で潰すという行動を行っていた。基本的に矢による攻撃は点であることは言うまでもない。ならばその点の攻撃を最大に生かすにはどうすればよいか? その答えは……

『何かと何かをつなぐ関節部分を切ればいい』

 という事になる。なのでバッファロー達を現場指揮して上とつなぐ役割を持つバッファローを粘着して叩くことにしたのだ。実際に指揮をしているバッファローを倒すと、その周辺にいるバッファローの行動が鈍る。そうすると地上で戦っている人の負担が短時間だが軽減される。これが今の自分にできる最大の支援方法となっていた。

「全員に報告! 北門を襲っていたバッファローの集団は予備戦力により全滅! 西門の外にて行われている戦いに、準備が整い次第援軍として回す事にした!」

 防衛責任者からの声に、バッファローと戦っている人達から歓声が上がる。北門の不安がなくなったことに加えて、西門の外で行われている今の戦いも好転する切っ掛けとなりそうだからである。

「南側から西門に向かうバッファローの存在有り! 数は30以上!」

 と、その直後にそんな良いムードに冷や水を浴びせるような報告が入る。今防衛側の戦力の大半は前に出ており引き返せない。引き返したら今戦っているバッファローたちの勢いが一気に高まって轢き殺されることになるからだ。だが、そんな思考を打ち破るような大声が再び戦場に響く。

「そ奴らはワシがどうとでもする! 門の防衛は気にせんでよい! 前を見て目の前のバッファローどもをしっかり倒すのじゃ!」

 それはシルバーさんの大声である。実際にこの西門を出て、外の戦いに移る前に複数のバッファローを一人でブッ飛ばすという事をやってのけた漢の言葉ならば信用できる……誰もがそう考えたのだろう。目の前にバッファローから逃げるという選択肢が取れない以上、信用するしかないとも言い換える事ができるが。

「門の心配をする余裕を取り戻すためにも、目の前のこいつらをどうにかするぞ! 気合いを入れてぶちのめせ!」

 さらに大声でグラッドが激を飛ばす。その激に反応して「そうだ、こいつらをどうにかしねえと始まらねえ!」とか「気合いを入れなおすぞ!」とかの声が伝播していく。それにしてもシルバーさんにグラッドの二人はやけにこういった言葉を飛ばすな……もしかしたら、防衛責任者にそういう役目を頼まれているのかも知れない。全体が崩れかかったり士気が低下しそうなときにそれを食い止めるという事を担当してくれと事前に言われているとすれば納得がいく。

 そんな思考にふけるのはそろそろお終いにしよう。今は目の前の敵をどうにかしないといけない時なのだから。とは言え自分のやることに変わりはない。所々に居るバッファロー達を指揮している隊長格バッファローをアクアの目によって見つけ出し、自分が弓矢で屠ってゆく。

 隊長格を見極めるアクアの眼力は確かなもので、的確にそういった最前線での指揮系統を担っている奴を見つけてくれるからこそ採用できる方法である。正直に告白すれば、自分の目にはどれも同じに見えるのでアクアの指示がないと見極める事が出来ない。

「まずい、そろそろ矢が尽きそうだ……戦っている人達には申し訳ないが、いったん街に引き上げて補充を行おう!」「ぴゅい!」

 アクアの方はまだまだ空を飛び続けられるようだが、先に矢と言う物資の方に限界が来た。仕方なく一度街まで帰還して、矢を買うなり譲ってもらうなりしないといけない。自作の特殊矢はまだ残っているが、これは撃ち切ったら補充が難しいので今はまだ温存しておきたい。戦場から離脱し街中に戻ってアクアが着陸して自分が地面に降りると、すぐさま獣人さんが数人ほど自分とアクアの周りに集まってきた。

「何か問題が発生したのか? それとも空中戦闘に限界が来たのか!?」

 焦っているような声を出す獣人さんを何とか落ち着かせてから話を聞くと、自分とアクアが行っていた行動の意味を防衛責任者はすでに理解しており、出来る限り継続して行って欲しいと考えていたらしい。だからこそ、こうやって街に帰ってきたことで空中からの支援が完全に消えるのかと焦ったらしい。

「そうではなく、矢が尽きました。矢の補充と、この子……アクアに軽く水を飲ませてあげてください」

 こちらがそう要望を出すと、すぐさま近くにいた他の獣人に「聞いたな? すぐに用意しろ!」と指示を飛ばして物資の用意を始めさせていた。そして矢と水がこちらに届くまでの間、いくつかの要請をこっちに振ってきた。

「基本的には今まで通り、敵の指揮をつかさどっているバッファローの始末をお願いしたいのですが……できれば、それに加えて敵の王かそれに近い存在のバッファローを見つけていただきたい。こちらも斥候任務が得意なものに動いてもらっているのですが、いまだ発見の報告がないのです」

 地上からでは見つけられなくても、空中からならもしかして……という事らしい。見つけた場合は大声で叫んでほしいと言われたが、自分は大声を出せるスキルを持っていないと伝えた所、いくつかの団子みたいなものを渡された。

「これを食べると、1分ほど大声を出せるようになります。防衛責任者も使っております」

 なるほど、やけに大声を連発しているなとは思ったがこれがそのタネって訳だったのか。とにかく物資があるのであれば協力することには抵抗もない。この要請を自分は快諾した。

「解りました、見つけた場合はこの団子を使って報告します」

 この自分の言葉に、獣人さんも少しほっとしたような表情を浮かべて頷く。

「はい、よろしくお願いします。王を打ち取らねば、バッファロー達はこの街を破壊することを諦めないでしょう。何としてでもバッファローの王を打ち取る必要があります」

 話がまとまるのを見計らっていたように「失礼します! 矢と水を用意しました!」と用事を指示された数人がこの場に戻ってくる。

「よし、早く提供しろ。それと、偵察から発見報告はまだか!?」「残念ながら、いまだ発見報告は上がっていません」

 こちらに矢と水を渡しつつそんな確認が行われたが、残念ながらまだバッファローの王は見つかっていないようだ。自分は受け取った矢を矢筒『魔弾の相棒』に納め、アクアは提供された水をおいしそうに飲んでいる。装備の状態を確認したが、かなり多種多様な弓のアーツを放ちつつ戦ったために『伏虎の弓』がかなりへたっていた。修理を行った方がいい頃合いである。

(のんびり修理している時間は無いな、目の前に居る獣人の皆さんもできる限り早く戦闘に復帰して欲しいというオーラを飛ばしてくるし。ならばこれを使うか)

 今まで温存しておいた武具の修理を一瞬で行える『復刻玉』を一つ、伏虎の弓に吸い込ませる。復刻玉を吸った伏虎の弓はみるみる修繕され、新品同道になったようだ。念のために弦を引いて確認をしたが問題は無い。これですぐに再出撃できる。

「アクア、大丈夫か?」「ぴゅい!」

 アクアもまだまで行けるようだ。すぐさまアクアに乗り、空中で戦うための体制を整える。

「よし、いいぞ。頼む!「ぴゅいぴゅい!」

 再びアクアは地面からゆっくりと浮き上がり、高度を確保してから再び戦場に向かって飛ぶ。その戦場に向かう途中で、予備戦力の一部が前線に出る姿も確認できた。その中にツヴァイを始めとしたブルーカラーの面々も交じっていた。剣が魔剣だから目立っており、見分けがつきやすかったので自分の目でも確認が取れたのである。
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ここでやっとツヴァイ君の姿が。ツヴァイ、グラッド、シルバーのワンモアにおける最上位プレイヤーが集いました。

スキル

風迅狩弓Lv39 ↑2UP 剛蹴(エルフ流・一人前)Lv38 百里眼Lv31 ↑1UP 技量の指Lv39 ↑1UP 小盾Lv28 隠蔽・改Lv3  武術身体能力強化Lv72 ↑1UP ダーク・チェインLv3 義賊頭Lv27 妖精招来Lv13 (強制習得・昇格)(控えスキルへの移動不可能)

追加能力スキル

黄龍変身Lv1.79 ↑UP

控えスキル

木工の経験者Lv1 上級薬剤Lv26  釣り LOST!  料理の経験者Lv17 鍛冶の経験者LV28 人魚泳法Lv9 

ExP 21

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル  悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人
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