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戦ってみた。

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「ちっ!」

 つい普段はあまりやらない舌打ちをしてしまいながらも、結晶の団体を相手にした戦いを行っている。戦ってみて分かった事はいくつかあるが、まず一つ目は氷の結晶一つ一つの耐久性は非常に低い事だ。惑の刀身が当たれば、それであっさりと崩れ去る。しかし、だからと言って弱いわけではない……二つ目に分かった事は、膜の中において結晶達はそこそこのスピードで動き回るのでとらえる事がなかなか難しい。それでも数が多い時は適当に剣を振るだけでそれなりに結晶に当たるのだが、数が減ってくると膜の中での移動スピードを大幅に増して回避行動を重視してくるので惑の刃に当てる事が出来なくなる。

 その一方で、氷の結晶達が行ってくることは本当に初級の水属性攻撃だけ。こう聞くと攻撃面が弱いように思えるのだが……それはとんでもない話である。この洞窟の中は寒いという事を最大限に生かす攻撃だったりするのだ……具体的には、水を掛けて一気に洞窟の冷気で冷やす事によって一瞬で相手を凍結することが狙いなのだ。そして攻撃が一番弱いという事は、言い換えれば反動が少なく連射が効きやすいという事でもあり……魔法の水礫が容赦なく自分に飛んでくる事になる。氷の団体一つ一つが水礫を撃てるという事もあり、恐ろしい攻撃になっている。

「うおあ!?」

 回避し損ねて、左手の盾で水礫を受け止める。そんな受け止めた盾から、ピキピキッという音が聞こえてくる。間違いなく水礫が盾の表面で凍った音だ。盾を軽く振る事で、その氷を地面に落とす。危なかった、直撃を受けたらあっという間に氷像になって凍死する。こんな寒い場所でなければただの弱い存在なのかもしれないが……いや違うな。彼らは理解しているんだ、最小の力で最大の効果を出すにはどうすれば良いのかを。

「惑、頼む!」

 なので、こちらも惑をスネーク・モードで振るって中距離から氷の団体に攻撃を加える。近距離では撃ってくる水礫に反応できないからだ。惑を振るう事で一定場までは氷の結晶を減らせるのだが……膜の中に居る結晶が残り僅かになると、奴らは回避を最重視してくる状態に入るので面倒だ。そうして粘られているうちに膜の中で氷の結晶が再生してしまい、また水礫の魔法を撃ってくる。すでにこいつとは10分は戦っているだろうか、いまだに最初に攻撃を加えた氷の団体を自分は倒せていないのである。

(まずい、集中力が少しずつ切れて来てる。何とかいったん離れて仕切り直したいが、それを許してくれるだろうか?)

 何の策もなく背中を向ければ間違いなく水礫の的にされてやられる。倒すにしても、自分が使える攻撃は大抵点か線での攻撃方法であり、面の攻撃ができる強化オイルは手持ちがない。修練という意味では強化オイルに頼ってはいけないのだが……使える風魔術も、ウィンドニードルはホーミング性があるが攻撃としては点であるし、ウィンドカッターは線だ。つまり魔法を使ってもMPを無駄にすることになる。氷の結晶の素早さは、ウィンドニードルのホーミング性をたやすく振りきる事が出来る位の速度だからな。

 それからさらに数分後。スネーク・ソードを激しく動く的に当てる様に振る事、飛んでくる水礫を回避するための行動を休みなく続けた事で、自分の集中力はもうガタ落ちになってきていた。自分でもはっきりわかるレベルで攻撃に精彩を欠いている。

(駄目だ、このままでは倒せない。効くかどうかは分からないが、あの道具に頼るしかないか……効かなければお終いだな)

 覚悟を決めて、惑をやや乱暴に大薙ぎに振るう。狙いをあまり定めず大雑把に振るっただけだが、幸いにして膜の中の氷の結晶はそれなりに減った。回避行動重視を始める氷の結晶。そのタイミングで《ウィンドブースター》を発動して至近距離まで間合いを詰めながらあるアイテムを取り出す。

「頼むから効いてくれよっ!」

 洞窟の中に、そんな自分の声がこだまする。そして自分は、暖を取る為の道具である筒を取りだして回避う行動を取り続ける結晶達の目の前で握りつぶした。この洞窟の中では自然に起きるはずのない温度の上昇によって氷の結晶達の動きが大きく鈍り、結晶の一部が溶け始める。

「そりゃあ!」

 反射的に動きが鈍った結晶達に蹴りを放つ。動きが鈍った結晶達は、その自分が繰り出した蹴りをよける事が出来ずにまともに食らった。そうしてやっと膜の中に居た氷の結晶はゼロになり、膜がポン♪ と音を立てて破裂して消滅した。ドロップアイテムは……使い物にならなくなった氷の核と言う物が出てきた。おそらく倒すために周囲の気温を暖かくしたから、溶けてしまったのだろう。だが、そんなことはどうでもいい……。

「よかった、通じた……」

 倒せたことを理解した直後にドサッと音を立てながら、地面に倒れこむ自分。やっと集中し続けなければならない状況から解放されたために、力があまり入らない。今の姿は無防備にもほどがあるのだが、今はとりあえず解放されたという事だけで頭の中がいっぱいだった。ぜえぜえと荒い呼吸を繰り返すことしばし、ようやく頭が動くようになってきた。

(これは、ただ固い相手の何十倍も厄介だ。再生能力があるだけではなく、回避能力も高い。その上やってくる攻撃はこの場所を最大限に生かした殺しの方法。修練になることは素直に認めるが、本気できついぞ……特に膜の中にある結晶の数が五つを切った後が非常に厄介だな。あれだけ惑を振り回したのに当たらないのは……逆にあれに当てれるようになれば、腕は確かに上がっているんだろうがな)

 ちらりと自分のスキルを確認すると、やっぱりというか上がっていないとおかしいというか……ダークチェインのスキルが2ほど上昇していた。あの結晶の集団を一匹と換算すると、ものすごい上昇率ではある。それは事実なのだが、今すぐ次の奴と戦おうという気分にならない。

(無理無理、ここでしばらく休憩しよう。集中力ががったがたに落ちたから、じっくりと休憩した方が良い。それにしてもあいつらを何時かスパスパッとあっさり切り裂いて先に進める日が来るのかねえ。いつかはそうならないと、ここから先は進めないんだろうけど……先が見えないな)

 こういう時は、火の魔法がうらやましくなる。《エクスプロージョン》などの広範囲魔法でまとめてブッ飛ばせばあっさりと消し飛ばす事が出来そうだからだーと考えて、ちょっと待てよと首をかしげる。

(まてまて、そんなに単純に事が進むか? 奴らだって自分の弱点は十分承知だろう? あの膜は魔法があまり通じないとか、最悪反射してくるとかの仕組みになっているとかもありうるだろう。まてよ、そうなると温度を上げる道具がなぜ通用したのかって話になるが……だめだ、これはちょっと分からない。実際に火の魔法が使える人に直接撃って貰って、その結果を見た方が早いわ……)

 さすがに倒れこんでいる状態から、胡坐をかく体勢に移行している自分は頭を振って考えを中断する。壁に寄りかからないのは地面よりも冷たいからである。

(道具屋のおっちゃんがあの周囲の気温を高める道具をいっぱい持って行けと言ったのは、こういう緊急的な手段にも使えるからだったのかも知れないな。とにかく、あの道具のおかげで命拾いしたことは間違いないわけで……とりあえず、惑で限界ぎりぎりまで戦い、もう無理だと思ったらあの道具を使ってやり過ごす事で経験を積む。今はこれしかない、か)

 とりあえずそれでいこうと考えを纏めて立ち上がる。周囲の温度を上げる道具である筒の数を確認するが、まだ二十本ほどある。もうしばらくはここで修練を積んでも良いだろう。というより、ここで修練を積まないとどうしようもなると言った方が正しいな。あの占い師も魔剣と蹴りを鍛えろと言っていた訳で。

 そうして戦う→厳しくなったらアイテムで結晶の団体を溶かして終わらせる→休息をとるの行動をしばらく何度も繰り返した。そのお蔭でダークチェインのスキルレベルが大幅に上昇したのはよかったのだが……結晶を惑だけで全滅させることに成功した回数は結局ゼロ。一番減らせた時は残り三つまでは行けたがそこ止まり。そこから粘られて回復されて、水礫が飛んできたので慌てて回避して冷や汗をかいた。そうして何度も戦っているうちに時間もかなり経過してきたし、筒の残りも少なくなってきたので素直に撤収。

 街に戻って道具屋のおっちゃんの所に無事帰ってきたことと洞窟の中の事を報告。

「無事に戻ってきたか。な? あの筒持って行ってよかっただろ?」

 とのおっちゃんの言葉には頷くことしかできず。また明日もあの洞窟に行くためにこの場で道具を補充。

「では、失礼します」「おう、また来いよ。きちんと生きて帰ってくるんだぜ」

 と見送られた後に宿屋に戻り、ログアウト。しばらくこんな感じで修練だな……大きなイベントが来ない事を祈ろう。
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イメージは、回避利が高くてなかなか倒せないお邪魔モンスターです。

スキル

風迅狩弓Lv40 剛蹴(エルフ流・一人前)Lv38 百里眼Lv32  技量の指Lv42 ↑1UP 小盾Lv29 ↑1UP 隠蔽・改Lv3  武術身体能力強化Lv75 ↑2UP ダーク・チェインLv14 ↑11UP 義賊頭Lv27 妖精招来Lv13 (強制習得・昇格)(控えスキルへの移動不可能)

追加能力スキル

黄龍変身Lv1.80

控えスキル

木工の経験者Lv8 上級薬剤Lv26  釣り LOST!  料理の経験者Lv17 鍛冶の経験者LV28 人魚泳法Lv9 

ExP 22

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル  悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人
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