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連載

魔剣とは? その3

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明日から12月ですね。大掃除の季節だなぁ。
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「一応確認したいんだが、俺達が持っている魔剣を絶対に体内に取り込まないといけないのか?」

 ケティさんからの話がひと段落した所で、ツヴァイがそう質問する。そうだな、それも聞いておいた方が良い事だな。

「いえ、魔剣を体に取り込みたくないのであれば無理に取り込む必要はありません。実際に少数ながら魔剣を子孫に受け継がせたい、借り物だからという理由で魔剣を取り込まなかった人がいたという記述もごくわずかではありますが見つける事は出来ています。ですが、その代わり魔剣持ちだとばれてしまったが為に大勢の賊などに追い回されたりして酷い最後を迎える事になってしまったともありましたが……」

 だからこそ、そうならないように取り込んでしまった方が良い。暗にケティさんはそう言っているのだろうな。

「人の欲とは時として目を覆いたくなるほどに醜い物であるとは聞いたことが幾度となくありますが……なんとも」

 ケティさんの話を聞いたカザミネもため息を一つ大きくついた。カザミネのため息をついた理由はよくわかる。貴重な物を奪うために戦いを吹っ掛ける、大勢で追いかけるなんて事を未だに人間はやめる事が出来ていない。そんな醜い諍いがこちらの世界にもしっかりあるのだと再確認させられてしまった訳だから。

「ケティさん、ちなみにカザミネの持つ大太刀は魔剣なのですか? それとも魔導剣なのでしょうか?」

 ここに再び来ることはまず無いだろうから、今のうちに確認しておきたかった自分はそうケティさんに質問を投げかける。

「──私の鑑定した範囲ですが、カザミネさんの持つ大太刀は魔剣ではなく魔導剣で間違いないでしょう。貴重な逸品であることは間違いありませんが、魔剣の様なごたごたに巻き込まれる心配はまずないでしょう」

 そうか、カザミネのは魔導剣か。なら問題は自分とツヴァイの魔剣だな。取り込むなりそのまま今の形で使い続けるなりするにしろ、今まで以上に注意しないといけないな。見る人が見ればこうしてわかる……という時点はとっくに超えていて、すでに誰かによって目をつけられているという可能性も十分にある。ケティさんと同等の知識を持っている存在が他にはいないなんて証明は誰にもできない。義賊のリーダーにその辺を探ってもらうと同時に、影からツヴァイの身辺を嗅ぎまわっている奴らがいないかの調査が必要だな。

「アース、正直こんな話を聞くことになるとは思ってなかったからちょっと混乱してる。だからアースの意見を聞きたい。俺とアースの持っているのが魔剣で、これまでの話からお互いが感じている妙な違和感が俺達と魔剣が繋がる? 切っ掛けの前兆だという事なんだろうが……アースはどうするんだ? 取り込むのか、もしくはそのまま使い続けるのかの意見を聞きたいぜ……」

 ツヴァイからの質問に自分は顎を撫でながら少し考えて……結論をツヴァイに告げた。

「取り込む、という選択を自分は取るかな。魔剣の事を知った奴が多く出て来て一々付け狙われるのは面倒くさいし、こいつを手放すという選択肢も選ぶ理由がない。だったら、機会が来たら受け入れるつもりだよ」

 腰に下げている惑の柄などを軽く撫でながら自分の考えをはっきりと口にする。自分の返答を聞いたツヴァイは「言われてみればそうだな。俺もこいつを誰かに渡すってのはありえないしな~」と、魔剣をぽんぽんと軽く叩く。

「そのまま共に戦いを乗り越え続ければ、そのうち魔剣の方から誘いがかかるはずです。その時に許可を出して体に魔剣を収めれば契約は完了となるはずです。そうなればもう二度と奪われることはありませんから、それまでの辛抱ですよ」

 ケティさんの言葉に、自分とツヴァイは同時に頷く。とりあえずの目標はそれだな……他の事は魔剣の事にケリがついてから考えればいい。

「あの、ケティさん。もう一つ質問があります。貴方と同等の知識を持っている……単刀直入にいえば魔剣の知識を持っていて、魔剣と魔術剣や魔導剣の違いを見極める事が出来る人はどれぐらいいますか? そして、その人達がすでにうちのギルマスやアースさんに目をつけている可能性はどれぐらいあると考えていますか?」

 と、ここでカザミネがそんな質問をケティさんに行った。自分が〈義賊頭〉として秘密裏に調べようと思った事だが……ケティさんがここでどう答えるかは気になるな。

「──この国の中に限っての話ですが、知識を持つ人と見極めがつく人はそう多くはないはずです。ですが、決して多くないと言うだけでゼロではありません。そしてすでに目をつけている可能性ですが……こちらもまた全く居ないとは言えません。だからこそこうして話をするためにあまり人の目につかない私の家に招かせて頂いた訳ですから」

 一刻も早く情報を集めて詳しく探る必要があるな。どれだけの連中がすでに目をつけていて、どれだけ危険なのか。それに自分にとって友人であるツヴァイの周辺に、必要以上の危機が訪れるというのも面白くない。モンスター相手なら自己責任だが、悪意ある奴らによる奇襲はなんとかこちらから先手を打って回避したい。この家を離れて宿屋に戻ってから行動しようという考えをこの時点で捨てて、今すぐ自分は行動に出る事にした。

(──居るか?)

 声には出さず、念じるような感じで天井裏に呼びかけた。一種の念話に近いような形である。そしてその言葉に応えるのは……

(へい。状況は理解しやした。早速動きやす)

 こういうタイミングは外さない義賊リーダーである。本当に有能な部下だ。今はそんな有能な部下がいる事に感謝しよう。

(頼むぞ。こういう仕事はお前達が誰よりも優れている)

 自分の言葉を聞いた後に、天井裏の気配が消える。早速行動に移ったんだろう。翌日ログインするときにはすでに情報がある程度集まっているはずだ。

「アース、重要な話が聞けたな。お互い十分に注意しようぜ」

 ツヴァイの声に意識を戻して「そうだな、十分に注意しないと不味いな」と相槌を打つ。だが、注意するだけではなく先手を積極的に打つつもりだが。周囲に魔剣持ちと知られるのはまあいい。

 いや、あんまり良くないのだが、自分やツヴァイに手を出してこないのであれば放置しておく。こっちに直接、もしくは間接的に手を出してくる連中だけをどうにか叩くと言うので精いっぱいになる可能性があるからな。それに、少々前に共闘した怪盗達のコミュニティが今度は敵になる可能性もある。怪盗が狙うお宝として考えると、魔剣は十分に見合う品だろうからな。

(もし怪盗コミュニティが敵に回ったら面倒なことこの上ない)

 戦闘能力はこちらが上だろうが、盗む能力はあちらが上だ。情報収集能力は同等と願いたいが……あちらの方が上だと考えておく方が無難だろうか。向こうの力を多少なりとも知っているだけに、もし本当に敵に回ってしまった場合は厄介な相手になる物だと痛感する。

「アースさん、どうしました? 具合でも悪いのですか?」

 急に自分が黙り込んでしまったのを見て、カザミネがそう声をかけてきた。自分は首を振ってその問いかけを否定する。

「具合が悪くないのならいいのですが。そろそろおいとましませんか? かなり長居をしてしまいましたし」

 ちらりと時計を見ると、確かにちょっと居座りすぎたと思われるだけの時間が流れていた。確かにカザミネの言う通りそろそろ失礼した方が良いだろう。

「お気になさらずともよろしいですのに。ですが、伝えたかったことはお伝えできましたので構いません。しつこいと思われるでしょうが、重々お気を付けください。欲に狂った人は何をするかわかりませんので」

 ケティさんからの忠告を最後に家からお暇した。そうしてお互いの宿屋に帰る途中でツヴァイが口を開く。

「とりあえず、うちの上位メンバー……ミリーとかレイジとかには今日の話をしておくぜ。知っておかないと不味いだろうし、もしかしたら突然不意打ちされるかもしれないからな」

 ツヴァイの言葉に自分は頷く。そうだな、心構えがあるかないかだけでも随分違う。それは話しておくべきだろう。

「そして提案なんだが。アース、宿を俺達と同じところに移さないか? 事情を知っている者同士、片が付くまである程度近くに居た方が良いんじゃないか?」

 ──それも一理あるな。義賊の面子とは直接面と向かわなくても話はできるようになっているし、こちらが集めた情報からツヴァイ達が知っておくべきことを流しやすくもなる。

「解った、じゃあちょっと付き合ってほしい。自分の泊まっている所を引き払ってそっちの宿屋に移るから」

 こうして自分は宿屋をツヴァイ達が宿泊している宿に切り替えた。魔剣の一件は長引くか、それともあっさり終わるのか。さっさと終わってほしいんだなぁ。
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という事で、〈義賊頭〉としての姿で動くことが増えそうです。表と裏を行ったり来たりですね。
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