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城下街でのあれこれ&妖精城の中へ

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「なるほど、では馬車を包囲した盗賊団は君が戦って始末した……という事で良いのだね?」

 城下町についた自分であったが、話を聞きたいという騎士団の求めに応じていた。断る事も出来たのだが、ここで変に断って後ろめたい物があるのでは? なんて感じに騎士団から変に勘ぐられたらたまったものではない。何も悪い事はしていないのだから。

「はい、そして今までお話したことが今回の顛末となりますね」

 内陸街で馬車に乗り込んでから城下街に来るまでにあった事はすでに包み隠さず話した。隠す必要性は全くない事ばかりだ。後は横転した馬車の確認を騎士団の人達が済ませれば、こちらの話を納得してもらえるだろう。実際、騎士団の人達からの問いかけは穏やかであり、自分を盗賊団の一味であるなどと疑っている様子は感じられない。

「よく分かった。あの盗賊団はこちらも捕まえる事が出来ずに手を焼いていたのだが……今回の一件で大幅に弱体化したはずだ。この国における治安回復、そしてなにより人命を救ってくれたことに心より感謝する。欲を言えばぜひわが騎士団に入ってほしいぐらいなのだが……」

 騎士団に入る、というのは無理だ。それは向こうも解っているのだろう。それでも力がある人を引き込みたい、という感情が湧いてくるのは理解できる。

「申し訳ありません、お声をかけていただいたこと自体は光栄なのですが……」

 なので、こちらも言葉を濁しながらも騎士団に参加することはできないという空気をにおわせておく。向こうも入ってもらう事は無理だと分かっていたのだろう、それ以上に追及は無かった。

 これは蛇足かも知れないが、その気があればプレイヤーがこういったこちらの世界の団体に属することは可能となっている。以前サーズにモンスターを引き寄せてしまった三人のうちの一人が、奉仕作業として街の衛兵隊の中に組み込まれたのもその一例と言って良いだろう。

「仕方があるまい、そちらにも相応の事情があるのだろう。調書作りへの協力に感謝する」

 との一言で自分は解放……という言い方は正しいかどうか微妙だが、とにかく騎士団からの質問は終わった。さて、これから妖精城に向かうとちょっと遅くなってしまうが……持っている物は一刻も早く届ける必要がある品物だから仕方がないと自分は考え、足を進めた。


 そうして歩くこと二十分。久々に妖精城の前にまでやってきた。アクアはずーっと自分の外套の中に隠れてもらっているので窮屈そうだが、もうちょっと我慢してもらうしかない。自分が妖精城に近寄れば当然……

「そこの者、そこで止まれ! ここは女王陛下の住まわれる王城である! 特に用事がないのであればそれ以上近づくことなく引き返すが良い! そしてもしどうしても陛下に伝えるべき用事があるのであれば素顔を見せて要件を伝えるがよい!」

 と、門番さんが数名こちらにやってきた。なので外套のフード部分をおろし、フェンリルの革で出来た頬当ても取って素顔を門番さん達に見せる。そうすると、門番さん達の態度が一変した。

「こ、これはアース殿! 大変失礼をいたしました!」

 一斉に頭を下げてくる門番の皆さん。いや、あの。そんな風にされるとこちらも非常に居心地が悪いのですが。

「いえ、皆様のお仕事の邪魔をしてしまって申し訳ない。今回ここにやってきたのはどうしても女王陛下か、陛下直属の配下である六色の髪の毛を持ったどなたかに直接お伝えしなければならない要件が出来てしまった為なのです。繋ぎを取ってもらう訳には参りませんか? 出来るだけ静かに」

 自分の要望に対し、門番さんの一人が「はっ、直ちに」と敬礼して城の中に入ってゆく。そして待つことしばし、女王の側近である水色の髪を持つロングヘアーの女性が城門前にやってきた。

「アース様、お久しぶりでございます。今回はかなり重大な問題が発生したとの事ですが……詳しく伺ってもよろしいでしょうか?」

 この言葉に自分は頷くことで肯定の意思を伝える。自分の意思を確認した側近の女性は城の中へと自分を招き入れた。やっと今回の目的が果たせそうだ。城内を歩き、個室へと案内された。その部屋の中には、銀髪の神を持つ男性がいた。彼も女王陛下の直属だったな。

「ここならば、外に声が漏れる事もありません。アース様が直々に来られたので、本来ならば女王陛下をお連れするのですが……申し訳ありません、政務が立て込んでおりましてもう少々時間がかかります。それまでの間、私たちがお相手させていただきます」

 自分が椅子に腰かけた後、そう言って側近の男女2人はこちらに向かって頭を下げてきた。まあこの側近ならば問題はないか、女王陛下や妖精国にとってマイナスとなるような行動はとらないはずだし。こちらに頭を下げ終わった後、二人も椅子に着席する。自分と女王側近の二人とは、テーブルを挟んで向かい合う形だ。

「解りました。では早速ですが、ここにやってきた理由はこれを妖精国にお届けするためです。まずは見ていただきます」

 そう一言断りを入れた後に、宝珠、宝剣、魔除けの三点セットを取り出して丁寧にテーブルに置く。出された三点セットを側近の二人は最初何だこれは? という感じで見ていたが、銀髪の男性の顔色が一気に悪くなっていった。

「まさかこれは……先代の時に宝物庫からいつの間にか失われていた我が国の国宝ではないのか……!!?」

 この銀髪男性の大きな声に、水色髪の女性は「ちょっと、それは間違いないの!?」とこちらも先程までの落ち着いた雰囲気は無く、混乱している様子が伺える。銀髪の男性が宝珠、宝剣、魔除けを念入りに確認して「間違いない、これは本物だ……」と確信すると、当然直属の二人の視線は自分に向く。多少の殺気と困惑も混ざっている。

「とりあえず、ここに運ぶことになった経緯を説明させていただきます。よろしいでしょうか?」

 と、側近の二人にここまで持ってくることになった経緯の説明。ある程度内容はぼかしたが(特にサーズの富豪が賊を使って盗み出し、コレクションとして持っていた可能性が高い事などは話さなかった。むしろ本来なら自分がそこまで詳しい内情を知っていたらおかしいのだし)、人族の上に立つ者が見つけだして妖精国の国宝であると鑑定できたため、ここまで運んでほしいとの依頼を受けた。そしてここまで誰にも気がつかれぬように運んできたことも説明に付け加えた。

「そのお偉いさんは、妖精国はこの国宝が失われている事を内密にしたい心境を察しておりました。そのため大々的な形ではなく、一介の冒険者である自分に運ばせたのです。またそのお偉いさんは、人族は妖精族と争うつもりは全くない。妖精国の国宝がなぜこちらにあったのかは不明だが、これを即座にお返しすることで人族に敵意は無いという事を分かってもらいたい。と言っていました」

 一通りの説明が終わった後、側近の二人はお互いの目を見合わせていた。そしてほぼ同時に頷く。

「お話は分かりました。この一件、私達だけで処理することは難しいので陛下を呼んでまいります。そして二度手間を取らせることになってしまうのが申し訳ないのですが、先程の説明を陛下に直接貴方様の口でお話していただけないでしょうか?」

 大した手間とも思わないので自分は頷く。自分の意思を確認した側近の男性が女王陛下を呼ぶために部屋から退出する。クィーンと直接会うのは久しぶりだな。そしてこの指輪の事も話しておくべきだろうな。
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ちょっと短いのですが、一区切りするためにここで。
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