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人探し

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 カレーつくりから解放された翌日。自分は久々に痛風の洞窟攻略を進めようと考えていた。ポーションに強化オイルと言った道具も十分に用意し、こまごまとした物を買うために久々に道具屋を営むおっちゃんの店に向かった。だが、向かった先のおっちゃんの店は固く扉が締められていた。

(ありゃ? 今日はお休みなのか? だけど張り紙とか一切ないな……)

 張り紙などがあって、本日は休養のために休日とさせていただきますとでもあればさっさと帰るのだが……とりあえず、軽く扉をノックしてみる事にした。コンコン、コンコンとノックをして待つことしばし、店の中から足音が聞こえてきた。出てきたのは道具屋のおっちゃんだったが、すの姿はかなりやつれていた。

「すまねえが、今日は休みだよ。張り紙を……そういやしていなかったな。面目ねえ」

 声にも覇気がない。以前のおっちゃんからは考えられないその姿に、自分はつい質問を投げかけてしまった。

「それならそれで構いませんが、いったい何があったんですか!? ひどい顔をしていますよ!?」

 憔悴。一言で表現するのならその言葉がふさわしいだろう。一目見ただけで分かる、とてもじゃないが店を開けるような状態ではない。

「──よく見ればお前さんか。お得意様になりつつあるお前さんの来店なら、本来気前よく迎えてやるべきなんだが」

 どうやら、自分の声を聴くまで目の前に居るのは誰かという事すら分からなかったらしい。これは重傷だ。それをさすがに察した自分は一言だけ言って立ち去ろうとしたのだが──。

「いや、お前さんは冒険者だったよな!? 人探しは得意か!?」

 突如道具屋のおっちゃんは目を大きく見開いてそんな事を言ってきた。そして人探し……か。

「話を聞きましょう、詳しく教えてください」

 自分の中で、何かがかちんと動いたような気がした。


 そしてしばらくの時間を使って聞き出したおっちゃんの話を聞くと、どうも三日ほど前に娘さんと大げんかをした。そこまでは良い、だがそこから娘さんが家から飛び出して行ってしまった。その時は頭に来ていた事もあり、どうせしばらくすれば帰ってくるだろうと考えていたらしい。だが、昼になり、夜になり、深夜になって、ついには夜が明けても戻ってこなかった。娘さんが帰ってこない事でその日からおっちゃんは一睡もできていないらしい。

 翌日、さすがにおかしいと妻と一緒に探しに出たが一向に見つからない。近所の人や自警団の人に話を聞いたが、見ていないという。あちこち歩き回って、もしかしたらもう家に帰っているのではないか? という一縷の望みを胸に家に戻ってきたが、娘さんの姿は無かった。さらにその翌日も探しに出たが、成果は何もなし。自警団の人にも似顔絵を、渡して見ていないか? と聞いて回ってみた物の、申し訳なさそうな表情で首を左右に振られるだけだった。

 もちろん自警団の皆さんも一大事だという事で捜索に力を貸してくれているらしい。だが、それでも未だ見つかっていない……そしてこれから娘さんを探すべく、おっちゃんは今から家を出る所だったらしい。ちなみに奥さんも憔悴してしまい、今は寝込んでしまったらしい。

「完全に娘の事を甘く見た俺の失態だ。多くの皆さんに迷惑をかけてしまっている事については、あとからしっかりと詫びさせてもらうつもりだ。それでも俺は、早く娘を見つけたい……妻の事は心配だが、妻も『今は私よりあの子の事をお願い』と涙ながらに頼んできている。頼む、大したお礼はできそうにねえが、力を貸してくれねえか!」

 こんな事件が起きていたなんて。カレーを作っている時にやたら自警団の人達がやってくるなと思ったが、こんな事情があった故にか。顔見知りが困っているとあってはほおって置けないな、ここは一つ、協力してあげないと。

「そんな状況では仕方がないですよ。探ってみますので、娘さんの似顔絵を一枚いただけませんか?」

 そう言っておっちゃんから渡された一枚の似顔絵に書かれていた女の子は、十歳ぐらいのあどけない少女だった。


「なるほど、あっしら向きの仕事……というわけで」

 似顔絵を受け取っておっちゃんの道具屋を後にした自分は、人気のない場所に直行して義賊リーダーを早速呼び出した。

「ああ、当然俺も探すがお前達も協力してくれ。人手は多い方が良い、探し人なんて事になればなおさらだ」

 現代日本だって、人を探すとなれば大勢の人が動員される。どんな機材や技術があろうと、結局はマン・パワー、人の力と数が物事を動かしているのである。

「親分、人さらいにやられたって可能性は考えるべきですかい?」

 もちろんそれも含めて、だ。ハッキリ言うが、自警団の人達は基本的に優秀な人たちだ。そんな人達でも見つける事が出来ないとすれば、人の意識が向かない場所に居るか、攫われたかという風に可能性の選択肢が狭まってくる。そうなると表の力である自警団ではちょっと荷が重い。

 そんな表の存在が入り込みにくい所に入り込んで探すのが、自分達の様な義賊団の役目である。当然おっちゃんはそんな事を考えておらず、ただただ藁をも掴む思いでこちらに頼んできただけだろうが。

「それも考慮しておいてくれ。とにかく発見が第一だ、時間が経つほど状況は悪化の一途をたどるだけだ。万が一街の外に出て行ってしまった可能性もある、街の中だけではなく外の様子も見てこい」

 わかりやした、お任せ下せえと言い残して義賊リーダーは姿を消す。これで表は自警団とおっちゃんが。裏は自分と義賊団が捜すという布陣が敷けた。最悪の事態になっていない事を祈りつつ……自分もおっちゃんの娘さんを探すべく行動を開始した。家という家に密かに忍び込み、娘さんを探す。

 もちろんこれは不法侵入であるが……ばれないように立ち回る術はもう心得ている。もちろん、ワンモア世界でしか通用しない方法だが。リアルじゃこんな動きはできないって行動も多いからな。

 いくつかの家に忍び込むが、誰かを無理やり押し込めている様子がない事が分かれば即座に失礼するのでそれなりのスピードで調べる事が出来ている。だが、それでもまだ見つかってはいない。時々義賊団のメンバーと確認するが、発見報告はない。外の様子を伺いに行った者からも成果なしとの返答のみ。

 ただ唯一の救いとして、『街の外に出た様子は無し、あくまで街の内に居る』との報告があった事だ。どう調べたのかは知らないが、この義賊団が自分に対して虚偽の報告を行うことは無い。たとえそれが悲惨な結末であったとしても、だ。

 しかし、それ以外の情報が全く入ってこない。義賊団のメンバーが手を抜いている可能性も無いが、いまだに発見報告はない。確かにこの北街はかなり広く、一日二日でどうにかなる規模ではない。

 だが、すでにおっちゃんの娘さんはその姿が見えなくなってから三日が経過している。もしおっちゃんの娘さんが一切の水分補給を行えてなければ、かなり不味い状況になっているはずだ。急がなければならない。

「親分、すいやせん。まだ見つかったという報告は……」

 スキルを多用しているため、空腹感と渇水感を感じた自分が食事と水分補給を行っている所に義賊リーダーがやってきた。むう、そうか。

「仕方あるまい、この北街は東や南と大差ない大きさだ。お前たちが優秀でも、時間がかかるのは止むをえん。ただ、引き続き調査を頼む」

 自分の言葉に頷いて義賊リーダーは再び探索に戻る。自分も腹を満たし、のどを潤した後は再び探索に戻る。しかし、ログアウト時間をやや引き伸ばしてまで探索を続けたが──この日はおっちゃんの娘さんを見つける事はついにできなかった。
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最近出番が多い義賊団のメンバー。

スキル

風迅狩弓Lv40 剛蹴(エルフ流・一人前)Lv38 百里眼Lv32  技量の指Lv49 ↑1UP 小盾Lv31 隠蔽・改Lv7 ↑4UP  武術身体能力強化Lv82 ダーク・チェインLv44
 義賊頭Lv31 ↑2UP 妖精招来Lv16 (強制習得・昇格)(控えスキルへの移動不可能)

追加能力スキル

黄龍変身Lv1.88 ↑UP

控えスキル

木工の経験者Lv8 上級薬剤Lv27  釣り LOST!  料理の経験者Lv22 鍛冶の経験者LV28 人魚泳法Lv9 

ExP 28

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル  悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人
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