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連載

森での戦闘と休憩時間

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締め切りが近いのに、六巻の原稿作業が終わらない。
嘘だと言ってよエイプリルフール!
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 さらに蟻の注意をこちらに引き付ける為に、自分とシェルフィルさんは次々と矢を射る。自分の放つ重撲の矢で怯み、その隙にシェルフィルさんの矢が蟻を貫く。そしてロナを狙った蟻が弱った所にカザミネの魔大太刀が刃を煌めかせてその蟻を一閃。首をばっさりと断ち切って即死させる。

「よっと、今度は落ち着いたから大丈夫。復帰するよ!」

 ロナがそう一言声をかけてから、戦闘に戻ってきた。今度は自分にターゲットが向かない程度に攻撃を押さえてじっくりと攻撃を加えている。そのお蔭でモンスターのターゲットがほぼリフールさんに固定されるようになってきている。

「《アクア・フルヒール》ですよ~、頑張ってくださいねー」

 ミリーも攻撃を四、支援を六の割合で立ち回っている。こうなってくると、モンスターの攻撃にリフールさんが倒されない限りこちらが負ける要素がなくなる。焦らずに蟻のHPを削り、酸攻撃を妨害し、追いつめる。そうして蟻全体が弱って動きが鈍くなってきたところに、再びカザミネの魔大太刀がその刃を蟻の一匹の首に食いこませて斬り飛ばした。

「これであと二匹です! 落ち着いて攻めましょう!」

 蟻たちも粘ったが、今のカザミネの剣技の冴えはそれを上回った。結局残りの二匹もカザミネの魔大太刀にとって首を刎ねられることで倒されることになった。昆虫系のモンスターの首刎ねを、カザミネは得意とするんだろうか? この後休憩を取るはずだから聞いてみようかな。

 それから数分ほど歩き回ってみたが、罠もモンスターも見つける事が出来なかったので休憩となった。時間的にはこれで半分ぐらいか? あと一時間もしたら森の出口を目指すことになるだろう。さて、早速先程の事を聞いてみるか。

「カザミネ、ちょっといいかな? 先程の蟻との戦いなんだが……よくあれだけスパスパと蟻の首? に当たりそうな部分を絶ち切れたね? もしかして、昆虫系と戦うのは得意だったりするのか?」

 休憩中なのでカザミネは口に飲み物を運んでいたが、それを中断して応えてくれた。

「いえ、そうではないんです。なんとなく目の前に居るこいつらなら急所を斬れそうだなって言う気分になる時があるんですよ。そしてそんな気分になった時は、不思議とよく先程のように首とかの弱点を的確に斬れるんです。

 逆にそんな気分になってない時に無理にやっても全然斬れないというムラがひどい一面もあるんですけどね。これをもっと狙ってやれれば強くなれるんでしょうけど……ちなみにさっきの蟻の前に戦ったイノシシたちの時にはそんな気分がやってこなかったので、普通に戦いましたけどね」

 気分の問題で済むなのかね、それは。何らかのスキルじゃないかなとも思うが……もしくは、カザミネが使っている氷の大太刀に秘められた隠しスキルとか。

 もちろん、本当にカザミネ自身の直感みたいな物が働いて、斬れる時と斬れない時の見極めが出来ている可能性も否定はできない。実際にカザミネは剣道をやっているって事だし、そう言う戦いの場での呼吸を体験している経験からくる物というのもあるかも。

「ギルドメンバーにも聞かれるんですけど、本当に自分の感覚でしかないので説明のしようがないんですよね。全く同じ敵と相対しても、斬れる時と斬れない時のムラは健在ですから。一時期、出来るのにサボってるんじゃないの? と他のギルドメンバーに疑われたこともありますし」

 ふーむ、確かに自分にもちょっと難しい仕事なのにスムーズにできる時とか、そんなに難しくないはずなのに妙に上手く行かない時とかがあるからなぁ。もちろんどっちもサボっている訳ではないのだが、不思議となんでも上手く行くとき、行かない時と言う物はある。カザミネの場合は、それが特に強く大太刀での攻撃に出て来るんだろう。

「でも、調子が上がっている時のカザミネ君は本当に強いからね~。うちのギルドの新人さんもそのムラの大きさに誤解することも多いんだよねえ」

 そこにロナとミリーが話に加わってきた。ロナもそのカザミネが誤解を受けた一件は知っているという事か。

「どの世界でも調子のいいとき悪い時はありますからね~、カザミネさんを責めてもしょうがない事なんですよねぇ……うちの子達も、一部ではあるんですけど困った物ですね~」

 ミリーも知ってる……ということは、いつものメンバーは全員知っていると考えて間違いはないな。

「あの、その誤解した人達はどうなったんです?」

 さすがに気になったので聞いてみる事にしよう。知り合いがそんな息苦しい状況に置かれているのは嫌だし、力になれる事があるならば何とかしてあげたい。

「大丈夫ですよ~、皆さんにちゃんと〝お話”しましたから~。ええ、皆さん快く誤解を解いてくださいましたよ~」

 おかしい。言葉自体はのんびりとしているのに、空気が冷たい。黒ミリーが降臨なさったようだ。〝お話”の内容には触れない方がよさそうだ。触らぬ神に祟りなしの言葉に従う事にしよう。とにかく、今はそんな息苦しい事になっていないと言うのなら問題はないだろう。

「了解、でもどうしても聞いてみたくなるぐらいの剣の冴えだったからなー。気を悪くさせたなら済まなかった」

 カザミネに頭を下げておく。嫌な思いをさせてしまったかもしれない以上、きちんと謝っておきたい。

「いえ、気にしないでください。時々自分でも嫌になる時があるんですよ、もっと安定して先程の様な一撃を繰り出せるようになれないのかと素振りやらPvPやらもやってるんですよ。ある意味リアルよりも必死に真剣にやってるほどです。他の人からしたら何やってんだってそうツッコミを入れられても仕方がないと思いますが」

 カザミネもそんな修行をしてるのか。それにしても素振り、か……ただ何も考えず振ってるだけなら意味はないが、いろいろと考えながら行う素振りなら意味があるか。きちんと相手を想定して行うボクシングのシャドーと同じ考えだな。ゲームのスキルは上がらなくても、プレイヤー自身の技術を上げる事には役に立つだろう。

「ふむ、やはり貴公も一人の武士もののふなのだな。良いではないか、真剣に打ち込む姿を笑う奴らの方が愚かなのだ。私はそんな風に物事に対して真剣に打ち込むことができる者の方が好ましく思えるぞ。何か一つをいい加減にする者は、不思議とすべてをいい加減にする。そんな奴らの姿は醜悪極まりないからな」

 ここで、話にシェルフィルさんが入ってくる。確かにそうだな、ワンモアは遊びではあるがどうせやるなら真剣に。その辺の意見は自分も同意できる。もちろんのんびりプレイを否定するわけじゃない。ただ、真剣にやっている人を笑う事は宜しくないと言うだけで。

「私もそう思います~、カザミネさんが真剣に打ち込んでいる事は見ていればわかりますし~。それにそんなカザミネさんの姿を見て、ツヴァイ君やレイジ君も影で訓練してるんですよ~。二人とも、私に気がつかれてるとは思ってないでしょうけどね~。これは他の人には内緒の話、ですよ~」

 結局、どこの世界でも上に居る人はそれなりの事をしてるって事だよな。現実のスポーツにしても、勉学にしても、そして今こうしてやってるゲームの世界でも、気合い入れてやってる奴が上に行くもんだ。そう、どんなところでもそれは変わらない。

 もちろん才能の有無はある。特にスポーツではもって生まれた資質の違いが残酷な差を生むことは分かっている。これだけ生きていれば、頑張れば報われるわけではないという現実を嫌というほど知っている。それでも、成功するには努力をするしかない。努力をして、挫折して、這いつくばって、そこからまた立ち上がって来れなきゃ成功する可能性はゼロのままなのだ。

 色々な物語の主人公が多くの仲間を得るのはイケメンだからじゃない。優しいだけじゃない。力があるからでもない。倒れてもそこから歯を食いしばって立ち上がってくるからなんだ。一回の失敗でもうダメだと物事を投げ出す人間に、魅力を感じる人はまずいないだろう。

「では、強くなる為にもそろそろ我々の修行を再開しようか。十分に体も休まっただろう?」

 リフールさんの声に皆が頷いて立ち上がる。ここで気合いを入れ直して行ってみようか。
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本日の作業用BGM

ニコニコで見つけたジョジョASB動画にて

「15分間ブチャラティがボスをアリアリし続けるだけの動画」

これはネタでも嘘でもなく本当です。けっこう聞ける。
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