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準決勝進出者は……

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コミカライズ版『とあるおっさん』ですが、
もうすでに普通に売られている様ですね。発売日は25日と
こちらは聞いていたのですが……申し訳ないです。
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 作っておいたカレーがかなり少なくなったので、お店をいったん中断して追加分のカレーを仕込んでいる時にレイジとガルの対戦結果を伝えるツヴァイからのメールが飛んできた。今回の勝者はレイジ。メールには決着がついたときの様子も書かれていた。

 お互い残り体力ぎりぎりまで削り合う壮絶な読み合いの勝負になったらしいが、終盤でガルの放った大魔法をそこまで温存していた大盾系防御アーツ《ブレイクマジック》にて無力化し、これまた温存しておいた片手斧系アーツの《スローイングミーティア》を発動。

 説明によると片手斧を投げて強烈な回転を生み、それを相手にぶつける事で攻撃するアーツらしいが、片手斧を投げた後は自分で回収しないといけないという点からむやみに使えないアーツらしい。

 だが、ここまでアーツを見せない事でガルの意識からそのアーツの存在を消失させていたレイジは、大魔法を撃って僅かながら硬直したガルにアーツを発動して自分の片手斧を投げつけた。

 この《スローイングミーティア》に不意を突かれる形となったガルは、飛んでくる片手斧を相殺するために《ライトニング・スプラッシュ》と言う複数の雷が相手に襲い掛かる風と光を融合させた魔法で迎撃することで、飛んできた片手斧を撃ち落そうとした。が、とっさに放った分威力が落ちて(威力が低かった理由は詠唱時間が取れなかったのか、無理やり短縮して放ったのが原因なのかはツヴァイも解らないと書いてあった)、片手斧の勢いをある程度落とす事しかできず、ガルの左肩にレイジが投げた片手斧が深々と突き刺さる結果になった。

 そうしてさらに動きが止まったガルに、レイジが最後のチャンスと見て猛然と突進して距離を詰めた後にサブウェポンである短剣をガルの心臓付近に突き立てた。これがトドメとなってガルを武舞台に張られている結界から追い出すことに成功。

 決着がつき、勝者としてレイジの名前が呼ばれた後、レイジはその場で膝から崩れ落ちたらしい。そのあと十秒ぐらい後に立ち上がったらしいが、普段あまり見せない疲れた表情をしていた……とある。とはいえ、あの強者揃いのグラッド率いる一団の一人勝つとは……以前に短剣のスキルあげでPTに同行したこともあったが、そう言う地道な努力がここで実った事になるな。

 メールの最後には、見ている方も手に汗を握った。そして決着がついた後はツヴァイ達だけではなく、周囲の人々も一斉に大きく息を吐いたらしい。それだけ見ごたえがある一戦だったという事だろう。もちろんその後は盛大な拍手が贈られた──ともあるな。何にせよ、レイジ準決勝進出おめでとうとメールを送っておこう。さて、結果も解ったのだからカレーの製作に集中するか。


 そのままカレーを十分に作ったので露店を再開。リピーターもそこそこいるようで売れ行きは順調だ。その反面、義賊リーダーからの報告内容は思わしくない。一人、魔剣騒ぎの時に逃げ出した残党を捕えたらしいのだが、そいつは歯の中に仕込んでいたと思われる毒物をあおる事で尋問を逃れて自殺したらしい。一言、『あと数日後、お前達は間抜けな面を晒すことになるだろうぜ』と言い残して。そんな言葉は、何かしらの計画が進んでいなければ口にできる事ではない。

 なので、北町隠蔽兵の皆さんには、闘技大会に来ている議員のお偉いさんの警備を強化する方向で進めて貰っている。もちろんこれは隠蔽兵だけではなく、多くの護衛を行っている兵士の皆さんとも連携しての話だ。そう言った報告に動く事が出来るだけの余裕が出来たと言うのが大きい。

 今までの義賊&忍者&北町隠蔽兵の努力によって、ほとんどのならず者は排除されている。もちろんゼロになった訳ではないが、お祭りが始まった直後に比べれば大幅に減った。これで、残党さえいなければやっと一息つける所だったのだが。

 部下からの報告と隠蔽兵の皆さんからの相談を受けた結果、義賊団は最後まで街の見回りを重視することに決まった。隠蔽兵の皆さんは議長を始めとした重要な議員を裏から護衛。もちろん一般兵に紛れての護衛も並行して行う。最後に忍者の皆さんは六割街に、四割隠蔽兵さんのアシストに動くことになった。残すスケジュールは、リアルタイムで今日と準決勝が開かれる明日、そして決勝戦が開かれる明後日。肝心なのはこの三日。

 この大会が終われば特に護衛が必要となる獣人連合国の中央からやってきた議員の皆さんは即座に帰る。中央から来ている議員さんは発言力も強く、国家運営に重要な立場でもある。もちろん選挙で選ばれるので、アホな事をやったら即座に下ろされる身分でもあるらしいのだが。

 それはさておき、今の議員の皆さんはおかしな政治をする人たちではないと隠蔽兵の皆さんから聞いているので、しっかりと護衛をしなければいけない──が、それを自分を始めとした見ず知らずの義賊団にやらせる訳には行かない。当然これは信用の問題だ。すでに獣人連合の中にその身を置き、お互い陰で協力し合っている(と思われる)忍者の皆さんはある程度の信頼を得ているはずである。そうでなければ隠蔽兵の皆さんのサポート役として選ばれるはずがない。

(こういうのって打って出れればすぐに片がつく事が多いんだが、大抵受け身にならざるを得ないんだよな。それに優秀な義賊のメンバーですら尻尾がつかめないと言うからには、それなりの協力者がいるって事なんだろうか。あいつらがここまで苦戦するのは初めてだし、厄介すぎるな。連中のアジト何なんなりが分かれば早いんだが、この調子ではそれも望めんか)

 笑顔でやってくるお客への対応を行いつつ、頭の中ではこれからやってきそうな事柄を予想する。だが、それは所詮机上の空論。今までの経験も加味して考えてみるが……どうにもしっくりと来ない。

(唯一予想できるのは決勝戦終了後の表彰か。確かその時は中央の議長が代表として優勝者を称えるのが決まりとなっていたな。おそらく残党はそこを狙うんだろうが……出場者の中に暗殺者が混じっている可能性もあったが……これは今後の結果次第で消えるな。決勝戦が知ってる顔になる可能性も十分高いし)

 お客はとぎれとぎれではあるものの、それなりの人数が来る。お蔭で追加したカレーも残り半分をきっているので、今日も露店は早上がりになるかもしれないな。ただ、とぎれとぎれであるために、空いた時間である程度の思考をする時間はある。だが、いろいろ考えた上でシミュレーションを行っても今一つなのだ。

(結局ぶっつけ本番か。裏で処理できれば良しとするしかないか)

 下手な考え休むに似たり……とりあえず最後の日までこの警戒態勢を維持して、問題が発生したらその場で行える方法を持って対処するしかないんだろうなぁ。軍師の様な脳味噌がない自分にはそれが精一杯か。とりあえず切り札はいくつも温存しているし、最悪の時は切る事も考えておこう。黄龍とかな。

 そんな事を考えつつ行った今日の屋台も無事に売り切れ完売となった。屋台を片づけていると、ブルーカラーのメンバーがやってくるのが見えた。手を上げて挨拶をして来たので、こっちも手を上げて応える。やってきた理由はおそらく勝利の報告だろう。

「アース、屋台の方は終わっちまったか? ちょっとレイジの勝利を祝うために飯を作ってほしいんだが厳しいか?」

 ツヴァイの言葉にうーんと唸る。おそらく強敵であるガルを打ち破って準決勝に進んだレイジの勝利を祝いたいんだろうが、この場は露店や屋台を出す人のためのスペースだ。商売を終えた自分がこの場に居座り続けるのはあまり宜しくない、か。

「飯を作るのはいいけど、さっき屋台を片づけていた事で分かるように自分の今日の屋台でのカレー販売は終わっちゃってね。ここでレイジの勝利を祝うのはちょっとまずい。場所を移そうか」

 こう自分が言った時、「ちょっと待ちな!」と横から声がかかった。自分の隣で屋台をやっている狸の獣人さんだった。

「そういう事なら、あたしの屋台を貸してあげるよ。今日はもうあたしも仕事は終わりにして休むから、あんた達の勝利を祝う席に同席させてもらえないかねえ?」

 という提案をされた。なんでそんな事を? と理由を聞くと、実はレイジにそこそこのお金をかけていたらしく、「読みが当たって今のあたしは機嫌がいいのさ」とのお返事。今日の倍率っていくつだっけ? とカザミネに聞いてみた所、「ガルさんが二.三倍。レイジさんが三.一倍と言う数字だったはずです」と教えてくれた。そうか、賭け金が三倍になったのなら結構大きいな。

「ふむ、皆はどうだろうか? このお話に乗るかい?」

 自分がこう問いかけると、ブルーカラーのメンバーは頷いた。なのでお隣の屋台を借りる事になった。幸いお隣さんは肉を扱う露店だったので、火が使える事が有難い。これならば大半の料理はどうにかなる。さて、それでは勝利を収めたレイジにリクエストを貰う事にしますかね。

「ではレイジ、希望はあるか? 無いなら適当に作ってしまうが」

「そうだな……では、今日は肉料理をメインにしてもらえるだろうか?」

 ふむ、今日のレイジは肉料理をお望みときたか。そうなると、一発目は和風タレのステーキを焼くか。和風タレならば、さっぱりとして食いやすいだろうからな。そう決めて、バッファローの肉を取りだし下ごしらえを行ってから焼き上げる。そうだ、どれぐらいの焼き具合が好みなのかを聞いておかないと。

「皆、ステーキの焼き具合はどうする? 希望がないなら良く火を通したウェルダンにしてしまうが」

 ステーキと聞いたことで俄然食い気を出してきたブルーカラーのメンバー。ちなみにレイジはウェルダンを希望した。他のメンバーはレア、ミディアムを希望する人もちらほら。それでは焼きに入ろうか。まずは今日の主役であるレイジの分だ。ウェルダンだからこんな所か……あとは大根と大葉を使ってソースを仕上げる。大根はすりおろし、大葉は丸めて千切り。ソースとなる調味料は醤油 お酢 酒 みりん 砂糖。これらを調合した調味料はある程度に立たせてアルコール分とお酢の酸味を抜く。後は焼きあがったステーキに大根おろしと大葉を程よく乗せ、その上からソースを掛けて完成。

「あがったよ。じゃあレイジ、今日はお疲れさん。明日からまた大会頑張ってくれ!」

 おおー、とブルーカラーメンバーの声が上がる中、出来上がったステーキを置く。

「他の人のはすぐ仕上げるから、もうちょっと待っててくれよー」

 その後はステーキだけではなく、から揚げとかチキンライスとかもふるまう事になった。肉が多いので、レモンとかの柑橘類を使用することで舌が疲れ切らないように配慮したためか、皆さんよくお食べになられた。ひたすら皆が満足するまでそのお蔭で、料理のスキルレベルが上昇したから良しとしよう。
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スキル

風迅狩弓Lv50 The limit! 剛蹴(エルフ流・一人前)Lv42  百里眼Lv38  技量の指Lv54  小盾Lv39  隠蔽・改Lv7  武術身体能力強化Lv90 ダーク・スラッシャーLv1 義賊頭Lv45 ↑1UP 妖精招来Lv17 (強制習得・昇格)(控えスキルへの移動不可能)

追加能力スキル

黄龍変身Lv1.94

控えスキル

木工の経験者Lv8 上級薬剤Lv34  釣り LOST!  料理の経験者Lv27 ↑2UP 鍛冶の経験者LV28 人魚泳法Lv9 

ExP 4

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル  悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人

強化を行ったアーツ

《ソニックハウンドアローLv5》
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