上 下
324 / 533
連載

黄龍様との再会

しおりを挟む

 翌日ログインした自分は、アクアを頭に乗せたまま龍の儀を行っている場所へ向かう。雨龍さんも黄龍殿が待っているので会いに行けとは言ったが、場所の指定は無かった。だから、行き先はあの場所で良いはずだ。 

 今日も龍の儀に挑む人はそこそこいるようだ。装備の質から見て、プレイしてまだあまり時間が経ってない人も多そうだ。それでもここまで上がってきた以上、相応の力は持っているんだろうけど。

(人の事はどうでもいいか。それよりも呼び出しを食らった理由だよな)

 こうなった大体の理由は予想がついている。そのため、黄龍のおじいちゃんに呼び出されるのも止む無しとも思っている。後はその予想が正しいかだけ、か。そんな考え事をしているうちに自分の番が巡ってきた。案内役の片に一礼し、フードを外して顔を見せる。通って良し、とのお言葉を頂いてから中に足を踏み入れた。ここに来るのは三度目か。

 そうして入った先には、やはり坂道に立ち並ぶ無数の黄金に輝く鳥居があった。黄金の鳥居があると言う時点で、黄龍のおじいちゃんがいる事は確定だ。立ち止まっていても仕方がないので歩き出す。多数の鳥居をくぐって坂道を登り切れば……黄龍のおじいちゃんと、神龍の分身体である幼女が相変わらず畳を敷いてその上に茶歩合を設置してお茶を飲んでいた。

「ようやく来たか。あまり老人を待たせるものではないぞ?」

 黄龍のおじいちゃんにそう言われてしまうが、こちらとしても色々とあった訳で。軽く謝りながらも、こちらはこちらで忙しかったと伝えておく。決して意図的に遅くなったわけではないのだから、多少反論しても問題はない、はずだ。

「入り浸っておいてよく言う……これで試験の時にも口出しして来るようじゃったら追い出しておる所じゃ」

 龍神の分身体である幼女は、頬をぷっくりと膨らませながら黄龍にそう抗議するのだが……その可愛らしい姿は、黄龍を微笑ませるだけにとどまる。本来の姿を取ればそれ相応の威圧感を放つのだが、幼女の姿で膨れっ面をされても微笑ましいだけだし。まあ座れと言われたので畳の上に胡坐をかく形で座り、幼女からお茶を頂く。

「さてと、龍神の分身体をからかうのはこれまでにしておこうかの。アースよ、なぜ呼び出されたか、お主は分かるか?」

 ああ、やっぱりからかっていたんですが。ほどほどにしてやってください。そして、呼び出された理由は、あれしかないだろう。あまり思い出したくないのだが、忘れる訳には行かない一件。

「エルフの森で行ったあの、ハイエルフとの……」

 戦いの一件ですね。と言おうとしたのだが、途中で黄龍のおじいちゃんがそれ以上は言わなくていいとばかりに手を出してきたので途中で喋る事を止めた。ゆっくりと手を下ろした黄龍のおじいちゃんの表情が険しい事から、やはり呼び出された理由はそれだったようだ。

「先に言っておくが、儂はお主を責めるつもりは全くない。むしろ、あのような外道に対して誅を下す事は間違った事ではないとも思っておる。それに、お主があの場で怒りを爆発させたことも間違っているなどと言うつもりも無いぞ。むしろ良くやったと言っても良い」

 そう前置きをした黄龍のおじいちゃんが、「しかし、じゃな」と話を続ける。

「怒りが切っ掛けになったのじゃろうが、お主はあの時、非常に危険な状態にあった。儂が掛けておいた制限をお主が無意識に破壊してしまい、黄龍変身の制限時間を無理やり引き伸ばしてしまっていた。あのままお主が黄龍変身を続けておれば……お主は消滅しておった。文字通り、魂ごと、な」

 ──あの時。すべてが終わってから自分のステータスを確認した時に、いろいろなスキルのレベルが下がっていた。大半はチグルイと言う弓に変質してしまっていた弓のせいだったのだろうが、それだけではなかったという事か。

「あの、一種の暴走状態にあった時のお主は、黄龍になるための経験経て得た力を食いつぶして変身時間に当てておったはずだ。幸いお主はそれなりに力を得ておったようじゃから、現世に踏みとどまる事ができたようじゃがな。じゃが、あの時にもし黄龍となる力を使い果たしてしまっておった場合は、まず精神力を食われたであろう。次に生命力。最後は魂じゃ。力は肉体だけでなく、魂にも宿るものでな。だからこそ健全な肉体と健全な魂が強者となるには必要なのじゃ」

 ここでのどが渇いたのか、お茶を飲んで一息つく黄龍のおじいちゃん。あの時、黄龍変身のスキルレベルが一気に下がっていたのはそう言った理由があった為か。そうなると、それ以外のスキルが下がって釣りスキルが完全に消失したのはチグルイが原因となるのか。どちらにしろ、この世界ではスキルの低下は魂を削る事と表現されるようだ。

「くどく言うが、お主を責めはせん。じゃが、何が原因であるにせよ、度が過ぎた力を振えば自らも破滅する物じゃ。むやみやたらとするべき事ではないぞ。もちろん、そんな無理をしなければならぬ時があるという事もまた分かってはおるがの。それでもついついこういった事を念押ししておきたくなるのじゃよ、年寄りは。うるさく感じたのならすまんな」

 つまり、黄龍のおじいちゃんは心配してくれた訳だ。むやみやたらと力を振って、志半ばで心身が消失するようなことにならぬようにと忠告をくれたと。

「いいえ、ご丁寧に忠告ありがとうございます。肝に銘じておきます」

 なので、自分はお礼を言いながら頭を下げる。こういった忠告をしてくれる人と言うのは、世の中にはそんなにいない。さらに、こういった忠告は、大半がその人が歩んできた人生の中か得てきた経験からされている事が多い。なので、素直に聞いておく方が良いのだ。処世術と言う意味ではなく、まじめに受け取るという意味で。

「前にもいったが、お主には早死にしてほしくはないからの。それ故に少々口を出させてもらった。そして折角来たんじゃ、ここで軽く修行をしていかんか? 今のお主がどこまで黄龍変化を使いこなせるようになっているのかも直に確認したい所での。久々に組み手をやろうではないか」

 ここで断ると、また面倒な言葉遊びが展開する未来が見えたので素直に受ける事にした。それに、この空間ならば条件なしで黄龍変身が可能だから目一杯動けるチャンスでもある。だったらそのチャンスは生かす方が有意義であろう。この場所には早々来ることができないのだから、無駄にしたくはない。それにしても。

「組手はお受けします。ところで一つ質問なのですが、自分の他に黄龍様のお眼鏡にかなった人は出てきましたか?」

 立ち上がって黄龍に変身しながら、そんな質問を投げてみた。かなり時間もたったことだし、そろそろ数人ぐらいは出て来てもおかしくはない。さて、その質問に対する返答は──

「とんと来ぬなぁ。それなりに気になる猛者は居るのだ……が、そこから先に進む者がおらん。力だけも技術だけでもダメじゃからな」

 ふむ、そう言う状態ですか。でも、気になる猛者がいるという以上、そのうち新たな黄龍変化使いが出てきそうな気がするな。何時になるかは分からないけど。

「では、一手御指南お願いいたします」

 軽くジャブやストレートを振って感触を確認した後、黄龍のおじいちゃんに一礼して構えを取る。

「うむ、ではかかってきなさい」

 そしてそれから、休みを挟みつつ一時間ぐらい殴り合った──と言えれば格好いいんだろうが、実際は九割ほど自分がボコられたと言うのが正直なところだ。自分の攻撃の大半は避けられてしまったし、当たった攻撃も黄龍のおじいちゃんをぐらつかせる事ができなかったので大したダメージにはなっていないだろう。自分が何度目かのダウンをした所でそこまで、との声がかかった。

「まだまだじゃな、と言いたいが。それでも技術の向上は見て取れるぞ。精進を続ければもっと強くなるじゃろうて」

 黄龍様からそんな評価を頂いた。さて、次はその精進をするためにもエルフの村に行って、蹴りの師匠に会いに行かないとな……本来ならばもっとちょくちょく通うべきだったんだが、獣人連合で色々とありすぎたからなぁ。怒ってないといいけど。

 黄龍様と神龍様のかけらに別れを告げ、次の目的地を目指して出発! と言いたかったが時間ももう遅くなっている。今日は宿屋に戻ってログアウトして、エルフの村へは明日無会う事にしよう。
************************************************
あと三日後に最新刊該当部分を消去します。
しおりを挟む

処理中です...