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連載

エルフの村へ

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久々の更新です。
ようやくもろもろの作業が終わりました……。
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 翌日、龍の国からエルフの村へとアクアに乗せて貰って移動。龍の国を出た後に空を飛ぶことで、大して時間を掛けずにエルフの村の近くに到着。久々となる訪問だし、蹴りの師匠であるルイさんに怒られてしまうかもな。そんな事を考えつつ、小さくなったアクアを頭にのせてエルフの村に入った訳なのだが……

「何という事をしてくれた!」「極刑に処せ!」「森をなんだと思っているのだ!」「裁け! 絶対に裁け!」

 エルフの村は、非常に殺気立っていたのだ。怒号に始まり、殺意を全く隠さないエルフの人達。一体何があった? 以前来た時には、こんな風にエルフの皆さんが声を荒げるなんて事見た記憶があまりないのだが……とりあえず様子を伺うか? とてもじゃないが話が出来るような気配じゃない。

 怒号がより激しい場所に向かって歩いて行くと、大勢のエルフの皆さんが一回所に集まっていた。そしてそんなエルフの皆さんに取り囲まれるように、手を首を昔の罪人が付けられていたような枷をはめられている人族も確認できた。あんな枷をつけられているのだから、何かとんでもない事をやったんだろうけど。

「皆の者、静かに! 気持ちは分かるが静かに! これよりこれら六名が行った罪についてどのような罪が相応しいかを決める! 感情的にはできる限りならず、相応しき罪を決める!」

 そんな中、一段高い所に上った一人のエルフがそう宣言する。その宣言によりエルフの皆さんが一斉に静かになった所からして、おそらく長老ランクの人なんだろう。その静かになった所で、高い所に上ったエルフさんが一度静かに頷いた後に言葉を発する。

「もう一度改めてかの者六名の罪を発表する! こやつらの罪は、我らがエルフの森の木を勝手に伐採した事だ!」

 ──あ、これは完全にアウトだ。ちゃんとエルフの森の木はかってに切っちゃいけない。切りたいのであれば、エルフの皆さんの許可を得る事って事前の説明があったのに。

「さらに、切り出した数が数だ! 数本までならまだここまで大事にはしない、それなりの罰は下すに留めていた。だが、この者達は、あろう事か我らが調べただけでも七一本もの木を切り倒している! それにより、森の一部から木がぽっかりと穴をあけるような形で消えてしまった! その影響で、その近くにおける生きる者の達の環境が狂ってしまい、大変なことになっている!」

 七一本も木を切り出してしまったら、そうなってしまうよな。極端に大木ばかりになって日を遮り、草木が育たなくなってしまうようなことにならないようにある程度の調整は必要だが……明らかにそれを逸脱している。どう考えても無罪はあり得ない。

「さて、そのことについて勝手に木材を切り出した人族よ、何か言いたい事はあるか?」

 発言の機会は与えると言う事か。一言もしゃべらせず罪の決定を行う訳ではないんだな。さて、あっちで枷をはめられた奴は何を言うのやら。

「あれだけ木があるんだ、ある程度は持ち帰ったって森は壊れねえよ!」「ここの木材は弓にも杖にも使えるいい木材なんだ、そんなお宝をそっちが独り占めしてるのが悪いんだろ!」「こっちの木なんか少し待てばまたすぐに元通りになるだろ! いくらなんでもこんな枷をつけるなんてやりすぎだろう! さっさと外せ!」「いい物を手に入れて、必要とする人に売る、俺達がやってるのは商売だ!」

 何て事を言っている。駄目だな、話にならない。おそらくこいつらは、ネクシアやサーズにある伐採場の気分でやったんだろう。つまり、こいつらはおそらくプレイヤーだ。というより、もしかして龍の国とかで木材を買い占めた犯人は……こいつらか?

「ふむ、なるほど。では他の人族の者に尋ねようか。この者達の言っている事や考え方が一般的なのかどうかをな」

 そんな言葉を発現し、何やら呪文を唱えているるようだ。そしてその魔法が発動した途端、目の前の視界がぐにゃりとぼやけて、またはっきりと見えるようになった。ただ、見えるようになった時は、周囲をエルフの皆さんに取り囲まれていた。一体何が……?

「ここに、近くに居た人族の三人ほどを呼び出した。この者達の意見を聞こうではないか」

 呼び出したって事は、さっきの魔法は、近くに居る人からランダムで三人を移動させる魔法だったのか。何とか状況を呑み込んだところで、段上に上っていたエルフが自分の達の前にやってきて、軽く会釈した後にこう喋り出した。

「呼び出して済まない。だが、君達三人はこの場からそう離れていない場所に居たため、ある程度の状況は理解していると思う。その上で、下に居るあの六人に対してどう思うかを述べてほしいのだ。よろしく頼む」

 これ、裁判みたいな感じで良いのか? ならばここはひとつ質問をしておくか。隣の二人は萎縮してしまっているし。

「済みません、自分の考えを述べる為に二つだけお聞きします。彼らが切り取ってしまったという木を見せてもらう訳には行かないでしょうか?」

 この自分の発言に、エルフの皆さんの中から「我々の調べを疑うのか!」と言った怒声が飛んできた。だが、そんな怒声を抑えたエルフさんが、「よし、ならば見せよう。持ってきてくれ!」との指示を飛ばす。そうして運ばれてきた数本の木材。まだ加工されてはおらず、ただ木を切っただけと言った状態だ。その木を観察したが、まだまだ元気な木であると判断した。そう判断できたのは、以前一度だけだが、エルフの森の木をエルの許可を得て斬り倒した事があった為だ。あの時の老木は、切断面がこんなに生命力にあふれてはいなかった。

「それからもう一つですが、彼らを取り押さえた時の状況を教えて頂けないでしょうか?」

 この質問には、森の中で切り倒している姿をパトロールしているエルフの皆さんが発見したらしい。そしてその場で取り押さえられた。その証拠として、加工するための道具が突き刺さった状態の木まで証拠品として出てきた。その木を見た事で、またエルフの皆さんの殺気が強まる。ここまででそろっているなら、もう言い逃れはできないな。七一本の木を本当に伐採したのかどうかは分からんが、少なくとも勝手にエルフの森の木を切っていた事だけは間違いない。

「ありがとうございます。伺った話とこのような証拠となりうるものを見せて頂いた上で、自分が下す判断は……はい、有罪ですね」

 この自分の「有罪ですね」の発言を聞いた枷をつけられている連中は、こちらを睨みつけて来る。が、そんなものは知った事かと自分は話を続ける。

「まず、全く知らなかったという事であればまた話は変わりますが……キチンとエルフの皆様は、いくつも設けている案内板にて『森の木を勝手に切ってはいけない、どうしても切りたいときはエルフの許可を貰うように』と知らせています。そして、実は自分は一回だけですが、エルフの森にて今は亡きエルティルから許可を得て木を切り倒した事があります」

 この自分の言葉に、真剣な目を向けて来るエルフの人達。その視線に飲まれないように、内心で気合を入れ直してから更に言葉を繋ぐ。

「そしてその時に見た木の断面ですが……先程証拠品として持ち込まれた気の様なみずみずしさや生命力はありませんでした。つまり彼らは、まだまだ生きる事が出来る元気な木を切り倒してしまっている。それはすなわち、森にとって必要な木を切り倒してしまったと言っても良いと自分は考えます。それらの観点から、自分は彼らを有罪と考えました」

 自分の発言を聞いていた段上のエルフさんは一度頷いてから「よくわかった、では次の者に問いかけよう。意見を聞きたい」と、次の人に話を持ち掛けた。段上に上げられた残りの二名も、自分なりの考えなどを述べた後に彼らの事を有罪と判断した。

「我々だけでなく、人族たちも自分達の考えを述べた上でかの者達を罰すべしとの判断を下した! よって彼らはこのまま牢へと連行し、より深く調べを進めた後に早々の罰を下す! ただし、どんなに軽くても永久追放の罰に処す!」

 ま、そうしないとおさまりがつかないよね。勝手に切っちゃいけないって言う基本的なルールを守らなかったんだから。さすがにエルフの村が実装されてから相応の時間が経ってるんだし、『純粋に知らなかった』可能性はあり得ない。プレイヤーであっても、こっちの世界の人であったとしても、ね。そんな事で有罪であると確定した彼らは、そのまま村のどこかへ引っ張られていった。


「何て事が、村を訪れて師匠の家に来る前にあったんですよ」

 ここは蹴りの師匠であるルイさんの家。そのルイさんの家の中で、さっき会ったことを報告していたのだ。なんでもルイさん、前日はかなり疲れる訓練をやっていたという事で、寝起き状態だった。それで村が騒がしいけど何かあったの? と自分に聞いてきたので、その騒がしくなってしまった原因を報告していた。

 話を聞き終えたルイさんも「それは許される事ではないわね」と怒気を孕んだ声でつぶやいた。森と共に生きるエルフの皆さんからしたら許せる事じゃないからな。

「それにしても、随分とお久しぶりよね。あんまりにも来ない物だから、何処かで行き倒れてしまったのかと思ったわ」

 暗くなった雰囲気を変えるべく、ルイさんが話の方向を変えてきた。自分ももうこれ以上先の話を続けるつもりはなかったので、その流れに乗っかる。

「その点は申し訳なく。ただまあ、向かった先で色々とあったんですよ……そう、いろいろと」

 獣人連合でもやたらとあったからなぁ、特に最後の盗賊団との一件がなきゃ、もっと早くここに来れてたのに。まあ、きっちりと終わらせてきたから問題はない、はず。

「貴方に課す訓練はいろいろあるからねー? しばらくはここに居られるのよね?」

 急いでやっつけなきゃいけないことは無いので、素直に頷く。ここで最近出番がなかった足技関連を鍛え直して行きたいと言う考えもあるから、訓練が多いのは望むところである。

「森の見回りなどを搦めつつ、訓練を行っていくからね。それと当然訓練なんだから、貴方の頭の上にいる子には頼っちゃダメってことも言っておくわ。良いわね?」

 アクアに頼ってたら訓練にならないからね、これも当然の話だ。久々に師匠にしごいてもらいますか……蹴りがなまってないといいけど。痛風の洞窟以降、あんまりにも蹴り技を振ってないんだよね。
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