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呼び出しの理由

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「さて、茶と茶菓子である程度落ち着いてもらえたようだからな、呼び出した理由をそろそろ教えようと思う」

 軽い雑談を交えつつ話をしていたが、ダークエルフの守護者? はそろそろ本題に移るようだ。こちらもうなずく事で了解の意思を伝える。さて、一体何を言われるのやら。

「まず質問だが、お前は魔王様に興味があるか?」

 おおっと、これはまた。まあ、以前魔族の方々を見かけた時の話から (これは、妖精国がゲヘナクロスに襲われた時)、魔王様に会えるのならば一度会ってみたいとは思っていた。魔王様は敵対するには者容赦ないが、友好的に付き合おうとする人には寛大らしいし。そしてやっぱりファンタジーのもう一人の主役でもある訳で。

「ありますね。以前魔族の方と話す機会があったのですが、その話で興味を持ちました」

 なにで、素直に返答。この守護者? の前では面倒くさい意見など必要だとは思えないので正直に隠さず話す。

「そうか、ならば都合が良い。少々魔王様の治める領地で問題が発生している可能性がある。今はその影響はほぼないが……放置しておけば、数年後にはかなり不味い事になっているやもしれんという感じだ。なので、先手を打ってその問題を潰そうと思うのだが……その手伝いをするつもりはないか? 手伝えば、魔王様と直接謁見できる可能性は非常に高いぞ」

 む、獣人連合への道が開かれる前に自分の部下である義賊リーダーが問題が発生していると言ってきたが……魔王様の領地でもまた何かあるのか。しかし、それは自分が手伝える範疇に収まる物なのかね? 獣人連合の一件でもえらい苦労させられたからな。安易な安請け合いをしてしまうと、後悔することになるかもしれん。

「あの、かなり話が大きくなりそうなのですが。そんな大事に、こんな人間一人がどうこうできる物なんですかね? 協力どころか、かえって足手まといという邪魔になってしまいそうなんですけど」

 足手まといになるのはさすがになー。魔王様に会いたいからと言って、魔族の皆様方に対しての邪魔をしに行くわけにはいかんぞ。ましてやかなりの大事の様だし、個人の感情は横に置いておく方が良いだろう。

「今なら問題はない。それに、今のうちに対処するのであればお前が動く方が魔族の皆だけで動くよりも早く解決するだろう。そう述べる理由だが、お前は色々と闇に触れてきた人族の様だ。それ故に闇との親和性が高い。そんな闇との親和性の高い人族の方が、都合が良いという側面があるのだ。だからこそ、以前のお前に闇の魔剣を贈った訳だしな」

 これは盗賊系統のスキルを取ったからだろうか? 実際闇というか裏での戦闘も幾度となくやってきているし、そう言う意味では親和性があるのかも知れないけど。

「光も闇も、どちらか一方だけが強ければ世の中が狂う。今回の魔王様の所では、少々闇の力が強くなりすぎている。それは放置できない問題だからな、被害が出る前に手を打ちたい。しかし我はここからは動けん、ゆえにその解決方法である我の力を運ぶ役をお前に頼みたい。そう考えたからこそ、ここへと呼び出させてもらったという訳だ」

 要は運搬役か。まあ規模が大きい事に目をつぶれば一般的な冒険者の仕事の一つであると言えなくもない。しかし、だ。

「理由は分かりましたが……なぜダークエルフの方に頼まないのでしょうか? 巫女様を通じて神託みたいな感じで伝えれば、もっと早くスムーズに行えると思うのですが」

 そう、闇系統への親和性ならダークエルフの皆様の方がよっぽど高いのではないだろうか。自分も人族としては高い方なのだろうが、さすがに生まれてからずーっとこの守護者の加護? みたいな物を受けてきたダークエルフの皆様にはかなわないだろう。

「ところがな、そうはいかなかった。とりあえず、運んでほしい物を見せようか。その方が早い」

 その守護者? からの言葉を受けてアラクネーが何かを運んできた。お盆の様な者の上に乗せられて運ばれてきたソレは、球体の塊であった。ただ、ひたすらにこれこそが漆黒という色だとばかりに主張してくるレベルの色であるが……数は三つ。見た目では重さまでは分からないな。

「手に取ってほしい」

 そう言われたので、そのまま自分から見て右側にあった球を親指、人差し指、中指の三本の指を使ってそっと摘まみ、持ち上げてみる。重さは一円玉より軽いかな? 目の前にもってきて色々な方向から見つめてみるが、やっぱり漆黒の球体でしかない。変なオーラみたいな物も無し。

「とりあえず持ってみましたが、これで宜しいのでしょうか?」

 自分の問いかけに、守護者? は頷くような動作を見せる。体がでかいから、それだけでもかなりの動きに見える。

「うむ、やはりお前なら持ち運びができるようだな。そして先程の質問の答えだが……ダークエルフ達がこれに触れば、闇を吸収してしまうのだ。運ぶことが目的であると言うのに、吸収してしまっては意味がない。また、吸収してしまったダークエルフは体調が悪化してしばらく寝込むことになる。体に収まり切れぬ力を吸い取ったがゆえに、吸い取ってしまった分が抜けるまで耐えるしかない状況に陥るのだ」

 ああ、それじゃダークエルフの皆さんでは運ぶことができないか。じゃあ因みにー

「そしておそらく疑問に持つだろうから先に教えておこう。闇に親和性がない者がこの球体を長時間持ち続けると……浸食を受けて、死ぬ」

 ──これまたわかりやすいお話で。じゃあ今までこの球体? が必要な事態に陥った時はどうしてたんだっていう疑問が頭の中に湧いてくる。

「そもそも、この球体を利用した闇の抑制は今までに数回しか行われておらん。理由は言うまでもないが、持ち運びができる存在がそうそう生まれてこないからだな。抑えられなかった場合というか大半がそうなのだが、魔王が軍を率いて自ら出陣し、度が過ぎた闇の力に汚染された魔物たちをひたすら討伐し続けるのだ。そのためかなり疲弊するために魔族はその現象が自分達の世代で起きぬ様に祈っている一面もあるらしい。本当かどうかは知らぬが」

 そこは責められないだろう。いくら軍隊とかに属している人だって大半は戦いたくないと思っているはずだ。それでも世界から軍がなくならないのは抑止力の為だ。お前達が攻めてきたら、こちらは相応の報復を行える準備が常に整っている、と威嚇する訳だ。こうすることで双方手が出せず……手が出せないから戦争、もしくは侵略が発生しない。それ故に平和という図式になっている。世界の平和は薄氷の上に出来上がっているという事を理解していない人って結構いるんだよなーって、かなり話がずれてるな。

「この球体がどんな力を秘めているのかはさすがにわかりませんが、これを持って行って、度が過ぎた闇の力というか暴走ですかね? を起こしている所に持っていくことが出来れば、大きな問題になる前に抑えられる、と。その認識で間違いないってことですね?」

 自分の言葉に再び頷く守護者? の姿。

「その球を、度が過ぎた闇に放り投げるだけで良い。そうすれば我が闇が抑え、安定させる。光も闇も、度が過ぎれば災いを呼び、多くの者の目を塞ぐ。分かるな?」

 そうだな。光も闇も、度が過ぎればいろいろと問題を引き起こす。目を塞ぐ……まあ目が見えなくなるという事を言っているんだろうけど。闇の方は分かりやすいだろうな。明りの無い真夜中は、本当に物が見えなくなる。だからこそ人は闇を恐れたわけだが──これ、光も実は同じだったりする。

 あまりにも光が強すぎると、眩しさで目を閉じざるを得なくなる閉じなくてもし、目がくらんで視界不良となる。そうなれば当然物は見えなくなるわけで……よくJRPGでは闇が悪、光が善とされている事が多いが、実は見方を変えると大差ないのである。なので、物を見る為には両方の釣り合いが取れていないといけない。

「ええ、良くわかります」

 自分の返答に、守護者? からは満足げな感情が伝わってきたような気がした。

「理解をしてくれるのは嬉しい所だ。さて、今回の話だが……受けて貰えるか? 嫌だと言うのであれば、このまま立ち去ってくれて構わん。内容が内容だけに、強制はできないからな」

 受けておくか。魔王様に直接謁見できるチャンスでもあるし、魔族の皆さんとは共に戦った仲だ。酷い事になる前に止める方法があると言うのならば、やってみる価値は十分にあるだろう。

「分かりました、今回のお話をお受けいたします。魔王様の領地に入る許可が下り次第、行動に移るという事で宜しいでしょうか?」

 自分の下した結論に、守護者? は「うむ、それで良い。では、代筆させた手紙も渡しておこう。これを魔王様に見せるのだ」と、アラクネーが新たに持ってきた手紙を漆黒の玉と一緒に受け取る。これは貴重品としてアイテムボックスの中でも個別の場所にしまっておく方が良いだろう。

「頼むぞ……と言いたい所だが、あと一つだけ問題がある。実はだな……魔王様と初対面の者がこれと言った推薦人もなく魔王城に行くと、おそらく四天王と顔合わせをしたのちに戦う事になるはずだ」

 え? この手紙があってもダメなのか? それはちょっと困るぞ。

「だが、刃さえ向けなければ話し合いで納得させる方向に向かわせることは可能だ。いいか、最初に何を言われても絶対に刃を交えた争いにはするな。刃を向けた時点で敵対する者と捉えられてしまうからな」

 そりゃ、確かに始めてみる顔をホイホイ魔王様の所に通す訳にもいかんのは分かる。が、この手紙と漆黒の玉を見せる事で通してもらえないかねえ? それとも、この手紙と漆黒の玉という道具を見せる事で、話し合いにもっていけという事を言いたいのか?

「面倒な事を頼んで申し訳ないと思っている。しかし、その後にやってくる災厄を事前に封じる為……堪えてはもらえぬか? 報奨は魔王様より受け取れるように手紙にもしたためてある。我からも事前の報酬として何かを出したいのだが……お主に使える様な武具が前に贈った魔剣以外にないのだ」

 ──ま、いいか。今回は人助けという事で納得することにする。戦争の時は世話になったし、その借りを密かに返すという事にしよう。

「今回は人助けという事で。では、失礼してもよろしいでしょうか?」

 守護者? も「うむ、感謝する。上手く行ったときには、我からダークエルフの者達に何かしらの報酬を出す様に頼んでおくこととしよう。では、出る為に私の頭に乗るが良い」と告げてきた。頭にのせて貰って高度を稼ぎ、脱出口に繋がっている穴目がけてに惑いをひっかけ、この場を後にした。魔王様の領域が解放された直後に、魔王様に突撃か~……まあ、人助けのためだ、仕方ない仕方ない。
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突撃! 隣の魔王城とかのアホタイトルも浮かんだけど却下。
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