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四天王三人目終了、そして四人目直前

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「闇、ですか。闇は闇、それ以上でもそれ以下でもない……と言う形式ばった答えを聞きたい訳ではないですよね?」

 自分の言葉に、デスさんは「ん」と言いながら頷く。そうなると、どう返した物かな。

「繰り返しますが、闇は闇でしかない。決して悪という訳ではないし、毒などと言った害する物でもありません。ですが、残念なことにその闇に乗じて悪事を働いて来た者が大勢いることは否めません。ですが、それは闇が悪いのではなく、闇を悪用した者が悪い。ですが、そう言った背景があり、闇は悪で光が善と言う風潮が一時期は出来上がってしまっていましたね」

 特に光の戦士とかね。で、闇に閉ざされた世界を救えって感じのストーリーパターンは結構多かった。そんな感じで、闇が一方的に悪役をやらされていた事はかなり多い。まあ、分かりやすいっちゃ分かりやすいんだけど。

「が、闇は安らぎをもたらしてくれることを忘れてはいけない。夜穏やかに眠ることができるのは、眩しくないように闇が包んでくれるからとも言える」

 もちろん中には明るくないと眠れない、と言う人も居るけれど……日中の眩しい光の中ではちょっと眠るのは厳しいだろう。昼間に寝るのなら、影の中に入って目を閉じるとか、カーテンを閉めてある程度暗くするとかする人もそれなりに居るはずだ。世界が光り一辺倒となったら、それはそれで過ごしにくくなる。

「そう考えれば、光と闇は表裏一体。どちらかがあるから、もう片方の事も認識できる。そうなると、闇とは世界の秩序の一つ。無くなってはいけない物。つまり、自分にとって闇とは『なくてはならない存在』という事になると思います」

 〈義賊頭〉的な意味でもね。基本的に〈義賊頭〉として動くのは夜。もちろん状況によっては昼間に動くこともあるが、大半は夜だ。最近はこれと言った事件が発生していないので、ご無沙汰だが。もちろんご無沙汰な方が良い、それだけ平和だって事なんだから。

「なくてはならない物、か。これもまた、私の予想とは全く違う答えが返ってきた。私の予想では、恐ろしい物であるとか、邪悪な一面を持つ物だとかの返答が来るものと思っていた。しかし、貴方は無くてはならない物だと言う。成程、貴方は闇に対しての偏見は無いようだ」

 特定属性が好きだ、ってのはあるけど偏見はさすがに無いな。闇に関係なく、その属性が悪いんじゃなくてその属性を用いて悪事をする連中が悪いのだ。良くこの系統の話は包丁が用いられるな。刃物なのだから人に向ければ凶器となる、しかし調理道具として用いれば非常に便利で欠かせない物。結局、ごく一部の例外を除いて悪いのは道具や技術ではなく使う人物であるという事になるだろう。

「まあ、闇と関わることが多かったと言うのもありますからね。自分が持っている魔剣も闇属性ですし。今はこのお城に努めているメイドさんに預けたので、今ここでお見せすることは出来ませんが」

 後は、フェアリークィーンも闇属性。今回の依頼を頼んできたダークエルフの守護者? も闇属性だな。抱きかかえているアクアは水属性だけど……自分は闇属性を持つ者達と頻繁に係わってきてる。〈義賊頭〉だって、闇系統に属すると判定されてもおかしくはないか。

「成程。貴方は闇を隣人とまではいかなくても、それなりに多くかかわって来たからこそ偏見がないという事になるのか。魔族は闇属性の魔法を得意とするものが多い。そして光属性の魔法はあまり得意ではない物が多い。その為、光を善とする者達とは幾度となく争ってきた背景があると、先輩の死神からは幾度となく聞かされた事だが……貴方にはそう言った考えはないな。これならば、次の四天王への道を開いても良いと私は考える」

 どうやら、デスさんにも認めて貰えそうだ。

「人にはいろいろな考えたかがあるのは分かる。でも、闇だから、光だからと言う理由だけで安易に善悪を決めつけるのは良くない事。その事をこれからも忘れないで欲しい」

 デスさんの言葉に頷く。少なくとも、この世界ではその通りだな。

「それでは、失礼いたします」

 頭を下げて部屋を退出する。さて、これで残りの四天王はあと一人か。待っているのは誰なのやら。

「お待ちしておりました。では、ご案内いたします」

 ミステさんの案内に再び導かれ、魔王城の中を歩く。それにしても上ったり下りたり、左右に曲がったりでなかなか大変だ。

「ここまで案内してもらいましたが、魔王城の中はまるで迷路ですね」

 自分の言葉に、ミステさんは「ええ、そう言う形を取っています」との返答。ありゃ、本当に迷路なのか。

「許可なき侵入者の足を止めるために、魔王城の通路は複雑に作られています。無理やり壁を破壊することで前進されることを防ぐために、壁にも強化魔法が掛かっていますよ。あまり詳しい事は申し上げられませんけど」

 ラストダンジョンとして、魔王城が出て来るのもよくあるパターンだ。そっちの方は踏襲しているらしい。ただ、その分メイドの皆さんの仕事がかさむ様で、あちこちから「掃除が面倒よね」「仕方ないわよ、魔王様の住む居城なんだし」「でももうちょっとすっきりとした形だと仕事が楽なんだけどなー」「シッ! メイド長に聞かれたら大目玉を食らうわよ! 話も良いけど手を動かして!」なんて会話がたまに聞こえて来る。

「あ、あはははは……その、聞かなかったことにして頂けると大変うれしいです」

 ミステさんのヘッドドレスには、何時現れたのか……でっかい汗マークがくっついていた。変な所で芸が細かい。それとも、リビングメイドの冷や汗なんかの出し方はこういった方法になるんだろうか?

「ま、まあ仕事が大変だという事は理解できますからね。一々メイド長なる方に告げ口はしませんよ。ご安心ください」

 多少の愚痴とか不満はしょうがないと思う。それを口に出す事で発散するのは十分にアリだろう。それすらダメって事になると、返って状況が悪化する事ぐらいここのメイド長も多分理解しているんじゃないかな? 極端に大声を出して言っていた訳ではない以上、目とつぶっても良い範囲だと自分は判断するけど。まあ、部外者である自分の耳に入ったのはまずいかも。

「あの、メイド内で言いあうぐらいなら良いのですが,他からいらっしゃっている貴方様の耳に入ったのが少々まずいと言いますか」

 あ、自分と同じところを気にしているのか。考えがほぼ一緒と見ていいのかなこれは。

「もう一度言いますが、口外はしませんので。そもそも自分は押しかけてきた立場ですからね。あれこれ言う資格も無いと思いますし」

 さすがにアポを取った上でやってきた客に聞こえる様ではまずいけど、今回の自分はそうじゃない。そんな自分が、余計な一言を言う物ではない。

「そうして頂けると助かります。お話の分かる方で良かった、あの子達も命拾いしましたね」

 なんか、物騒な事を言っているんですが。ちょっとだけ聞いてみるか。

「命拾いって、どういう事でしょうか? メイド長はそこまで厳しい方なのですか?」

 この問いかけに対するミステさんの返答は……

「ちょ、ちょっと頭が痛いのでその件に関するお話はご容赦頂けると助かります、はい」

 ──トラウマになっていらっしゃる。これは深く突っ込まない方が良いですね。お仕置きが厳しいのか、それとも懲罰内容がえげつないのか。どっちにしろ、聞かない方が良さそうだ。ミステさんも急に歩き方がぎこちなくなったし、全身のメイド服が小刻みにプルプルと震えている。

「そ、それでですね。最後の四天王様はあちらの部屋にいらっしゃいます。どうぞ」

 そんな話をしていたら、どうやら到着したらしい。さて、最後の一人は一体どんなお姿をしていらっしゃっているのやら。
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あくまでこの死神に関する一件は、このワンモア世界のみの話です。
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