上 下
224 / 376
連載

《デモンズ・ジャッジ》

しおりを挟む
感想欄で、もう展開がバレバレになっている件。
********************************************

「今は時間がありません。詳しい説明は後ほどという事で、行ってきます」

 そう、時間がない。何故か魔王様が自分を膝枕をしていたとかの疑問があるが、そんな些事はどうでもいい。今はあの暴走魔力を一刻も早く止めないとならない。

「大丈夫なんだな? 成功したんだな?」

 不安そうに尋ねる魔王様には頷く。この成功したんだな? という問いかけは、初代魔王様の前で《デモンズ・ジャッジ》を習得できたか否かという事なんだろう。なら、その成果を見せるためにこの場で変身をした方が良さそうだ。ウィンドウを確認すると、変身のクールタイム中ゆえに暗転している〈黄龍変身〉の隣に、新しく〈偶像の魔王〉と言う物が追加されていた。変身可能時間は二十分。黄龍よりかなり長いな……まあいい、今はありがたい。早速始めよう。

「変身、〈偶像の魔王〉!」

 それにしても偶像か。まあ本当の魔王じゃないから妥当と言えば妥当だな。そういやアイドルって言葉も、元の言葉は偶像を意味するIDOLAと言う言葉から来ているんだったな~なんてどうでもいい事が頭に浮かぶ。アイドルも、一つの偶像みたいな物だ──なんて事を、言葉を作った人は言いたかったのかね? 変身時間はやはり数秒で終了し、今の自分は例の魔王様っぽい鎧に身を包んでおります。

「これで宜しいでしょうか? きちんと意識も保っています」

 その自分の姿を見ると、魔王様も納得したようだ。ホッとしたような表情を浮かべている。それにしても、魔王城で見た魔王様と今こうしてみる魔王様は随分と違う。やっぱりお城に居る時はそれなりの仮面を被ってるんだろうな。どんな世界でもそう言った部分は大差無い、と。

「頼んだよ、彼奴を止めて来て欲しい。それと、一つだけアドバイスがある、聞いて行ってくれ。彼奴を倒すことは出来なかったとはいえ、私の《デモンズ・ジャッジ》が間違いなく奴の体に深刻なダメージを刻み付けている。狙うならそこだ、同じ場所をアースが身に着けた《デモンズ・ジャッジ》でぶち抜くんだ。そうすれば、奴は耐えられない事を私は確信している。奴の一定時間だけある弱点だ」

 確かに、あの魔王様の一撃は大きなダメージを出している様子が伺えたからな。狙う場所としては一番適切と言えるだろう。

「了解、後は任せてここで吉報を待っていて下さい」

 今の変身中の身体能力なら、暴走魔力が開けて行った穴からジャンプで外に出る事などたやすい事だった。そして外に出た自分が最初に見た物は、血まみれのアクアだった。

「アクアッ!?」「ぴゅ、ぴゅい……」

 大慌てで、残って居るポーションの中でも一番良い物を二本連続で飲ませて応急処置をする。ポーションを飲ませたおかげでアクアの傷はある程度ふさがり、瀕死状態からは脱した。しかし、激しい運動をさせる訳には行かない状態でもある。こんなことをやったのは、暴走魔力のアイツしかいない。

「アクア、お前にこんな事をしたアイツはどこに行った? どの方向に向かった?」

 アクアは、嘴である方向を指示した。その方向と、地図を取り出した確認する……向かった先には、魔王領で関所を超えた後に最初に訪れる街が有る事を確認する。奴は、今特に人の多い場所に向かって最初の惨劇を開始する考えなのかもしれない。〈百里眼〉を起動してアクアの指し示した方向を見ると、黒い点と言う形ではあるが、何とか奴を捉える事が出来た。ゆっくりと歩いている所から、魔王様に受けた《デモンズ・ジャッジ》のダメージがまだ残っているのだろう。それに、アクアもただやられたわけではないはずだ。奴に一太刀二太刀与えている可能性は十分にある。

「アクア、休んでいてくれ。奴を消すのに派手な技を使うから、伏せていてくれると助かる」

 アクアまで手ひどく傷つけられた時点で、かなり腹の中は煮えくり返っていた。だが、思考は冷静に保たなくては。どんな状況でも、完全に意識を怒りに支配されたら負けだと言うのは社会の常識だ。吠えるのは、彼奴を完全に吹き飛ばしてからで良い。目標に向かって弓を構え、《デモンズ・ジャッジ》の発動準備に入った所で突如自分に声が掛けられた。

「マスター、マスター御一人では新しく身につけられた新技の能力を百パーセントの状態で解き放つことは不可能です!」

 それは、指輪から実体化したルエットだった。指輪はガントレットの内側なのだが、ルエットの実体化を妨げることは無かった様だ。

「ですから、私がサポートします! 先程まで全くお役に立てなかった汚名を返上する機会をお与えください! どういった技なのかは、ずっと見ていました! あの暴走魔力の放つ魔力に当てられて気を失っていましたが、初代魔王と思われる人物のと訓練は拝見できていましたので!」

 断る理由は無い。一言「頼む」とだけ伝える。長い言葉は必要ない、こいつとも長い付き合いだからこれだけで十分通じるだろう。

「マスターはそのまま技の発動を維持してください! 私が魔力のコントロールを担当します!」

 ならば存分に頼りにさせてもらう事にしよう。背中の羽根を動かし、背中に魔力の蓄積を始める。初代魔王様に教えられた感覚でいると、音と共に背中から温かい物を感じ始める。どうも、向こうで体験した予行練習とは勝手が違う。

「一番、二番リング展開」

 ルエットの声に従って、リングが自分の前方に展開を始める。

「三番から六番、順次展開。二番、四番、五番のリングに魔力の乱れを検知。調整を開始……二番終了、再展開」

 自分はひたすら魔力の蓄積に努める。リングの展開をルエットが担当してくれているお蔭で、予行練習よりはるかに楽なので集中できるのが実にいい。

「四番再展開、五番今だ不調……リングを破棄、再構築開始」

 魔力の乱れや不調といった異常を、自分はほとんど感じ取れない。魔力操作関連に関しては、やはりルエットの方がはるかに上だ。だからこそ頼もしい。この一発に賭けるしかない以上、不安要素を取り除けるのは非常に大きい。

「五番リング再構築完了、七番リング展開。七番リングは好調、リングへの魔力伝達を開始。並びにリングの位置を再調整」

 リングの回転が始まった。より魔力を集めるように自分はイメージする。ふと、目標である黒い点を注視すると、その歩みが止まっている。魔力の集積でこちらに気がついたと見ていい。残り時間はあまりないか。

「全ての調整が完全に終了、魔力伝達速度を六倍に上昇。──リング回転速度、順調に上昇。魔力射出可能水域まであと三十秒」

 リングの回転速度が上がるにつれ、リングが音楽を奏で始める。その音色は、鎮魂歌のような静かな物であったが。

「魔力射出可能水域に到達。これより魔力を高める事による完全射出状態に移行」

 黒い点はこちらに向かい始めた。次第にその姿が大きくなってくる。間違いなく奴は走ってきている、この魔力を危険な物だと察したことはもう疑いようがない。

「マスター、目標が射程範囲内を行動開始! 魔力の充填量から攻撃を行う事が可能です!」「駄目だ、魔力の蓄積がまだ完全ではない! ぎりぎりまで耐える!」

 奴は間違いなく、こちらに向かって来る速度を上げている。姿が見る見るうちに大きくなり、その手には魔王様からコピーした例の光る剣状の魔力が見える。

「マスター、魔力は八割まで蓄積! 攻撃を!」「駄目だ、まだだ!」

 もう〈百里眼〉でなくても見える位置まで暴走魔力が形を変えた老魔術師の姿がはっきりと見える。だが魔力の蓄積はまだ九割──チキンレースのような物か。こちらがどこまで奴の迫ってくるプレッシャーに耐えられるのかを試されている気がする。だが、まだ耐える。弓に矢はすでに番えているが、まだ放たない。

「九割五分、六分、七分……マスター!」「まだ早い!」

 ルエットの声にはもう焦りしかない。しかし、完全にフルチャージした状態で撃たなければ、おそらくあいつを消し飛ばすことは出来ない。自分の《デモンズ・ジャッジ》の展開速度を考えれば、これが最初で最後なのは解っている。だからこそ、焦って早打ちする事だけは避けなければ──

「その切り札はやらせんぞ!」

 飛びかかってきた暴走魔力。マスター! と叫ぶルエットの声。まだフルチャージしきれていない魔力。しかし、ここで横やりが入った。つららが空中に生成され、老魔術師の姿をした暴走魔力に回避行動を取らせることで動きを止める。アクアの援護射撃か、あの体で魔法の行使とはまた無茶をする! しかし、この回避に使わせたほんの数秒が値千金の時間となった。

「マスター! フルチャージ完了!」

 相手は至近距離。外しようがない。ルエットの声を聞いた自分はほぼ反射的に矢を現魔王様の攻撃を受けて暴走魔力の弱点となっている個所にリングを通過させて命中させた。突き刺さる矢、その矢の勢いで空中に高々と吹き飛ばされる暴走魔力が形どった老魔術師。しかし、こちらの攻撃はまだ終わりではなかった。

「マスター、一番リングの中に右手を! 固く拳を握りしめて突き入れてください! それが──!」

 ルエットの説明半ばで言われたとおりに右手をリングの中に突っ込む。すると、背面にたまっていた魔力が右手に流れ込んで来て……なるほど、これが本当の形の──

「「《デモンズ・ジャッジ》!!」」

 自分とルエットの声がハモる。そして発動する極太ビーム。極太ビームは、矢に貫かれて宙を彷徨っていた暴走魔力を一瞬で包み込み、見えなくしてしまう。そのままビームは雪を降らせていた雨雲を吹き飛ばし、その上にある白い雲もかき消して行く……照射時間はおそらく十秒前後だろうか? だが、その一撃のデカさを間近で見ていた自分にはより長く感じられた。初代魔王様の所でこうならなかったのは、自分の魔力操作が未熟すぎたからなのだろうと予想できる。そしてルエットのサポートを得られた事で、本当の姿を見せた、と。

「目標、完全に沈黙! 勝利です!」

 ルエットが小さい体でガッツポーズを取っている。そしてそれと同時に自分に対して、念話が届いていた──

(見事、実に見事! よもやそのような切り札を本当に最後の最後まで取っておくとはな! 魔力が少ないならば集めればいい、その一つの答えを見せて貰ったぞ! その行為に敬意を表して、今回は引いておこう。だが、忘れるな? 私は引いただけだ。また魔力がたまった時には、再び戦おうではないか!)

 勘弁してくれ。もうやりたくない。もっと自分の旅はのんびりまったりで良いんだってのにな。でも、まあ、なんだ。今ぐらいは大人げないガッツポーズを決めても罰は当たらんだろ。
************************************************
スキル

風迅狩弓Lv50 The limit! 砕蹴(エルフ流・限定師範代候補)Lv42  百里眼Lv38  技量の指Lv55 ↑1UP  小盾Lv42 ↑3UP  蛇剣武術身体能力強化Lv1 ダーク・スラッシャーLv1 義賊頭Lv47   隠蔽・改Lv7 妖精招来Lv18 ↑1UP (強制習得・昇格)(控えスキルへの移動不可能)

追加能力スキル

黄龍変身Lv2.58 ↑UP!  偶像の魔王 1.12 NEW!

控えスキル

木工の経験者Lv12 上級薬剤Lv35  釣り LOST!  料理の経験者Lv27  鍛冶の経験者LV31  人魚泳法Lv10

ExP 11

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル  悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人 魔王の代理人 NEW! 人族半分辞めました NEW! 闇の盟友 NEW! 魔王領の知られざる救世主 NEW! 無謀者 NEW! 魔王の真実を知る魔王外の存在 NEW! 天を穿つ者 NEW!

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人

強化を行ったアーツ

《ソニックハウンドアローLv5》


──称号さんがひどい事になった。大量追加とかじゃ済まないレベルだ。
しおりを挟む