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次の洞窟に入るまでの間……

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「いきなり出ばなをくじかれたような気もするが……流石に外れは早々続かない事を祈ろう」

 洞窟から外に出て来て、まず深呼吸した自分。時間にすればそう長い時間ではなかったものの、即死攻撃を持つ相手との一戦があった分やや疲れていたようだ。首を回し、背伸びをするとホッとする。

「そうですね~。でもアースさ~ん、ちょっと聞きたい事があります~。アースさんの右手と右腕からくろ~い帯の様な刃みたいな物が出ていたのは何だったのですか~?」

 ミリーから、予想していた問いかけが。まあ疑問に思われるのも仕方がないと言える。自分が体に取り込んだ魔剣、円花はその姿を一定に保っていない。発動するとそれだけでMPを消費するようになってしまった今は、必要のない時は極力魔力を節約するように動いてくれている。その為、状況によってはスネーク・ソードというよりも黒い帯のような姿になることがあるという事に最近気がついた。もちろん必要な時や、自分が魔力を込めれば本来の姿を見せるのだが。

 と言った事を説明しようとしたのだが……その説明の前に動いた人物が居た。カザミネである。

「腰に魔剣を指していない時点でまさか、とは思っていましたが……アースさんはギルマスと同じく、魔剣を体に吸収したんですね? その為、一般的にはできない行動が出来るようになったと。ミリーさん、こちらのギルマスであるツヴァイが、炎の魔大剣二刀流が出来るようになった時の前後にあった事を覚えていますか? ある方から聞いた話として、真の魔剣と言う物は主と認めた者の体に吸収され、とんでもない力や普通は出来ない事を可能にする力を与えるという話を以前にしましたよね? アースさんも、持っていた魔剣に認められたことによる新しい可能性が解放された事で、ミリーさんが見たようなことを出来るようになったと考えられます」

 そう言えば、あの獣人の学者さんの話を一緒に聞いたメンツは、自分とツヴァイとカザミネだったな。だからカザミネは自分の状態をいち早く察することが出来たんだろう。カザミネの話を聞く事で、ミリーやカナさんもその時の話の内容を思い出したようだ。

「そういえば、そんな話がありましたね。真なる魔剣、でしたか。ギルドマスターであるツヴァイさんの炎の大剣二刀流も見慣れてしまっていたので、それが異常な行動であるという認識が鈍っていたのかも知れません。つまり、アースさんの魔剣……スネーク・ソードタイプでしたね……が目覚めた能力をミリーさんは見たという事になりますか」

 こういうのは一回見せた方が早いか。より見やすいように右手につけている盾を一旦外し、円花を発動させる。右腕のいろんな場所から出し入れしたり、軽く動かしてデモンストレーションを見せる事で能力を大まかに説明する。

「こんな風に、複数同時に展開したりすることが可能になったんだ。だが一番大きい点は『手に持つ必要がなくなった』という一点だね。その性能のお蔭で、弓を引きながら近距離戦にも対応することができると言う柔軟性を持つことが出来たのはインチキに近いと思う」

 右腕のあらゆるところから出て来る円花をみて、ミリーはほえ~という感じで口を開けていたのが印象的だった。言い方は悪いが、その姿は俗にいう『アホの子』みたいだった……珍しい物が見れて得をした気分でもあったけど。

「なるほど、アースさんにとっては……いや、どんな戦い方をしている人にもマッチする魔剣だったんですね。アースさんが無事に吸収した姿を見て、少しほっとしています。これでもう奪われる心配はないという事になりますし」

 カザミネは自分の同じ感想を持ったみたいだな。そう、どんな戦い方をするにしろ、サイドアームが一つ増えるような物だからな。円花自身の火力はそこそこであったとしても、その便利さが価値を高める。だからこそ、この実態が大勢にばれていたらかなり厄介だった。もう円花を吸収してしまったから、奪われる可能性はゼロだが。

「では、疑問の方も晴れた事ですし、次の洞窟に参りましょうか。ちょうど新しい洞窟の入り口も開いたようですから」

 カナさんの視線の先には、先程まで雪原だったはずの場所に新しい洞窟の入り口が出来上がっていた。なんというか、本当にポコッという感じで生まれるんだな……まあ、とりあえず入らなければ始まらない。最初と同じ順番で洞窟の中に歩を進める事になり、洞窟の中に入るとあちこちに色とりどりの草が生えている事を確認できた。ただ、色がカラフルなのでちょっとアレというか違和感があると言うか。

「よかった、少なくともここは普通の洞窟の様ですね、ハズレの線は消えました」

 カザミネがホッとしている。まあ知り合いを連れてきたらハズレばかり引きましたなんて展開を迎えたら辛いよね。とりあえずPTメンバーに一言断ってから、近くにあるいくつかの草を抜き取って鑑定を掛けてみた。

「どうですか~?」「うーん、どうやら色がカラフルなだけの雑草みたいだね」

 ミリーが鑑定結果を聞いてくるが……どうやらこの付近に生えている草は、ただの雑草の様である。薬にも毒にもならない、しいて言えば空腹で何も食う物が無い特によく噛んで食えばほんの少し気を紛らわせることができるかどうかという所。無理に確保する理由は無いだろう。

「まあ、たいてい入り繰り付近の草に当たりは無いですから仕方ないですね。とはいえたまに当たりも交じっていますから、鑑定だけは怠らない方が良いと思われます」

 カナさんの言葉に自分は頷く。解っているよ、こういう物は面倒になってもきちんとやらないと見落としが生まれる物だからね。

「では、ここからは炎を系統の攻撃は基本的には控えるという事で宜しいですね? 炎で焼いてしまえば薬草も毒草も等しく灰となって手に入らなくなってしまいますから、そうなってしまってはアースさんの目的が達成できません。誰かが非常に危険な状態に追い込まれてしまった場合などは例外です」

 カザミネの言葉に頷く。いきなりウツボカズラとの戦いなんてものになってしまったが、ここには薬草と毒草の確保に来たわけで。何かしら新しい物を仕入れて行きたい。

「では参りましょ~。良い薬草がたくさん手に入るといいですね~」

 ミリーの言葉には同意だ。さて、何が見つかるかな? 楽しみだ。
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短くて申し訳ないんですが、ここで区切ります。中途半端になっちゃうので。
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