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炭の生産終了

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 それからリアルで一週間ほど、炭作りは続いた。今はもう自分とブルーカラーのメンバーだけでなく、八十人近い協力者と共に炭作りを行っている。ここまで炭作りの為に動く人数が膨れ上がるとはちょっと予想外だったな。

 炭作りをする事になった原因である吹雪だが、あれからリアルで四日後に収まった。魔王様から各街に吹雪の鎮静化宣言も出された。さて、これで冒険に戻れるぞ、めでたしめでたしとなればよかったのだが……そうは問屋が卸さなかった。その理由は、吹雪が病んでも収まっていなかった炭不足にある。魔族の皆さんも炭焼き窪を全力で稼働させて生産に励んでいたが、何分炭を買い占めてしまっていたギルドの炭消費量は半端ではなかった事が原因で、まだまだ炭の値段は高いままであった。そしてそれがどこに影響を与えているかと言えば、当然ながら魔族領に住んでいる一般市民である魔族の皆さんだ。

 当然ながら、魔族の皆さんは炭を買い占めていたギルドに対して強い不快感を持っていた。直接面と向かっての罵詈雑言や殺傷事件までは行かなかったものの、いろいろな行動に不快感が原因となる行動が現れた。具体的にいえば、炭の買い占めに関わった一部プレイヤーに対しての商品販売価格を上げたり、わざと品質の良くない物しか売らなかったり……間接的に、高くなってしまった炭の代金を徴収するような動きがみられるようになった。そして当然ながらそんな差別に近い行動をされた側も文句を言うようになっていく。炭という魔王領における生活必需品が切っ掛けで、ごたごたがあちこちで見受けられるようになってしまったのだ。

 そんなごたごたを抑えるにはどうしたらいいか? 一番確実なのは、炭の値段が高騰する以前の値段に限りなく近く戻ればいいのだ。しかし、それをじっと待つだけではいつになるか分からない。そうしてその値下がりを何もせずに待つだけでは、そう遠くない内に揉め事から血を見る結果が待っているのは誰の目にも明らかだ……というのが情報を集めてきたツヴァイ達と義賊リーダー双方の意見だった。

 むろん、これは炭を買い占めた一部ギルドのプレイヤー達に問題がある。売った側にも問題が無いとは言えないが、売った方もこれだけ極端に値上がりすれば買うのを抑えるだろうという読みがハズレた結果らしい。結局五倍を超える売値にしても、大きなギルドの資本力の前では小銭に過ぎず、本当にギリギリまで炭を買われてしまった。そしてその値上がりした炭の値段は一般市民の生活を直撃した……そしてその値上がりした原因の一部プレイヤーを魔族の一般市民が恨むというサイクルが形成されてしまった。

 なので、この場に集ったメンバーは、この状況を出来るだけ早く沈静化させようとの呼びかけに応えて動いた人達なのだ。そうして皆が協力して炭を大量に作り続ける事で炭の値段は緩やかに値下がりを続け、魔族領の街に漂っていた剣呑な空気は随分と穏やかになったそうだ。が、例の炭を買い占めたプレイヤーギルドに対する魔族の皆さんから受ける冷遇だけは継続中で、こればっかりはどうしようもないらしいけど。まあそこは高い授業料だと考えてもらうしかないな。過去にあったポーション不足の一件を忘れてしまったんだろうな……ましてや炭が外に冒険に行く存在だけが使う物ではないという事を考慮しなかった点も、擁護できない部分だ。無理しないで他のできる事をしていればよかったのに。

「よーし、こっちは完成したぞー! 運搬役頼む!」「おう、任せろ!」

 あちこちで炭を作る為の煙が上がり、出来上がった炭は運搬を担当している人が魔族領にある三つの街に均等に行き渡るように運び込む。魔族の皆さんからもこの炭の運搬人は歓迎され、細かいやり取りはなしで炭の取引が出来るようになっているそうだ。自分は炭をひたすら作る生産者の立場なので、その現場を見た事が無いのだが。ただ、運搬役の話では炭の値段はようやく三倍を切ったそうで、魔族の皆さんの表情にもやっと余裕が戻ってきたそうだ。

「今日で炭の生産も終わりだ、もうちょっとだから頑張ってくれよー!」「「「「おおー!」」」」

 誰かの声に、自分を含む生産職の皆さんから声が上がる。今日で終わりにする理由は、魔族の皆さんの炭作りがようやく終わって各街に行き渡らせる事が出来る準備がようやく整ったとの連絡が入ったからだ。あくまでこちらは一時凌ぎでしかない。本来の生産者の仕事を奪うつもりはないから、本来の炭や木を仕事にしている魔族の方の体勢が整えばこちらは終わりとなる。それに炭作りばっかりで全然冒険にいけないのも困るし。とにかく、これで何とか炭の一件はほぼ沈静化するだろう。

「こっちはもう材料が切れたー」「こっちも今ので終わりだ!」「こっちは最後の炭が仕上がったよー!」

 あちこちから終わりを告げる言葉が聞こえて来る。この一週間、本当に良く炭を焼いたよ……でもスキルレベルは大して上がらなかったんだけどね。まあ、今回は放置できない問題であったし、魔族の皆さんとの仲を悪化させないための行動なのだから無意味な行為では決してない。魔族の皆さんも、プレイヤーは決して一枚板ではないと分かってもらえるだろう……炭を買い占めたわけでもないのに、冷遇される人が出ても困るからね。

「よし、これにてすべての炭焼きが終了! 皆様この一週間お疲れ様でした!」「「「「お疲れ様でした!!!!」」」」

 最期の炭焼きを行っていた籾殻の山から炭となった木材を取り出し、運搬役の人に手渡した事で職人チームの仕事はすべて終了した。この後は職人チームで打ち上げを兼ねた宴会を、フォルカウスの街で行う事になっている。運搬役の皆さんは、運搬先の街で魔族の皆さんたちとどんちゃん騒ぎをするとの事なので問題は無い。集まった協力者達と一致団結して、魔族の皆さんたちとの仲が断絶せずに済んだお祝いだ、盛大にやっても構わんだろう。

 食事の心配は無かった、何せ職人が集まるって事はいろいろ作れるって事で……自分の出番なんか無かったよ。どこの宮廷料理だ!? って品から身近にありそうな料理までどっさりとテーブルの上に乗っかった。お酒だって当然プレイヤーメイド。どうやって作るのか、そっちの知識はからっきしの自分には真似できないなぁ。そうして打ち上げという名のどんちゃん騒ぎは始まった。

「それにしても一昨日の一件は笑ったなぁ」

 誰かがそんな事を口走った。一昨日の一件と言うと、あれか。炭を買い占めたギルドの一つが、このフォルカウスの南でやっている炭焼き場を嗅ぎつけて、炭を売れとやや高圧的に言って来た事だろう。

「あれはアースさんの返答につい頷いちまったよ。何せ即答で『では、貴方のギルドの全財産と引き換えならお売りします。びた一文負けません』だろ? お前らが度を過ぎた行動をやったから炭不足が起こって、それを俺達が解消するために動いてんのに何言ってんだって心の中で思ってたもんな。スーッとしたぜ」

 ──あの時は大人げない行動をついしてしまったな。何せ売って当然だなんていう、過去のアポロンの弓所属のネイザーからギルド勧誘を受けたあの態度に近い物を感じて、つい反論という名前の付いた無理難題を吹っ掛けてしまった。まあ、ギルドの資金全部を万が一差し出したとしても、『あと一グロー足りないので売れません』なんて言葉を吐いて突っぱねるつもりだったけどね。こういう時ソロは気楽だ、あれこれ攻撃されても被害を受けるのは自分自身だけで済むのだから。

「あの時の悔しそうな顔はSSにとってあるぜ。いやー、なかなかリアルであんな表情浮かべる奴には出会えんからなー」

 おいおい、ほどほどにしてあげなさいよ。個人で見る分には何にも言わないけどさ……

「で、その後掲示板が面白い事になったよな。アースさんの名前だして非難したは良いが、その後総ツッコミで『テメーらが後先考えず炭を使いこんだのが原因だろうが、そのお蔭でこっちも迷惑してるんだ!』って言われてもろ言葉の袋叩き。おまけに発言者とそいつの属してるギルドが思いっきり曝されてたもんなー。風の噂じゃ、何時空中分解するのかのカウントダウンらしーぜ?」

 今更掲示板であれこれ言われてもな。それに掲示板の件も自分を始めとした炭を作る人を応援、擁護する声の方が圧倒的に多く、差し入れを持って来てくれたりする人が何人も居たりする。この場合の差し入れとは食べ物じゃなく、生産するための資金だ。そのお蔭で炭の生産者と運搬車の懐は結構暖まっていたりする。もちろん、そのお金に見合うだけの成果は出せたと思う。出せたからこそ、今日で終わりになるんだし。

「とにかく、最悪の事態だけは避けられて何よりだ。いやはや、今回の一件を聞いたときは冗談抜きで肝が冷えたぜ……ワンモアだったらもしも、が簡単に現実になるからなぁ。今回の件で生産職やっててよかったって本気で思ったね!」

 と、ある職人の言葉に他の人も全くその通りだと同調して笑い声をあげる。こうして、炭不足によるプレイヤーと魔族の皆さんとの正面衝突は回避された。めでたしめでたし……となってほしかったんだけどなぁ。残念なことに、まだこの話には続きがあったりする。この一件で特に動いた人間……自分、ブルーカラーの協力メンバー全員が、魔王様より直々に呼び出しを受けてしまったのである。
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スキル

風迅狩弓Lv50 The limit! 砕蹴(エルフ流・限定師範代候補)Lv42  百里眼Lv38  技量の指Lv56 ↑1UP  小盾Lv42  蛇剣武術身体能力強化Lv3 ダーク・スラッシャーLv3 義賊頭Lv47   隠蔽・改Lv7 妖精招来Lv18 (強制習得・昇格)(控えスキルへの移動不可能)

追加能力スキル

黄龍変身Lv2.58  偶像の魔王 1.12 

控えスキル

木工の経験者Lv14 ↑1UP 上級薬剤Lv47  釣り LOST!  料理の経験者Lv27  鍛冶の経験者LV31  人魚泳法Lv10

ExP 11

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル  悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人 魔王の代理人 人族半分辞めました 闇の盟友 魔王領の知られざる救世主  無謀者 魔王の真実を知る魔王外の存在  天を穿つ者 

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人

強化を行ったアーツ

《ソニックハウンドアローLv5》

とあるおっさんのオンライン活動記に参加してくださっている
皆様に感謝を。問題点はこちらもいろいろ報告しております。
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