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雑用からダンジョンに向かう途中

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 いよいよ今日から、ブルーカラーのメンバーとともにダンジョンアタックだ。しかしその前にやっておかないといけない事がある。

「おい、居るか?」

 自分の声に反応して、一つの影が下りて来る。うむ、相変わらず呼びつけるとやって来る義賊リーダーは素晴らしいな。さて、早速いくつか義賊頭としてやっておかなきゃいけない事を済ませないとな。

「親分、お呼びで?」

 義賊リーダーの言葉にゆっくりと頷き、今回の一件に関してのねぎらいの声をかける。そして今回の一般市民の家宅に侵入したことは魔王様からも許可を得て無罪となる事、その魔王様も義賊リーダーを始めとしたメンバーを高く評価した事などを伝える。

「文句なしによくやった、という事だな。で、だ。炭の方はこれでケリがついたが、獣人連合の方でやっている影の修練の方はどんな塩梅だ?」

 もう一つの仕事である、獣人連合の影働きをする連中の訓練の進み具合もここで確認する。以前の出来事で、影働きが出来る獣人がガクッと数を減らした事から、こちらの技術をいくつか教えつつ鍛えている最中なのだが……さて、どうなっているか。

「──途中までは問題なかったんですがね、ちょいと教材の数が足りなくなりそうな感じが報告として届いている状態で、へえ」

 なに? と、自分の表情からこちらの考えを察した義賊リーダーが説明を続ける。獣人連合の方が金を極端に出し渋っていると言う訳ではない様だが、獣人連合国内だけではちょっと素材の都合がつかなくなりつつあるらしい。かといって、他国から輸入すると言う形を取ると予算を超えるとの事で教材素材の補充に関して、二の足を踏んでいる状態って所か。しかし、だからって質の高い訓練するためにはある程度の教材は必須だろうが……特に鍵開けとか罠解除とか。そう言った部分に金を出さずしてどこに出す、と言いたいがそうもいかんか。獣人連合にも色々あったからな~、復興に回したい資金が第一と考える事も無理のない話だろうし、その分影関連に対する金が回ってこないか。

「──仕方ない、今回はこの銭を使え。魔王様から今回の炭に関する一件に対しての報奨金だ。こいつで教材に使える素材を買い、それで訓練を続けさせろ。ただし、訓練が終わったらこの金を使って購入した私財で作った教材はすべて回収するんだ。金を出さなくても向こうから勝手に金を出して教材を整えてくれる都合のいい義賊団だ、何て考えを獣人連合の上層部に持たれたらめんどくさい事になる。回収した教材は、今後お前たちの元に入ってくる新人用に回せば大きな痛手にもなるまい。そして、技術を教えるのも今回限りだと影のトップに伝えておけ」

 とはいえ、それはそれ、これはこれだ。こうするのもやむを得ないだろう。こっちだって都合のいい道具になる訳にはいかない。いざ義賊団として動きたいときに、身動きが取れないなんて事になったら取り返しがつかない。まぁ、報酬を貰うとは言え技術を教えるって言う時点で相応の恩を売っている訳だし、そこに今回のような事まで起きるのならもう緊急時の共闘以外はできない。なかよしこよしだけは絶対にとってはいけない方針だ。

「分かりやした、部下にもそう伝えやす。幸い世の中は落ち着いておりやして、あっしらの出番はしばらくないと言うのは良い事ですがね」

 そうか、それ以外に大きな問題や悪党の暗躍などは特になし、か。これで安心してダンジョンに籠ることができると言う物だ。

「それは良い知らせだ。そのまま大人しくしてくれればいいのだがな。そう知ればこっちもただの一般民でいられると言う物だ」「全くでさ」

 お互い顔を見合わせて笑顔を交わした後、義賊リーダーは金をもって消えた。さて、義賊リーダーとの確認も済んだことだし、冒険者としての活動を頑張りますか。集合予定時間の十分前だし、そろそろ宿屋を出て行動を始めるか。宿屋の主人に断りを入れ、宿屋を後にする。ツヴァイ達はもう来てるかな? 集合予定地として街中の地図にマーカーを入れておいた場所に行ってみると、ロナとカナさんがすでに待っていた。

「あ、アース君こっちこっち!」「未だ八分も前ですが、お早いおつきですね。本日はよろしくお願いします」

 二人との挨拶を交わした後、軽い雑談をしながら時間の経過を待つ。と言っても待ち合わせ四分前には一人を除いて勢イン集合していた。そして最後の一人だが……

「何やってるんだエリザは」「そろそろ一分前ですよ~? 遅いですね~?」「だから、前日に準備をしておきなさいってあれほどボクが言っておいたのに」「大慌てで、今日必要になる物を買い集めているんですか? 困った物ですね」「今日はアースも居ると言うのに、何をやってるんだアイツは」「お仕置きが必要かしら?」

 という事で、エリザが来ていない。今日は五人PTを二つ作り、その二つのPTをさらに一つの集団として組むことで進む事になっている。一応メンバーを上げると、自分、ツヴァイ、ミリー、ノーラ、レイジ、カザミネ、ロナ、カナさん、コーンポタージュ、そして遅刻しそうなエリザの十名である。待ち合わせ予定時間まであと三十秒を切ったのだが、エリザの姿は見えない。これはちょっと遅れそうかな? そう考えていたのだが、待ち合わせ時間の十秒前にエリザがドリル髪を振り乱しながら全力疾走しながら姿を現し、時間ぴったりに待ち合わせ場所であるこの場所に到着した。

「お、お、お待たせしました、ですわ……」

 戦う前からこのお嬢様はかなり疲れていらっしゃるんですが大丈夫なのか、コレ? そんな感情をこめてぐるっとブルーカラーのメンバーを見渡したのだが、全員がススッと目をそらす。をい。とはいえ、ガチャガチャと文句を言っても始まらない。一応滑り込みセーフという形ではあったが遅刻はしなかった訳で……一々まなじりを釣り上げると言うのもアレだろ。まあいい、ダンジョンに向かおう。

「よし、じゃあ全員揃ったから早速出発するぞ。と、ここでPTを組んでいくからな。第一PTは、俺、カザミネ、ノーラ、カナ、エリザ。第二はアース、レイジ、コンポタ、ロナ、ミリーって振り分けさせてもらう。まあ、はぐれる可能性はまずないから問題はないだろうが。質問はあるかー?」

 タンカーはばらけさせたようだし、特に気になることはないな。他のメンバーもそうだったようで、質問するための挙手は上がらなかった。

「よし、昨日もアースに言ったが、デコンド周辺にあるダンジョンは溶岩や落とし穴と言った引っかかってしまうと即死しかねないギミックが待ち構えている。おまけに敵もゴーレムなどの硬い奴らがメインだ。負けない様に気合い入れていくぜ!」

 ツヴァイの言葉に皆が頷き、いざダンジョンへと向かう事に。しかし、そのダンジョンへと向かう途中でモンスターの集団にこちらを発見されてしまった。自分とノーラがほぼ同時にモンスターの接近をPTメンバーに伝える。そしてさらにノーラからの報告には続きがあり──

「敵はスノーホワイトウルフと思われるわ! 数は七、ちょっとした集団ね。こちらに走って来てるから今回はちょっと逃げ切れないわね……みんな、戦闘態勢を!」

 自分はフィールドでの戦闘をしていないからわからなかったが、スノーホワイトウルフが相手か。冷気系統の魔法も使うが牙や爪の攻撃も行ってくると言う、プレイヤージョブで言うならば魔法剣士と言った感じのモンスターという情報だけは前もって入手済みだ。ダンジョン前に軽い運動という考えでは戦えない相手となる。そして有効な攻撃は……弓矢による遠距離攻撃。火を伴った斬撃か魔法だったはずだ。自分は弓を構えて、スノーホワイトウルフがやってくる方向に向けて矢を番えて引き絞る。

「来たぞ、特にツヴァイとアースは活躍を期待しているぞ!」

 レイジとカナさんがタンカーとしての仕事をするべく、一番前に出る。それに追従する形で二人の契約妖精も前に出て、防御力向上のスキルを発動させた様子。これで先ず中英である自分に、スノーホワイトウルフの攻撃は通らない。後は落ち着いて矢を当てていくだけ。矢の有効射程に入った事を確認した自分は、引き絞って構えていた矢を集団の先頭を走っていたスノーホワイトウルフに向けて放った。狙いは少しずれて、狙ったスノーホワイトウルフの右目に命中。それでも目に矢が刺されば当然ながらそこからくる痛みに我慢などできるはずがない。ギャウン! という鳴き声と共に足が止まる。そこをさらに後ろから来た個体に弾かれた事で雪原を転がる。アライタソー。

「アース、ナイス! ツヴァイ、一回彼奴らの突進を俺とカナで受け止める。そこからは頼むぞ!」「おう、任せとけって!」

 さて、ダンジョンに無事到着するためにも、被害を抑えて勝たないとな。
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今年のGWも家でお仕事。まあ、出かけたい場所がないんですけどね。
去年京都に行った後、地元を全然離れてないなぁ。
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