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とにかく動きましょう

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「さて、あそこで状況を全くわきまえずに唐突にいちゃつきだしたアホ三人はしばらく放置するとして……正直これは困ったわね」

 ツヴァイ、ミリー、エリザの三バカトリオを完全にスルーして、これからの行動を話し合う事になった。カオスから脱出するためにはあと三十分弱ほどこの場所で耐えなければならない。その残り時間をどう凌ぐか……

「もう、あの三人をエサにしてモンスターを集めて貰って、遠くまで引っ張って行ってもらった方がいいような気がするよ」

 ロナの言葉につい同意しかけるが、ぎりぎり踏みとどまった。他にも頷きかけた人が数名いる。そうだよね、こんなピンチにまだじゃれ合いを続けてれば放置どころか放棄したくもなるさ。リア充爆発しろという気分にはならんが、もうちょっと場所を選んでくれとは言いたくなる。

「ドレイクに散々追い回されたせいで、ここまでやって来るためにたどった道の方もあやふやです。せっかく作った避難所にまで私達が戻ることは非常に難しいでしょう。おまけにカオスですから、何時溶岩が迫って来るかもわからないと言うのがさらに厄介な所ですね。とにかくこの場所にもう一回避難所を製作し、後はモンスターに襲われない限り籠城する形を取るしかないと思いますが如何でしょうか?」

 カナさんの言葉に、うーんと言った感じで考え込む一同。そうだな、まずは考えを整理しよう。まず、最初に作った避難所に戻る選択肢は捨てた方がいいだろう。これはここまでやってきた道があやふやだと言うカナさんの言う通り、戻る為の道がはっきりしない。それに加えて無理に戻ろうとした場合は、また再びここまでやって来る事になった原因のドレイクに追い回される可能性が高まるだけだ。今回は逃げ切ったが、次も逃げ切れると言う保証はどこにもない。

 また、カオスの特性の一つである溶岩がいつ噴き出すか分からないと言う問題もある。最初の避難所に戻れない以上、新しく避難所を作らなければ溶岩が噴き出した時点でほぼ全滅だ。いや、自分一人だけなら円花にお願いして天井に突き刺さってもらい、三分間耐えるだけで良い。だけど、さすがにここに居るメンバー全員を支えるだけの力はない。レイジやカナさんと言った、『装備が』重量級の面子が居るからという訳ではなく、単純に人数が多いから重量がかさむと言う理由だ。

「ノーラ、この周囲のモンスターとはこの面子で戦えそうか? 申し訳ないが、こっちの感知ではモンスターが居るのは分かるんだが、そのモンスターの正体まではつかめないんだ」

 周囲にぽつぽつとモンスターが居るのは分かるんだけど、ほとんどが正体不明。ある程度イノシシタイプ、鳥タイプ、ウルフタイプのゴーレムが居るのは分かるんだが。

「強いのと弱いのが入り混じっているのよね~、強いのはドレイク級がちらほらと。弱いのはすでにアース君も戦った事がある面子。テイマータイプの人型ゴーレムも居るわね……ドレイク級は絶対避けるとして、避難所製作に使える大きな残骸を残すイノシシタイプと人型タイプを狙い撃ちしていくしかないわね。ロナちゃん、今回は私達のあのワーウルフの更なる変身を解禁して少々ごり押すしかないわ。もたついていたら、溶岩で全滅しちゃうし」

 へえ、ワーウルフ変身のその先か。基本的な変身にも、更なる進化があったのか。

「うーん、一回あれやっちゃうとリアルで二日間変身できなくなっちゃうし、変身持続時間も十分しかないけど仕方がないかなー……出し惜しんで全滅しちゃうよりはまし、だもんねー」

 ごめんなさい、出し惜しみしてるのは自分もです。とはいえ、最悪の状況になったら黄龍なり、魔王なり使うつもりで入るけど。ただ魔王はどちらかと言えばの話になるが……遠距離戦向きでこういった場所ではあまり向いてないと言う問題があるし、黄龍は変身時間がカラータイマーの超人並みに短いし……切りどころが難しい。やはり絶体絶命まで追い込まれない限りは出せない。

「よし、あれを二人が使うと言うのであれば作戦を少し変えるぞ。モンスターの注意を引いたり、最初の盾となるのはいつも通り引き受けるが、その後の戦いは任せる形で良いな? 二人の変身が終わる十分以内に稼げるだけ稼いで避難所を作り上げる事が出来るだけの残骸を集めなくてはならないから、次々とモンスターを引っ張って来るからな?」

 レイジがこう言うのだから、進化したワーウルフは火力も相当に高いらしい。

「うん、それでいいよー。とにかく十分間だけなら、ドレイク級以外には無双出来るからモンスターをじゃんじゃん引っ張って来てね。そしてボク達が瀕死にした相手を、カザミネ君たちが次々と処理する形になるね。とにかく時間との勝負だから、十分間はフルスロットルでお願いね!」

 なんだか、工場でやっているライン生産みたいだな。つまり、レイジ&カナさんがモンスターを引っ張ってきて、最初はタンカー役として受け止める。そこにノーラとロナが変身したワーウルフで攻撃をしかけてぼこぼこにする。瀕死にまで追い込まれてゴーレム達の動きが悪くなったら、ノーラとロナは次のゴーレムを相手にして、トドメは他の手が空いているメンバーが行うという流れ作業だ。と、ここまで話が決まった所でようやくツヴァイ達がこっちの話し合いに気が付いた。当然他のメンバーからは白い目で見られるが、当然だよね。後でこのアホ三人には相応のお仕置きが必要だな、という意見が最初から話し合いをしていたメンバーの中で当然出てきて、すぐにそれは認められた。ツヴァイ達の意見は聞くわけがない。

「では、アホ三人もやっと戻ってきたので早速始めましょう。もたもたして溶岩が噴き出してしまっては意味がありません。アースさんにはぶっつけ本番となってしまって申し訳ありませんが……何とか合わせてください。では、ノーラさん、私がモンスターを釣って来ますので、手ごろなモンスターが居る方向を教えてください」

 ノーラがカナさんの言葉に応えて指をさすと、カナさんはすぐさまその方向に駆け出して行った。そしてややあって、人型ゴーレム二、イノシシタイプのゴーレムさんを引き連れて戻って来る。

「じゃ、ロナちゃん行くわよ!」「うん、ブッ飛ばすよー!」

 戻ってきたカナさんの姿を確認すると、そんな短いやり取りの後に、ブルーカラーの初期メンバーの中でワーウルフ変身を選んだ二人が同時に変身を開始してワーウルフの姿になる。だがそこで変身は終わらず、更なる変身が行われる。全体的に毛が伸び、毛がプラチナのような輝きを纏い始めた。

「変身完了、プラチナム・ワーウルフ状態よ! レイジ、悪いけどそのまま引き付けといて! 後ろから一発重いのを叩き込むから!」

 レイジが心得たとばかりに立ち位置を僅かに変え、カナさんの引っ張ってきたモンスター達を挑発系アーツで引きつけつつノーラやロナにとってバックアタックがしやすい場所に誘導する。お膳立ては整ったとばかりに、背中を向けたゴーレム達に対してノーラとロナのプラチナム・ワーウルフはその鋭い爪で遠慮する事無く引き裂き、パンチを叩き込み、バックドロップを決める。そうして弱ったゴーレム達を、ノーラとロナはこっちに向かって蹴り飛ばしてきた。

「アースさん、こうやって弱って蹴り飛ばされてきたゴーレム達を私達がとどめを刺せばいいんです。流れ作業となるので、詰まらせてはいけません! 手早く片付けましょう!」

 とのカザミネの言葉に従い、手の空いてるメンバーでサクサク始末。残骸はとりあえずわきに避けておく。

「おかわりお待たせしました!」

 カナさんが第二陣を引っ張ってきた。すぐさまレイジが引き継ぎ、ノーラ&ロナが瀕死まで追い込み、残りのメンバーで止めを刺す。この流れ作業はきっちり十分間、ノーラ&ロナ組のプラチナム・ワーウルフの変身が解除されるまで続いたのであった。また、多数の敵と戦った事により、こちらの《危険察知》の夜モンスターの識別も進んだのはありがたかった点と言えるだろう。
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ミリーも今回はアホの子枠。
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