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なんとかかんとか

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 そして戦い続ける事しばし、ノーラとロナの変身が解除されたタイミングで戦闘を終了させ、足場作りに入る。倒したゴーレムの数が多かったために、最初に作った足場よりもはるかに頑丈で広く、さらに安定した足場を作ることに成功。全員が上に乗ってもぐらつきも無いので安心できる。ちなみに、足場作りにおいて一番力が必要とされる部分はツヴァイがひーひー言いながら作り上げました。状況も弁えずにいちゃついてりゃそりゃそれなりのペナルティを負わされるよね。ミリーやエリザは、ノーラとロナに怒られてました。

「まったく、普段はストッパー役のミリーが何やってるのよ……しっかりしてよね」「流石にボクとしても、擁護は一切できないね。反省して」

 それにしても、ミリーがこうやって怒られる側に回るってのは珍しい光景だな。ノーラの言葉じゃなくても、普段はストッパー役として抑えに回ることが多いのにね。エリザの行動の何かがミリーの心のどこかを刺激したのかも知れんな。

「とりあえず、続きはダンジョンを出てからでいいだろう。後二十分ぐらいでダンジョンを脱出できるが……それまでどうする?」

 レイジからの問いかけに、一瞬場が静かになった。そして一番最初に口を開いたのはツヴァイ。

「後はここで二十分間動かないで大人しくしていた方がいいだろうな……モンスターもそれなりに狩って未鑑定の鉱石は結構な量が溜まったし、足場も出来上がったからもうむちゃをする必要も無い。さらに、ノーラとロナの隠し玉であるあの変身も使わせちまったし、レイジとカナの盾の痛みも相当進んでる。残り時間は籠城して、脱出までの時間が来ることを待った方が無難だな」

 いちゃついてた割にはよく見てるな。レイジとカナさんの盾はダンジョンに入る前と比べるとかなりへたってきたと言う感じがする。カナさんの盾は魔盾ではあるが、さすがにゴーレムの剛腕から繰り出される攻撃を何度も受け止めていれば、それなりのダメージが蓄積されているのは当然の事だ。打撃による攻撃は、特に装備品にの耐久にダメージを与えると言うデータも情報サイトのどこかにあったような気がするし……

「そうですね、ギルマスの仰る通りだと思います。モンスター討伐によるドロップ品はそれなりに稼げていますから、これ以上討伐するよりもこの場で立てこもった方が無難だと私も考えます。地震からやって来る溶岩もしばらく来ていないと言う事が不気味でもありますし……下手に出歩いてドレイク級のゴーレム数体に再び絡まれたら、と考えますと……」

 カナさんも籠城側か。ま、確かに未鑑定鉱石は先程までのノーラ&ロナのワーウルフペアがガシガシゴーレムを張り倒したお蔭で百個以上出てるんだよね。これだけ取れていてば収入としては上々だから、もう戦闘を無理しなくても良いと言う意見が先に出るのは当然か。

「そうねえ、魔剣を狙ってるわけでもないんだし、後はここで残り時間が経過するのを待つ方が無難かしらね……アース君もそれでいい? 何か意見があるなら言ってくれていいのよ?」

 ノーラがそう声をかけて来るが、これといった意見がなかった自分は、言う事はないと言う意味を込めて首を左右に振る。他の人の意見に対して反対を表明するのであれば、それ相応の対案を用意しておかなければならない──というのが自分の持論だ。そして、この状況下でこれと言った反対する理由も対案も無い以上、これと言った意見を出す理由も無い。もっともそれは他のメンバーも一緒だったようで、この場で残り時間が経過するまで籠城する、といった形ですんなり決まったのだが。

 その後はここまでくるまでのバタバタとした雰囲気とは打って変わって穏やかな物だった。モンスターはこちらの察知範囲内のギリギリ引っかかる部分からこちら側に近寄ってこようという動きは無かったし、溶岩も噴き出しはしたが、今回は足場がしっかりしているので不安になる要素も無かった。ゆっくりと腰を下ろしていられる広さもあると言う点も手伝って、安心感があった。その話ついでに、少しだけノーラとロナの新しいワーウルフ変身の話も聞いてみた。

「あーあの変身ね? うーん、はっきり言ってなんでなれるようになったのかはイマイチはっきりしないのよね。獣人連合に行っていたころにできるようになったんだけど、そのトリガーとなった条件? が分からないのよ。ワーウルフの変身を得る時みたいな特殊なクエストを受けたと言う事もないし……気が付いたのは結構前のログインしたときかな? システムメッセージで変身のそのまた変身……二重変遷が出来るようになりましたって通知が来てたのよね」

 ふむ、自分の黄龍や魔王とはまた違った形なのか。おそらく獣人連合のバッファロー達が街に押し寄せてきた時にグラッドが見せたあのエルダーエルフ? の変身ともまた違うような気がする。長い戦闘による経験が溜まったのか、それとも日々を過ごしているうちに何らかのきっかけを無意識につかみ取っていたのか……ブルーカラーも、この世界の住人達とは深く付き合っているから、その付き合いのどこかで辺りを引いていたのかも知れない。

「なるほど、ロナもそんな感じだった?」

 自分の質問に、ロナは頷く。そうか、条件を満たすとそんな風にログイン時に通知が来ると言うタイプか。二人の話を聞きながら、ちょっと軽く攻略サイトで変身の情報をあさってみる。──ふむ、乗っていないな。ワーウルフの変身自体はもうポピュラーな物であり、変身による効果と変身時限定アーツの情報などは詳しく乗っているが……プラチナム・ワーウルフと二人が言っていた変身情報はない。かわりにワーウルフ・パワードとワーウルフ・スティンガーという変身の進化形態は乗っていた。パワードは一定のスピードを維持した上での攻撃力増強型、スティンガーはワーウルフの素早さにさらに磨きをかけ、相手の首や心臓を貫く暗殺能力付与タイプなのか。

 今までの基本的な変身から更なる派生があると言う事と、そして何かしらの条件を満たせば自分の黄龍、魔王と言った特殊な変身に近い事が出来るようになる、か。おそらくノーラとロナは、自分の黄龍との時みたいに、何らかの条件を本人も理解しない内にクリアしていったんだろう。自分の場合は最後に条件を教わったが、プラチナム・ワーウルフはそれを一切教えない事で、誰もが簡単にプラチナム・ワーウルフに慣れないように制限しているんだろう。どうしたって、今の時代は攻略情報がすぐにネット上にあふれ出す。オンラインの運営会社がそれを止めたくても不可能だ。ならば、一切の条件開示をせずに、偶然達成した人達だけに報酬のみを与えればよい、としたのかね。

「チラッと情報サイトを見てみたけど、プラチナム・ワーウルフは乗っていないか。人前で見せたら大騒ぎになりそうだな」

 情報サイトの変身欄をさらに見てると、自分の黄龍も乗っていた。ただし大半の部分が正体不明、詳細不明、情報求むになってたけど。変身ネームも? マークだったし、技もおおざっぱにしか紹介されていない。ただ証拠となるSSがある為に、嘘情報ではないと言う事が証明されているだけに過ぎない様だが。コメント欄もなってみたいが手掛かりがなさすぎるとの嘆き節が大半のようだ。

「それが悩みの種なのよね。今回みたいに身内限定で入ったダンジョンとかじゃないと使えないのよ。ただでさえ毛がプラチナの輝きを放つせいでとっても目立つし……人の前で見せたら、絶対に変身習得方法を教えろって詰め寄って来る人が居るのは間違いないわ。こっちが分からないと正直に言っても、聞く耳持って貰えるとも思えないし」

 ああうん、ノーラの言葉は良く解るよ。そう言っても、情報を隠して独り占めしているって他の人には思われる可能性の方が高いだろうね。世の中は正直に言っても、周囲がそれを認めないなんてのはよくある話で。特に犯罪関連とかになればその可能性は非常に高まる。だからこそうそ発見器なんかが開発されるし、超能力なんかを扱った物語なんかでテレパシー、マインドジャックと言った物が出て来て活躍するんだし。

「結局、緊急時以外は人に見せないが護身術になってしまうんだよなぁ。誰も一緒か……」

 自分も黄龍は人前で使ったのはオーガの時ぐらいだし、魔王に関してはひた隠しにしておきたい。特に魔王の方は、プレイヤーだけでなくこちらの世界の人達にもだ。あの姿でいらぬ誤解や混乱を招きかねないし、その結果、本物の魔王様に迷惑をかけるなんて話になってしまったら、土下座じゃ済まない。

「アース君もそう言うの多そうだよね。妙な事ばっかりしてそうだし」

 ロナ、それは自分が良く解ってるから言わないでくれよ。ある意味ツチノコとかの珍種扱いだよねぇ、見かけるとその日一日ちょっとした幸運がやって来るか、とんでもない不幸が襲い掛かるかって感じで。バランスが取れてない気がするけれど、世の中はそんな物だし、悩むだけ無駄だな。

 このような雑談を交えつつ、時間が経過して──何とか死傷者ゼロでカオスモードのダンジョンを脱出することが出来た。時間はまだ余裕があったが、全員が『疲れた』という一点で完全同意したので街に引き上げ、ログアウトした。時間に直せば一時間ちょいぐらいだったのに、とっても疲れたぞ……。
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ブルーカラーメンバーも、色々人前で披露出来ない能力が身についてます。
原因はアースにあると言われれば、その通りなのですが。
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