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飛び入りの依頼

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昨日の更新分が短すぎたので、連続更新です。
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 そうして今度はレイジに連絡を取ってみた所、今すぐに来てもらいたい場所があると言う。街の中だし、そう遠い場所でもないので急行する。到着すると、そこにはレイジとカザミネだけではなく、複数の魔族の皆さんが居た。何かあったのだろうか? 表情がやや暗いような焦っている様な。

「お、来てくれたか。ちょっと困った事が起きてな、トラブルへの対処能力が高いアースに同席してほしかったんだ。皆さん、彼はブルーカラーのメンバーではありませんが、これまでにいくつものトラブルを解消し、乗り越えてきた実績を多く持つ頼れる友人です。今回の一件について、彼にも話を聞いてもらいたいがためにここまで出向いて頂きました」

 レイジの表情も少し硬い。何があったのだろうか? それにしても、こんな話し方もレイジは出来たんだな。今までは自分の前で使う機会がなかっただけか。

「では、こちらから依頼したい事の詳しい話をさせていただきたい。呼びたい方もいらっしゃったようですしな……」

 その場にいる、一番年上と思われる風貌を持った魔族の方が、少々かすれたような声で話を始めた。ざっくりと纏めると、要は討伐クエストだ。この街の南東に行った場所を魔族の人達が異常がないかのパトロールを行っていた所、アイスジャガーの集団と出くわした。アイスジャガーはモンスターの中では比較的温厚な方で、よっぽど接近しない限りは襲い掛かって来る事はまずないそうだが、この時はなぜか積極的に襲い掛かってきたらしい。

 もちろん魔族の皆さんも身を護るために対抗して戦ったそうだが、ある程度戦うとアイスジャガー達は手早く引き上げていったらしい。好戦的であった事と、その見事な引き際から、アイスジャガーの中に好戦的な群れのリーダー……いや、王が現れた可能性があると踏んだらしい。王が生まれていて、更にその王を中心に群れが年月を重ねて成長した場合……街に襲い掛かってくる可能性があるという話だ。過去にも数回、その様な王が頂点に立つモンスターの群れによる街への襲撃を受けた記録がある事から、可能性としては十分にあり得る展開のようだ。

「という事でしてな。近いうちにアイスジャガーの王を討伐するために先手を打ちたいと考えております。しかし、あまりに多くの兵士達で押し掛けた場合、魔物達に感づかれて他の場所に逃げられてしまう可能性があります。そうなってしまうと、次に見つけるのに時間がかかりすぎてしまう可能性が高く……そこで、今回は十名ほどの少数精鋭で強襲をかける形の作戦を考えまして。その作戦に、ぜひ名声の高いブルーカラーの皆さまにもご協力いただきたいと言う話でしてな」

 人数配分的には、魔族から五名ほどを選出。ブルーカラーからも五名出していただけるとありがたいのですがという感じらしい。そして、機動力に長けていればなおよし、とのお話。その機動力云々の部分で自分を呼んだんだろうか? まあ純粋な素早さなら、この場に集まっているブルーカラーメンバーの中ではノーラとロナ以外には優っているかな? とは思うけれども。

「街には女子供も多数おります。万が一襲い掛かられても撃退は出来るでしょうが……被害は出てしまうでしょう。奴らは王が生まれると好戦的になる事があり、そして今回はさらに悪い事に戦いによってこちらの血の味を魔物達が知ってしまいました。こうなってしまった以上、血の味を知った彼らと好戦的になる原因を作っている王を倒す以外の術はありません。報酬はもちろんお支払いいたします。どうかそのお力をお貸しくださいませ……」

 その言葉とともに、レイジ達に深く頭を下げるこの場に集っている魔族の皆さん。その一方でレイジは、目で(どうする?)と周囲の面子に問いかけてきた。ノーラは(放置はできないでしょ)という感じの表情。ロナは静かに頷き、カザミネも(これは引き受けるべきです)と言わんばかりの真面目な顔をする。コーンポタージュは数回コクコクと頷いている、これも協力することに同意するって受け取り方で間違いないだろう。確かに、街に押し寄せて来るとなれば放置できないよな。獣人連合でもえらい目に遭った事だし、先行して叩けると言うのであれば、叩くべきだろう。なので、協力すべきだの意思を込めて一度頷く。

「分かりました、ギルドマスターと連絡を取りますので少々お待ちを」

 と前置きをしてから、レイジがウィスパーチャットを起動したようだ。少しの間やり取りが行われ……その後にレイジがもう一度大きく頷いた。

「ギルドマスターからも許可が下りました。我らは今回の一件に対し、力をお貸しすることを宣言します」

 このレイジの言葉を聞いて、魔族の皆さんは深く頭を下げた。行動開始時間は……リアルタイムで言うと、明日の夜九時半辺りだ。今までの魔族の皆さんによる経験で、その辺りなら吹雪などがやって来る可能性が低い時間帯らしい。天候による妨害は厳しい物があるから、それを回避できる可能性が高いのであれば、当然それを選択するべきだよね。この世界は、容赦がないのだから。

 そして魔族の皆さんと別れてから場所を宿屋に移し、誰が戦いに行くかの相談を開始。取り合えず今回はレイジが仕切るみたいなので、彼に議長役をやってもらう。

「で、行くメンバーだが……とりあえず今回の話を受けるきっかけになった俺とカザミネは決定だ。普通は重鎧に機動力はないんだが、幸いなことに俺の鎧は重力をだます効果がある魔鎧だからな。動きには十分な余裕がある。後はやはり魔法使いも一人は欲しいから……コーンポタージュには来てもらう事になる。ここまではいいか?」

 レイジの言葉に皆頷く。

「そして、ノーラとロナは今回はパスしてもらうしかないな。相性が悪すぎる……一応説明しておくと、アイスジャガーの特性で一定以上の長さを持つ武器でないと有効打が与えられないと言う物があるらしい。そうなると短剣がメイン武器のノーラと、ナックルがメインのロナが活躍できる場面がほとんどない。水魔法に対する耐性も高いから、ノーラとはとことん相性の悪さが浮き彫りになるな。そして地面が雪に覆われているから、ロナのもう一つの技術である投げも効果が低くなってしまうのが痛いな。足場が岩や土ならば非常に頼りになる所だったんだが」

 ありゃりゃ、それは厳しいな。モンスターの特性で、優秀な人材が戦う前から使えなくされるってのはRPGではたまにある事だが……全てが全て「レベルを上げて物理で殴る」という訳にはいかないよなぁ。というか、それですべてが通ってしまったらメタい話になってしまうけどゲームとしては面白くなくなってしまう。今回に限ってはそのメタい話が通ればよかったんだけどね~、そうそう甘くはないってことだな。

「ツヴァイを引っ張って来れればいいんだが、アイツは今罰代わりの鉱石仕訳作業をやらせてるからなぁ。ここで罰を中断させると示しがつかん」

 蛇足ながら、この鉱石仕分けについての説明。ワンモアではある一定レベル以上の素材を使えるようにするには物凄い手間がかかるようになっている──らしい。少なくとも、今の自分には絶対扱えないレベルだので、情報サイトや聞いた話だけの不確かな部分も多く含まれる。まず、鉱石の鑑定を行う所までは今までと同じ。ただしそこから品質の良さなどに差異が出てくるようになっている為、それを仕分けしないといけない。面倒な点はこれだけではなく、何と鑑定をするとアイテムボックスに一時的に入れられなくなってしまうのだ。

 ではどうすればいいのかというと、その鑑定をして品質の仕分けを済ませた鉱石をインゴットにすればアイテムボックスに入れられるようになる。だが、仕訳け途中の鉱石は重いし場所を取るしで、生産者からしてみるとかなりの重労働となるらしい。なのでツヴァイ、ミリー、エリザは、ギルドに属している生産専門プレイヤーがひたすら鑑定した鉱石を受け取って、それを品質別ごとに一か所にまとめる作業をやらされているんだろうと予想する。統一しないと、インゴットにする時に必ず失敗してゴミになってしまうらしいので、丁寧に見なければならない。

 さらに蛇足となるが、ランクはA、B、Cの大まかに言えば三つ。だがさらにここに+と-まで付いてくる。例えばA-の鉱石とか、C+の鉱石とか。この+や-がついている鉱石も一緒に混ぜてはいけない対象にしっかりと含まれてしまうので面倒なことこの上ない。今頃ツヴァイ達はひーひー言いながら慣れない作業に従事していると思われる。鑑定する鍛冶屋さんも大変なんだけどね……多分、鍛冶屋さんが鑑定し、その後ツヴァイ達が仕分けして運搬し、ある程度集まったら鍛冶屋さんがインゴットにすると言う流れになっていると思われる。

「この場にはいないが、カナもダメだな。アイツの重鎧は良い物だが重力軽減などの効果は無いから、今回の様な速度重視の戦いには向いてない。そんな状況だから、ギルドメンバーから一人槍使いを引っ張って来るとして……すまん、アース! 弓使いも一人は欲しいんだ、協力してくれ! もちろん報酬も払う!」

 最初からそのつもりだったから、すぐにOKを出しておく。さてと、今回も頑張りますかね。
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全体の名声で見ると、アースよりブルーカラーの方が高いです。
アースは普段の状態と義賊頭で得た名声とで二分されていると言う部分もあります。
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