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翌日、街を出るまで

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 そして翌日。必要な物は昨日のうちにすべて調達しておいたので、今日はブルーカラーのメンバーと合流してから魔族の討伐隊である皆さんと合流。そこからアイスジャガーの一団を倒しに行くと言う流れになっている。すんなりいってくれれば一番いいのだが、どうなる事やら。と、待ち合わせをしていた場所で待つこと数分。ブルーカラーのメンバーがやってきた。

「アース、今日もよろしく頼むぞ。それと、ガルド。軽くで良いから挨拶をしておいてくれ」

 先頭に立っていたレイジの後ろから、長い槍を持った一人の男性プレイヤーが前に進み出てきた。それにしても長い槍だな……このゲームの一般的な槍よりもずっと長いぞ。振り回すだけでもかなりの筋力が必要とされるのは間違いないな。

「どうも、俺はガルドって名前のブルーカラーのメンバーだ。良くギルマス達を始めとしたアースさんに直接会えると知って楽しみにしてた。そんでもって使う相棒はこの槍……物干し竿だ。物干し竿って言えば、佐々木小次郎が用いていたって言うあの長い日本刀の事を言うのが一般的だと思うんだが、この槍の名前がそうなんだから仕方がないと理解してくれると助かる。もちろん一般的な長さの槍もアイテムボックスの中にはあるんだが、そっちはダンジョン内限定の槍なんでな。今日はこの物干し竿一本で行くからよろしく頼む」

 ガルドはそう自己紹介を済ませるとこちらに向かって一礼。なので自分もそれに応えるように一礼を返す。

「こちらこそよろしく。しかしそれだけ長い槍を扱えると言うのはすごい筋力と技量だな。持ち歩くだけでかなり大変だろうに」

 自分の感想に対し、ガルドは少々苦笑してから補足説明をしてくれた。

「槍スキル以外は、全部ステータス増強系のスキルで埋めてやっとまともに振り回せるってのが実情なんだよな……筋力強化系は特に鍛えてるから、アバターにもそれが影響してこんなことになってる」

 と、来ていた軽鎧の左腕の身を解除したガルド。そこに見えた物は、物凄いムキムキの腕。

「と、軽鎧の下は全身が滅茶苦茶筋肉の塊みたいにになっちゃってなぁ。これが契約してる妖精にあんまり受けが良くないんだよな……ほら、お前も挨拶しろ」

 ガルドの一声で、ガルドの背負っている小さなバックパックのような物から小さな黄色い光が現れる。その光が近寄って来ると、これぞファンタジー世界の妖精! と言わんばかりの蝶の形を模した四枚羽が背中についているフェアリーである事が分かった。光が黄色い事から、おそらく属性は土系統だろう。

「は、は、はじめまして! ガルドと契約してるアリシャと申します! よ、よ、よろしくお願いします!」

 なんだろう、称号の一つである『妖精国の隠れアイドル』の効果がいかんなく発揮されたんだろうか。しなくていいのに。こんなにかっちこっちじゃ、いざ戦いとなった時に困るんだよな。とりあえず声をかけとくか……

「ああ、よろしくね。そんなに固まらないで……と言っても初対面では難しいかな」

 そんなやり取りをしていると、レイジ達の方から「妖精たらしは健在ですね」「ああ、さすがはアースだ」なーんて言葉が聞こえて来る。小声で話しているつもりなんだろうが、バッチリ聞こえてるからな? 後で問いただす。

「あ、あの! アース様の手のひらに乗せて頂けませんか! お願いします!」

 なんて事を、アリシャさんから頼まれてしまった。ガルドに視線を向けると、申し訳ないがお願いできないか? という感じで目を閉じ、手をこちらに合わせていた。まあ契約主がそう言う意思を示すのならば構わないか。ゆっくりと右の手のひらをアリシャさんに差し出すと、すぐさま飛び乗って来て、頬を擦りつけて来る。

(マスター、鼻の下が伸びてます!)

 と、突如ルエットからの念話が。だが残念ながら鼻の下なんか伸びてないよ、可愛いとは思うけど……どっちかって言うと、小さい娘を見守るような心境だからな。世の中のお父さんたちが自分の娘を見守る時に鼻の下を伸ばすか? んな事がある訳ないない。

「アースさん、申し訳ないがアリシャにしばらくそのまま付き合って貰えないか? 昨日からアースさんに会う事を楽しみにし過ぎて、熱暴走みたいな感じになっちゃってたからな。初対面の人に対して、あまりにも図々しいとは百も承知なんだが……」

 これぐらいはお安い御用だ。なのでガルドにも「それぐらいはかまわないから、気にしなくていいよ」と言っておいた。それに、いつの間にか自分の中指に抱き付いてるし……ここから無理矢理引っぺがすのはかわいそうでもあるし、面倒でもある。なので、魔族の皆さんと合流してから戦いに入る直前までは好きにさせといてあげよう。そこから場所を移して、今回同行する魔族の皆さんとも無事に合流した。

「今回同行するのは、私を始めとした以下の五名となっております。大雑把にですがこちらの説明をさせていただきます。私が大盾と片手剣を用いる盾役を、そして槍を用いる者を一名、魔法を用いる者を三名という編成となっております。宜しくお願いいたします!」

 合流した魔族の皆さんのリーダー格と思われる男性は、そんな風に簡潔な説明をしてくれた。簡潔すぎる気もするが……まあいい。レイジ達が前日に予想をしておいた通りの展開と言っていいから、問題はない。

「こちらこそ宜しくお願いします、こちらは盾役一人、槍一名、弓一名、大太刀一名、魔法使い一名となっております。お互い無事にこの仕事を乗り越えられる様に務めましょう」

 レイジもこちらの布陣を明かし、その後レイジと魔族の皆さんのリーダー格の男性と握手を交わす。

「では、早速ですが移動を始めましょう。すでに偵察部隊を先行させ、今回のターゲットであるアースジャガーの一団の場所は特定済みです。後はタイミングを見計らっての強襲を行い、一気に相手の戦力の大部分を削る。その後にアイスジャガーの王を打ち取ると言う流れになります。よろしいですか?」

 ほう、先行部隊なんてい今回はいるのね。相手の位置がはっきりとしていると言うのはありがたいね、こういうフィールドでの討伐って、最悪ターゲットを探し回るだけで数時間が経過しましたなんて可能性もある訳で……ならば現場に急行するだけか。

「了解です、では早速移動を開始しましょう」

 リーダー格の魔族さんの言葉を聞いたレイジが、早速行動開始を告げる。今回のリーダー役はレイジという事になってるから、基本的なやり取りはレイジに任せる事にしている。複数の人間が会話に混ざるとごちゃごちゃしかねないからね。さてと、いよいよアイスジャガーとのご対面か。だから、そろそろ君はご主人様の所に帰ってくれないかな? という意思を込めて、右手の中指に抱き付いているアリシャさんをつんつんとつついてみる。

「ううーん……もうちょっとぉ……」

 ──なんでこの子はこんなに平和なの。仕方ないので、引っぺがしてガルドの元に返しておいた。これから先何もないならもうしばらくこのままでも構わなかったんだけど、モンスターが出る街の外に進むからね……いい加減スイッチを切り替えて貰おう。
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今年も六月は体調を崩すわ、色々とうまくいかないわで散々でした。
自分にとって、やはり六月は魔の月です……なんでなんや。
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