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レイジとのやり取り&体は動きません

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「見覚えのない天井……ああそうか、前日のプレイで生命力を削りまくったから動けなくなって運ばれたんだっけな」

 魔族の兵士さんを救うためとはいえ、えらい無茶をやってしまったからなぁ。とはいっても、見捨てるとか尊い犠牲という言葉で終わらせる気も無かった。とりあえずレイジにウィスパーチャットを飛ばしてみるか……よし、受け付けて貰えた。

【レイジ、昨日は済まなかったな】【アースか、昨日はお疲れさん。いろいろ聞きたい事も多いんだが、まずはいくつかあの後に伝えておきたい事が発生したのでそれを先に教えておくぞ】

 ん、あの後何にもなかったって事はないだろうからな。

【まず、街の人には今回の一件は喋ってはいけないと言う通達が出た。もちろん俺達やアースも含まれてる。まあアースにも直接その通達をして来るだろうが、一々その事に関して確認を取り合うのもバカバカしいからな、先に教えとくぞ。今回の一件は幸い死傷者もゼロだったし、街の住民に不安をばら撒く必要はないと言う事なんだろう】

 なるほど、まあ始めから喋る気は全くなかったけどね。わざわざ不安をあおる様な真似をする愚か者になりたくもないし。軍の方としても、余計なごたごたを引き起こしたくないだろう。

【そしてこれはアースにとっての良いニュースなんだろうが……例の炭を買いあさって魔族の人達に爪弾きにされてた例のギルド達が、軒並み魔王領から追放されたぞ。理由は炭にまつわる一件で周囲に迷惑をかけ、恐喝行為まで行った為だとあったな。これでアースが魔王領内で絡まれる心配はほぼなくなったから、安心して魔王領を回れると思うぞ】

 これは良いニュースだ。というか、恐喝までやっちゃあいけないでしょうが……自業自得もここに極まれり、という事でいいのかな。こちらから何か仕掛けたわけでもないし。むしろこちらは魔族の皆さんとの仲が悪化しない様に動いた側だ。あの時一緒に炭作りをした皆は、おそらく同じ考えの元で動いてたはず。報酬なんか二の次という面もあったからなぁ。

【後は報酬だが、なかなか笑えることになったぞ。当初の報酬に加えて、強烈な武具を提供された。それだけ今回の一件で一般の人に被害を出さずに食い止めた事を高く評価してくれてるんだろうが。俺は魔剣の一種である雷の斧を貰った。ハンマーだったら神様の一人が使う武器だったかもな。カザミネも魔剣の一種である大太刀を貰っていた。あっちは風の属性を持っている一品だ。ガルドも魔槍を貰ったな。これは火の属性付きの奴で、長さもガルドが持っている槍の長さに合わせた長槍になっていたぞ。最後にコーンポタージュが貰ったのは予想できたかもしれないが特殊な杖だ。魔法を一定時間チャージしておけると言う特性があるらしくてな、チャージしておいた魔法はどんな状態でも放つことができるらしい。これを利用して詠唱時間が長い魔法の二連射が出来るようになっていた】

 おお、まさかの魔剣の大盤振る舞いですか。それだけ魔族の人達からの評価も高かったと言う事なんだろうから、良い事だろう。そうなると、自分には何を渡されるのやら。ちょっと楽しみ半分怖ろしさ半分と言った所か。

【と、とりあえずこちらが教えられることはこんな所だ。で、だ。あの時のアースが使った変身は一体なんだ? Wikiなども見てきたが、片方は該当する物があったがもう一つはさっぱりわからなかったぞ? 最初の変身の鎧姿は何だったんだ? 教えられる範囲で良いから教えてくれ】

 あの変身か……レイジ達は口が堅いだろうからいい、かな?

【分かった、ある程度なら教えられるから教える。だけどその前に一つ約束してくれ。初期のブルーカラーメンバー以外には絶対に教えないで欲しいんだ。下手に情報をばら撒かれると、非常に厄介な事になる。そうなったら、また自分はいつぞやの様に他のプレイヤーから隠れて行動しなきゃいけなくなってしまう。それだけは約束してほしい】

 自分の言葉を聞いたレイジが、少し後に【分かった、その信頼にこたえる事を約束する】と返してきたのである程度魔王変身については明かす事にした。黄龍は無理だな……教えたら変身を覚えられるようになる可能性を摘んでしまう。

【じゃあ鎧姿の方だが……あれは魔王変身だ。先に言っておくけど、今代の魔王様があの変身習得に関わっている。だから魔王様の方も当然自分があの変身を可能としている事は知っている。だからと言って、魔王様に確認を取る、なんて真似はしないでくれ。下手するとブルーカラー全員の首が魔王様の手によって飛びかねん】

 やらないとは思うけど、念を入れて釘をさしておく。すぐさまレイジからも【その辺は心得ている。そんな形でアースに迷惑をかける様な真似はしない】と返事が返ってきたから杞憂ではあったんだろうが、まあ一種のお約束みたいな物だ。

【変身すると、普段の弓アーツに加えて他の特殊な弓技を使えるようになる。火や土と言った魔法を無効化するようになったあのバケモノの特性を無視して、それらの属性を付与した矢を飛ばしてダメージを与えられるのもその一つだな。更にアイツを無理やり消し飛ばした技は、歴代魔王様の必殺技と言っても良い特殊アーツだ。まあこれは歴代魔王様によって発動方法や内容に大きな違いがあるそうなんだがな】

 ここまで話すと、レイジがごくりとつばを飲み込む音が聞こえた。

【ど、どうやったら変身できるようになるんだ?】

 このレイジの質問は尤もだな。さて、どう答えた物か……うーん。

【自分の時は非常事態だったと言う事が一つ。そしてその変身習得方法は、本来魔族の人が魔王となるために行う儀式みたいなような物らしいんだ。そしてその儀式の成功率は……かなり低いと言ってた。失敗すると、理性の無いバケモノになってしまって討伐されるとかの血なまぐさい結末になるそうだ。これは魔王様からの話だから信じるしかない】

 レイジからは【魔族の方も、かなりえげつない事やってるな……】というご感想が。まあ自分もそう思うよ。だからこそ魔王様って存在はデカいんだろうが。

【で、本来なら自分を含めたプレイヤーが挑戦できる内容じゃない。だけど今回はさっきも言った通り緊急事態で、その事態を打開できる可能性がそれしかなかった。だからやったって言う事だね。まあはっきり言って分の悪い賭けなんて言うレベルじゃないから、もう一回やりたいなんて口が裂けても言えない。何せ失敗したらバケモノになるか、完全消滅するかとかの悲惨な結末しかなかった訳だし】

 レイジからも、うわぁ、それはないわぁと言う感じのうめき声の様なものが漏れる。失敗=キャラアバター完全消失何てハイリスクなチャレンジ、MMORPGでやりたいと思うだろうか? もちろんアバター製作から一時間内でやれると言う内容ならまだしも、ここに来るまでにいろいろな物事もあったし装備もいろいろ持っている。特に今身に纏っているマントは、完全に一品物でもう二度と手に入らない。それらを全部失うのは勘弁願いたい。レベルは上げ直せるが、装備品を始めとしたアイテムは一度きりという可能性が高い部分だからなぁ。

【そう言う訳で、あの変身を習得しようなんて事は考えない方が良いね。確かにとんでもない力を持っているのは認めるけど、だからと言ってキャラクターロストなんて嫌だろ?】

 この自分の言葉に、レイジはすんなり同意した。キャラロストなんてあんまりにも重すぎるペナルティ、誰だって負いたくないよね。

【もう一つの方はWikiにある程度情報があったと言う事だから何もしゃべらないよ。これも理由がある。詳しく教えてしまうと、あの変身を習得できなくなってしまうからだね。可能性を潰すことになるから、こっちはだんまりを決め込ませてもらう】

 話を聞き終えたレイジはううむと唸った後に──

【本当にアースは良く解らん道を歩いているな。あの後アースの変身後の姿と魔族の人達の反応を見て『魔王様みたいだったな』なんて半分冗談交じりで話していたが、まさかその冗談が事実だったとはな。というか、まさかアースは魔王の後継者になる資格があるのか?】

 あ、やっぱり気が付かれた。そうだよね、そこも聞きたくなるよね。

【それに対する返答は、魔王様の言葉を一部借りるかな。『お前が魔族であったら良かったのに』だそうだ。だから継承権や資格とかはない、と思う。万が一魔王様が突然お亡くなりになられるとかの非常事態が起きた場合は、無理やり座らされるかもしれないけど……流石にそれは無いだろう】

 フラグとかじゃないぞ。さすがにそんな事になったら大混乱とかのレベルじゃ済まない。

【ふむ、という事はだ。アースと魔族の女性が結婚して跡継ぎを作れば魔王の後継者が】【妖精国との戦争場勃発しそうな案件を考えるのは止めてお願いします命がいくつあっても足りません】

 レイジが怖ろしい事を言い始めたので即座に止める。冗談じゃないよ、フェアリークィーン大暴走とかもうお腹いっぱいですよ? そんな未来はノーセンキュー!!

【そう言えばアースは妖精に物凄く好かれてたな……確かにそうなってもおかしくはないか。まああとは直接会って話した時にでも聞くとしよう。今日はどうする?】

 ちらりとステータスを見てみるが、ステータスダウン系バッドステータスはまだまだ解けていない。腕を上げるだけでもかなりつらい状態なので、冒険なんてとてもじゃないが不可能だ。

【今日は無理だな、昨日の無茶の影響で、ステータスがガタガタに落ちてしまっているんだ。腕を上げるだけでかなり厳しいから、戦闘なんて行えないよ】

 この自分の返答にレイジも【やっぱりそれなりの反動はあるんだな……わかった、皆にはそう言っておく。じゃあまた明日な】との一言を残してウィスパーチャットが切れる。さてと、この体じゃさっきから自分の頭付近で寝息を立てているアクアに触れる事すらできん。このままログアウトするしかないかなと考えていた所に、足音が聞こえてきた。誰だろう?
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初代の相棒であるピクシーがGOで手に入りません。
相棒の一匹であるラプラスは捕まえられたのに……
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