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メテオ? 

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 メテオ。それは魔法使いの扱う魔法の中でも究極的な攻撃力を持つ魔法の一つ。何せ空……宇宙にある岩石を魔法で操作して超高高度から、もしくはある程度上空にテレポートポイントを作って相手の上から落とすと言う誰が考えたこんな物というレベルでとんでもない魔法。有名なゲームタイトルにはたいてい出て来るし、物によってはこのメテオ自体がストーリーの肝となっている事もある。まあ、例外的に流れ星を意図的に作り、その流れ星にお願いすると言う少々ギャグ色に染まったメテオもあるみたいだが……

【実はな、今日メテオの試射会を開くつもりなんだ。で、アースがサルアの街に居るなら誘おうかと思ってさ。どうだ?】

 試射会、つまりツヴァイ達もその効果範囲や威力を知るのは初めてという訳か。これは是非見に行かなくてはなるまい。ミリー辺りが使えるようになったんだろうか、その雄姿はぜひ拝んでおきたい。

【すぐに行く。場所はどこなんだ?】

 自分の返答に、ツヴァイから帰ってきた言葉は──

【じゃあ、今からそっちのマップに位置情報を送るからそこに来てくれ。サルアの街の北側から出てくれれば一番早いから】

 サルアの街の……北東か。ダンジョンも何もない、たまーにフィールドモンスターが居る程度の場所か。大技を試射するには適切な場所かも知れない。

【場所は理解した。今からそちらに向かうよ】

【ああ、待ってるから早めに来てくれよ】

 そうしてウィスパーは切れる。さて、そうと決まればさっさと移動だ。このワンモアのメテオはどういった演出になっているのだろうか。そんな期待をしながら自分はサルアの北門をくぐって目的地を目指す。ツヴァイ達を長々と待たせる訳にはいかないからな、全速力で指定された場所に向かおう。そうして数分後には目的地に到着した。

「アース、来たか。というか予想よりもはるかに早かったな……」

 妖精の黒本も使って、とにかく最速で移動することに努めたからな。土で簡易スキーを作って、風に後押しさせてと普段やらない事もやってみた。お蔭でMPが残り一割しか残っていないが、ここには戦いに来たわけではないので問題は無い。メテオを鑑賞しているうちにそれなりに回復するだろうし。ただ、その速さにレイジがややあきれ気味だ。

「いやあ、メテオと聞いてつい全速力でやって来てしまった。それで、一体ブルーカラーの誰が使えるようになったんだ? ミリーなのか? それともエリザか? もしくはコーンポタージュか?」

 と、この場にいる魔法使い三人に問いかけてみたが……全員が首を横に振る。あれ?

「私は使えませんね~。火魔法のレベルは相当上がってるはずなんですが、メテオは習得してません~」

 これはミリー。

「私はそもそも火の属性は取ってないので、撃つ機会は永久にやって来ませんわ」

 こちらはエリザ。そう言えばエリザって火の魔法は使わなかったな。それじゃメテオを撃てるようになるわけがない。

「私も撃てません。火と土は取っているので、撃てる日は来るんじゃないかなとは思うけどね」

 これがコーンポタージュからの返答。そう言われれば、コーンポタージュの火と土魔法の両方を取るってのはゲームによってはメテオを習得するために必要な手段の一つだっけか。しかしそんなコーンポタージュでも、メテオの使用者としては該当しないと。

「ってちょっとまった。魔法使いの三人が撃てないと言うのであれば……今回メテオを習得したのは一体だれになるんだ? 該当者がいないような気がするんだが……」

 この疑問は、自分じゃなくたって当然持つだろう。魔法使いの究極魔法の一つとされるメテオ……ああもちろんゲームによってはそうじゃないパターンも多いが、それでも絶大な攻撃力を持つ事が多いメテオは、魔法使いの華の一つであると自分は思っている。しかし、それを魔法使い三人が使えないという。なのに試射はする。じゃあ誰が使えるんだよって話になるのは当然だろう。この自分の質問に対する答えは、この場に集まったブルーカラーメンバーの視線が一点に集まる事で返された。その視点を集めたプレイヤーは──

「──何でツヴァイ?」

 言うまでもなくツヴァイは戦士系プレイヤーだ。そりゃ魔剣をその体に吸収したおかげで、一部魔剣を介した特殊な火の魔法のような物が使えるようになっているのは分かっているが、いくら何でもメテオを習得出来るような物なのか……? だが、予想に反してツヴァイはこう言って来た。

「いや、正直俺も訳が分からないんだが……とにかく、魔剣がメテオを習得したってシステムメッセージが教えてくれて……おかしいのは良く解るから、アースがそんな表情を浮かべた事に対しての異論はないんだけどよ」

 なるほど。確かにそりゃおかしいと言うか訳が分からん。だから試射しに来たのか。

「まあ聞いたこちらも、最初は頭上に?マークを浮かべたほどです。アースさんが怪訝な表情を浮かべる気持ちも良く解りますよ。だからこそ、まずは一回アースさんを除いた古参ギルドメンバー以外のプレイヤーやモンスターが居ない場所で発動してみようと言う話になったんです。なお、アースさんを呼ぼうと言い出したのは私です。アースさんも魔剣を体に取り入れているから、もしかしたらこの先で今回の様に普通はビルド的に習得できるはずのない魔法や攻撃を習得するかもしれません。その予行演習になれば、と」

 ああ、そういう事なのか。カザミネの発案で呼ばれたんだ。カザミネも魔剣に関しては一定の知識があるからな……それにしても、あの獣人連合の学者さんに聞いた話だけでは分からない事が次々と出て来る。もしかしたら次はこちらに何かしらの変化があるかもしれないし、情報の共有は大事か。

「そういう事だったのか……なら、こっちも何かしらビルド的に習得したことがおかしい能力やアーツが発現した時は見て貰えるだろうか?」

 この自分の言葉に、ブルーカラーのメンバーは頷いてくれた。まあこのブルーカラーの初期メンバーなら信用できるから、一人で考えずに知恵を借りるときには頼りにさせて貰おう。

「と、説明も終わった事だし、ツヴァイ! そろそろやってみろ!」

 レイジの声にツヴァイは頷いてから火の魔大剣を体の中から発現させた。刀身が燃え盛る魔剣を両手持ちしたツヴァイはついにメテオを発動させた。

「では行くぞ、《メテオ・スラッシャー》!」

 ツヴァイの声が響くと同時に、火の魔大剣が突如その切っ先を空に向かって伸ばし始めた。あっという間にその先端は空の彼方に見えなくなり、長く伸びた炎の刀身が揺らめく。

「なんだか、予想と違いますね……」

 カザミネのつぶやきが耳に届く。確かにそうだ、何というかメテオが発動する直前の雰囲気とはあんまり思えない。だが、魔剣の様子からして《メテオ・スラッシャー》というアーツは発動しているはずである。そうして待つこと一分半ぐらいだろうか?

「来たぞ、絶対に俺の前方に移動しないでくれよ!」

 ツヴァイの警告に従い、その場にいる全員がツヴァイの後方に下がる。そうしてついにメテオが落ちてきた訳なんだが……自分を含めて、誰もが『ええー……』というような感じの気持ちを味わう事になった。何とメテオと思われる火に包まれた隕石がツヴァイの魔大剣に貫かれており、そのメテオを落とすべく、ツヴァイが魔大剣を前方に振るって地面に叩きつける。落されたメテオは轟音をあげ、大爆発を落とした。確かにメテオとは、宇宙にある隕石を引き寄せて地上にいる相手に落とす魔法である。それは間違っていない。だけど、これはちょっと……

「何と言うか~、お団子みたいですよね~」

 メテオが炸裂し、ツヴァイの魔大剣が元に戻った所でミリーが呟き、その場にいた全員がうんうんと頷く。

「何か、ちょっとカッコ悪い気がするよーな?」「宇宙空間まで切っ先を伸ばし、そこで隕石を刺して地上まで力技で持ってくる訳ですか……一応メテオではあるのでしょうが、これはなんというか」「イメージしていたのと違い過ぎますわ……」「魔剣のでたらめさがひどいね!」「メテオを三個刺してくれば、まさにお団子だね」「最後の爆発だけは、メテオっぽいけどな」

 そんな感想ばっかりであった。あーうん、確かにメテオって言うと発動する前には魔法陣が複数出て来るパターンとか、もしくは複雑ながらも美しいでっかい魔法陣が浮かび上がって来るってパターンが多いよね。その後の爆発はメテオっぽかったけど……これじゃなんというか、力技にも程があるという言葉で表現するしかないような気もする。

「お前ら、容赦ないな……だけど、俺は戦士だぜ? 家庭用のRPGに出て来るかっこいいメテオなんて出来る訳ないだろー!」

 ツヴァイのこの叫びに、心の中で「ああ、それもそうか」と思ったのは自分だけではない様だ。周囲にブルーカラーのメンバーもうんうんと頷いている。そうだよな、戦士であるツヴァイが魔法陣に囲まれてって方が違和感があるかもしれない。むしろこうやって力任せに発動する大技って方が、戦士であるツヴァイらしいのかも。──そうなると、自分はどうなんだろう?

「でもまあ、少なくともあの質量が叩きつけられる上にあの規模の大爆発が発生する以上、直撃を受けたモンスター相手に対する威力の方は相当な物だろうけど」

 この自分に言葉に、異議が挟まれることは無かった。まあ見た目は少々あれだったかもしれないが、威力の方は相応にあるはずだ。というか無かったら詐欺だろう。発動するまでにかなり時間がかかってるし、消費するMPだって相当に高い事は予測できる。それで威力が無かったら使い道がない。

「その辺りは信用していますわ。ギルドマスターなのですから」

 エリザがそんなことを言っているが、微妙に訳が分からぬ。ギルドマスターだからって強いとは限らない訳だが……まあいいか。その辺をあれこれ言う必要も無いだろう。

【あれがメテオですか。なるほどなるほど……規模を小さくすれば何とか私にも】

 ルエット、変なことするなよ? 頼むから。無理に真似しなくったっていいんだからね? アクアを抱きかかえながら、指輪から聞こえてくる少々物騒な声を受け流す。変なものみせちゃったかなぁ。
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