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妖精城にて調べもの

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「ようこそ妖精城へ! 歓迎いたします!」

 門番さんに顔パスで城の中へと通してもらった。王城に顔パスしてたことで、他のプレイヤーに『あいつ何者?』という視線を軽く浴びたがまあいいか。妖精城に入れるようになったプレイヤーは結構多いし、顔パスになっている人も数名いるらしいと噂もあるから多分大丈夫だろう。お城の中にいるメイドさんに、歴史関連の資料がある部屋まで案内してもらい、到着するまで雑談をしてみる。大半はたわいもない話だが、今の妖精国は安定していて大きな問題はない事、クィーンは他の国に仕事で出向いている事などが分かった。

「そうですか、女王陛下も精力的に国家の為に励んでいらっしゃるのですね」

 メイドさんも「ええ、陛下は務めを果たされております。陛下のお蔭で、我が国はかつての戦いの傷跡も癒えて活気を取り戻しました。陛下には感謝しております」との事。クィーンももう立派な国家の顔だな。最初があれだったので色々と心配だったが、本当によかった。そして他の国にっている事で、自分を見かけて壊れる事も無いので更によかった。国家の顔があまりだらしない表情を浮かべる物じゃないからな……。

 *****

「──と、いう事で今後も妖精とエルフの皆様とは協力し合える仲を維持できれば、と考えております」

 クィーンの言葉に、新しくその座に着いたエルフの長老がそうですな、と頷く。妖精国とエルフ村の会談は、終始和やかな空気の元に進んだ。

「これからも宜しくお願いします……と、女王陛下、如何成された?」

 最後の確認も終わっていくつかの取り決めを纏めた文章に対する双方のサインも済んだところで握手をしようとしたエルフ村の長老が、同じく手を差し伸べてきたフェアリークィーンの動きが急に止まった事に首をかしげ、そう声をかけた。

「あ、いえ。なぜか今、自国の方に何かが起きたような気がしましたので……申し訳ありません。エルフの皆様との取り決めに不満がある訳ではありませんので。大変失礼をいたしました」

 そうしてややバツが悪いような表情を一瞬浮かべた後に、笑顔で握手をするクィーン。──そうしてエルフ村での仕事を全て終わらせて城に戻った時、アースが城に来ていた事を知るのだが……その後はご想像に任せたい。

 *****

 さて、クィーンの近況も聞けて安心した所で本命の調べ物だ。目的を伝えた所、数名の妖精さんが手伝いを名乗り出てくれたのでありがたく手を借りる事にした。そうして手早く資料を確認した所、該当すると思われる人物が二人ほど見つかった。時代は妖精国がまだ他の国に対して戦争を吹っ掛けていた頃なので、サーズの時に対峙した所持者よりさらに以前の話という事になる。一人は片手剣に盾というオーソドックスな形で前衛に立つ隊長の妖精。もう1人は遊撃で敵の側面や背後から強襲をかける事も多かったとされる部隊の隊長で、こちらはスネークソードを用いていたらしい。そして二人とも持っている武器が魔剣である事も間違いないらしい。

 ただ、この二人は仲があんまりよくなかったとある。特に大勢を決した後、敵意を失った物はあえて見逃す片手剣の妖精に対し、戦場に出てきた敵は完全に殲滅、首を取ると言う考えのスネークソードの妖精。お互いの考えをお互いが攻撃する間柄だったようで、とてもじゃないが和解は出来そうにないと言うのが周囲の感想出会ったと記されていた。

 しかし、この二人にも共通点はある。それは戦果が他の人達よりもはるかにすさまじかった事である。それに戦場では立ち位置の関係で近くで共に戦うといった事は起きなかったので、兵士としての運用は問題なかった様子がうかがえる。そして戦争で両者はますます戦果を上げ、それに伴って階級も上げていったとこの資料にはあるな。しかし何事にも終わりは来るもの……戦争が終結するとともに、この二人に関する情報がぷっつりと切れる。そりゃあもうあからさまにおかしいと断言できるレベルで。他の魔剣使いや将軍と言った人物のその後はそこそこ書かれていると言うのに。

「この点に関しては、こちらも明らかに不自然すぎるとは思っているんですよね。しかし、調べようにもこの後どうなったのかはいまだに不明で……そしてここに繋がります」

 ──と、かなり後の話になるようだが、片手剣の妖精が使っていたと思われる鎧だけが見つかる。当人、および魔剣は見つからず……ただ鎧には戦った事を考えても不自然なほどに多く付いた傷跡、そして内側にはかなり多くの血が付着していたとされている。そしてこれが最後となって、この二人の歴史はこの後完全に語られないという何とも中途半端というかなんというか、とにかくすっきりしない終わりを迎えている。というか、スネークソードの方はどこ行った。

「なんか、こう、すっきりしませんね」

 歴史に文句を言ってもしょうがないのだが、とにかくすっきりしない。もちろん予想は出来るよ? 戦争が終わって戦う相手が居なくなったスネークソード持ちの妖精が、片手剣持ちの妖精に喧嘩というか殺し合いを吹っ掛けて戦った結果、そうなった。鎧だけ残されていた理由が分からないけど……まあ、そこら辺はどうでもいい。おそらく、自分が次ログインした時に戦う事になりそうな存在の目星はついた。それは良かったんだが……戦争を生き抜いた豪傑が相手と来たもんだ。これ、勝ち目有るのか? それでもどうにかしないといけないのだから、せめてどういう風にこの二人が戦い抜いて来たのかの戦法を少しでも頭の中に入れないと。

「大半の人がそう言いますよ、すっきりしないと。しかし、繰り返しますが当時の事を調べる方法がすでにありませんので……歯がゆい所です」

 ああ、気持ちは分かる。特にスネークソードの方の足取りが気になりすぎるわ。可能であるのなら当時にタイムスリップして調べたくなる話だ。──それを、自分は疑似的とはいえ知ることになるんだろう。ただし何を見たとしても、証明する方法が何もないから歴史の真実を解明という訳にはいかない。その上あくまで自分が見るのは円花のトラウマ、だ。トラウマが事実をゆがめている可能性は十分にある。だから何を見ても、それが真実だとは口にする事は許されない。

「とにかく、この二人の歴史をもうしばらく調べてみようと思います。もうしばらくこの場所をお借りしても問題ありませんか?」

 そう確認を取るとかまいません、との事。それだけではなく、一泊するための部屋まで貸し出してくれると言う。クィーンが今は城に居ない以上問題はないかと思ってその言葉に甘えさせてもらう事にして、ログアウトする直前まで歴史書などから掴める二人の戦闘方法を頭の中に叩きこんでいく。さて、おそらく明日のログインでやり合う事になる訳だが……戦うのは片手剣かスネークソードか、はたまた両方か。そればっかりはログインしてからのお楽しみ、か。
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