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後始末とあいさつ

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「では今回の報告を聞こうか」

 翌日ログインすると、それを待っていたように義賊リーダーが現れたのでそう声をかける。

「へい、報告いたしやす。まず今回の顛末でやすが……」

 義賊リーダーの指揮のもと、魔物使いの能力を生かした見目麗しい妖精族を捕えて売りさばいていた連中の残党はもういない。大半がフェアリークィーンの指揮の元に捕えられてひたすら叩かれてほこりというほこりを吐き出された後に処刑されている。そして昨日自分が処理した六人が正真正銘の最後の残党だったのも間違いない様だ。今後も同じような悪党が今後も出てこないとは限らないが、少なくともモンスターを使っていた連中は今回の戦いで全滅した。更に義賊リーダーは魔物使い達から攫った妖精を買っていた連中の情報も探って、秘密裏にフェアリークィーンへとその情報を流した様だ。その為、ワンモア時間での昨日に騎士団が総出での大捕り物が行われたらしく、妖精国内に潜んでいた奴らも軒並みお縄となった。後はそいつらが知っている事を洗いざらい吐き出させた後に、処刑台行きとなるそうだ。もちろん妖精国外にもいるそうだが、そっちは各国の方に情報を流して協力して捕えると決まったそうだ。

「そうか、まさか過去に対峙した連中がいまだにくすぶっていた事には驚いたが……今度こそ決着か。で、そいつらに情報を吐かせれば、攫われた妖精達も救われる事になる──どうした、顔色が良くないぞ」

 これで攫われた妖精達も解放される、と思ったのだが。どうにも義賊リーダーの顔色から察するにそう言う訳にはいかない様だ。

「──親分。残念ながらそう言う訳にはいかないんでさ……聞きやすか? とてつもなく胸糞悪い話になりやすが」

 そうか。すでに帰らぬ存在になってしまって……待て。それだけでは胸糞悪いと義賊リーダーは言うまい。つまり、ただ殺されたんじゃなくて剥──

「いや、いい。一つだけ確認を取るが、そいつらは特定の物を集める事に執着する連中だったか?」

 自分の言葉に、義賊リーダーは頷く。ああ、そうなのか……つまり、攫われた妖精達はコレクションとして扱われた、か。これ以上は想像したくも無い。下手なグロ映像なんかよりももっとひどい。

「なるほどな、それならば妖精国の女王はそいつらを生かしておくわけにはいかないな。生かしておくにはあまりにも危険な思考をしている。コレクションするのなら、妖精が描かれた絵とかモチーフにした彫像とかにしておけばよい物を。我々義賊の観点からしても、許せぬ事だ」

 この自分の言葉に、義賊リーダーも同意する。

「ですが、これでその様な事を考える者一掃されるはずで。仇を取ったと言う事で、犠牲となってしまったそいつらにはある程度納得してもらうしかありやせん……」

 義賊リーダーも沈痛な表情を浮かべながらそうこぼす。現場を見てしまったこいつからして見れば、助けてあげれなかったことは悔しいだろうし、コレクションにされてしまった姿を見て怒りも覚えただろう。なんでこう、この世界にもここまで悪党が多いんだ。もっとこの世界は平穏であってもばちは当たるまいに。

「何にせよ、ご苦労だった。今回も資金を……」

 出そうとしたら、義賊リーダーに止められた。

「親分、今回は必要ありやせん。情報提供の礼として、密かに女王陛下より資金が送られやした。むしろこれを親分に受け取って欲しいとの言伝を受け取っておりやす」

 と、義賊リーダーから手渡された袋の中には宝石が数点。これを売れば相当のお金になるだろう。そして一通の手紙が。封を切って広げるとそこには──

『此度の貴公たちの働きは実に見事、お蔭で我が国の膿を一つ完全に排除できた。その働きに対し僅かばかりではあるが秘密裏に報酬を支払う。今後も我が国を害しようと寄って来るクズ共を秘密裏に排除、もしくはそ奴らの情報提供をしてくれた場合は相応の報酬を支払う事を約束する。貴公らは賊を名乗っているが、その行動は真の騎士に通じる所もある。その義とやらを、最後まで貫き通す事を心より期待する』

 とあった。この文章から察するに、自分が義賊の頭である事はばれていないと見ても良いのだろうか? ばれると面倒だからなぁ……後は手紙にもある通り、義賊の儀の文字が消えてなくなってしまわない様にしないとな。そうなってしまったらただの賊、悪党になってしまう。そんな悪落ちは御免被る。

「良し、確認した。今回も良い仕事だった。行っていいぞ」

 自分の言葉に義賊リーダーは頷き、姿を消した。今回はあいつらに嫌な物を見せてしまったか……しかし、それが仕事である以上仕方がない。願わくば、そんな悪党が生まれてこない事を祈りたい。世の中に、悪の栄えた試し無しなんて事が無いのは誰だって知っているし、だからこそむなしい祈りであるが、それでも祈らずにはいられない。

 内心望んでいた報告とは全く違う悪い内容を聞いてしまったため、正直疲れてしまったがそれを表に出す訳にはいかない。顔を三回軽く叩いて気合いを入れ直す。今日はこの後ゼタンに挨拶を済ませて城下町を後にし、その後ミミック三姉妹のダンジョンに向かう予定なのだから、暗い表情を浮かべてはいけない。そう気持ちを切り替えて部屋を後にした。さ、ゼタンへ挨拶だ。


「今回も世話になったな、アース。お前からの報告を聞いて、そんなモンスターの大群がいたとは思わず冷や汗をかいたぞ。今後もそんな事が頻繁に起こると見た方がよいのか?」

「なに、今回は流石に偶然だろう。なんにせよ、無事で済んでよかった」

 ゼタンには、今回の裏側の事は一切伝えない。知る必要も無いからな。後始末はクィーンがやってくれるさ、国のトップに居るって事はそう言う仕事もやる義務がある。

(久々の実体化でしたが……今回の一件は他言無用な所が多いですからね。ご友人であるゼタン殿にも内密にすると言うマスターの判断を支持します)

 と、ルエットも理解してくれている。まあ理解してくれないとこっちが困るんだけどさ……影働きってのは表に出しちゃいけない。

「この後、アースはどうするんだ?」

「ああ、ミミック姉妹が運営していると言う話のダンジョンに挑戦して、その後に妖精国を後にして龍の国に向かうつもりだ」

 円花のトラウマは、きっと龍の国にもあるはず。それに龍の国に咲く桜を愛でに行くのも悪くない。たまには風流をしてみるのも良い物だ。

「そうか、またこっちに顔を出してくれるんだろう?」

「ああ、また近くに来た時は必ず顔を出すさ。でも次に来た時は、もっとこの学校が大きくなっていてとんでもない事になっているかもな?」

 というか、この学校は絶対大きくなる。需要は二期生が卒業してその活躍が広まれば跳ね上がるはず。そうなればより学校を拡大し、受け入れられるスペースを広げる事を迫られる。いや、そこまで来ればもはや国家事業の一つしてクィーンが口を出してくる可能性も大いにある。むろん口を出すと言っても、ここでは協力する方向での話だ。間違ってもいう事を無理やり聞かせるような方向にはもっていくまい。──万が一持って行った場合は、自分が何とかする。

「やっぱり、大きくなっていると思うか?」

「当たり前だ、二期生が卒業して各地で立派にやっていけばこの学校の名声はもっと高まる。そうなれば妖精族だけじゃなく、他の種族からも入学したいと言う話を打診される可能性は十分にある。何せ危険でも外の世界を見たいと言う者は数多いからな。それに、ここでは冒険に必要な事を学べるだけではなく、長い旅を共にできる仲間が探せると言うのが大きい。パーティの編成はいつでもどこでも悩み所だ、特に信用という点でな。でも、ここで人となりを知って共に歩めれば、外で集めるよりも信頼できる仲間を得れるのは何物にも代えがたいぞ」

 ソロで活動することが多い自分が言うのもなんだが、パーティメンバーは信頼できることに越したことはない。ましてやこの世界の人達は、リアルの自分達と同じで死んだらそこまで……なのだからな。

「そうだな、信頼は大切だ。そして信頼は一朝一夕で生まれる物ではない。金を積めばいいと言う物でもない。時には喧嘩をして、時には笑いあって、時には競い合って……そうやって時間をかけて生まれていく物だ。この学校で、それが少しでも叶っているのなら俺も嬉しい」

 そう言いながら、目を閉じるゼタン。ゼタンも、戦争で体を壊すまでは名が知れた妖精だった。あ、今でも名は知られているか……戦争の殊勲者でこの学校の校長だものな。

「ま、次来る時にどうなっているかを楽しみにさせて貰うよ。じゃ、そろそろ自分は行くよ。また会おう」

 一言最後に残して、ゼタンの学校を後にした。では次が今回の最後の目的地であるミミック三姉妹のダンジョンだな。あっちはどんな風になってるかね~?
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