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MPKをして来るのは、プレイヤーだけとは限らない。

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 攻略を進めてはいるが、地下十一階クリアには二日、十二階と十三階は三日も掛かった。そしてやっと地下十四階へと本日歩を進める事が出来た。スキルの方も〈技量の指〉が一、〈盗賊頭〉が二上がっている。解除した罠の数は減っているので、レベルアップが鈍いのは致し方ないし、あんまり同じ階層ばっかりに拘っていてはスキルのレベルアップが止まってしまうと言う事になるだろうからあんまり気にしないでおく。全く上がっていない訳ではない、という事で十分だ。

 さて十四階だが、ダンジョンの外見に変更は見られない。十二階や十三階も変化が無かった事から、ガラッと大きく変わるとしたら二一階以降になるんだろう。ま、今は黙々とマッピングを重ねて前に進むだけ。なのだが、頭の上に居るアクアがちょっと退屈そうだ。出番がほぼ無いからなのか、ダンジョン内では大半の時間を寝て過ごしている事が多くなった。なんで寝ているのに頭の上からずり落ちてこないのかが不思議だが、それを言ったらそもそも体の大きさや体重まで自由自在な理不尽存在なのだから、それぐらいは寝ていたって余裕なんだろう。突っ込むだけ無駄と言う物か。

 そんな寝ているアクアを頭に乗せたまま十四階の探索を行っていたのだが、〈危険察知〉に突如反応が。反応はモンスターでもないし、他のプレイヤーでもない。おそらくこっちの世界の住人なんだろうが行動がおかしい。反応の移動速度から察するに走っていると思われるのだが、この罠だらけのダンジョンでそんな事をして大丈夫なのか? そう思ったが、その数秒後に走っている理由が分かった。その反応の後方から、多数のモンスター反応が確認できたのだ。つまり、大量のモンスターに追いかけられているトレイン状態。それじゃ走るしかないよねー……なんて考えていたら、反応がこっちに向かってくる。ちょ、冗談じゃない!?

 巻き込まれないようにするために、少し道を戻って十四階から十三階に昇る為の階段に通じるルートから少しだけずれた場所に移動してやり過ごすことにした。これなら巻き込まれることもないし、モンスターが追いかけている反応がこの階層から消えたら、《隠蔽・改》を使って少しの間やり過ごす事にしよう。そう考えていたのに。

「あとよろしくってな!」

 モンスターに追われている奴は、そんな言葉と共に横道に居たこちらに向かって何かを投げつけてきた。まさかそんな行動を追われているのにもかかわらずやって来るとは予想もしていなかったので、回避することが出来ずに右手につけている盾でとっさにガードする。その投げつけられたものは盾に当たって、ぽとりと目の前に落ちた。それは小さな袋。硬貨を数枚入れたらいっぱいになってしまう程度の大きさしかない。なんでこんな物をアイツ……声からして男だったのだろうが……は自分に投げつけてきたのだ? その疑問の答えはすぐに出た。モンスターの反応が一瞬止まり、その後横道に居た自分に向かって走ってきたからだ。

(これ、モンスターを引き寄せる匂いか何かを出す道具か! まさかこっちの世界の住人からMPK行為を受けるなんて!)

 MPK、モンスタープレイヤーキラー。大量のモンスターをひきつけて来て、それを他の人に擦り付けて殺す行為。方法はいろいろで、今回の様にモンスターの行動をある程度コントロールできるアイテムを使う、他の人の近くまでモンスターが来たところを見計らって隠れたりすることでモンスターのターゲットを他者に切り替えさせるなどが有名な所か。そしてこれは他者を殺すのがモンスターなので、システム的にはPK判定を受けない。その為、ワンモアの様にPKが禁止されているゲームで他者を殺すために使われることがある。もちろんPKが出来るゲームであってもPK手段の一つとして用いられる事もある。更にモンスターに囲まれたところに麻痺毒などを遠くから打ち込む事で動きを止めて、より確実にサンドバックにさせてモンスターに殺させるなんて手段をとる人もいたか。

 さて、とにかく今回のモンスターの数は……ざっと見ても二十以上! まともにやってたら間違いなくやられる。仕方がない、今回は非常時だ。

「アクア、起きてくれ! ちょっとまずい事になった!」

 アクアを起こして、更に自分も〈偶像の魔王〉を発動して魔王モードに入る。接近されると厄介なので、その前にアクアと魔王モードの火力で遠距離から叩き潰す。芸も何もないが、とにかくモンスターの数がちょっと尋常じゃないほどにあるから仕方がない。こちらにモンスターを擦り付けてきたアホは何を考えてこんな巨大なモンスタートレインを作り上げたんだよ……とにかく、今は目の前に迫りつつあるモンスター集団を処理するしかない。

「ぴゅい!」

 アクアが『来るよ!』と言わんばかりに一鳴きする。こちらもモンスターの動きは《危険察知》で把握している。魂弓に矢を三本同時に番え、魔王モードでのみ可能な行為である矢に魔法を流し込む。今回流し込むのは火の爆発系魔法だ。複数を一気にブッ飛ばすにはこれが一番手っ取り早い。ダンジョンという閉所なので、より効果的だな。そうして待ち構えていた所にモンスターの団体さんが角を曲がってその姿を現した直後、無数の氷の槍が頭上から放たれる。そこからワンテンポ遅れて、自分が準備していた爆発魔法が込められた三本の矢が放たれる。モンスター達は氷の槍で戦闘集団が串刺しになって、そこに自分の矢が刺さった事で大爆発を引き起こす。

「次々行くぞ!」「ぴゅい!」

 最初の一手で相手の突進力は大きく削った。ここからは近寄られない様に連射するだけとなる。さながらその戦い方はシューティングゲームの様に見えるかもしれない。魔王モードで魂弓を運用すると、本当に容赦ないダメージがぽこすかと出るので一体一体の撃破が早い。そこにアクアからの支援攻撃もあるので詰め寄られる心配はない。それらは冷静さを保つことに繋がり、攻撃にミスする事も無くモンスターを次々と屠れる。逆にそうしないと、モンスターの波に飲み込まれることになるのだが……あの袋を投げつけてきた奴はチラッとしか見えなかったし、声だけじゃさすがに探しようがない。後で見つけたら一発ぐらい殴ってやりたいが、それは諦めるしかないか。次々とモンスターのお代わりもやって来るし、まずは目の前の敵を殲滅するのが先だ。

「良し、数もだいぶ減って来た! あと少しだ!」「ぴゅい!」

 この階層をうろついていたモンスターが全員やって来たんじゃなかろうか。そんな疑問が浮かぶぐらいの数であったが、ようやくモンスターのトレインも終わる。アクアの氷魔法、自分の魔王モードによる能力、そしてルエットも何もしないのは嫌だとばかりに、途中から円花を使ってモンスターを撫で切りにしていた。殲滅に二十分弱を要したが、何とか殲滅を完了。魔王モードが終わってしまう前に片が付いてよかったよ。原因となった匂い袋? は回収しておく。ここに放置しておくのは危険すぎるし。

『全くもう、マスターにこんな危害を意図的に押し付けたアイツは何なのですか! 出来る事なら首を飛ばしてやりたいです』「ぴゅぴゅ!!」

 魔王モードを解除して一息ついた後、ちびモードで指輪の上に出てきたルエットと頭上のアクアは怒り心頭だ。まあ首を飛ばすとはいかなくても、それなりに自分も頭に来ている。トレインが出来上がったのは偶然の事故なのか意図的なのかは分からんが、それでもそのケツ拭きを一方的に他人に押し付けて自分は逃げるなんてのは許しがたい。とにかく、死なずに殲滅できたとはいえどっと疲れた。今日はもう引き上げて、マッピングの続きは翌日とするしかない……今日はあんまり進まなかったなぁ。なんて思いながら帰り路を歩いていたのだが、そこで面白い物を見た。

「お、おい、これを外してくれ!!」

 その声からして、さっき自分に匂い袋? を投げつけてくれちゃった当人だろう。さて、そいつは足をとらばさみに挟まれ、両腕を天井から下がっている手枷で固められていた。こんな罠もあるのか。当然そんな隙だらけな姿を曝していれば、モンスターに見つかった時点でお終いだろう。

(マスター、やっちゃいましょう。このダンジョンでは死人は出ないんです。ええ、どんなことをしても死人は出ないんです。だからどんなことをしても良いんです)「ぴゅ~~……」

 あ、ルエットの声がちょっとよろしくない。本気できれてる。アクアもここまで威嚇する姿なんてめったにないぞ。まあ助けるって選択肢は最初から無いが、どうするかな……と、ここで有名な言葉を思い出した。目には目を、歯には歯をだ。仕返しの方法を決めた自分は、アイテムボックスから回収した匂い袋を丁寧に取り出す。


 魔物寄せ袋

 製作評価4 

 ほとんどのモンスターが反応する匂いをばら撒く袋。これをそのまま使うとものすごい数のモンスターを呼び寄せてしまうので、板などに軽く押し付ける事で匂いを移して使う必要がある。


 こんな取り扱いに注意が必要な物をこちらにぶつけてくれたんだから、やっぱり同じ方法を使わないとね。因果応報、ブーメラン、言い方はいろいろだ。さて、拘束されたMPK男はこちらが何をするつもりなのかを察した様だ。手足が震えている。

「ちょ、ちょっとまて。それを、まさか、や、冗談だよな? お前だって無事だったんだし、問題はないよな?」

 声まで震えているな。さて、無事だったから問題がない? いやー、実に面白いご意見ですね。それで許してもらえると思っているんでしょうか? 実に頭の中がお花畑ですね。

「そうですね、問題はありませんでした。だからあなたに同じことをやっても問題ありませんよね?」

 と返答を返して、体全体に魔物寄席袋の匂いを移してあげました。これで彼も十分すぎるほどに楽しむ事が出来るでしょう。いや、実にいいことをした。

「では、私はこれで」「おい、まてよ、これはシャレにならねーよ!? 罠から解放しろよ! 聞いてんのか! おい!」

 おやおや、これは十分に楽しんでもらえているようで何よりです。《危険察知》がぽつぽつとモンスターの反応を感知し始めた。次々とリポップしてるんだろうな。さて、長居は無用、と。大声で感謝の言葉を叫んでくれている男をその場に放置して、地下十階にその日は帰還。こんな物騒なアイテムを持ち続ける理由も無いので、手に入れた経緯を話した上で十階にいる店員さんに渡しておいた。さてと、ゆっくり休みますか。もし今回の事でこちらが有罪となれば、ここから素直に出ていく事にしよう。


スキル

風迅狩弓Lv50 The limit! 砕蹴(エルフ流・限定師範代候補)Lv42  百里眼Lv40 技量の指Lv73↑ 1UP! 小盾Lv42  蛇剣武術身体能力強化 Lv18 ダーク・スラッシャー Lv9 義賊頭 Lv65 ↑2UP! 隠蔽・改 Lv7 妖精招来Lv22 (強制習得・昇格)(控えスキルへの移動不可能)

追加能力スキル

黄龍変身Lv4  偶像の魔王 Lv6 ↑3UP!

控えスキル

木工の経験者Lv14 上級薬剤Lv49  釣り LOST!  医食同源料理人 Lv14 NEW! 鍛冶の経験者LV31  人魚泳法Lv10

ExP 23

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル  悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人 魔王の代理人 人族半分辞めました 闇の盟友 魔王領の知られざる救世主  無謀者 魔王の真実を知る魔王外の存在  天を穿つ者  魔王領名誉貴族 

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人

強化を行ったアーツ

《ソニックハウンドアローLv5》
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