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十五階~

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 十五階から十七階までは一日で通り抜けられた。十四階の時の教訓を元に、一番きつそうなところを一番最初にマッピングする方針に切り替えたらあっさりと十六、十七階へと降りる階段を見つける事に成功したのだ。しかし、そこから先の十八階と十九階はダンジョンが全体的に厳しくなってきており、これといった場所に狙いをつける事が出来なかった。結局降りる為の階段を見つけるのに両方の階層で二日ほど、合計四日かかった。そして今は十九階のある扉の前にようやく到着した所。

(この扉は他よりも大きくて見た目も豪華。つまりはボス部屋ってパターンなんだろうけど、罠だらけのダンジョンに出てくるボスが普通のモンスターなんだろうか?)

 真正面から小細工無しの勝負を仕掛けてくるボスが、配置されているとは到底思えない。そう言うボスは格上モンスタールートにいるんだろう。さて、そうするとどういったボスか……候補に挙がるのはギミックボスか。真正面から戦っても勝てないが、エリアにある色々な道具を作動させていくことでダメージを蓄積させて倒すタイプだ。これなら本人の戦闘力がほとんどなかったとしても、ボスを討伐することが可能となる。

 まあ、クリアできる可能性が零の存在を持っては来ないだろうから、覚悟を決めて入るしかない。此処を突破しないと地下二十階への道が開けないのだから。扉に鍵や罠が掛かっていない事はすでに確認しているので、大きな扉を両手でゆっくりと押し開けていく。そうして扉を開けて中に入った所に、一つの看板が立っていた。

『ここから先に進みたければ、右手に見える影絵の少女を、見事目的地までたどり着かせろ。少女は一定の速度で歩くが、地面などにある罠を発見することは出来ない。また、箱などを見つけるとその好奇心から必ず触ってしまうだろう。そんな危なっかしい少女を無事に目的地までたどり着かせることに成功すれば、奥にある扉が開くだろう』

 え、何これ。これがボス戦!? この手のゲームってなんていうんだろう。プレイヤーは主人公に一切干渉できず、その主人公が無事目的地にたどり着けるようにあの手この手で道を作る必要がある。それのトラップ回避バージョンって事になるのか。と、考える時間もあまりくれないようで、右手に映し出されている影絵の少女がゆっくりと歩き始めた。その先にある地面やら地形やらを眺めてみると、ものの見事に罠だらけ! このまま放置していては影絵の少女が罠にかかって吹き飛ばされるか落とし穴に落ちるかなどの悲しい結末を迎えるだけだ。

(実質制限時間付きの罠解除を強いられるって事ね! なんて嫌らしいボス戦だ!)

 罠は、影絵の少女が進むであろう直線にのみ仕掛けられているので、こっちが罠に引っかかる心配は一切ない様に設計されている。だから、影絵の少女が罠にかからない事に集中できる。罠の種類も色々で、丸太が前方から転がって来る、地雷、落とし穴、天井落とし、強制大跳躍、槍床などなど。どれもこれも少女が引っ掛かってしまったら、無残な光景が展開すること間違いなしだ。そんな危険な罠だらけだと言うのに、少女は歩みを止めてくれない。その少女の歩みがこちらを嫌でも焦らせる。

(お願いだからもうちょっとゆっくり歩いてー! 解除が間に合わないー!)

 七つ道具をフル活用しても、かなりぎりぎりのタイミングだ。罠その物の難易度はそこそこレベルなのだが、時間制限があるとなると一気に厳しくなる。時々ある箱の前では箱をペタペタと触ったりふたを開けたりするので歩みが一時的に止まってくれるのだが、その箱に仕掛けられている罠は解除難易度が高めに設定されているせいで時間はまったく稼げない。いや、逆に削られてる気がする。そんな罠解除を行っていると影絵の少女に文句の一つも言いたくなって来る所ではあるのだが、絶対に口にはしない。何せワンモアだ、下手な事を口にしたとたんに少女の歩く速度が劇的に上がって強制失敗させて来るとかの展開は十分にあり得る。口は禍の元、だ。

 そんな影絵の少女との追いかけっこも、気が付けば後半戦に入っていた。罠の難易度が、ジワリと上がってきたのが分かる。簡単には通過させんぞというその意思は理解するが、勘弁してほしかった。これなら、普通にモンスターのボスと戦う方がはるかに楽だ。少なくとも精神的にここまで追いつめられるようなことはない。もう、影絵の少女の足跡がとても大きく聞こえる。そんなはずはないのに、まるで大きなロボットが自分の隣を歩いているかのようだ。汗が一滴、顔を伝ったのを感じる。ここまで短時間で罠を外し続けた事による疲労からだろうか? それとも冷や汗か?

(でも、あと少し、あと少しで到着するんだ。頑張れ自分!)

 残す罠はあと数個。影絵の少女はすぐ後ろ。余裕は全くないが、それでも罠を発動させずに外すためにはミスが許されない。今、リアルの自分の手は間違いなく手汗でびしょびしょになっているはずだ。そしてこれがもし本当の異世界であったなら、罠を解除するために用いている七つ道具をその手汗で滑らせてしまっていた可能性が高い。そう言ったミスを生む原因が此処には無いだけ、まだ慈悲があると考えよう。

 罠を一つ外す。後ろの足音が聞こえる。すぐ次のに取り掛かる。刃を振るう訳ではない、矢を放つわけでもない、魔法を唱える訳でもない。だが、これは間違いなくボス戦だった。恐怖を感じ、焦りを感じ、心臓が早鐘を打ち、歯を食いしばる。一秒が長く感じるのか短く感じるのかもわからず、ただ目の前の障害に全力で取り組む事しかできない。だからこそなんだろうか……最後の罠を外し、首の皮一枚残して影絵の少女が目的地にたどり着いて喜ぶようなしぐさを見た時に自分は地面に倒れ込んだ。VRとかそんな事はどうでもよく、ただため込んでいたが無意識のうちに感じない様にしていた疲労感のコントロールを投げ出したかった。

(終わった……もう二度とこれはやりたくない。レ○○○○とかよりよっぽどハードだ。何せ罠外しを自分の体を使ってやる訳だからな……)

 地面に寝っ転がって荒い息を吐くのを止められない。一発クリアできたのはまさに幸運だっただろう。もう一回やってと言われても、おそらく二度とクリアできない。手は震えてるし足にも力が入らない。せめてあと一人盗賊系スキルを持っている人がいれば随分と難易度が下がるだろうけど……それが許されるかなぁ? なんとなくだけど、ここは一人でクリアしなきゃいけない難関の様な気がする。──そして今更ながらに思った事は、『もし、これ罠外しに失敗して少女が悲惨な事になったら、プレイヤー側にはどんなペナルティがあったんだろう』という事だ。

 おそらくただ戻されるだけ、って事はないだろう。一番ありえそうなのが、『少女と同じ罠を食らう』ってパターンだろうな。少女が罠にかかってどうなったかを見せられた後に、『さあ、次はあなたの出番です』とばかりに同じ罠で瀕死に追い込まれてダンジョンの外に追い出される。罠が序盤を除けばとにかく即死級ばっかりだったからな……罠ダンジョンとしてはあり得るだろう。

 もう一つぐらい考えるなら、この部屋自体がデストラップ部屋に変貌するって位だろうか? 昔にあった死者の挑戦状に出てきた宝箱を開けると回避不能脱出不可能な罠があったと掲示板に書かれていた記憶があるが、それと同じことを味わう羽目になるパターンもあり得たか。あくまで想像の域を出ない話ではあるが、なんにせよ喰らわずに済んだのだからこれ以上あれこれと考えるのはやめよう。息もようやく整ったし、いい加減この部屋からおさらばしたい。

 奥の扉はとっくに開いていた。扉をくぐると、その先は宝物庫。自分が通り過ぎたことを認識したのか、扉は閉じられた。後はこの宝箱の中からどれか一つを開ければ地下二十階に到着することになるんだろう。もう今日はログアウトしてゆっくりと休みたいので、一番近くにあった宝箱を適当にあけてみたら、その中身は……

 一グロー硬貨一枚

 であった。あー、うん。ハズレって事なんだろうな、これは。でもハズレでも何でもいいです。あのボス部屋をクリアできたことが一番の報酬ですから。宝箱を開けた事で、他の宝箱はロックされた後に壁の一部が上へとせりあがった。あそこから出ろという事か……外に出るとせりあがっていた壁は元に戻り、地下二十階へと自分は到着した。

(十階と違って、随分と閑散としてるな)

 二十階には店員さんがおらず、いくつかのソファと仮眠用のベッド? と、記録するための石が置かれているだけの寂しい場所になっていた。まあ食事をしたいのであれば十階にワープすればいいだけであるし、帰りたいなら一階にワープすればいいだけで……この二十階は本当にただのセーフティゾーンとしての最低限の役割しか持たせていないのだろう。経費削減かね? 一階と十階に力を入れ過ぎて、こっちには手が回りませんでしたってパターンかも知れぬ。まあ、役割を果たしてもらえれば十分なんですが。

 まあクリアしたので良しと割り切って、ログアウトしてすぐに就寝。寝る前に下着を変えてしっかりと手と背中を拭く事になりましたが……予想以上に汗でびっしょりだった……あの影絵の少女が夢に出ない事を祈りたい。


スキル

風迅狩弓Lv50 The limit! 砕蹴(エルフ流・限定師範代候補)Lv42  百里眼Lv40 技量の指Lv74↑ 1UP! 小盾Lv42  蛇剣武術身体能力強化 Lv18 ダーク・スラッシャー Lv9 義賊頭 Lv68 ↑3UP! 隠蔽・改 Lv7 妖精招来Lv22 (強制習得・昇格)(控えスキルへの移動不可能)

追加能力スキル

黄龍変身Lv4  偶像の魔王 Lv6 ↑3UP!

控えスキル

木工の経験者Lv14 上級薬剤Lv49  釣り LOST!  医食同源料理人 Lv14 NEW! 鍛冶の経験者LV31  人魚泳法Lv10

ExP 23

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル  悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人 魔王の代理人 人族半分辞めました 闇の盟友 魔王領の知られざる救世主  無謀者 魔王の真実を知る魔王外の存在  天を穿つ者  魔王領名誉貴族 

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人

強化を行ったアーツ

《ソニックハウンドアローLv5》
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