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第三章 オンリー・ユー 君だけを
Episode 14
しおりを挟む--第二区画 第二階層ダンジョン 【決闘者の墓場】 4F
■【偽善者A】ハロウ
異常に発達したその腕を、まるでこん棒か何かのように振り回しながらこちらへと近づいてくるソレは、流石に純粋なタンク職ではない私やCNVLでは対応出来るものではなかった。
今までもそういった敵が居なかったわけでは無いものの、それでもこのグレーターゾンビというモブは例外だった。
腕を避け、その腕によって起きた突風のような風を受けながら接近し攻撃を仕掛けるものの、傷付きはすれどすぐに治ってしまう。
本体の移動速度が遅いとはいえ、こちらのダメージがすぐに回復してしまうのでは優位性も特になく。
頼みの綱であるメアリーの爆破ボルトによって、回復が追いつかない速度での攻撃を加えることによってやっと倒せたレベルだった。
「うーん……どうする?このダンジョンが後どれくらいあるのか分からないけど、流石にアレはやばくないかしら」
「メアリーちゃん次第かなぁ。とりあえずこっちも色々考えないとだね。普通に攻撃するだけじゃダメみたいだし」
現在はその戦闘が終わった後。
マギに周辺の索敵を改めてやってもらい、今後の攻略をどうするかを話し合うことにした。
というのも、戦闘中はあまり考える暇が無かったものの、4Fになってから出てくるモブの種類がスケルトンからゾンビに変わったという所が全員引っかかっているようで。
『ボルトは大丈夫、骨でも作れるから(╹◡╹)でもこの後進むなら私よりもマギくんの消費が激しそう(´・ω・`)』
「あー、そうですね。今のは見てただけだったんでアレですけど、実際に参加するってなると……うん、この階層の探索が出来るかどうかってくらいの残数になるかと』
「一度帰るのも手か……一度降りれば入口から階層選択出来るものね」
「……ん?なんでその機能あったのに今回最初から降りてるんだい?忘れてた私もアレだけど」
「単純に今後用の素材集めも兼ねてよ。思った以上に物資消費しちゃってアレだけど。……リアルの方で話し合ったじゃないの」
「あは、ごめん」
取り敢えず。
私達のパーティは一度ダンジョンから帰還する事にした。
グレーターゾンビに有効打が現状メアリーの爆破ボルトしかなく、それも数が有限ということを考えると、やはり一度補給した方が良いと考えたからだ。
それに私やCNVLでも出来る方法でグレーターゾンビへダメージを与える方法を考えねばならない。
……実戦の中で考えるには中々リスキーだしねぇ。
出来なくはないだろうが、その分動きが単調になるためデスペナルティの危険性が高くなる。
「流石に攻略するっていってるのにデスペナになったら時間がねぇ……」
「まぁ確実に今日は無理だろうね。割とこれもギリギリのスケジュールで動いてるわけだし」
「全力で走ってるからこそ、間に合うかなって所ですね」
『楽ちんだ~(*´ω`*)』
「運ばれてるだけだし貴女はそうよねぇ……!」
自己強化を掛けることが出来る私とCNVL、そしてそれらを更に強化しつつ自分にもバフを掛けられるマギの3人と、私に米俵のように抱えられているメアリーという端から見れば誘拐されているようにしか見えないが……まぁ、この場には私達以外には誰もいないため、咎められることはないだろう。
そんなこんなでダンジョンの外へと出た私達は、その場にいたプレイヤー達にギョッとされながらも、それぞれのセーフティエリアへと戻り、物資の調達などを行いながら対策を考える事にする。
と言っても、今現在の私に出来る事は少ない。
……手札は多い方がいい、何かあったときに役立つから……って誰に聞いた言葉だったかしらね。
私の手札……相手を傷つける手段というのは、かなり限られる。
それこそ、【HL・スニッパー改】を使ったハサミ、双剣による攻撃だったり、最近は使っていない【HL・ナイフ】による刺突くらいだろう。
CNVLのように、相手を喰らったり相手の武器を出現させたりといった芸当は出来ず。
姿を相手の前から消したり、意識を逸らしたりという地味な芸当しか出来ない私にはどうしようもない部分だろう。
「……あー。割とこれキッツイわぁ……改めて確認すると私アタッカーじゃなくてアサシンとかそっちよねぇ……」
……無いものねだりってのは分かってるけど、それこそCNVLのスキルだったりメアリーのボルトだったり、マギの感覚強化だったり……ユニークなものが何か欲しいわよねぇ……。
【偽善者】という【犯罪者】が悪いというわけではなく。
単純に私の使い方、動き方が悪いだけなのだ。
だからこそ、私がグレーターゾンビへとダメージを与える事の出来そうな攻撃手段が思いつかない。
これが相手がプレイヤーだったらまた話は別なのだが……それでも、厳しいものがある。
力が欲しい。
どこの中二的な表現だと笑われそうだが、それでもこう言うしかないのだ。
グレーターゾンビを倒せないというのは、恐らく今後レベルを上げていけばいつかは1人でも倒せるようになるのだろう。
しかしながら、今。
私が倒したいのは今なのだ。
だからこそ、力が欲しい。
何か使えるものはないかと、インベントリやセーフティエリア内を探すも特になく。
頭を回転させることしかできない私は、溜息を吐いた。
--System Message 『条件を部分達成を確認しました』
--System Message 『特殊スキル【強欲性質】を取得しました』
--System Message 『条件が完全に達成されていないため、【強欲性質】の効果を一部制限します』
--System Message 『達成されていない条件は【■■■■を手に入れる】です。では、あなたの犯罪生活に幸あらんことを』
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