Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

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第三章 オンリー・ユー 君だけを

Episode 39

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--第二区画 第二階層ダンジョン 【決闘者の墓場】 5F
■【印器師A】ハロウ

晴れていく煙の中から出てきたのは、先ほどとは似つかないほどにボロボロとなった男の姿だった。
腕の【外骨装甲】という名称の骨の装甲はほぼほぼ崩れ落ちており、それ以外に着ているものだったりもどこかしら焼け落ちていた。

HPの減少はといえば、期待した通りに残り5割の所まで削ってくれている。
だが、相手は腐ってもボス。HPが5割切ってから覚醒とか言いながら能力が強化されたりするのが特性といっても過言ではないのが、ゲームのボスだ。
私は油断なく双剣を構えつつ、メアリーにいつでも撃てるように準備しておくことを指示しておく。

「……」
「……」

何も言わず、ただただこちらに歩いてくるだけのファウストを見ながら。
私は試しに【印器乱舞】を発動し、諸刃の印を捺印しようとトンカチを1本だけ操作する。
どうせボスの攻撃を受けたらタンク職ではない私達は蒸発するか致命傷を喰らうのだ。
CNVLには申し訳ないが、ファウストが現在何か変な事をしているのならトンカチ1本でそれが分かるのは安上がりだろう。

トンカチはそのまま近づいていき、特に何事もなくその身体に捺印する。
瞬間、ファウストは目を見開いた。

「……人ッ間、風情が……ッ!我をッ!!ここまでッ!!!虚仮にするとはッ!!!!」
『メアリー』
『りょ!('ω')ノ』

何やら叫び始めた瞬間、私はメアリーの名を呼び。
それに反応し、私の横を先程と同じ金属製の矢が飛んで行った。
しかしその矢がファウストの身体に当たる直前で、彼はどこかで見た事のあるオーラのようなものを漏らし始め、

「温イ」

先程までの無様な姿はなんだったのか、オーラを纏った手で飛んできた矢を掴みへし折った。
……えぇ、強化されすぎじゃない?
流石にできないとは思うが、CNVLでもできないような飛んできている矢を掴むという荒業を行ったファウストは、どこを見ているのかわからないほどに視線を右往左往させながら、こちらへと突っ込んできた。

と言っても、正直ここまでは見た事があるというか。
どう見ても彼の身体から漏れているオーラは、メフィストフェレス達悪魔に関係ある者らが纏っているものだ。
ならばその対処法自体は分かっている。
それを実行に移そうとした瞬間に、パーティチャットが飛んできた。

『やぁ、ハロウ。ごめんねぇ、待たせた。今から行くから状況教えて』
『CNVLね。なんかファウストが悪魔関係のオーラ出し始めたわ。とりあえず前衛任せたいのだけど来れる?』
『大丈夫です、行かせます。幸いこっちは薬余りまくってるんで。僕はどうします?』
『マギは強化お願いできるかしら?流石に私の強化スキルと印章だけじゃ追いつけないわこれ』

後ろで戦っていた2人だ。
グレートヒェンを倒したのだろう。正直、今までなら兎も角として現在のファウスト相手に1人で前衛をこなすというのは荷が重い。
このタイミングで参戦してくれるのは本当に助かった。

「――ぁはッ!じゃあ一発!盛大に最後の一撃と行こうか!」

後ろから声が響くと共に、巨大な肉塊のような何かがファウストの頭の上から落ちてくる。
見れば、それは足のようで。
恐らくはCNVLがスキルによって、異形の腕と同じように作り出したものなのだろう。

ファウストはそれを受け止めようとしているものの、大きさが2、3回りほど違う相手を受け止めるのは流石につらいのか、足がガクガクと震えながら息を荒く吐いている。
見れば、オーラを腕と足に集め強化しているようで。胴体はがら空きとなっていた。
瞬間、私の身体に力が滾る。
視界の隅に映る効果によって、それがマギによるバフ効果であることが分かり少し笑う。

私はそのまま力の限り地を蹴って、ファウストへと近づいていく。
接近する私の存在に気が付いたのか、彼は驚いたような顔をこちらへと向けながら、しかし上から今も押しつぶそうとしてきている異形の肉の足を支え続けているため動くことが出来ない。

今も身体を覆う強化用のオーラを全体に回そうにも、それをした瞬間に上の足に押しつぶされてしまう可能性もある。
しかしながら私を放置すれば、そのまま急所へと攻撃を許すことになる。
そう考えたのか、彼がとった行動は。

「【外骨装甲】ゥゥゥ!!!」

骨の鎧、腕だけではなく胴体を覆うようにそれを展開させた。
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