Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

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第三章 オンリー・ユー 君だけを

Episode 41

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■鷲谷 香蓮

「――ってぇ、感じだったのよ」
「なるほどねぇ。じゃああの時のアナウンスはやっぱり香蓮達の所が元だったのか」
「ん、どこの区画のダンジョンかはアナウンスされてなかったわよね?」

翌日。
私は家に突然来た友人……赤ずきんのリアルである狼谷かみたに 赤奈せきなと共に適当に煎餅を齧りながら雑談していた。
話題はもちろん、私達のパーティが昨日攻略し今も掲示板で話題となっている【決闘者の墓場】の話だ。
といっても、ボスの情報などはメアリーがデンス限定の掲示板の方に流しているし、話す内容は限られているのだが。

「ハードモードの方だと同じ名前のダンジョンでも構成が変わるんだっけ?」
「そうね。【劇場作家の洋館】でも、道中に中ボスが追加されてたし。ボスなんか全然違ったわね」
「成程ねぇ……ある意味本番がハードモードってことなのかな」
「そうなるかしらねぇ。【決闘者の墓場】、とはいうものの出てきたのは実験体とその科学者だったし。ハードモードでその完成体が出てきてもおかしくはないわ」

【劇場作家の洋館】のノーマルモードを初攻略した時と同じように、今回も全体アナウンスにてハードモードが実装された旨が伝えられている。
つまりは、あの後……ファウスト達を倒した後のストーリーが存在するということだ。

しかし、私としては気になっているのはそちらではなく。

「まぁ、でも。やっぱり気になるのはそっちよりもアプデよね」
「まぁね。スキルカスタマイズやら色々と新要素が入るみたいだし?」
「慣れるまでが大変そうなのが厄介ねー……今までみたいに使えるならまだしも、カスタマイズによっては絶対別物になるようなスキルも出てきそうだし」
「君の場合、それを決闘で使われるのが嫌なだけだろう?不確定要素が何たらって」
「あら、そうよ?そうに決まってるじゃない」

そう、ハードモード実装と共にアナウンスされた次回大型アップデート。
約一週間後に実装されるそのアップデートには、以前から掲示板にて話題となっていたカルマ値のようなもの……『犯歴キャリア』が実装されるらしい。
【犯罪者】に対応する行動をすることで溜まっていき、それを消費する事でスキルのカスタマイズや特殊なアイテムと交換できるようになるコンテンツのようだ。

身内に1人、もしかしたら1日でカンストしそうなほどにそれらしい・・・・・行動をとるプレイヤーがいるため、彼女に詳しい事は聞けばなんとかなるだろう。
実際、実装されたとなれば皆が皆付きっ切りになりそうなのだから、仕様の確認は早めにしておいたほうがいい。
その点、私達……というかデンス所属のプレイヤーは幸運だろうなと思う。

「あ、そういえば私世襲戦やったんだよ」
「あらそうなの?周りでやってる人見た事ないのよねアレ」
「そうなのかい?いやぁ大変だったねアレ。ハンデあるから何とかなったけど、初期のランクアップしてない状態だと厳しいのなんの」
「そりゃ相手は初期を元に満遍なく強化、もしくは特化させてるからねぇ。何になったの?話せる奴?」
「話せる奴。【人形師】っていう生産系に属する【犯罪者】だねぇ。主に使うのは人革だったり人骨だったりデンスに所属してるからならではの素材になってるけど」

世襲戦。
定員オーバーした【犯罪者】が出た場合、元々その【犯罪者】に就いているプレイヤーと新しく就こうとしているプレイヤーとの間で発生する対人コンテンツ。
勝つことが出来ればその【犯罪者】に就くことができ、負ければその座を明け渡さなければならない厳しい戦いでもある。

よくよく考えてみれば、私達の周りで世襲戦が発生しそうなのはマギとメアリーくらいで、彼らに関しても世襲戦が発生したとしても簡単に返り討ちにしそうな予感があった。
というか、マギなら兎も角メアリーに関しては近づく前に蜂の巣にされそうな気がする。

「貴女らしいわね」
「そりゃね。私自身じゃなく、周りのモノを動かして何かをするって方が私には合ってるのさ。今もゲーム内じゃ自律行動させてる人形達がアイテムを加工してるしね」
「便利、というか一種の自動化ねぇ……それ動力とかどうなってるのよ」
「ゼンマイ。動くごとに消費されるんだけど、私の場合はゼンマイを巻く用だけの人形を作ってるかな。あると勝手にゼンマイ回してくれて便利なんだわ。私はその子らのゼンマイ巻いておくだけでいいしね」

まぁ戦闘にはまだ転用できないけどね、と笑う赤奈に軽くアドバイスをしつつ。
私は時間を確認した。
現在時間は大体正午を過ぎた程度。
今日が世間一般的には休日ということを考えれば、そろそろ学生なんかは活動を開始するくらいの時間帯だろう。

「あぁ、もうこんな時間ねぇ」
「割と時間経ってたね、いやはや長時間お邪魔してしまった」
「いいのよ、どうせFiCくらいしかやらないから。現実で何かしないと感覚が色々ごっちゃになるから丁度いいわ」
「廃人ここに極まれり、だなぁ。よし、じゃあ私も自分の家に帰ってログインしようかねー」

そんなことを言いながら、彼女は席を立ち私はそれを見送った。
こういった現実での付き合いは最近となると貴重になってきたものだ。
これからも大事にしていきたいと、去っていく彼女の背を見ながら思っていると。

「そういえばさ香蓮」
「なにかしら」
「太った?」
「――ッ!!太ってないわよ!!」

訂正しよう。
この友人との付き合いはそこまで大事にしなくてもいいかもしれない。



そして私は今日も落ちていく。
あの世界へと。
仲間達の待つ、空中の監獄へと。
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