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第一章
死闘
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グサッ―――――。
クラントスの鋭い爪が突き刺さった。
「ぐっ……」
レオナルドの左腰の辺りに。強烈な痛みがレオナルドを襲い顔を歪める。
レオナルドはあの瞬間クラントスの速度を追い越し、セレナリーゼの肩を抱き、包み込むようにして守ったのだ。背に爪による攻撃を受ける覚悟で。
ただ、普通ならレオナルドを貫通してセレナリーゼにも突き刺さっているはずの威力だったが、クラントスの爪はレオナルドを貫通することなく、止まっている。レオナルドの身体強度が上がっているとしか考えられない事態だ。それもとんでもないレベルで。
「はぁ…はぁ…。よかった」
結果、セレナリーゼは傷つかなかった。呼吸も安定しているし、眠っているみたいだ。そしてもう一つ。先ほどまでどんどん膨らんでいくとともに黒さを増していたセレナリーゼの魔力が落ち着いているのだ。色も元に戻っている。
それらを確認できたレオナルドは痛みから嫌な汗が出るほどにもかかわらず、薄っすらと笑みまで浮かべて安堵した。
ちなみにレオナルドが全身から放っていた白い光は、なぜか今はもう消えている。
「グゥルゥッラアアァァッッーーー!!!!」
爪による攻撃が防がれたとでも感じたのか、クラントスは怒ったように吠えながらレオナルドに刺さった爪を勢いよく抜く。
「うぐぁっ!?」
再びレオナルドは激痛で顔を歪める。レオナルドの左腰からは血が止めどなく流れていた。だが今は痛みに悶えている暇なんてない。レオナルドは無意識に傷口に左手を添えながら必死に痛みを堪えて立ち上がると、クラントスに向き直った。左手にはぬるりと嫌な感触がして手のひらを見てみれば血がべったりとついており、思わず苦笑が漏れた。
クラントスもレオナルドのことを敵と定めたようだ。
レオナルドに向けてすぐさま爪で切り裂こうと腕を振り上げる。
が、クラントスが爪を振り下ろす前にレオナルドの右ストレートがクラントスの腹部に決まった。その衝撃でクラントスは反対の壁際まで吹っ飛んでいく。その道中で氷漬けになっていたクラントスモドキにぶつかり、芯まで凍っていたクラントスモドキは粉々に砕け散った。
クラントスの動きよりも明らかに速い動き、そして身体強化魔法が使えないレオナルドが出すには強すぎる威力。
それを不思議に思ったレオナルドだが今は気にしても仕方がないし、ちょうどいいとしか思わなかった。クラントスと戦うことができる。
「……こんな近くで、戦ったら…セレナが、危ないだろうが!」
ビリビリと空気が震えているように錯覚するほどの気迫がこもった言葉だった。
そしてレオナルドは寝ているセレナリーゼをチラリと見ると、覚悟を決めた様子で自分からクラントスへと近づいていった。クラントスもすぐに立ち上がり、怒りからか、激しく吠える。
そうしてレオナルドとクラントスの接近戦が始まった。
ゲームでは中盤に出てくる魔物が相手だ。今のレオナルドでは敵わない、戦いにすらならない、はずだった。
だが現実は、レオナルドが圧倒していた。
クラントスによる爪の攻撃はその悉くを時には避け、時には弾き、レオナルドの拳や蹴りは重い音とともにクラントスに決まっている。クラントスの攻撃は爪によるものだけで、突きか振り下ろして引き裂く、の二択だ。レオナルドはゲーム知識からそれをわかっている。直線的なその動きは鍛錬に励んできたレオナルドにとってとても読みやすい。
全身から白い光を放ちながらセレナリーゼを庇うために駆けたときの速度もそうだが、今クラントス相手に体術で戦えている速度や強度は異常だった。身体強化魔法でもこれほどの強化ができる者がいったいどれほどいることか。そもそもレオナルドには魔力がないため身体強化魔法も使えないはずなのだが。
それでもレオナルドの攻撃はクラントスを貫き止めを刺すまでには至っておらず、レオナルドには焦りの色が見え始めていた。今はまだ圧倒できているが、レオナルドは少しずつ自分の速度や強度が落ちてきているのを感じていたから。元々魔法なんて使えないはずのレオナルドが身体強化、のようなものをできていることの方がおかしいのだ。そんな理由もわからない状態なのだからそれがいつ終わってしまっても何ら不思議はない。
加えて戦いが長引けば、血を流し過ぎている自分が不利だ。
何かクラントスを倒す方法はないか、レオナルドは戦いながらも必死に考える。
そのとき、光るものがチラリと視界に入った。
(あれは!?)
あれを使えば倒せるかもしれない。しかし使おうとすれば大きな隙を晒すことになってしまう。もしもそれで自分がやられてしまえば次にはセレナリーゼが殺されてしまうだろう。それだけは絶対にダメだ。
レオナルドは気づいていなかった。自分の死ぬ運命を回避したい、という目標を持ってそのために行動していたはずのレオナルドが自分の命よりもセレナリーゼの命を優先して考えていることを。
(…迷ってる場合じゃない!セレナを助けるんだろ!)
レオナルドは現状を打開するために、見つけたものを利用することに決めた。
カウンター気味にクラントスへと拳を叩きこんだ瞬間、クラントスに背を向けて跳ぶレオナルド。
クラントスは突然レオナルドが晒した無防備な背中に向けて鋭い爪を振り下ろす。
「ぐあっ!?」
折角爪で刺された腰の痛みを感じなくなってきたというのに、切り裂かれた背中が激痛とともにドクドクと熱を持つ。
だが、傷は浅い。目当ての物を拾うこともできた。それは誘拐した男が持っていたナイフ。
レオナルドはナイフを拾った瞬間、すぐさま反転してクラントスに突っ込む。
そしてナイフを自分の手の一部のようにして、クラントスの胸元に深々と突き刺したのだった。
「グギャアアアアァァァッッ………!!!」
クラントスは悲鳴のような声を上げ、後ろに倒れ込んだ。
クラントスの鋭い爪が突き刺さった。
「ぐっ……」
レオナルドの左腰の辺りに。強烈な痛みがレオナルドを襲い顔を歪める。
レオナルドはあの瞬間クラントスの速度を追い越し、セレナリーゼの肩を抱き、包み込むようにして守ったのだ。背に爪による攻撃を受ける覚悟で。
ただ、普通ならレオナルドを貫通してセレナリーゼにも突き刺さっているはずの威力だったが、クラントスの爪はレオナルドを貫通することなく、止まっている。レオナルドの身体強度が上がっているとしか考えられない事態だ。それもとんでもないレベルで。
「はぁ…はぁ…。よかった」
結果、セレナリーゼは傷つかなかった。呼吸も安定しているし、眠っているみたいだ。そしてもう一つ。先ほどまでどんどん膨らんでいくとともに黒さを増していたセレナリーゼの魔力が落ち着いているのだ。色も元に戻っている。
それらを確認できたレオナルドは痛みから嫌な汗が出るほどにもかかわらず、薄っすらと笑みまで浮かべて安堵した。
ちなみにレオナルドが全身から放っていた白い光は、なぜか今はもう消えている。
「グゥルゥッラアアァァッッーーー!!!!」
爪による攻撃が防がれたとでも感じたのか、クラントスは怒ったように吠えながらレオナルドに刺さった爪を勢いよく抜く。
「うぐぁっ!?」
再びレオナルドは激痛で顔を歪める。レオナルドの左腰からは血が止めどなく流れていた。だが今は痛みに悶えている暇なんてない。レオナルドは無意識に傷口に左手を添えながら必死に痛みを堪えて立ち上がると、クラントスに向き直った。左手にはぬるりと嫌な感触がして手のひらを見てみれば血がべったりとついており、思わず苦笑が漏れた。
クラントスもレオナルドのことを敵と定めたようだ。
レオナルドに向けてすぐさま爪で切り裂こうと腕を振り上げる。
が、クラントスが爪を振り下ろす前にレオナルドの右ストレートがクラントスの腹部に決まった。その衝撃でクラントスは反対の壁際まで吹っ飛んでいく。その道中で氷漬けになっていたクラントスモドキにぶつかり、芯まで凍っていたクラントスモドキは粉々に砕け散った。
クラントスの動きよりも明らかに速い動き、そして身体強化魔法が使えないレオナルドが出すには強すぎる威力。
それを不思議に思ったレオナルドだが今は気にしても仕方がないし、ちょうどいいとしか思わなかった。クラントスと戦うことができる。
「……こんな近くで、戦ったら…セレナが、危ないだろうが!」
ビリビリと空気が震えているように錯覚するほどの気迫がこもった言葉だった。
そしてレオナルドは寝ているセレナリーゼをチラリと見ると、覚悟を決めた様子で自分からクラントスへと近づいていった。クラントスもすぐに立ち上がり、怒りからか、激しく吠える。
そうしてレオナルドとクラントスの接近戦が始まった。
ゲームでは中盤に出てくる魔物が相手だ。今のレオナルドでは敵わない、戦いにすらならない、はずだった。
だが現実は、レオナルドが圧倒していた。
クラントスによる爪の攻撃はその悉くを時には避け、時には弾き、レオナルドの拳や蹴りは重い音とともにクラントスに決まっている。クラントスの攻撃は爪によるものだけで、突きか振り下ろして引き裂く、の二択だ。レオナルドはゲーム知識からそれをわかっている。直線的なその動きは鍛錬に励んできたレオナルドにとってとても読みやすい。
全身から白い光を放ちながらセレナリーゼを庇うために駆けたときの速度もそうだが、今クラントス相手に体術で戦えている速度や強度は異常だった。身体強化魔法でもこれほどの強化ができる者がいったいどれほどいることか。そもそもレオナルドには魔力がないため身体強化魔法も使えないはずなのだが。
それでもレオナルドの攻撃はクラントスを貫き止めを刺すまでには至っておらず、レオナルドには焦りの色が見え始めていた。今はまだ圧倒できているが、レオナルドは少しずつ自分の速度や強度が落ちてきているのを感じていたから。元々魔法なんて使えないはずのレオナルドが身体強化、のようなものをできていることの方がおかしいのだ。そんな理由もわからない状態なのだからそれがいつ終わってしまっても何ら不思議はない。
加えて戦いが長引けば、血を流し過ぎている自分が不利だ。
何かクラントスを倒す方法はないか、レオナルドは戦いながらも必死に考える。
そのとき、光るものがチラリと視界に入った。
(あれは!?)
あれを使えば倒せるかもしれない。しかし使おうとすれば大きな隙を晒すことになってしまう。もしもそれで自分がやられてしまえば次にはセレナリーゼが殺されてしまうだろう。それだけは絶対にダメだ。
レオナルドは気づいていなかった。自分の死ぬ運命を回避したい、という目標を持ってそのために行動していたはずのレオナルドが自分の命よりもセレナリーゼの命を優先して考えていることを。
(…迷ってる場合じゃない!セレナを助けるんだろ!)
レオナルドは現状を打開するために、見つけたものを利用することに決めた。
カウンター気味にクラントスへと拳を叩きこんだ瞬間、クラントスに背を向けて跳ぶレオナルド。
クラントスは突然レオナルドが晒した無防備な背中に向けて鋭い爪を振り下ろす。
「ぐあっ!?」
折角爪で刺された腰の痛みを感じなくなってきたというのに、切り裂かれた背中が激痛とともにドクドクと熱を持つ。
だが、傷は浅い。目当ての物を拾うこともできた。それは誘拐した男が持っていたナイフ。
レオナルドはナイフを拾った瞬間、すぐさま反転してクラントスに突っ込む。
そしてナイフを自分の手の一部のようにして、クラントスの胸元に深々と突き刺したのだった。
「グギャアアアアァァァッッ………!!!」
クラントスは悲鳴のような声を上げ、後ろに倒れ込んだ。
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