死亡エンドしかない悪役令息に転生してしまったみたいだが、全力で死亡フラグを回避する!

柚希乃愁

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第一章

ミレーネの動向

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 時は少しさかのぼる。
 レオナルドと別れたミレーネは急ぎ屋敷へと戻った。
 そしてすぐにフォルステッドの元へ行く。
 執務しつむ室にはフォルステッドと筆頭ひっとう執事しつじであるサバスがいた。サバスは老齢ろうれいで、髪も白髪だが、姿勢はピンと伸びており、まさに執事のかがみといった印象の老紳士だ。
「どうしたミレーネ?シャルロッテ様のお茶会に行ったはずであろう?」
旦那だんな様、突然申し訳ございません。至急しきゅうお伝えしなければならないことが」
「何だ?」
 ミレーネはあせる気持ちをおさえて、セレナリーゼがれ去られたこと、そのときのぞくの発言からわかったこと、その後をレオナルドが追ったことを説明した。
馬鹿ばかな……!?)
 説明が進むにつれ、フォルステッドの表情がけわしくなっていく。サバスもとなりむずかしい表情をしている。場の空気が重くなり緊張きんちょう感が高まっていた。
(セレナリーゼを欲しがっている?誰が?何の目的で?なぜ今日なのだ?予定を知っている者?……いや、賊のうそということもあり得るか。それにレオナルドはどうやって賊を追っている?)
 フォルステッドは高速で思考をめぐらせるが、情報が少なすぎて答えは出ない。
「…サバス」
 話を聞き終えたフォルステッドは思考を中断した。
「はい。すぐにジーク殿をお呼びします」
 ジークとは、公爵家の騎士団長、ジーク=スヴェートのことだ。
 名前を呼ばれただけで、サバスはフォルステッドの意図いとさっした。余計なことは何も言わず、一度丁寧ていねいにお辞儀じぎするとすぐに廊下ろうかに出てメイドに指示を出し戻ってきた。
「問題はどうやってレオナルドとセレナリーゼの居場所をつかむか、だ。サバス、レオナルドの言うように魔力探知で見つけられると思うか?」
「王都内だとしてもセレナリーゼ様を特定してさがしだすのは難しいでしょう。王都外に出られていたら絶望的かと」

 魔力探知は身体強化魔法と同じく一般的な魔法で、一定以上の魔力を持った者に反応し、その者のいる方向というか位置がある程度わかるというものだ。使用者によってその精度がことなるものの、それがこの世界における常識だった。

「だろうな……。レオナルドは魔力探知の理解が浅すぎる」
 サバスの言葉は自分の考えと一致し、フォルステッドはわずかに顔をしかめる。どうすれば居場所がわかるのか、いい方法が思い浮かばず焦りばかりがつのっていく。

(やっぱり……)
 フォルステッドとサバスのやり取りを聞いていたミレーネは、自分の感じていた違和感いわかんが正しかったと知る。魔力探知ではセレナリーゼを見つけることは困難なのだ。それなのにレオナルドは騎士が来てくれると確信している様子だった。いったいどうして?その理由がわからない。フォルステッドの言う通りただ理解が浅くてそんな指示を出した?ミレーネにはとてもそうとは思えなかった。……一つだけ、あり得ないことを前提にすれば理解はできてしまうが……。ただその可能性を考えてしまったからこそ、レオナルドと別れる前にミレーネは一つだけ魔法を使っていた。

「ええ。ですが魔法の勉強はまだ始まっていなかったはずです。それを考えれば魔力探知のことを知っていただけでも―――」
「そんなことはわかっている」
 本人は魔法を使うことができないというのに、知識を得ようと独学で魔法の勉強をしていたのだろう。だが、そんなレオナルドの気持ちを想像しつつも、そのせいで現状追いかける手立てがないことに、フォルステッドは思わず声が低くなってしまった。
「失礼致しました」
 サバスが一礼すると、
「あの……旦那様」
 今まで黙っていたミレーネが覚悟を決めた表情で声を発した。
 今は緊急事態。レオナルドとセレナリーゼの命がかかっている。人の温かさを教えてくれた二人を自分だって助けたい。だから自分から切り出すべきだと考えたのだ。大丈夫。の用意はできている。

「どうした?」
「私はレオナルド様が追いかけると決められたときに魔力探知をしました。近くに大きな魔力は他になかったので、セレナリーゼ様がどちらに向かったのか大まかにはわかっています。ですので、そちらに進みながら何度か魔力探知をり返せばあるいはセレナリーゼ様の元へと辿たどり着けるかもしれません」
「わかるのはそのときの方向くらいだろう?もう時間がってしまっている」
「はい。ですので、何度か魔力探知を繰り返せば、と。感覚的なものですが、セレナリーゼ様の魔力の大きさは王都でも有数です。先ほど感じた魔力が探知に反応すればわかると思います」
「そんなことが?」
 フォルステッドは目を見張り、サバスは黙ってミレーネを見つめている。感覚的なものであろうと、これほど人の多い王都で個人の魔力を特定できるというのは相当の精度だ。にわかには信じがたい。
「はい」
 だが、ミレーネははっきりとうなずいてみせた。その様子からフォルステッドはミレーネの本気度を感じ取る。
「……なるほど。王都内であれば可能かもしれないということか。すると問題は時間、だな」
 フォルステッドは話しながら考えた。王都外に出られては対象範囲が広大こうだいになり過ぎる。それに大きな魔力を持った魔物が数多くいる。いくら本当に精度が高くてもセレナリーゼの魔力を辿るのは困難だろう。
 王都内で何としても見つける必要がある。
「わかった。探索たんさくにはミレーネも加わってくれ。…しかし、結果としてはミレーネに報告させたレオナルドの指示が最善だったということか。まるで我々がこうするとわかっていたみたいではないか」
「……はい。私もそう思います」
 フォルステッドは半分冗談じょうだんのように言ったが、ミレーネは神妙しんみょう面持おももちで同意を示した。

 それから間もなく騎士団長のジークがやって来て、話はとんとん拍子びょうしに進んだ。

 皆が時間をしむように準備している間に、フォルステッドはシャルロッテあてに文を書いた。急きょ二人が行けなくなったことを謝罪する内容だ。そして後日、直接謝罪する場をいただければとしたためた。今回のことを正直に書くことはない。
 それをサバスに渡し、早急に王城にいるシャルロッテへと届けさせた。

 そうしてジークとジークが選出したアレンを含む少数精鋭の騎士五人とともにミレーネはセレナリーゼ達の捜索そうさくに出た。
 移動は帰りのこともあるため、馬車を一台、その中にミレーネとジークが乗り、御者ぎょしゃ席に騎士が一人、他の騎士四人は馬に乗っている。

 まずはセレナリーゼが連れ去られた現場で魔力探知をしたときにわかっているところまで進む。そしてミレーネがあらためて魔力探知を使う。その後も何度も止まっては、確認しながら進んでいく。騎士達も状況はわかっているため焦る気持ちを抑えていた。
 ミレーネは彼らのそんな焦燥感しょうそうかんをひしひしと感じ申し訳なく思っていた。

 そうして確実にセレナリーゼに近づいていたミレーネ達だったが、その途中、馬車の中でミレーネが一瞬顔を強張こわばらせた。
 ジークがすぐに気づき、どうしたのかとたずねるが、ミレーネは謝罪するだけで何も答えなかった。ただ、その後のミレーネは誰よりも顔に焦りの色を浮かべていた。

 その後、ミレーネ達は貧民街へと行き着いた。馬車を降りたミレーネ。
「ここなのか?」
 ジークが険しい表情で確認する。
「はい」
 ミレーネが緊張した面持ちで肯定こうていすると全員の警戒けいかい度が上がる。ここはそういう場所だ。馬と馬車の番に騎士を一人残し、皆で貧民街の中を進んでいくと前方からレオナルドが歩いてくるのが見えた。
 ジークがすぐにけ寄っていく。一同の間に安堵あんどが広がりジークに続くようにしてレオナルドに駆け寄る。

(よかった……)
 その中でもミレーネの安堵は一入ひとしおだった。杞憂きゆうだったのだと。
 だが、近くで見たレオナルドの姿に息をむ。傷だらけの体、アレンがセレナリーゼを引き取った後に見えた背中の大きな傷。
ありがとう」
 そんな中でレオナルドがミレーネにお礼を言ってきた。
「っ、……レオナルド様はやはり……」 
 それに対し、ミレーネはまともに応えることも、謝ることもできなかった。ただ驚きに満ちたつぶやきをらすことしか。
 レオナルドから返ってきたのは小さな笑みだった。
 やはりレオナルドは自分の秘密を知っているのだろうか。知っていて忌避きひすることなくそんな風に笑うのか。怖くて確認なんてできない。だが、そうだとしたらいったいなぜ知っているのか。誰にも知られないように隠してきたというのに。

 その後すぐにレオナルドは気を失ってしまい、ミレーネは心の中が疑問や不安、心配でいっぱいになり息苦しかった。
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